異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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心の底から強くなりたいと、今初めて思った。

 

 向かってくる複数の触手を右手を薙ぎ払うだけで全て分断していく。重力から解き放たれ爆発しそうになるが、それを今以上の重力で押しつぶす事で爆発する前に安全圏に吹き飛ばす。

 

 本来ならば力を温存しなくてはならない為にこんな無茶な使い方は出来ないが、残り少ない時間、目の前の馬鹿を殺すためにならば全てを出し切れる。自分の周囲に強力な斥力空間を発生させ、降り注ぐ肉片の弾丸を全て逸らし無効化している。

 

 周囲からは援護とは言えないがプレイヤー達の攻撃が降り注ぎ、本能だけで動いているあれは脅威に対抗するためにいくつかの触手で対応し続けていた。

 

 お蔭で近づく余裕が出来る。

 

 彼女は更に駆けていく。

 

 

 

 

 

 

 頼まれた通りに出来る限りの支援攻撃をし続けている御堂達だが、これが効果的なのかは今一感じられない。

 

 一応牽制自体は出来ているのか、彼女―【リジェクション】が安全に懐に近寄っているのは見えたが、なくてもあれならいけたのではないかと御堂は苦虫を噛み潰したような顔だ。

 

 持っている武器を見る。

 

 リバティに強化してもらった銃器。その辺の武器など歯牙にも掛けないほどの威力と使いやすさになっている。遠距離ならばこれ一択と言えるレベルの代物ではあるが、それでも目の前の化け物にはダメージソースにすらなっていない。

 

 無限再生しているあのタイプのボスにとって、ダメージだけでは倒す事が出来ないのだろう。彼女の言う通りコアとなっている何かを破壊しない限り、無限に動き通続けるに違いない。

 

『俺は・・・・まだ、全然弱い』 

 

 凄まじい速さでレベル3になった御堂。

 

 だが戦闘センスはそこまで高くないし、技術も経験も全く足りない。遠距離攻撃もリバティたちの力を借りて漸く出来ている程度、肝心の接近戦すら仲間の中では中間あたりだ。

 

 御堂自身、別に英雄願望がある訳でもないが、ここまで自分が役に立たないのを感じると精神的に沈んでしまう。

 

 これではただの経験値泥棒と同じではないかと感じてしまうのだ。実際にはそんな事は全くなく、サイレーンやテルクシノエー達の様な強いソウルギアを従え、一品物スキルのお陰でほぼ初心プレイヤーにして、下手なレベル3~4を超える戦闘力を持っている。

 

 御堂ははっきり言えば十分同レベル帯ならば上位者のうちに入るのだ。

 

 だが見ている上が高すぎた。

 

 親友であり、上位のプレイヤーである流川。

 

 接近戦だけならば御堂よりずっと強いアクセルや佐伯。

 

 前の緊急ミッションで共に戦った【レヴォリューション】。

 

 目の前でバケモノになっている、手も足も全くでなかったリジェクション。

 

 本来ならこの中の誰か一人にでもあえていれば十分すぎる体験を僅か数回のミッションで出会ってしまっている。

 

 故に、自分のふがいなさが目立つのだ。弱いのは仕方ない、まだまだ初心者なのだから、と心の中で弱い自分が言う。だが同時にこのままじゃ誰も守れない所か自分すら守れずに死ぬぞと、心の中でもう一人の自分が指摘する。

 

 このミッションを生きて帰れば、半年の間はプレイヤーキラー以外の脅威はなくなる。その間に成長できるか、それとも何もできずに次のシーズンを迎えるか。

 

 前々からある程度思っていた事ではあるが、今回の事で、死ぬ寸前で助けられた事で殊更に強く、御堂は強さを渇望した。

 

『生き残ってレベル4になって、鍛錬を続けて・・・それだけで強くなれるのか?』 

 

 力等のステータスはレベルが上がれば自動的に上がる。

 

 スキル等を購入すればスキルは使える。

 

 だが、経験だけはどうしようもない。それは仕事でも同じだ、どれだけスペックが高くても仕事の内容が分からなければ何もできない。折角の高い能力も宝の持ち腐れだ。

 

 戦いの経験が圧倒的に足りていない。これからがあればと言うが、そのこれからが来る前にこのままでは途中で死ぬかもしれない、誰かを護れないかもしれない。

 

 これからも弱い自分を肯定して、誰かの助けを請い続けなくてはならないのかと歯を食いしばる。

 

 だが考えた程度で、悩んだ程度で強くなれるのなら、今頃誰もが超人なのだ。一朝一夕で経験も実力もなど、子供の駄々と何も変わらない。

 

 悩んで苦しんで、生き残って、経験を深めていくしか結局の所近道はない。それで焦り過ぎて死んでしまえば、それこそ本末転倒というものだ。

 

「・・・畜生が・・・?? サイレーン??」 

 

 気が付けば隣でサイレーンが御堂と共に攻撃していた。

 

 横を見ればテルクシノエーやミューズが攻撃を続けながらも御堂に笑みを浮かべている。

 

「マスター。私達が居るよ」

 

「サイレーン・・・」

 

「お気持ちはとても分かります。ご主人様はどうしても責任感が強い方ですから」

 

「てか、まーちゃんの相手が軒並みチートなだけで、まーちゃんも十分おかしいからね?」

 

「あーしら4人問題なく使役してて、自分は超接近戦とかごしゅも十分チートだって理解した方がいいよ?」

 

「お前等・・・ったく、俺ってそんなに分かりやすいかね」 

 

 自分の悩みを彼女達はあっさり見抜いていた。サイレーンは御堂に寄り添い、テルクシノエーは儚げな笑顔を向けている。

 

 ミューズの二人はニヤリと笑いながら攻撃支援を続けながら、それでも御堂の傍を離れない。御堂に足りない分は自分達で補えばいい、支えればいい、護ればいい、それが彼女達の想いだ。

 

 レイドボスと化したリジェクションは自分のソウルギアを拒否した。ソウルギアの彼女はマスターを嫌ってしまった。それは彼女達に衝撃を与え、同時に安堵させる。

 

 自分たちの主は、最高のマスターなのだ―と。

 

 誰かの為に体を張り、普段は優しく家庭的で、だからと言って心が弱くもなく、彼女達にとって理想のマスターだ。

 

 だからこそ彼が苦しんでいれば寄り添い、共に歩み、彼の力になる。

 

 サイレーンは願う。

 

 マスターと共にあり続け、平穏な日常を楽しく生きる事を。

 

 テルクシノエーは望む。

 

 ご主人様がこの地獄を生き延びて、幸せになる事を。

 

 クレアとショコラは決める。

 

 何があろうとも、マスターの力となって彼の道を切り開くと。

 

 また一つ、御堂とソウルギアの心が繋がる。その想いは知らず知らずの内に御堂に力を与える事になった。

 

 まだまだか細い力ではあるが、それは確かに未来を掴み、生き残り、誰かを助けるための力になるだろう。 

 

『なぁ、プレイヤーキラーさんよ。お前本当にもったいない事してるぞ? こんないい子達をよくないがしろに出来たもんだな』 

 

 家族という存在に飢えていた御堂にとって、彼女達はとても大切な存在だ。見目麗しく、優しく、頼りになる。あまりモテなかったのもあって美少女や美女ばかりだというのも御堂にとっては嬉しい限りだ。

 

 だからこそ思う。ここまでの存在が、魂の片割れが、マスターを毛嫌いする程になるプレイヤーの事が理解できないと。

 

 同時に、そうなってしまう可能性が誰にでも、自分にもあるかもしれないと感じこれまで以上に彼女達を大切にしていこうと改めて心に刻む。

 

「マスター見て・・・!」

 

「・・・あれが本気で来てたら俺達本当に瞬殺だったんだな」

 

 サイレーンが指差す先、圧縮した重力を直線に伸ばし疑似的な剣に変えた彼女が肉塊をすさまじい勢いで削ぎ落していく姿がみえた。

 

 まるで踊るように重力剣を振り翳す度に触手や肉塊が切り裂かれていく。本能でそれを脅威と認めた肉塊が触手を何本も槍の様に突き刺そうとするが、全て彼女の形成した斥力空間によって阻まれている。

 

 絶対の防御と防御無視の斬撃。

 

 ジェミニ達があの状態の彼女と戦ったなら、善戦など出来ず1分も経たずに倒されていただろう。それほどまでに彼女は苛烈だった。

 

 しかしそれはおのれの命を燃やし消えゆく状態だからできる全力。普段ならばこれほどの力を使えば自分自身が持たない。斥力空間の中はほぼ真空と化し呼吸する事すら出来ないのだ。

 

 全身はステータスの高さゆえに何とでも耐えきれているが、体内はそうはいかない。この状態でもし少しでも呼吸すればそこから内部が真空で切り刻まれるだろう。

 

 故に彼女は無呼吸状態で全てを出し切っている。それが出来るだけの力と余裕が彼女にはある。この戦いを直ぐに終わらせるために、目の前の肉塊を、目の前の馬鹿をこれ以上辱めずに終わらせるために。

 

 全てを燃やし、彼女はレイドボスを圧倒していた。

 

「すげぇ・・・な。俺達もいつかは」

 

 凄まじい強さを誇る彼女を見た御堂からつい言葉が漏れる。

 

「ん。大丈夫だよマスター。マスターならきっと・・・あそこまで強くなれるから」

 

「ありがとなサイレーン。お前がそう言ってくれると、自分でも自信がつく」

 

「言葉だけじゃあないよ。私は信じてる、マスターはいつか誰よりも強くなるって」

 

 誰もが必死に戦っている中、御堂の周りだけがなんとなく甘酸っぱい空間だった。それを真横で見ているハルペーは羨ましいのと嫉妬心で更に衝撃波を放ちまくる。

 

「畜生! 俺も・・! あんないい子が欲しいいいいいいいい!!」 

 

「・・・・処置無し」

 

 呆れ顔でスピネルが言う。

 

「だってあそこだけ嬉し恥ずかし甘い空間なんだぞ!? 俺にも分けてください!?」 

 

「ぐぁ・・・!? わ、忘れてた」

 

 御堂が今の状況を仲間たちに見られているのを今更になって思い出す。アクセルは気にせず攻撃し続けていて、佐伯はヒーローマスクのせいで表情は分からないが、実はハルペーと同じく羨ましがっている。

 

 羅漢はホクホク顔で見ているし、スピネルは余裕があるなと先ほど死にかけた人とは思えない余裕に逆に感心していた。単純に忘れてただけなのだが。

 

 バンカーは顔を赤くしながらも攻撃を続けていて、リバティは今現在も気絶中である。

 

「羨ましかろ? ふふふふ。私達とマスターはらびゅらびゅだからね」

 

「まーちゃんが望むなら黄色い太陽を降臨させるのもやむなし」

 

「つかそろそろ陥落しね? あーしらも我慢の限界ってのあるからね?」

 

「貴方達今戦闘中なの忘れてるんじゃないわよ!?」

 

「くおおおおお・・・なんで俺はハルペーなんだ・・・!? 俺はあああああ!?」

 

 嫉妬心が更に力に籠り、なんとなく嫌な紫色になった衝撃波が良い感じにレイドボスに突き刺さっていくのが見える。この場でよくわからない急成長をしたハルペーだが、彼は全く嬉しくないだろう。

 

 寧ろ自分のソウルギアが進化して美少女になってくださいお願いしますとか考えながら攻撃しているので、ハルペーに意思があるのなら泣いている可能性が高い。

 

「いや、うん、なんかすまん・・・」

 

 しまりも格好もつかないが、逆に言えばこれが自分なんだなと御堂は苦笑する。

 

 今すぐ強くなんてなれない。ならば彼女達と、目の前の仲間達とゆっくり強くなるしかない。ここを生き延びればそれが出来る様になる。

 

 その為には彼女がレイドボスを倒すために援護を続けなければならない。御堂は再び銃を手に取り蠢いている触手に向かって射撃を再開する。少しでも早くこの戦いを終わらせるために。

 

 

―97話了

 

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