異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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最後に言っておいてあげる・・・なんて、やめた。

 

 御堂とサイレーンが放った音波光線が肉塊を貫き再生力を著しく奪っていく。それはごくわずかの時間ではあるが、その時間があれば、彼女の形成しているスキルが間に合う。

 

 完全に広がり切った円盤状の斥力空間がレイドボス・リジェクションを上空から包み込んでいく。ベンタブラックの様な漆黒が地面にまで到達すると彼女は右手を強く握りしめた。

 

 彼女が拳を握りしめると同時に肉塊を包み込んでいた斥力の結界が徐々に凝縮していく。地下に逃げ込まれない様に地面に降りた漆黒の結界は地面にも溶け込むように完全に沁み込みレイドボスを閉じ込めていた。

 

 本能で危険だと悟ったレイドボス・リジェクションが結界を壊そうと再生した触手を飛ばすが斥力によって弾き飛ばされる。同時に自分を押しつぶしていた重力を遥かに超える全方位からの斥力の重圧がかかっていく。

 

 結界は徐々にその大きさを縮めていき、最終的には内部の全てを押しつぶし結界ごと世界から消滅する。彼女の必殺の攻撃であり、全身全霊のスキル。

 

 恐怖の感情を失ったはずのそれが叫び暴れだすが、既に全身が重圧で押しつぶされていく、回復すら間に合わず口だった部分から押し出された肉塊が溢れるがそれもまた押しつぶされていく。

 

【---------------------------!!】 

 

 最早声も出せないほどの圧力がレイドボス・リジェクションを限界まで凝縮し、それはまだまだ終わらない。原子ごと押しつぶされ最終的にはブラックホールになるのが普通だが、このスキルはその前に対象を完全に消滅させてしまう。

 

 彼女の目の前にはあれほど巨大だった肉塊を閉じ込めた結界が野球ボールほどに小さくなり、それもさらに小さくなっている。

 

 外側からならば影響はないそれを彼女は手に取った。

 

 この中に、自分の元マスターが今も蠢いているのだろうか。

 

 既にコアも消滅しているのか、いまだに苦しんでいるのかは全ての光を吸収するベンブラックの結界からは見る事が出来ない。今も尚小さくなり、そろそろピンポン玉レベルまで小さくなったそれを彼女は複雑な表情で見つめていた。

 

「これで、おわり・・・か」

 

 複雑な心境と、過去の想い出が頭をよぎる。

 

 碌な思い出が無かったが、それでも最初の彼は彼女に対して笑みを浮かべていた。

 

 そこには打算もあっただろうが、それでも、最後まで嫌いになれない彼の顔だった。

 

「ほんと、馬鹿よあんたは」

 

 あと少しで消える結界を自分の胸に押し当てる。

 

 気が付けば彼女は涙を流していた。あんな男でも、あんな最低なマスターであろうとも、彼女にとってはやはり、大事なマスターだったのだろう。

 

「これでサヨナラね。最後に言っておいてあげる」

 

 胸の中で消えていくそれに彼女は―――

 

「なんて、やめた・・・呪いなんか残したくないもの」

 

 何もいう事はなかった。言いたい事は沢山あった、不満を、怒りをぶつけたかった。そして同時に心の中では言いたかったのだ、お疲れ様―と。

 

 そしてその言葉を最後にレイドボス・リジェクションはこの世界から完全に消滅する。直ぐにでもソウルギアアプリからミッションクリアの報告が流れるだろう。

 

 だが彼女はそれを見ることは無い。

 

 元々消えかけていた所をハトメヒトにある程度の時間繋がれていた命。そして先ほど使った全力で彼女の命は既に尽きていた。

 

 全身が白く変わっていく、脳裏で人が塩の柱になるなんて聞いた事があるなと、彼女はぼんやり考えていた。

 

「結局まぁ・・あんたと同じ所にいくかもね」

 

 ソウルギアが死亡したらどこに行くのか、なんて野暮な事は今は考えない。天国と地獄があって、あいつは絶対地獄だろうと笑い、それならば同罪の自分も地獄なんだろうなと、思いを馳せた。

 

 手がゆっくりと消えていく。

 

 そこに痛覚も違和感もなく、というより既に全身に感覚がない。先ほどまで見えていた視界は真っ白に染まり、自分が立っているのか倒れているのかもわからなくなっていた。

 

「あーあ・・・見たいドラマあったんだけどなぁ・・・あ、これさっきも言ってたかな」 

 

 クズみたいな生活の中で唯一の癒しだったテレビドラマ、お互いに愛し合っている男女が色々な問題を乗り越えながら恋を確かめ合うという、今の世の中では珍しい王道の様な話。

 

 芸能人などに興味などないが、ベタベタすぎる王道の物語が彼女の胸を打ったのだ、これが今回で最終回ならば胸を打つようなシーンだったかもしれないが、まだ始まって5回程度なのでまだまだ続きがある、出来れば全部観たかった、と少々残念だった。

 

 大好きなドラマだった。

 

 まるで自分の理想がそこにあったのだから。

 

 恋人の男女は一心同体ともいえるバディ同士、恋仲なったのは3話からだがそれまでもお互いを信頼し、色々な問題を解決していた。

 

 自分が夢見た、マスターとソウルギアの関係に似た何かがその物語にはあったのだ。

 

 羨ましく思い、ヒロインの女性に感情移入し、せめて物語ではハッピーな結末を迎えられるようにと楽しんでいた。

 

「あんな・・・・違う、現実が・・・・・あったのかも、ね」

 

 自分のマスターにも、もしかしたらそういう違った結末があったのだろうか。

 

 自分が彼を甘やかさなければ、悪い事は悪いと止める事が出来ていれば。

 

 こうしてこんな終わりを迎えるなんてことは。

 

「ほんと・・・羨ましいわね。ねぇ、そう思わない? ――――」

 

 最後の言葉は吹いた風にかき消され、彼女の姿も消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────  

◆ミッション―CLEAR!!

 

―シーズンラストミッション達成をなされた皆さんおめでとうございます。

 

―勝利された皆さん達には次のアイテムとポイントが送られます。

 

―クリア報酬:一律 40000ポイント+10連チケット2枚

 

―補填アイテム:10連チケット

 

―MVP報酬:SSスキル確定チケット2枚 該当者:ケーキ屋

 

―最多ダメージ報酬:SS以上LR1%確定チケット2枚 該当者:ハルペー

 

―最多支援報酬:10連ガチャチケット2枚 該当者:無し

 

―最多防御報酬:5000ポイント 該当者:無し

 

―状況解除 該当者:マシン・ザ・リバティ

──────────────────────────────────────

 

 全員のアプリにミッション終了のリザルトが表記される。

 

 その予想外、レベル5以上のミッションを遥かに超える報酬に生き残った誰もが湧きたち喜びあっていた。

 

 一方で御堂達も喜んではいたが、それ以上にとある問題が発生した。

 

 今回のプレイヤー達とはあまり友好的な関係を築けそうもないのでミッションが終わった後は直ぐに離れた御堂達だったが―

 

【元に戻れねぇ・・・!?】

 

【私はこのままでも・・・はっ!? でもこの状態では肉で欲な事が出来ない!? うむむむ・・・】

 

 変身してマシンの様な姿になっている御堂とサイレーンが元の姿に戻れていなかった。変身解除の仕方も分からないのでとりあえず時間経過を待つことにしている。

 

 そんな中漸く目の覚めたリバティが目を輝かせて叫んでいた。

 

「合体ロボきたー!? なにこれ! なんだよケーキ屋! 主人公かよ!?」

 

【どうどう、おちつけリバティ】

 

【うわぁ、目が男の子になってる。女性なのに】

 

「しかし困りましたね・・・そろそろミッションフィールドも解除されますし、流石に3メートル級のロボ? が街中を歩いていたら目立ちすぎます」 

 

 テルクシノエーが内心羨ましいなーとか思いながらも危惧していた事を言う。

 

 まだ3メートル級だからいいものの、これがロボアニメに出てくる巨大ロボットだったらさらに詰んでいただろう。その日の内に大ニュースになる。ディザスター辺りに目を付けられたらたまったものではない。

 

 だが、現状でも十分見た目がやばかった。全身銀色の翼の生えたマシンなのだ流石に「コスプレです」で通すのは難しい。

 

 そんな悩みを抱えている御堂達を他所にスマホのリザルトをまじまじと見つけて叫んでいた男が居た。

 

「うおおおおおお!? 俺!? 俺が最多ダメージ報酬なのか!? マジで!?」

 

 ハルペーが自分でも信じられないと言わんばかりに興奮していた。まさかの自分、それもこの中では唯一であろうレベル2の自分が御堂達を差し置いて最多ダメージ報酬を叩きだしていたのだ。

 

 実際の所、本来の最多ダメージ功績はリジェクションのソウルギアである彼女なのだが、既に死亡しているのとミッション外からやってきたイレギュラー、レイドボスだった男のソウルギアだったので除外されているだけなので、繰り上がりでこうなっているだけなのだが。

 

 一撃だけで言うならば先ほどの御堂達の砲撃も十分なダメージだったが、それ以上に延々と攻撃し続けてレイドボスを切り飛ばしていたハルペーが地味に活躍していたのだ。

 

 後半は嫉妬エネルギーパワーで紫色の再生阻害効果も追加されたので更に貢献していたとも言う。ちなみに銃弾などはほとんどダメージになっていない。

 

 御堂パーティでダメージを与えられていたのはハルペー、スピネル、最後の一撃を放った御堂+サイレーン位だった。

 

【リバティとりあえず落ち着いてリザルト見てみろ。なんか状況解除って書いてるぞ?】

 

「え? うわマジだ! やった・・! これで防衛対象になったりすることもなくなる!」

 

「・・・・おめでと。もうサボリ過ぎない方がいい」 

 

「う、うぉぅ・・わ、わかった」

 

 スピネルの鋭いツッコミに、数回程度ならまたのんびりできると考えていたリバティが釘を押されて呻き頷いた。

 

 そんなリバティをみて彼女はこれはこれからも引っ張らないと同じ事になるなと嘆息する。彼女がどうなろうと割とどうでもいいスピネルだが、一応は仲間である以上、それなりに使えるメンバー、流川の役にも立つだろうと次のシーズンまでに鍛えてやろうと考えるのだった。

 

「しかし、スキルにこんなものがあるとは・・・一点物のスキル、調べてみる必要がありますね」

 

【マジで頼む、俺にはよくわからんしな。細かい説明は明日するわ、なんつーか疲れた】

 

【イロモノ探しやプレイヤーキラー、その後にレイドボスが出て来て~だもんね。マスターは頑張りました、ほめてあげやう】

 

「それは良いんだが、まだ元に戻れないのか??」

 

 そろそろ10分近くたつが、いまだに元に戻る予兆が見られない。

 

 もしかしたら元に戻れないのではと焦りだす御堂がそこにいた。

 

 

―99話了

 

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