『投影』を使える妹が離れなくて困る件について   作:妹とはなに?

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お兄ちゃんの個性がようやくわかった件について。

お兄ちゃんの個性が会話のできる意味不明な個性の件について。

 

 

お兄ちゃんの背中で寝たら、変な場所に来てた。

お茶会ができそうな平和な草原で、お茶会の準備ができててお人形がちょこんと置かれてる。隣には本を持ってる女の子がいて、こっちに手招きしてる。

招かれてるとわかったけど、どうすればいいのかわからない。夢であるならいずれ覚めるし、一回あの子のところに行ってみようかな。

ふわふわした足元の感触を楽しみつつ、だけど目線は逸らさないで。

やっとお茶会の現場に辿り着いた。

 

「マスターはどこ?あら、お茶会のお客様?」

「……うんまあ、そうだけど」

 

なんでこんなに変な格好をしてるんだろう。そう思うぐらいにゴスロリの衣装だ。どこか会話が通じてないように感じるのは気のせいだろうか?

 

「なら紅茶をお出ししなくっちゃ!砂糖はいるかしら?ミルクは必要かしら?」

「ううん、私はそのままでいただくわ」

「まあ!とっても大人なのね!でもテーブルマナーなんてここでは気にしなくて大丈夫だわ!」

 

なんなんだろうこの子。食べ物や飲み物は飲まないぐらいには警戒しないと。

少したりとも微笑を崩さないのはなんでだろうか。

 

「ねぇねぇ、貴方はだぁれ?」

「私は白雲白雪」

「まぁ、とっても素敵な名前ね!きっとお姫様みたいに大切に大切に育ってきたのね!」

「それで、貴方の名前は?まさか、名乗らないなんてことはないでしょう?」

「そうよね!わたしが名乗らないのは失礼だわ!」

 

 

 

貴方のための物語(ナーサリー・ライム)!よろしくね、わたし!

 

ナーサリー…ライム…?なんなのかはお兄ちゃんに聞けばわかるのだろうか。

とはいえ、本当によくわからない。このライムちゃんはなんでここにいてなぜこうしているか、目的も何もわからない。

 

「あら、何を悩んでいるのかしら?あたしはわたし、わたしはあたし。考えなくても大丈夫よ?」

 

何を言っているのかをわからなかったが、変化はすぐに訪れた。目の前のライムちゃんが私になったのだ。私は一瞬お兄ちゃんと思ったけれど、そうではない。全く違う赤い色の煌めきが、目の中から輝いている。

 

「あなたはマスターに恋してる。でもハッピーエンドには届かないからこうやって隠してるのね。かわいそう、かわいそう」

「違う!」

「違わないわ。あなたはわたし、あなたがどう思っていてもわたしはあなたのことを言えるのよ」

「うるさい…!」

 

私はライムを殺すために武器を持つ。お兄ちゃんをどう思っているのかを言われるのはいい。それにお兄ちゃんの心に妹以外の女がいるのも苛つく。許せない…!

 

「お兄ちゃんのことをわかった風に!なんにもわかってないじゃない!」

「あら、何を言ってるの?わたしはあなたよりもずっと一緒にいたのよ!」

 

「妹じゃないくせに!」

「あなたこそマスターのことをわかってないじゃない!」

 

刀で防ぐ。銃で落とす。お兄ちゃんみたいに上手に武器は使えないけどその攻撃の場所に武器をつければ迎撃できる。

投影の本質ではないけど、子供に近づくには充分。

 

「ライムちゃんはさっさと家に帰って!」

「ここがあたしの居場所なの!個性そのものでしかないわたしはここにしか生きられない!マスターを待ってお茶会もできない!」

 

氷の氷柱を避ける。炎に盾を作って対処する。雷なんて刀を作るだけでいい。

あっという間に焦土になり、近くにあるのは武器の墓標だけ。

 

「ああ、ああ!栞を挟んでおいてよかったわ!」

 

刃を向ける瞬間、後ろから刀。落ちてくる刀なんて対処はできず、ただただ逃げるために横っ飛びに避ける。

 

「哀れな正義の味方のものがたり!ナイトにもなれなかったらなにになれるのかしら!あなたと同じ個性の少年!何にもなれないあわれなピエロ!

自分の中ならなんとでも、祈れないのはだれのせい?

Page SN

Unlimited Brade Works!」

 

上にあるのは無限に思える剣。落とせない高さに剣が敷き詰められている。

地雷を用意することをしても防ぎきれない。

防御なら…!

 

「【鎧】!」

 

自分にあうように変えた鎧だけど、守りについてはほぼ無傷に抑えられる程度の刀だ。逃げれないけどどこにいるかわかるから気にしない。

 

刀の音が止んでから鎧を解除し、殺しにかかる。

 

「お兄ちゃんは無個性のままでいいもん…!私が力を貸すんだから!」

 

お兄ちゃんは私がいれば個性があるようにできる。ヒーローとして活躍できる。

それなら私が居るからかのじょ(こせい)は消えてほしい。

 

桜花(おうか)!」

 

お兄ちゃんに渡した刀そのものを使って全力で薙ぐ。

 

「死んでしまえ!」

 

その瞬間、世界が崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

本来ならこの個性について把握をしておいてなければおかしい黒金の事情について語るべきだろう。

彼の体に個性が宿るのもほんの偶然だったのだろう。妹を守る為の個性が最初としてあった─という訳ではなく。

元々は偉人の本の物語を再現する個性として使われていた。その時はまだ、ただの個性と同じだった。単に再生する個性、まだ自我を持たない個性として使われていた。

いつ変化したのかは誘拐事件の辺りであり、詳しいことはわかっていない。

妹を守った時に持った自意識の影響か、それともこの頃に恋心に気づいた妹の狂気か、はたまた刀を持った時の毒気が体に回って個性を(むしば)んだのか。

どれが個性を変化させたのかは知らないが、ともかく個性は─ナーサリー・ライムは目を覚ました。

 

「あれ、ここはどこかしら?」

 

彼女が目を覚まして以降、彼の個性は使えなくなっていく。というより、個性に自我が芽生えたのなら過度に使われるのは嫌なのだろう。自分を使い尽くすような行為をされて喜ぶ人間はまともな感性ではない。

嫌われるような行為も何もない。ただの平和な風景にのんびりとお茶会をさせてくれれば充分なのである。

そんな普通の風景を謳歌しようとしたナーサリー・ライムだが、一度だけとある誤算に会う。

 

「わっ!どこ?ここは寝室かしら」

 

何の因果かサーヴァントとして現界した。個性としてはそんなことはありえない、黒影(ダークシャドウ)に次ぐ第二の特殊個性。幸いにして深夜だったことが影響して、誰にも気づかれなかった。そう、その個性の使用者である黒金でさえも。

 

「あら、マスターじゃない?」

 

もちろんサーヴァントの現界をした以上マスターの近くにいることは当然なのだが、目の前に馬乗りになってマスターをよく観察していた。この頃はまだかわいいというよりかっこいいお兄ちゃんのことである。妹が嫉妬してもなお認められるほどの美貌。ではそんなものを始めてみた彼女はどうなるか。

 

「あなたがわたしのフィアンセなのかしら?ああ、なんてかっこいいのかしら!」

 

そんなはずがないとわかっていても、彼女は元々おとぎ話の英霊。少女漫画脳であることは疑いの余地がなく、美しい異性に惹かれるのは無理のない話だ。

 

「でも、試練がないとダメだわ!やっぱりストーリーとして成り立たないとダメだもの!」

 

だから彼女は、このまま現界することにした。本の形へと変わり、1日間その姿で彼を見つめることにした。どのようなことがあったのかについては省く。だが結果として彼女の本体が目撃した姿がフィアンセとして決定させるに値するのは確かだった。

 

それに加えて彼女の天敵と判断される妹なる存在にも。

無論彼女は二心同体であるフィアンセからの愛で負けているつもりなど毛頭ないが、しかしそれでも不安は拭いきれないものであった。

だからなのかは知らないが、彼の体を改造した。影響をされやすい体へと。

この体の改造はいい面もあった。かの【針】も【桜】も本来ならば使えないような刀であっても、改造された体はその都度最適化された振り方で剣術として可能にした。最適化された行動をとっているその作用は、その時のタイミングで必要な技だけを繰り出すことを可能にした。

悪いことは無論ある。個性たる彼女が弄る場所は深層意識にもっぱら限られていたし、その深層意識は不安定であればあるほど双子の片割れへの依存を求める。

もう一つこれは彼女も予期していなかった副作用がある。現在進行系で起こっているお兄ちゃんがお姉ちゃんとなる変化だ。これは【鏡】の効果である憧れの変化が悪い方へ作用した。彼の中に憧れるものがなかったが故に、ねじり曲がって妹に変化した。

もちろんフィアンセがどのような状況になっているのかについて知っているナーサリー・ライムは、お兄ちゃんのよき理解者であると言えるだろう。

 

マスター(フィアンセ)にはいつごろ会うのがいいのかしら?木漏れ日の優しい朝のときかしら?眩しく太陽が照りつける昼頃かしら?それとも恋人が楽しく話す夜かしら?とっても楽しみだわ!」

 

当然のことだが、黒金はこのことを一切知らない。寧ろ気まぐれに自らに力を貸す個性にどう思うか─少なくとも、よい感情は抱かないのはわかりきっている。

しかしそんなことは彼女には関係ない。狂った本は上書きを許さない。

 

「ああ、マスターと速くお茶会がしたいわ!いつになったらキスで起こしてくれるのかしら?」

 

既に個性ではなく一介の少女としてヤンデレと言われるおとぎ話に、一切の言葉は通じない。

彼女の頭にあることとは、自らのハッピーエンドといつまでも幸せに暮らしました(ハッピーエバーアフター)という、おとぎ話らしい妄想であるのだから。




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