『投影』を使える妹が離れなくて困る件について   作:妹とはなに?

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夢…をみたはず、な件について。

 

 

 

 

 

何が起きているか。起きている行為について挙げるなら戦闘と呼ぶべきものだろう。

 

「奥義─桜華吹雪(さくらはなふぶき)

 

おぞましい密度である剣閃を放ちながら移動し、牽制をする。並の敵ならば見ることすら叶わずに散るであろう剣技を牽制に使うこと、それそのものが敵に対する最上級の警戒を表すものであった。

その当たらない剣閃に服が切り込みを入れられているのは、少しの油断を許した代償である。それ以外には開戦2分間の合間には傷ついていない。

彼には充分な成果であった。

相対する敵には何一つとて傷はついていないが─またその敵に牽制の技しか見せていない。

さして知っている間柄という訳でもなく、片方ずつに過不足なく情報がいっている程度の殺し合い。

銀髪の美少女は斬り続け、巨悪の象徴(オールフォーワン)は隙を伺う。

 

「斬竜思念─燼滅」

 

片手の刀が一瞬で(だいだい)の粉をまき散らす。猛り狂う刀を振るう少女は目すらもその色へと染まっていた。

一瞬の静寂。抜刀し納刀したと感じた間際に距離を取られる。逃げることが正解であることはすぐに理解できた。

ただ一振りで、一度きりの抜刀。それだけで町すらも橙に染まり、業火が地を舐めるように拡がる。少女は空へと飛び、納刀した柄へと手をかける。

 

「君の行動パターンは理解がいくよ」

 

巨悪の象徴の声が聞こえた瞬間、またもや世界が一色に染まる。前の攻防と違うのは出てきた少女の衣装であった。銀色を基調とした袴ではなく、桜色の袴に変化した。

 

わたしのための物語(ナーサリー・ライム)不思議な国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)!」

 

持つ刀は細く薄く、されど折れなく滴るレイピアへと。軽々しく空を舞い、少女の体へ翼が生える。

だからといって少女に焦りがないなんてことはなく。

寧ろその技を使う時点で戦々恐々としていた。

 

(うっそだろおい!爆破までは理解してたけど、そこで詰めきれないなんてことはないと思ってたんだが?桜形態はそもそも空中移動のできるやつには弱いし…ユキになった方がいいのかね…っと!?)

 

考える暇はなくとも、滴る黒い泥の毒は巨悪への特攻を選んだ。レイピアの刀身が消え、肉の間にめり込む。化け物への対峙として一瞬で姿は消える。

翼がもぎ取られ、英雄は地に落ちる。

 

「やはり君の個性─僕とは徹底的に相性が悪いようだ。その上で対等に戦えるとは、すばらしい!僕の配下にならないか?」

 

拍手で相手からの賛辞。その程度で呼吸を乱すことはないが、しかし彼我の実力差を測ることはできる。油断を持って味方として迎え入れようとするその魂胆は透け、彼の心に敗北した瞬間の絶望的な無力感が脳裏によぎる。

 

「いいってもんよ、ただしその頃には─

 

 

─あんたは八つ裂きになっているだろうがな!」

 

絶望的なまでの無力感であろうと、ヒーローであるなら立ち向かわなければならない。

大声でその言葉を放って自身を奮い立たせ、妹から託された唯一の武器である葬槍【棺】を深く握りしめる。

 

「奥義─瞬火終刀(しゅんかしゅうとう)!」

 

超再生が間に合わない─というより、あえて間に合うように生成される刀の数々。妹のように心臓に狙ってだすことはできないが、それでも主要な臓器の全てを刀で斬った。

無論この技は内側から攻撃されている─故に防御もできない。

そして万全ならばまだ避けられたのかもしれないが─勧誘をする余裕をみせるほどの慢心。

 

「お前がどれだけの人の個性を奪って300年生きようが知ったことか。俺は─500年以上生きた殺人鬼だ」

 

片割れを失った以上、生きながらえるつもりはないが。

その言葉を聞けたかどうかは定かではないが、既に事切れた死体は空中から落下した。衝撃で刀が飛び出してくる。

 

「オールフォーワン…お前にはその死に方がお似合いだよ」

 

殆ど焦土になった戦場にて。

そう一言、呟いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、嘘ついた」

 

妹から向けられる冷たい視線。艷やかな唇から漏れる憎悪の声は、感情を抜きにして否応なしにユキであるということを理解させられる。切っ先も、向けられる敵意も、全て俺に向いている。

 

「一緒にいてくれるって言ったでしょ」

 

素肌を斬り刻まれる感触がしたかと思えば、全身に針を刺したかのような痛みに襲われる。血の中に毒でも流し込んだ…という訳ではないだろう。自分の体が動かないのはユキからの言葉へのショックからなのか、それとも失血による意識がなくなっているのか。

 

「安心してね、お兄ちゃん」

 

かと思えば、ひどく甘ったるい声を脳に囁く。痛みの中での救いのような音に屈しそうになるも、感覚でこらえる。

足の感覚も、もうほとんどない。

 

「お兄ちゃんは、私と一緒に生きるんだから」

 

ユキの身長ががくりと上がる。足を斬られたことを理解したが、喉が熱くて声が出ない。触ろうとするけど腕も上手く動かない。体を動かした感覚からすると、殆ど動くのに必要な部分だけを斬られていたようだ。

 

「かわいいよ、お兄ちゃん…♡動かないでね…うんしょ…よいしょ…」

 

前から優しく抱きしめられる。痛みの中で微笑みかけるが、妹の顔が見違えていた。青かったあの瞳はもう戻らないぐらい濁っていて─そう、まるで今見えてる茜色の空に近い色。

 

「お兄ちゃんと永遠に生きるには、どうしようもないくらい難しいけど」

 

一緒に死ねるのは簡単だよね。

 

そう呟いたのは、俺に言い聞かせる為なのか。それとも今からの行為を受け止めるための防波堤なのか。

どちらにせよ、心中をさせるつもりなのは明らかだった。上に星空のように煌めく刃が高らかにそれを証明していた。

 

「……、……、」

 

声を出して止めようにも動けない。妹によりかかるのが精一杯の抵抗でしかない。そんなのはユキにとってはスキンシップなのだろう。嬉しそうに、悲しそうにそれを抱きしめてくるユキ。

 

「ごめんね、お兄ちゃん…でもね、こうするしかできないの。お兄ちゃんの個性を奪われないようにするには、()()()()()()()()()()()()()()()

 

ぎゅっと優しく抱きしめ返す力すらない。ユキの持ってる刀に吸い取られたような感覚は、果たして気のせいなのか。

 

「お兄ちゃんにはずっと妹としか見られてなかったけれど、私はお兄ちゃんのことを一人の恋人として見てたんだ。だからね、えっと…」

 

愛してるよ。

 

一番可愛らしく笑ったユキは、俺もろとも自身の個性で貫いた。

これが俺の記憶だとしたら─それは…

 

 

 

 

 

 




オベロンとシエルがやってきました。
我が家の3月のライオンは触媒だった…?

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