『投影』を使える妹が離れなくて困る件について   作:妹とはなに?

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やっと入学できたと思ったら殺陣(たて)をやらされた件について。

雄英高校が思っているより自由過ぎる件について。

 

 

妹にお姫様抱っこをしてもらいながら登校してきた俺は、雄英高校の正門を飛び越えてきた。ちなみに妹にそれで登校する理由を聞いてみたところ、「こちらの方がお兄ちゃんがかわいくなるから」らしい。そもそも男をかわいくさせるより他にやることないのか…?でもなんか妹がうきうきしているからいいです。

妹が喜んでることが最優先だしね。それはそれとして明日は妹にやりたいと思う。俺だけやられるのは不公平だと思う。先週のおでかけだってずっと着飾らされたし…このままだとお兄ちゃんなのに威厳なくなっちゃう…制服だって付いた途端に破られちゃうし…もうやだよぉ…

 

「はぁ…もうやだ…」

 

ちょっと沈んだ気分だが、隣に妹がいないのも影響している。妹は首席だから挨拶があるそうだ。誇らしいことだけど録画ビデオを回せないのがな…ちょっと残念である。投影でカメラを作れたりしたのだから、それをもらって撮影すればよかった。

そんな後悔をしつつ、俺は教室の扉を開けた。

 

 

爆発してるガキと、注意してるメガネ。あとはそんなにうるさそうな人はいない…かな?ちょっとこっちを見てひそひそしてるのはヴィラン退治の件で見られているだけだろうし、そんな気にすることでもないか。まさか妹と間違えられるなんてことはないだろうし。

 

「あの、少し話したいんだけど…」

「いいよ、うん…凄いね、その体…うちは全然持ってないや…」

「失礼だな。これでもいきなり大きくなったから大変だったんだぞ?」

「そんなこと言えるような胸があるの羨まし…あ、もんでみてもいい?」

「いいけど…別にそんな触ることないと思うぞ?」

 

そもそも野郎の胸なんて揉むものじゃなくない?女子高校生ってそういうのが普通なの?頼みの綱の妹はいないし…まあ、そういうものなのかな。

 

「くっそ、これが余裕か…あ、そういえば名前は?私は耳郎響香」

「俺は…黒金。妹にユキもいるから、クロって呼んでくれていい」

「じゃあうちのことも響香って呼んでいいよ。…って、柔らか…何食べたらこんなんなるわけ?」

「肉とカジキマグロ」

「えっ、…?」

「うん、だからこれしか自由に食えなかったししょうがなくない?こんなんなっても下着とか入らなくなるだけで邪魔だよ邪魔」

「うわっ、腹立つ…」

 

そのまま響香に胸を揉まれつつ話していると、寝袋が入ってきた。もぞもぞ動いてるのを見ると、多分人が入っているのだろう。

 

「静になるまでに一分…君たちは合理性に欠けるね」

「相澤さんじゃないですか」

 

寝袋からでてきたのは子供の頃に見た時とほとんど変わらない相澤さん…ヒーロー名『イレイザーヘッド』だった。メディア露出が少ないけど大事になる事件だと名前がちょろっと書いてある人。

ただ、どっちかというと目立たないようにしているだけでめちゃくちゃ強い人なわけで。雄英高校というヒーローの育成での防犯の面については最上級だ。下手にオールマイトがいてそのレベルのヴィランが来たら困るしね。

 

「あぁ…元気か?」

「元気でやってます」

 

短い会話だけど、相澤さんはこれくらいでやらないといけない。『合理性に欠ける』とか言って切られちゃうからね。

 

「じゃあ、早速グラウンドに出てもらおうか。体操着に着替えてな」

 

あれ?…入学式はないの?

 

「入学式なんて非合理の塊だ。ついてこい」

「ユキのも見れませんか…?」

「後半の方のプログラムだな」

 

つまり頑張って速く終わらせたらいけるってことか。頑張るしかない。でも体操着は持ってないのでこのまま行くしかない。

 

 

 

 

 

 

「先生、全部先にやってもいいですか?」

「…個性の使用はありでやってもらう。全部やってもらおうか。そうだな…見込みなしと判断したら除籍処分しようか」

 

ハンドボール。投げ方はミスしたけど400メートルは越えた。

次の女の人は無限だった。投げるのに∞って何が起きたの?

反復横跳び。残像が残るから判定不可能にされた。

紫色の髪の奴はもぎもぎしてた。何やってんだろう。

握力。ないので12kg。

いろんな触手が生えている人が500ぐらいだしてた。

幅跳び。そこまで記録は伸びず3メートル。

50メートル。2秒。個性を使うよりは速くなる。1人使い方がおかしい子がいたけどなんでだろう。体に合ってない個性だった。

持久走。5分で走り抜けた。バイクを使う女の人が速かった。あんな速くなるとは思ってなかった。凄いんだねバイクって。

長座は42。

 

ここまでを最速でやったけれど妹の話すのにまにあうかは怪しい。急いでいかないと。

 

「相澤先生、今から抜けます」

「おい待て…はぁ、体育館は向こうだ。場所くらい把握しとけ」

 

やっぱりこの人優しいんだな。相澤さんからのアドバイスを聞きつつ、走り幅跳びの要領で駆けだした。

 

 

 


 

むー…せっかく朝からお兄ちゃんをお姫様抱っこしていちゃつけると思ったのに、首席の役目でお兄ちゃんと離されちゃった。お兄ちゃんも一緒に話せたらよかったけど、それをやっちゃうとお兄ちゃんのかわいいが広まっちゃうからやりたくないんだよね。お兄ちゃんは私が世界に羽ばたくことを望んでるけど、私はお兄ちゃんを閉じ込めたいもん。そうじゃないとまた攫われちゃうかもだし…あ、でもお兄ちゃんが拐われるのはウェルカムです。依存させるのにちょうどいいしね。

とはいえ、かわいいお兄ちゃんのよさは伝えたいので首席の席で話すことにした。トガちゃんと考えたスピーチなら間違えることはない…はず。

 

そんなこんなで臨んだ入学式。なんかお兄ちゃんの姿がないような。というより、1クラス丸々いないような気がする空席。

 

「えー、1ーAは首席の白雪さんを除いて現在より担任である相澤のもとで授業をしてもらっています。弊校の教育方針にどうかご理解ご協力の程よろしくお願いします」

 

えー、お兄ちゃんと入学式の看板で写真撮りたかったのにできないじゃん。記者会見のときとは別に欲しかったのに。そのまま順に呼ばれていって、私の出番になる。

 

「それでは、新入生代表あいさつ。1ーA、白雪さん」

「はい!」

 

せめてお兄ちゃんに見てもらいたかったなあ。ゆっくりゆっくり、赤い道を踏みしめながら歩く。

うす汚い光に目を細めつつ、私は登壇する。

 

「春の暖かな陽気が感じられ、新しい出会いの季節がまた巡り回ってきました」

 

本当は私にそんな季節は望んでない。お兄ちゃんとじっとして、二人で寄り添いあってた冬の方がいい。

 

「皆様のことにおかれましては、様々な報道や別れに心を驚かし、流れていることかと存じます」

 

ちょっと詰まっちゃったけど、間違ったことは言ってないと思う。

 

「私はこの期生での首席として入学しました。ですがまだまだ未熟なまま、花開く前のつぼみとして入学したと思っております」

 

どよどよとざわめく報道陣だけど、そんなんは関係ない。私は妹として、お兄ちゃんには敵わないことも身を持って実感する。

 

 

 

 

 

 

そう、こんな風に来ることとか。

 

お兄ちゃんの体は汗をかいていて、息を切らしているから急いで来たのだろう。来れないと思っていた。なのに毎回お兄ちゃんは助けにきてくれる。

今も昔もずっとそう。助けてくれた時の安心感と幸福感はずっとある。

 

「…失礼しました。その花を咲かせる為に私はこれからも努力を続けていくつもりです」

 

こっちを見つめてくる潤んだ瞳もかわいい。なんだろうな、心のドキドキが止まらない。

 

「最後に、私と兄で殺陣(たて)をやらせていただきます。刀と刀の共演、一時の非日常をお楽しみください」

 

ぱちぱちと瞬きするお兄ちゃんに肉薄し、空に投げ出して刀を投げる。

お兄ちゃんには伝えてはいないけど、私のことを傷つけないでくるなら大丈夫。

だってお兄ちゃんは最強でかわいいんだもん。

 

 


 

 

軽い刀の共演。

かたや覚悟を決めた少女。

かたや刀を極めた少年。

どちらも同時に刀を振るい、水晶がキラキラと舞い散る。

鉄骨に着地した双方は、しかし止まることはなく。

一瞬で銀と金が弧を描いて頭上を動き回る。

軌跡の動き方は精霊。舞う動きすらも美しく、体育館はもはや一種のアリーナとなっていた。

光を向け始められたのはいつか。

これをパフォーマンスと呼ぶには危険が過ぎるのではないか。

そんな懸念の声すらもかき消す熱狂がそこにはあった。

 

この時間を終わらせるのは金の妖精。

刀を強く振りすぎた反動のあまり、砕け散る水晶と共に空中に取り残される。

あ、と声を出したのは誰だったか。

そのまま体制を崩し、落ちきる寸前─

 

 

─銀の妖精が優しく受け止める。その顔に慈愛の表情を浮かべ、労わるように頭を撫でる姿は美しい。

 

瞬間、盛大な拍手。

地上に降り立った彼は、慌てて一礼をした。

どれくらいで書けばいいかな?

  • 週に一度(毎話8000弱)
  • 毎日2回(毎話1000弱)
  • 毎日1回(毎話2000強)
  • しぬから(毎日4000弱)
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