異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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それは想いと絆の統合。【トランスブースト】

 

 彼女の重力剣が振るわれる度に体積を減らしていく。

 

 勿論そこから急速に再生するが、再生速度が攻撃に追いついていない。本来ならばもう少し再生力が高いのだが、ここで他のプレイヤー達の攻撃が上手く作用していた。ダメージにはならないとしても、肉自体は潰したり切り飛ばせているのだ。

 

 その中で最も効果的なのはスピネルや魔法使いタイプの攻撃と、意外にもハルペーだった。

 

 嫉妬の力で紫色に無駄に強化されたさらた偃月型の衝撃破は肉を切り裂くだけではなく、僅かにではあるが再生力を鈍らせる効果があったのだ。

 

 勿論意図しての事ではないが、ある意味では新しい力を与える結果になった御堂のファインプレーなのかもしれない。

 

 彼女自身そこまで期待していなかった支援ではあるが、それなり以上に役に立ってくれている。ならばやれることをやるのみと、握っている重力の剣を頭上に掲げた。

 

 目の前の膨れ上がった肉塊のどこにコアがあるのか悠長に探している時間はない。だからと言って細切れに切り裂くなんて真似も彼女の技量では無理がある。ならば一番簡単に倒す方法がある。

 

「よく使ってたわね・・・あんたに命令されて」

 

 右手から完全に離れた重力剣が彼女の頭上で円盤形に広がっていく。それは重力ではなく、本来の力【排斥】そのもの。振れたものを弾き飛ばす。

 

 かなりの速さで広がる排斥の円だが、切り飛ばしたとはいえどんどん再生していく肉片もほぼ同等のスピードで増え続けている。このままでは広がり切る前に相手の大きさの方が上回る。

 

「太り過ぎよあんた。ダイエットしなさいな・・・!」

 

 間に合わない。この能力は敵を閉じ込めて圧縮し排斥の力で最終的に分子崩壊を起こさせる力だ。大体の場合はその前に潰れて死ぬが、その程度では死なない相手の場合は再生できなくなるまで崩壊させてやればいい。

 

 問題はこのままでは範囲内に飛び出てしまう事。

 

 発動すれば円盤が円柱の様になり相手を閉じ込める事が出来るのだが、このままでは相手の大きさの方がスキルの範囲を超えてしまう。そうなれば発動しても無意味だ。

 

 重力剣に戻して再度と考えも過ぎるが、再生力がどんどん高くなっているのと、この力は彼女の全エネルギーを消費しているので、次同じレベルの物が作れるかと言われれば難しい。

 

「参ったわね・・・」

 

【GUKADKJGHAJGDIUTAIUTDIUATGD----!!!?】 

 

 最早意味の分からない叫び声の様なものが肉塊から漏れ出す。苦しんでいるのか、それとも怒り狂っているのか分からないが、その声はくぐもってはいるが、彼女がよく聞いていた声だった。

 

「あぁ、もう・・・あんたは本当に―――!?」

 

 何かを言おうとした瞬間、強力な魔法力を感じ振り向こうとした瞬間、彼女の真下を青白い魔導の砲撃が肉塊を焼き貫いて行く。衝撃と熱が再生力を著しく低下させ、肉塊が凝縮していく。コアはなかったようだが急激にしぼんだ今の肉塊ならば――

 

「誰だか知らないけど・・・使えるの、いるじゃない」

 

 これならば間に合う。

 

 彼女は残りの全てを注ぎ込む勢いで、最後のスキルを放つ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 その様子は御堂の方からも見えていた。

 

 圧倒していた彼女が最後の止めと言わんばかりに何かしらのスキルを発動しているが、その形成より再生する肉塊の方が早いのが確認できる。

 

 どんどん広がっていく円盤を見てそれを叩きつけるのかと思う御堂だが、ここから何とか見る事の出来る彼女の表情は優れない。

 

『間に合ってないのか・・・?』 

 

『然り。このままではレイドボスの粘り勝ちになるであろうな』

 

『!?!? な、なんだ!? 頭の中に!?』

 

 考え事をしていたら、どこかで聞いたような声が脳内に響く。心臓が跳ねそうになったが近くにはサイレーン達や流川などの味方しかいない。

 

 空耳かと気を取り直そうとするが、その声はまた響いてきた。

 

『所で粘り勝ちと粘り腰では色々と意味が違う気がするのだが、うどんはやはりコシであるとどこかの県民の方が言っていた。因みにカップめんうどんは10分位放置していた方が美味しいと聞くがどうだろう? 我はそういうのに割と結構興味があるお年頃』

 

『うわああああ!? 空耳であってほしかった!?』

 

 意味の分からない言葉というかカオス満載の言葉の羅列。どう考えても先ほどまでいた前のレイドボス【ハトメヒト】の声だった。それそろディザスター辺りに何時まで居座る気だと怒られそうではあるが、姿も形もないので割とセーフ理論らしい。

 

『て、てかお前生きてたのか!? これは一体どうな――』

 

『長々と話している時間はなくてな?』 

 

『お前はセリフが一々長いんだよ!?』

 

『これはしたり。一本取られてしまったな、流石は受け継ぎし者、そういう所も似ているな、いやこれは感傷か』

 

 クスクスと笑うハトメヒト。姿が見えないので分からないがイルカ頭が笑っている姿を想像するとちょっぴりイラつく御堂だった。

 

『さて、告げておく。生き残る為に』

 

『お、お前―』

 

『聞け。時間はない、今、あれをどうにか手助けする事が出来るのは汝のみである』

 

 脳内に更にハトメヒトの声が聞こえてくる。それは先ほど目覚めかけた力を一端を開花させる言葉だった。

 

『汝がもし、これからも生き延びたいのであれば、そしてソウルギアを愛する事が出来るのであれば、伝えよう』

 

 

 

        【トランスブースト】の本当の力を―――

 

 

『一点物スキルと呼ばれる【トランスブースト】その本来の力は汝と絆を深めたソウルギアとの魂の結合、それが開花すれば、今の未熟な力でも現状を打破する一手になるだろう』

 

『あの・・・スキルに? だが前に暴走を――』

 

『で、あろうな。トランスブーストは普通に使えば、単純な戦闘力の底上げと戦意向上効果になる』

 

 何故ハトメヒトがトランスブーストの事をここまで深く知っているのかと詳しく問い質したい御堂だったが、有無を言わせぬ言葉にただ聞き続ける事しか出来ずにいる。

 

『汝よ、心の底から彼女達を愛せると誓えるか?』

 

『それは――』

 

 愛しているかと言われれば御堂自身わからない。

 

 だが、大切な存在である事には何の変りもないのは確かだ。

 

『異性としての愛でもよい、大切な存在に対しての愛でもよい。汝よ、汝とソウルギアの関係は本来のトランスブーストを使うに値する、我はそう思う』 

 

『・・・・・お前、本当に何者なんだよ・・・』

 

『時間があれば、序章20冊 本編45冊の大長編になる我の素晴らしい物語を紡いでもいいのだが、そうもいかぬ。今はただ、生き残る為に使いたまえ、それでなければ我がここまでした意味がない』

 

『あんたは行間になんか訳の分からない事入れないと会話出来ないのか・・・』 

 

『うむ、良いツッコミである。我としては相方としてこれからもお願いしたい所ではあるがそろそろ本気で邪魔扱いされそうなのでそのまま消えるとしよう。汝、受け継ぎしものよ。我が消えた時、本来のトランスブースト、その真の使い方を理解するだろう。それはこれからのシーズンを人生を生き延びるために使える切り札になるはずだ。ソウルギアと絆を深めよ、決してあのような哀れな存在の様になってはならぬようにな』

 

 徐々に掠れていくハトメヒトの声。

 

 最後に、彼女の声が御堂の中に響き残っていった。

 

『がんばって・・・ね』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・マスター、マスター!?」

 

「っ!? お、俺は・・・?」

 

 ふと気が付くとサイレーンが心配そうに御堂を覗いていた。

 

「吃驚した、急に静かになったから何かあったと・・・」

 

「そ、そうなのか。俺、どのくらいそうだったんだ?」

 

「ん、5秒位かな?」

 

 5秒という時間に御堂は驚きを隠せない。少なくとも頭の中に響いてきたハトメヒトとはそれなりに長い時間会話していた筈なのだ。しかしその間にサイレーン達が此方に気付いた様子もない

 

 そして思い出す前もトランスブーストを発動したときにたような体験をしたことを。今回はそれがハトメヒトだったというだけなのかもしれないと。

 

 何故彼女が、ここまで御堂に手助けをするのか、その理由はある程度理解できていた。『受け継ぎし者』とは【トランスブースト】を手に入れた御堂の事を指しているのだろう。そしてハトメヒトはトランスブーストを使った時に出てきた何者かと縁があったのかもしれない。

 

 だからこそ、今回レイドボスとして無理やり出てきた。

 

 色々矛盾と問題がある答えではあるが、あながち間違いではないのだろうと御堂は思う。何故なら――

 

「マスター、あいつ結構まずいかも・・・!」

 

「あぁ。だな・・・」

 

 サイレーンの言葉を聞きつつも、頭の中はある程度澄み渡り、そして彼自身が知らない情報が満たされているのがわかる。

 

 この窮地を挽回できる一手になれるかもしれないと、救う力には到底足りなくてもそれでも戦っている彼女の手助けになれるだろうと、確信した。

 

「サイレーン」

 

「マスター・・・?」

 

「俺を信じてくれるか??」

 

「・・・??? 変なマスター」

 

 きょとんと何を言っているのか分からないと首をかしげるサイレーン。そして当然の様に言うのだ。

 

「私はマスターのソウルギア。私の全てがマスターの物、マスターの言葉が私の想い。今更だよ?」

 

「・・・ほんと、お前は俺には勿体ない良い女だよ」

 

「ん。マスターも私にとって最高の人だよ」

 

 サイレーンの言葉で覚悟は決まった。御堂は全員に聞こえるように大声を張り上げる。

 

「サイレーン以外全員下がれ!! 今からちょっとでかいの一発決める!! あいつを倒せるなんて口が裂けてもいえねぇが、あの女の手助けにはなるはずだ!!」

 

 その言葉に即座に動いたのはテルクシノエーとミューズの二人。

 

 気絶したリバティをクレアが担ぎ、基本的に全幅の信頼を御堂に置いている流川はその言葉を信じ味方達を全員下げていく。

 

 1分も満たない間に、御堂の周り数メートルが開いた。

 

 隣にはサイレーンがいる。

 

 頭の中にハトメヒトの言葉がリフレインする。トランスブーストの本来の使い方が、この場を凌ぐ一手が今――

 

「行くぞサイレーン!」

 

 左手を伸ばしサイレーンの手を握る。

 

 一瞬驚くサイレーンだが、直ぐに嬉しそうな表情になり、そして真剣な表情で前を見据えた。

 

「想いと絆が力になる・・・! 【トランスブースト】!!」

 

 二人を青白い光が包み込んでいく――

 

「【タイプ―――サイレーン】!!」

 

 あふれだす光の奔流が上空に上っていく。あまりのまぶしさに御堂達の姿を見る事が出来ないが、徐々にその光が収まって行く。

 

 光が収まるとそこには前の変身した血の色の騎士ではなく、サイレーンの銀色の髪と同じ色の人型の機械が立っていた。女性の様な嫋やかなフォルム、背中には透明な4枚の羽が生えている。

 

 全長はそこまで大きい訳ではなく、3メートルあるかないかと言った感じだろうか。巨大ロボというよりは人型のマシンと言った方がいいだろう。

 

【―――不思議だ、これが・・・】 

 

 御堂の意識が覚醒する。サイレーンと一つになった様な一体感と万能感が全身を包み込んでいる。機械の様に見える身体だが、完全に機械という訳ではないようで、手足も何の問題も違和感もなく動かせている。

 

【わわわ・・・!? わ、私がマスターで、マスターが私!? 違う意味で物理的に合体!?】 

 

【落ち着けサイレーン。俺の考えわかるだろ?】 

 

【あ、ほんとだ・・・なにこれ幸せ・・・】

 

 自我はどうやら統合されている訳ではないが、御堂とサイレーンが部分的には融合している状態になっている。それでも自我は御堂とサイレーンに別れていたが。

 

 周りは周りでいきなり現れた銀色の人型機械を見て言葉が出ない。

 

 ソウルギアであるテルクシノエーとミューズ達はどうやら間接的には御堂と繋がっているようで、サイレーンが今どうなっているのか、御堂がどうなっているのかなんとなく理解できているが、同時にそのせいでサイレーンを羨ましく思っている。

 

【行くぞサイレーン。俺達で一撃喰らわせてやるぞ】

 

【ん、細かい説明は全部終わってからだね】

 

【だな、俺もよくわからんし流川にぶん投げる!!】 

 

 流川は万能何でも解説機ではない。

 

 二人の意識が一つになり両手を前に組む。

 

 使うのはサイレーンのスキル、この状態になっている今ならば本来以上の威力と効果を持って目の前のレイドボスを攻撃する事が可能だ。

 

【届かせる!! 行くぞサイレーン!!】

 

【任せて! 響け私の歌声! 【サイレーンヴォイド】!!】 

 

 頭部の塞がれていた口部分が開き、発射口の様なものが露わになり、そこから凝縮されレーザーの様になった音波の一撃が砲撃となって放たれた――!

 

【貫けええええええええ!!】 

 

 その一撃は再生しようとしているレイドボスに凄まじい打撃を、そこで戦っている彼女の攻撃の時間を確実に稼ぎ切ったのだった―

 

 

―98話了

 

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