牙狼<GARO>~金色を継ぐ者~   作:龍気

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今年初にして3か月以上ぶりの投稿です。

前中後編と分けて投稿する予定だったのを一つにまとめました。


次回予告忘れてたので追加と編集しました。


『海鳴』

Side・遼牙

 

『遼牙、またあの夢を見たのか?』

 

「あぁ・・・ザルバ、これは何かの前触れか?」

 

 

左手中指にはめた指輪、魔導輪・ザルバ、俺の相棒だ。

 

ザルバに今回見た夢の話を・・・と言っても、何回も見てる夢なんだがな。

 

 

『さあな・・・だがお前達魔界に関わる人間が見る夢は、一概に無関係とは言えない事は確かだ』

 

「うむ・・・最初は途切れ途切れな感じだったのに、鎧を継承してからはしだいにハッキリとしだした・・・只、

何故か互いの名前を言う箇所にはノイズが入るが・・・」

 

『まるでお前の称号みたいだな、名も無き・・・いや、忘れられた黄金騎士』

 

 

そう・・・俺が継承したのは魔戒騎士で最高位に位置する黄金騎士の鎧・・・の、筈なのだが・・・。

 

どう言う事か鎧の大部分は金色ではなく漆黒で、その称号・・・名前すら誰も知らない。

 

 

「と言うか・・・お前が知らないのはおかしいんじゃないのか?鎧があった塔にはお前も居たんだ、無関係ではないだろ?」

 

『そうだと思うんだが・・・思い出そうとするんだが、まるでそこだけが抜け落ちた・・・そんな感じで思い出せないんだ』

 

「何かそれ以外で覚えてる事は?」

 

『・・・おそらく出会ったであろう魔戒騎士と魔戒法師位だ・・・もっともどんな関係だったかは一切思い出せない』

 

 

その系譜の魔戒騎士に会えば何か分かるかもしれないが・・・さっきザルバが言った様に、俺は忘れられた黄金騎士、

他の魔戒騎士や魔戒法師だけでなく、元老院の神官ですら俺の鎧の名を知らない・・・本当に忘れてしまったかのように・・・。

 

ただ分かっている・・・いや、おそらくだが・・・この鎧を代々継承してきたのは“冴島”と言う家系の者だった・・・かも知れないと言う事だ。

 

俺の名も・・・鎧を継承した時に・・・。

 

 

「遼牙さん、支度が済みましたから早く行きましょう」

 

「んっ?おぉ・・・終わったか?じゃあ行くか」

 

「はい」

 

 

クロノの支度が終った様だし、出発しますか・・・。

 

俺の旅の目的は、ホラーを狩りつつ、この鎧の謎と名を明らかにして、誰もが認める黄金騎士に・・・真の守りし者になる事。

 

旅を始めて・・・鎧を継承してから1年が経つが、成果は今一だな。

 

クロノと出会って一緒に旅をする様になっても半年が経つが・・・。

 

 

(コイツの事もどうするかな・・・)

 

「?何ですか?」

 

「いや・・・お前と会って半年経つのに一向に背が伸びないなと思ってな」

 

「なっ!?人が気にしている事を・・・これでも身長は伸びてますよ!」

 

「でもその服・・・俺と出会った時から変わってないだろ?」

 

「ぐぅ・・・いつかアナタを(色んな意味で)抜いてやる!!」

 

「期待しないで待ってるよ」

 

 

コイツは魔戒騎士になりたいと言っているが、今のままじゃとてもじゃないが騎士にする事はできないな・・・。

 

実力や才能云々より・・・心がな・・・。

 

 

『小僧、お前さんは何故騎士になりたいんだ?』

 

 

俺の心情を察してか、ザルバがクロノに問いかける。

 

 

「ザルバ・・・前にも言ったけど、僕は強くなりたいんだ。強くなって、悲しみを広げる悪を倒す・・・その為にも!」

 

 

言ってる事はまあ・・・立派で正義感溢れるセリフだが・・・。

 

 

『遼牙・・・坊主の目には僅かながらに闇が潜んでるぞ』

 

「分かってる・・・それを如何にかしないと、騎士にする事はできないな」

 

 

ザルバがクロノに聞こえない様に話しかけ、俺もそれに聞こえない様に答える。

 

まだ9歳だと言うのに・・・一体お前に何があった?

 

それから少し歩いて、潮の香りがしだし、森を抜けた先に町が見えた。

 

 

「町か・・・そろそろ手持ちも危ういし、暫く滞在するか」

 

「何時も思うんですが・・・魔戒騎士や法師の収入源って一体何なんですか?」

 

「俺も知らね」

 

『神官から給料袋貰ってる光景なんて想像できないしな』

 

「「・・・・・・・・・」」

 

 

一瞬その光景を想像してしまった俺とクロノ・・・なんともまあ・・・。

 

 

「イメージが崩れますね」

 

「シュールすぎてなんとも言えない」

 

 

まっ・・・下らない事は考えてないで、さっさと町に向かいますか。

 

 

「さてクロ坊、この町の名前は何と読むのでしょうか?」

 

「それくらい読めますよ・・・うみなり・・・海鳴町です」

 

 

正直クロノは日本人らしくない・・・かと言って外人と言う感じではない、もう少し色々と話してくれたらいいんだがな・・・。

 

 

『お前さんも厄介な奴を拾ったな』

 

「そう言う訳にもいかないだろ?」

 

 

理由は如何あれ、俺はコイツを1人にしてしまったんだからな・・・。

 

暫らく・・・と言っても、もう夕方だが・・・仕事を探すが・・・これが中々・・・。

 

 

「上手くいきませんね・・・いつもの事ですけど」

 

「住所不定の・・・しかもお前の様なガキ連れた未成年をそう雇ってくれるわけないか」

 

『コンビニでバイトする黄金騎士の姿なんて見たかないがな』

 

「それは言えてますね」

 

 

 

それはそうだが・・・ん?

 

 

『遼牙、感じたか?』

 

「あぁ・・・微かにだが・・・それでいて強い陰我を感じる」

 

「オブジェか何かですか?」

 

「いや・・・これは蓄積された陰我ではない・・・生きた陰我だ、誰かが陰我を発しているんだ」

 

『すぐそこだ・・・これ以上暗くなったらホラーが出て来るかもしれないから急げ』

 

 

俺達は陰我が発する場所へと向かった。

 

そこは公園で、時間が時間だから人は居なかった・・・が。

 

 

「ここから発せられているのは確かだ・・・」

 

「でも・・・人なんていませんよ?生きた人間が発している陰我なんですよね?」

 

 

『間違いなく居る・・・しかもこの感じは・・・』

 

「・・・・・・クロ坊、あそこの遊具辺りを探してくれ」

 

 

俺はそう言って公園の中心に有る、一際大きな遊具を指差した。

 

 

「えっ?いいですけど・・・遼牙さんが言った方が・・・」

 

「いいから・・・多分お前が行った方が大丈夫だろ」

 

「?」

 

『まぁ・・・遼牙が行くよりは安全に終わるな』

 

 

この目で見た訳ではないが・・・この気配から、そしてザルバも分かっている様だから多分間違いない。

 

クロノはまだ気配を感じる事が出来ないから、その正体に気付いていない・・・まあこれも経験だろう。

 

 

「一体・・・ん?」

 

 

陰我とは言わば負の感情や思念・・・感情にいたっては大概が怒りや憎しみだが・・・。

 

 

「えっ?まさか・・・」

 

 

もう1つ・・・悲しみもある・・・。

 

 

「ぐす・・・ふぇ!?あなたはだあれ?」

 

「おっ・・・女の子!?」

 

 

子供でこれだけの陰我を発するとしたら悲しみだろうな。

 

そしてこの栗髪の少女が、クロノを変える切っ掛けになるとは・・・そして、俺の宿命に大きく関わっている等・・・この時は思いもしなかった。

 

 

Side・クロノ

 

遼牙さんが陰我を発する者がいると言って探してみたが・・・まさかこの幼い女の子が?

 

 

「・・・・・・・」

 

「そんな・・・」

 

 

遼牙さんの目がそうだって言っている・・・子供だと分かっていたから僕に行かせたな・・・同じ子供が行けば怯えさせる事も無いと・・・。

 

しかし、この娘はこんな時間に、1人でこんな所に居るんだ?

 

それに・・・この様子だとおそらく泣いていた様だし・・・。

 

 

「あっ・・・君・・・如何かしたの?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

女の子は明らかに警戒していると言うか怯えていると言うか・・・でも僕の目を黙って見て何かを待っているような・・・あぁ・・・そうか。

 

 

「あっ・・・僕はクロノ・・・君は?」

 

「・・・なのは・・・」

 

 

僕が名前を言うのを待っていたのか・・・一応、「誰?」って聞いてきたからな・・・。

 

 

「じゃあ・・・なのはちゃん、君は何故此処に居るの?友達・・・もしくは家族の人は一緒じゃないの?」

 

「・・・いない・・・なのはだけ・・・」

 

 

自分だけって・・・そもそも親は何をしているんだ?

 

見たところ5歳位の女の子が、1人で公園に居る事態が、今のご時世危なくてしょうがない・・・。

 

遼牙さんと旅を始めて、人間の醜い姿や所業を見てきたから・・・この娘の様な幼子を欲望のまま強姦または暴行、

中には猟奇死体を芸術と称し、子供を無残にも殺す異常者・・・まあ、そいつはホラーに憑りつかれて、

遼牙さんの手によって討伐されたが・・・おっと、話がずれた・・・今は目の前の女の子をどうするか・・・。

 

 

「くろの・・・くんは?くろのくんもひとり?」

 

「いや・・・僕は・・・」

 

「子供はもうお家に帰る時間だよ」

 

 

タイミングを見計らった様に出て来る遼牙さん・・・この人、僕が子供相手にどうしようか困っている様を見て面白がっていたな・・・。

 

 

「おじさんは・・・くろのくんのおとうさん?」

 

「おじっ・・・!?俺ってそんなに老けて見える?」

 

「知らないですよ・・・子供から見たらそう見えるんじゃないんですか?」

 

「そんなものかね・・・俺は遼牙、おじさんじゃなくてお兄さんね」

 

「・・・ごめんなさい・・・」

 

「別にそんなに怖がらなくていいよ・・・家に帰りたくないのかい?」

 

「!?」

 

 

女の子は・・・なのはちゃんはどうして分かったと言わんばかりに驚愕した・・・と言うか僕も若干驚いている。

 

これ位の歳の子供ならまだ親に頼り、甘えたいはず・・・その親がいる家に何故帰りたくないのか・・・。

 

 

「思う事や抱えるものは人其々さ・・・子供だって例外じゃない・・・後、俺から言わせれば、お前もその部類の子供に入るぜ」

 

 

この人は人の心が読めるのか?

 

時折僕の考えている事をズバリ言い当ててくる・・・でも、僕の内に秘めた感情は・・・おそらくまだこの人も気付いていない・・・。

 

 

「・・・何かあったのかな?」

 

「・・・おとうさんが・・・」

 

 

なのはちゃんの話では、彼女の父親は仕事で大怪我を負い、今は病院で入院している。

 

家は自営業で喫茶店を開業したばかりで、母親と兄は店の方を、姉は父親の看病・・・まだ幼い彼女は1人で留守番をしている事が多い。

 

・・・それは当然じゃないのか?

 

そんな状況じゃあ、家族皆が協力するのは当たり前、何もできないなら大人しくしている方が、

皆の負担にもならないし、それが分かっていてこんな時間に公園に1人でいるなんて・・・そんなのは・・・。

 

 

「クロノ」

 

「!?」

 

「お前が今考えている事は正しいかもしれない・・・」

 

「・・・・・?」

 

「でもそれは今言葉にしていいかは判断しろよ?」

 

 

この人は本当に心が読めるのだろうか?

 

それに・・・何時もクロ坊とか呼ぶくせに、真面に名前を呼ぶ時は、何時になく真面目な時なんだよな。

 

僕だって場や空気を弁えて言うか言わないか判断するさ・・・。

 

 

「なのはちゃん」

 

「はい・・・」

 

「子供がする事で、家族が一番心配する事って何か分かるかな?」

 

「・・・・・・おそくまでおうちにかえらない?」

 

「それもあるけど・・・一番は何でも我慢してしまう事だよ」

 

「がまんすること?」

 

 

遼牙さんの言葉に意味が分からない顔をするなのは。

 

まだ子供だから仕方がないか・・・って、遼牙さん・・・お前も子供だろって目で僕を見ないでくださいよ。

 

 

「何でも我慢しちゃうって事は、気持ちを伝えないって事なんだ」

 

「きもち?」

 

「うん、なのはちゃんにはまだ難しいと思うけど、言葉でも何でも、気持ちをちゃんと伝えてもらえないと、分からないから不安になって、

心配してしまう事があるんだ」

 

「・・・・・・」

 

「そして今のなのはちゃんみたいにならないかと心配する」

 

「へっ?」

 

「我慢しすぎたから・・・寂しかったから見てもらいたかったんだね?」

 

「!?」

 

 

心を見透かされたかのように驚くなのはちゃん。

 

それを気にせずに、遼牙さんは話を続ける。

 

 

「かまってもらいたいから・・・帰らない、でもそれがお母さん達に迷惑をかける事だって分かっているから、逆に帰られなくなったんだよね?」

 

「うぅ・・・うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

 

突如泣きだして遼牙さんにしがみ付くなのはちゃん・・・自分の気持ちに気付いてくれた事に、

堪っていたものが一気に涙となって溢れたのだろう・・・。

 

 

「こわかったの・・・おとうさんがもうかえってこないかもって・・・」

 

「そりゃ怖いよな・・・」

 

 

泣きながら胸の内を語るなのはちゃんの頭を、遼牙さんは優しく撫でながらその思いを受け止めた。

 

 

「だからおかあさんも・・・おにいちゃんとおねえちゃんもたいへんだから・・・わたしもおりこうでいなくちゃって・・・」

 

「家族に迷惑かけたくなかったんだよね?家族の皆が好きだから」

 

「でも・・・でも・・・さみしかった・・・ずっとひとりで・・・・・・さみしかったの!!」

 

「かまってもらいたいものな・・・お母さんに甘えて、お兄ちゃんとお姉ちゃんに遊んでもらいたかったんだよな?」

 

「・・・・・・うん」

 

 

その後もなのはちゃんは泣き続け、何か言葉を発するたびに遼牙さんは優しく慰める・・・何でか僕の胸の内がモヤモヤしたのは如何してだ?

 

暫くして辺りが暗くなる寸前までなのはちゃんは泣き続け、ようやく落ち着いた。

 

見つけた時とは違って今は若干笑顔であった。

 

 

「さて・・・堪ったもの全て吐き出してスッキリしたかい?」

 

「うん・・・その・・・ありがとうございます・・・」

 

「いいさ、子供は暗い顔より笑顔が一番だから・・・なっ?クロ坊?」

 

「僕に振らないでくださいよ」

 

 

そりゃ・・・可愛いですけど・・・そんなのを口にしたらこの人の事だ・・・弄りたおすに決まっている。

 

 

「まったく素直じゃないな・・・それじゃあなのはちゃん、もう遅いから帰ろうか?危ないから送っていくよ」

 

「えっ・・・でも・・・」

 

 

あれ?何だか帰りたくなさそうな様子。

 

 

「・・・まあ帰ったら多少怒られる事は覚悟しといた方がいいね」

 

「うぅ・・・」

 

 

あぁ・・・そっか、こんな時間まで帰らなかったらそりゃあ怒るよな・・・。

 

 

「大丈夫、俺も一緒に居てあげるから」

 

「でも・・・」

 

「君の気持ちも分かる・・・でも、心配をかけてしまったのは分かるね?」

 

「・・・うん・・・」

 

「じゃあ・・・先ずは叱られる事だ」

 

「えっ?」

 

「そしてなのはちゃんは知るべきだ、君の家族が君を如何思っているかを」

 

「・・・うん!」

 

 

と言うか・・・遼牙さんが一緒に行くって事は、僕もついて行く事に・・・今日の寝る所も決まってないのに、

まさか今日出会ったばかりの子供の家に転がり込む気か?

 

 

「く~~~ろ~~~の~~~・・・・・・」

 

「・・・はい、失礼な事思ってごめんなさい」

 

 

分かってますよ・・・本当は一緒に居ないと、なのはちゃんが危ないって事は・・・。

 

 

Side・遼牙

 

「すみませ~~~ん!誰か居ませんか~~~?」

 

「は~~~い・・・どちら様ですか?」

 

 

あぁ・・・これは完全に怪しまれてる。

 

まぁ・・・自覚はしてるが普通な格好ではないからな、そんな格好した知らない男が訪ねてきたらそりゃあ怪しむな。

 

 

「ほら・・・」

 

「うぅ・・・」

 

 

俺の背後に隠れていたなのはちゃんが若干泣きそうな表情で顔を出す。

 

 

「なのは!?」

 

「おかあさん・・・あの・・・」

 

がばっ!!

 

「えっ?」

 

 

なのはちゃんの母親は、なのはちゃんを見ると脇目もふらずになのはちゃんを抱きしめた。

 

 

「こんな時間まで何所に行ってたのよ!恭也も・・・美由希も・・・みんな・・・みんな心配したんだから!」

 

「あっ・・・」

 

 

なのはちゃんの母親の声からは、心配と不安から解放された安堵が感じられた。

 

そこからなのはちゃんの母親がどれだけなのはちゃんを心配していたかが分かる。

 

 

「なのはちゃん・・・言う事・・・いや、言いたい事があるなら、我慢せずに言うんだ」

 

「うぅ・・・うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!ごめんなさい!!おかあさんごめんなさい!!」

 

 

なのはちゃんは公園に居た時以上に泣いて、母親に抱きついた。

 

今までの事、そして今の事、寂しかった事や申し訳なかった事の全てを涙と共にぶつけ、それを受けなのはちゃんの母親も、

涙ながらになのはちゃんに謝り抱きしめた。

 

 

「本当に・・・なのはがお世話になりました」

 

「いえいえ・・・そんなお構いなく・・・」

 

 

その後、俺とさっきまで完全に空気だったクロノはなのはちゃんの母親、桃子さんに呼ばれ、なのはちゃんの家に上がっている。

 

なのはちゃんは泣き疲れたのか今は寝ている。

 

 

「俺は冴島遼牙、こっちは・・・弟って言った方が良いか?」

 

「その時点でもう違うって分かるでしょ?第一僕達全然似てないですし・・・クロノです」

 

「遼牙君とクロノ君ね・・・本当にありがとう・・・私・・・あの子の事全然かまってあげられなくて・・・」

 

「聞きましたけど・・・ご主人、それ程容体が悪いのですか?」

 

「えぇ・・・あの子には言ってないけど、夫はボディーガードを生業としていて・・・その時もとある要人を護衛している時にテロに・・・」

 

 

テロか・・・少し気になるな・・・魔戒騎士としての勘が、そう告げている。

 

 

「まだ油断が出来ないとお医者さまから言われて・・・仕事もあって中々・・・」

 

「なら・・・お店を休まれては・・・少し位なら平気では?」

 

「クロノ」

 

「うっ・・・」

 

「いえ・・・クロノ君の言う事も尤もよ・・・でも、子供達の養育費もそうだけど、ようやく軌道に乗り始めた、

あの人が建ててくれたお店を今閉める訳には・・・」

 

 

色んな陰我やそう言った残留思念的な物に触れてきたから分かる・・・この人にとって喫茶店の営業は純粋な夢で、主人との約束なんだと。

 

この手の純粋な夢や約束も・・・何らかの切っ掛けで強い陰我となる事がある・・・それに付け込んだホラーを幾度か斬った事はあるが、

いつも虚しさと無力感が残る・・・。

 

 

「あの・・・俺とこいつは旅をしているのですが、よろしければお手伝いします」

 

「えっ?」

 

「え!?遼牙さん何を!?」

 

「元々旅費稼ぐまでこの町に居る予定だったんだ、別に大丈夫だろ?あっバイト代は要りません」

 

「あんた言ってる事が矛盾してるよ!!」

 

「ご主人が回復して戻って来るまでだよ」

 

「そんな・・・悪いわ・・・何時帰って来れるかも分からないのにその間タダ働きなんて・・・でもだからと言ってバイト代を払える余裕はないし・・・」

 

「何よりも・・・お子さんの為にも・・・」

 

「・・・・・・」

 

(おい遼牙・・・)

 

 

俺の提案に不服なのかザルバが念話で語りかけてきた。

 

 

(別に滞在するのは構わないが、分かっているのか?)

 

(修行にホラー討伐に鎧の名前探しと、やる事は沢山ある事か?)

 

(それもある)

 

(じゃあここは白の管轄内って事か?)

 

(気付いていたか・・・)

 

(なのにこの町は陰我の浄化がされている形跡がない・・・お前が危惧しているのはそこだろ?)

 

(そうだ・・・)

 

この町が番犬所のある管轄内にある事は来た時に分かった。

 

しかしこの町の至る所から陰我が感じられた。

 

普通番犬所のある管轄には必ず1人、称号を持った魔戒騎士がつくのが原則。

 

魔戒騎士はホラーを狩る以外に、ホラーが出てこない様に陰我の宿るエレメントを浄化するのだが、

この町にはその様子が無い。

 

大体この手の管轄は・・・所属していた魔戒騎士が戦死したかだが・・・。

 

 

(管轄内に入ったら番犬所に顔を見せるのが礼儀だが、この町の状況を見る限り厄介事を任されるぞ)

 

(必然的に足止めされるって事か・・・)

 

(俺はどちらでも構わんが、決めるのはお前だ、俺はそれについていくだけだ)

 

(・・・答えは決まっているさ、でなければあんな事言わないさ)

 

 

そう・・・俺の答えは決まっている。

 

それにこの家族との関わりがクロノにとってもプラスになる・・・そんな気がする。

 

 

「じゃあ・・・お言葉に甘える事にするわ」

 

「ありがとうございます」

 

「でも・・・クロノ君、学校は・・・」

 

「あぁコイツ訳あって学校に行けないんですよ」

 

「ちょっ!?」

 

(話を合わせろ・・・そもそも話さないお前が悪いんだぞ)

 

「(くっ・・・分かりました)あまり事情は聞かないでください」

 

「ごめんなさい・・・でもだったら・・・」

 

「クロノはなのはちゃんの遊び相手って事で良いんじゃないんですか?どうだいなのはちゃん?」

 

「「えっ?」」

 

「りょうがさんとくろのくん、おとまりするの?」

 

 

俺達の会話が気になったのか眠りが浅かったか、なのはちゃんは起きていた。

 

 

「お泊りはできないけど、明日からお母さんが仕事の間はクロノが遊んでくれるよ」

 

「ほんと!」

 

「えっ・・・まあ・・・そうなるかな」

 

「わ~~~~~い!」

 

 

新しい友達が出来てか喜ぶなのはちゃん。

 

この無邪気で純粋な笑顔・・・それを喰われるわけにはいかない。

 

 

「あら?でもたしか遼牙君・・・旅費が無いって・・・」

 

「まあ・・・そうですけど、何とかなりますよ」

 

 

実際何とかなる、近くに山があるから雨避けする場所がある筈だ、雨さえなんとかなればどこでも寝られる。

 

 

「じゃあ・・・しばらくここで住むのはどう?」

 

「「えっ!?」」

 

「なのはのお礼もあるし、それになのはも2人に懐いてるみたい」

 

 

まさかの桃子さんから宿の提供に、心が大きく揺らぐ。

 

慣れているとは言え、やはり屋根があって布団で寝られると言うのは嬉しいと言うか魂が求めるものがある。

 

 

「おかあさん、りょうがさんとくろのくんおとまりするの?」

 

「うん」

 

「わ~~~~~い!やった~~~~!」

 

 

あの・・・まだ泊まるとは言ってないんですけど・・・働き口を貰えただけで十分だったんですが・・・。

 

しかもなのはちゃんにここまで喜ばれたら断れない・・・。

 

 

「遼牙さん・・・こうなってしまっては仕方ないですね」

 

「・・・お前、何気に泊まれて良かったとか思ってるな」

 

「・・・・・・・・・そんな事ないですよ」

 

 

今の間は何だ間は?

 

まぁ・・・まだまだ子供だし、魔戒騎士の見習いと言うわけでも無いからな、俺は平気だが・・・ここ最近ずっと野宿だったから、

クロノはそろそろキツイか・・・しょうがない。

 

 

「それでは・・・お言葉に甘えて」

 

 

ここで無理させて体壊されても面倒だし、桃子さんの申し出を受ける事にした。

 

 

「うん、じゃあお部屋は空いてる場所を使って、お布団用意しないとね」

 

「・・・・・・・・・あの、1つ気になったんですけど」

 

「何?」

 

「いえ・・・なのはちゃんから聞いたんですが、あと2人お子さんがいるのでは・・・」

 

「ええ・・・中学生の姉と兄が・・・はあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

「どっ・・・どうしました!?」

 

「あの子達になのはが見つかった事を伝えるの忘れてた!!」

 

 

桃子さんは慌てて2人のお子さんに連絡しに行った。

 

 

「困ったわ・・・2人共病院で合流する様だけど、もう時間は遅いし・・・恭也はしっかりしているとは言え、

やっぱり子供だけで帰るのは危ないわ・・・最近この辺りは物騒だって言うし」

 

「でしたら俺とクロノで迎えに行きますよ」

 

「えっ?・・・でも・・・」

 

「そのお子さん達に会っておきたいですし、桃子さんだけで行かせるのは危ないですしね」

 

「・・・・・・」

 

「おにいちゃんとおねえちゃんをおむかえにいくの?なのはもいきたい!」

 

「なのは・・・でもねえ・・・」

 

「俺は大丈夫ですよ」

 

「・・・・・・じゃあお願いするわね」

 

 

そんな訳で、俺とクロノとなのはちゃんとで、なのはちゃんのお兄さんとお姉さんを迎えに行く事になった。

 

さて・・・物騒事の1つを解消しますか・・・待たせすぎるのも悪いしな・・・。

 

 

Side・三人称

 

高町家を出た遼牙達3人は、なのはが先頭に立ち、病院までの道を案内しながら、暗くなり街灯の灯に照らされた道を歩いていく。

 

そんな3人を隠れながらつける1つの影・・・。

 

 

「『はぁ・・・はぁ・・・』」

 

 

そいつは2重3重と幾つもの重なった様な声色で息を荒らげ、3人を・・・いや、実際はなのはを狂気の目で見詰めていた。

 

実はコイツ、遼牙とクロノがなのはと出会った時から隠れて付きまとっていたのだ。

 

3人が曲がり角を曲がったのを見るとそいつは、見失わない様にかつ気付かれない様に後をつける。

 

 

「『・・・・・・!?』」

 

 

しかしその先に対象の3人は居らず、そいつは辺りを慌てて探す。

 

 

「普通の人間なら気付かれないだろうけど・・・俺からすればバレバレだぜ」

 

「『!?』」

 

 

そいつの背後に突如として現れる遼牙。

 

前を歩いていた筈なのに何故?とそいつは困惑していた。

 

 

「俺達魔戒騎士は闇に紛れ、闇に忍び、キサマ等ホラーを切り裂く者」

 

ボシュッ!

 

「『!?』」

 

 

遼牙が懐から取り出したライターから魔導火を出し、そいつに向けた。

 

するとそいつの目に文字の様な模様を浮かぶ。

 

 

『ホラー・リコーザ・・・子供を狙って喰らうホラーだ』

 

 

左手のザルバがそいつ・・・リコーザの解説をする。

 

 

「『キサマ・・・魔戒騎士か!!』」

 

「子供を待たせてるんだ・・・さっさと終わらせるぞ」

 

『うぐあああああああああああああああああああああああっ!!』

 

ドシャラ・・・!!

 

 

肉が崩れ、中から猿と悪魔を足した様な姿のリコーザが本性を現した。

 

 

『奴は俊敏な動きで襲ってくるぞ!』

 

「おう!」

 

『があああああああああああああああっ!!』

 

「ふんっ!」

 

『ごあっ!?』

 

 

リコーザは爪で遼牙に襲い掛かるが、遼牙はそれを受け流し、その流れで背中に肘打ちを当て、

怯んだすきに魔戒剣で斬りつける。

 

 

「むっ!?」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

 

遼牙は人が来る気配を感じる。

 

 

『ぐおあああああああああああああああっ!!』

 

「少し静かな場所に移るか」

 

『ぎざまあああああああああああああああああああっ!!』

 

「どおりゃあ!!」

 

ガキンッ!!

 

『ぎああああああああああああああああっ!!』

 

 

勢いよく迫るリコールを思いっきり下から突き上げる様に斬り上げると、リコールの体は空高く上がり、

遼牙もそれを負う様に高く飛び上がる。

 

その直後、さっきまで遼牙が戦っていた場所を一組のカップルが通った。

 

 

『がああああああああああああっ!!』

 

バシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!

 

 

宙を舞うリコールは、迫って来る遼牙に向け全身の毛を針の様に飛ばした。

 

 

「・・・・・・」

 

バシュンッ!!

 

 

遼牙は前方に剣を突き付け、その切っ先で円を描く、すると光の軌道ができ、中央が割れると眩い光が溢れた。

 

そしてその光を潜ると、大半を漆黒に覆われた狼の鎧を纏った遼牙・・・名も無き黄金騎士が現れた。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

リコールの毛針は鎧に当たった瞬間に燃え尽き塵とかし、勢いを失う事無くリコールに迫る。

 

 

斬!!

 

『ぎがああああああああああああああああああっ!!』

 

ドシュウウウウウウウウウウウウウウウンッ!!

 

 

リコールに追い付き、すれ違い様に魔戒剣で一刀両断。

 

リコールは飛び散る様に消滅した。

 

 

「なあ・・・今変な音がしなかった?」

 

「気のせいじゃない?」

 

「・・・そうだな」

 

 

先程のカップルは上空で戦う遼牙とリコールの存在に気付かぬまま通り過ぎて行った。

 

 

ガシュン!!

 

「気付かれなかったし、これで一件落着かな?」

 

『あぁ・・・辺りにホラーの気配はないし、暫くは安全だろ』

 

「さて・・・待たせるのも悪いし、早く行こう」

 

 

鎧を解除した遼牙は何事も無かったかのように、クロノとなのはが待つ場所へと向かった。

 

 

Side・なのは

 

「みてっ!くろのくん、ながれぼし!」

 

「えっ?・・・何やってんだか・・・」

 

「えっ?」

 

「あっ・・あぁ・・・何でも無いよ」

 

 

遼牙さんが忘れ物をしたって言ってお家に戻っちゃって、その間ここで待っているんだけど・・・まだかな?

 

 

「お待たせ」

 

「あっ!りょうがさ~~~ん」

 

「ごめんねなのはちゃん、待たせちゃって・・・しかも忘れていた物を実は持ってたってオチで・・・」

 

「はははっ!りょうがさんあわてんぼさん」

 

「面目ない」

 

「・・・遼牙さん・・・」

 

「何だ?」

 

 

あっクロノくんが遼牙さん連れて行っちゃった。

 

 

「遼牙さん迂闊ですよ・・・今さっきなのはに召喚の陣とホラーを切る瞬間見られましたよ・・・まあ閃光程度ですけど」

 

「なら大丈夫、流石に町中・・・それも住宅街で戦うのは色々と被害が大きくなるからな。

それに運悪く人が来たから仕方ないよ」

 

「気付かれてないですよね?」

 

「そんなへまはしない」

 

「りょうがさ~~~ん!くろのく~~~ん!はやくいこうよ~~~~!」

 

「悪い悪い、じゃあお兄ちゃんとお姉ちゃんを迎えに行こうか」

 

「うん!」

 

 

えへへ・・・新しいお兄ちゃんが出来たみたいで嬉しいな。

 

そして私はお兄ちゃんとお姉ちゃんが居る・・・お父さんが入院している病院へと向かったの。

 

 

Side・???

 

あれから・・・時空と次元を超え幾数年の時が過ぎたのだろう?

 

あの出来事が無ければ・・・この様な事にはなら無かった筈。

 

あの人は・・・あの人はどれ位の時をさまよったのだろうか?

 

だけど遂に・・・遂にこの呪いの連鎖を断ち切る・・・希望の光が!

 

光あるところに、漆黒の闇ありき。

 

古の時代より、人類は闇を恐れた。

 

しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人々は希望の光を得たのだ。

 

 




次回予告

その力は何の為に身に付けたのか?

振るう腕は何の為に鍛えたのか?

誤った力の使い方は他人だけでなく己をも滅ぼす。

次回『筋力』。

力に善悪は無い・・・使う者が善か悪なだけだ。


次回予告のナレーションは小林沙苗をイメージして下さい。

遼牙の鎧は流牙の鎧と同じ漆黒ですが、目の色は白で牙狼剣の紋章の部分は黒くなっている設定です。

次回予告で次回の敵はが誰か分かりますよね?
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