原点にして頂点「アルセウス様ありがとうございます。でもいつか一発殴らせてください」 作:ゴーイングマイペース
この小説を読んで私と同じように懐かしい思い出を楽しむ方たちや、今やレトロゲームとなってしまった世代に興味を持ってくださる方が増えてくれたら嬉しいです。
※更新・修正履歴
2024/12/08
①頂いた2ヶ所の誤字報告を片方だけ適用。豚バラ煮込み様、まことにありがとうございました。
2025/10/04
脱字修正。ご報告くださった不死身の機動歩兵隊様、ありがとうございました。
001 マサラタウン 9歳 01
「あの邪神、いつか必ず一発ぶん殴ってやる」
“この世界”に産まれる直前の記憶を思い出すと少年はいつだって腸が煮えくり返る。でも素直に感謝する気持ちも確かにあったりでどうにも情緒が定まらず、いつも最後には『ありがとう』と『くたばれ』の気持ちを込めたメガトンパンチをあの邪神に叩き込もう、という結論に至る。
不穏なことを考える少年からは当然というべきか怪しい笑みと共に不穏な気配が周囲へと放たれているが、周囲にいるたくさんの“家族”は「またやってるよ」とまるで気にしない。いつものことだからだ。
そんな彼らが今いる場所は、何やら色とりどりの木の実が生っている果樹がそれぞれ規則正しく等間隔で幾本も植えられた農園の中ほどである。
その敷地は地平線まで続くとは言えずとも中々に広大であり、植えられている果樹の数はその広さに比すように数え切れない程である。
そしてこの巨大農園で今まさに収穫その他の仕事をこなしている彼らの多くは人間……ではない。
紫の体色をした怪獣のような生物や、スラッとした青いクールな風貌に嘴を備え二足歩行をする鳥、人型に近くとも腕を四つ持つ巨躯であったりと様々だが、彼らはみんな仲良く協力して木の実を収穫し、傍らに籠に入れていた。
一見不思議な光景だが、その風景には自然と和やかな気持ちになる、優しくのどかな雰囲気があった。
「レッドーっ! そっちの“オレンの実”と“モモンの実”をカイリキーちゃん達と一緒に収納組のところに持ってってーっ!」
「わかったーっ! あ、フユ母さん達、昼飯はーっ!?」
「ここの“カゴの実”の収穫が終わったら私とフーディンちゃんも行くーっ! ハルお姉ちゃんにそう伝えといてーっ!」
「はーいっ!」
少年の母親と思しき女性が、少々遠方から少年へと大声で頼みごとをする。その傍らでは狐の様な容貌の生物が収穫した木の実それぞれへ細かく視線を走らせ出来を確認しながら、素早く複数のカゴへ仕分けをしつつ入れていっている。周囲には他にもピエロの様な見た目の生物や、白い襟巻のような毛を首に生やした黄色い生物達もいて、同じ作業を行っていた。
その作業の際、なんと手を使わないどころか一切触れずに木の実を動かすという普通なら驚愕する筈の方法をとっているのだが、誰も気に留めない。先ほどの多種多様の生物たちの労働風景も含めて、ここでは日常の光景なのである。
それに少年も当然のように反応を示さず女性へと大声で返答し、周囲の生物たちへと声をかける。
「行こうかニドキング、ゴルダック、カイリキー。今日も母さんの美味い昼飯を腹いっぱい食って午後もバリバリ働こうな!」
名前を呼ばれた生物たちは少年に対し人好きのする気持ちの良い笑みを向ける。その笑みに少年もニッカリと人懐こい笑みを笑みを返した。
少年と彼等はそれぞれ余りにも違う姿をしているが、そんなことを理由に距離を取っていたり壁を感じさせたりする様子はまるで見られない。当然である。彼らは“家族”なのだから。
少年達は青や桃色の木の実が満載されている籠を持ち上げ、遠目に見える巨大な倉庫へと歩き出していく。
彼らとじゃれ合いながら歩を進める内にすっかりと機嫌を直した少年は、ふと空を見上げて呟いた。
「もうすぐで、十年か」
少年の名は“レッド”。
不思議な生き物達が暮らす世界――“ポケットモンスターの世界”にその名前と共に幾多の宿命を背負って生まれた、転生者と呼ばれる存在である。
――――――――――――――――――――――――
○月×日 9歳 マサラタウン自宅
『アルセウスとは邪神の名である』
普段から良くしてもらっているユキナリのじっちゃんから9歳の誕生日プレゼントとして日記帳を貰った。
「今の内からレポートを書くことに慣れておけば、旅に出た後に楽じゃぞ」とのことだったが、別に旅に出たとしてレポートを書く義務なんて無いハズなのだけれども。
「まあそこはポケモン博士という生業からくる職業病なんだろうな」と解釈することにしてありがたく受け取り、拙い文章力ながら今日から日記を書き始めることにした。ちなみに同じように日記帳をプレゼントされたじっちゃんの実の孫であるグリーンは「こんなのつまんねー」と早々に投げ出したらしい。お労しやオーキド上。
さて、最初の書き出しは……うん、やっぱりこれだな。
俺の名前はレッド。転生者である。……別に頭がおかしくなったわけじゃない。俺には、所謂“前世の記憶”というものがあるのだ。
転生という経験をするにあたり、そう大した経緯があったわけではない。というか別に前世で死ぬような目にあった記憶はまったくないのだが、気づいたら何やら真っ暗な空間にいて、目の前に“アルセウス”と名乗るナニカがいたのだ。
そうして一方的に幾つか“使命”とやらを言い渡された後、アルセウスフォンというまんまスマホなアイテムを渡されたと思えば、いつのまにか赤ん坊としてこの“ポケットモンスターの世界”に生まれていたのである。
ちなみにその“使命”とやらをこなす為には、ポケモン世界に幾多有る地方の内、以下の9つの地方を旅しなければいけないらしい。
カントー
ジョウト
ホウエン
シンオウ
イッシュ
カロス
アローラ
ガラル
パルデア
他にもオーレ、フィオレ、アルミア、オブリビアとか各種様々な地方があるらしいが、アルセウスから「時期が来たら向かうように」と言い渡された地方は上記の9つだけである。
さて、ここで1つ、この“使命”とやらを俺がこなすうえで問題がある。というか大問題である。それは一体何かと言うとだ。
俺のポケモンゲームプレイ経験は前世で言うところの“第4世代”。つまり
チックショウあの邪神絶対人選間違えてるだろぜってー許さねえでもポケモン情報はなんとなく追ってたからポケモン世界にやって来れたことには感謝してますありがとうございましたいつかお礼の言葉と一緒にブン殴ってやるから首洗って待ってろよクソッタレ!
(以下次ページまで見るに堪えない罵詈雑言が句読点無しの汚い字で延々と書き連ねられている為カット)
○月□日 9歳 マサラタウン自宅 きのみ農園
『俺の家族』
家業の手伝いも一段落して自由時間である午後になった為、ナツ母さんのケンタロスを借りてその背に寝転がりながら我が家の庭、もといきのみ農園をのんびり散歩中。
ふと思い立ったので、昨日荒ぶるテンションのままバッグの『たいせつなものポケット』に突っ込んだ日記帳を取り出してみた。
ここマサラタウンはアニポケのような、なんとも
人口も少なく当然戸数も大したことが無い。一口にお隣さんと言っても歩いて5分以上はかかるし、場所によってはそれ以上の間隔を空ける家が珍しくないのだ。それら一軒一軒の敷地はみんなとても広く、人もポケモンも広大なマサラの大地でそれはもうのんびりと暮らしている。
我が家ではこの広大な敷地を活かし、巨大きのみ農園を営んでいる。従業員として主にたくさんのポケモンを頼り、家族みんなで力を合わせて経営している。
そう、この世界に生まれてすぐ驚いたことの1つとして、一夫多妻制があげられる。
別にこれはこのド田舎マサラタウンに限った話ではなく、カントー地方、ひいては世界全体で当たり前に見られる家族風景なのである。
ポケモンという生物が存在するという点から俺の前世と色々なところが違って当たり前なのだが、その1つとして『ポケモントレーナーの死亡率』というものがあり、その対策として人口を一定数常に確保する為に古くから強い男による一夫多妻が根付いているらしい。
そして我が父はその強い男、というか前世のネットでスラングとして定着していた所謂『スーパーマサラ人』そのものの超人であり、前世の大ヒット作品「ドラゴ○ボール」や「H○H」を思い出すようなスーパーアクションを行い、良く我が家のポケモン達と修行と称してバトルをしている。
……あ、親父のかめ○め波(俺命名)が空を奔ってる……。
微妙に話が逸れてしまった。まあ日記だし誰に見せるわけでもないから良いか。
とにかく今世の俺には人間ポケモン含めたくさんの家族が存在しており、俺は長男、4人姉妹の長女であるハル母さんの息子として、一番初めに生を受けたお兄ちゃんだ。長男だぞ、凄いんだぞ。
ちなみに父さんは武道家、母4人姉妹の長女にして俺の生みのハル母さんは主婦兼ポケモンブリーダー、次女であるナツ母さんはリーグ出場経験有りの現トレーナーズスクール教師、三女のアキ母さんはきのみ農園の園長、四女のフユ母さんはシルフカンパニー勤めのキャリアウーマンである。
みんな厳しくも優しく俺達子供の面倒をしっかり見てくれる良い父さん母さんだ。
俺が将来どのような家族を持つかはわからない、というか家族が出来るかもまだわからないが、出来れば母さん達のように素敵な女性と出会ってみたいものである。
おっと、家の敷地の外からグリーンとリーフ、ブルーが呼んでる。ここまでにしておこう。
○月△日 マサラタウン グリーン・リーフの家
『この世界のポケモンバトル』
先ほどまでいつもの幼馴染4人組でポケモンリーグ中継を見ていたのだが、俺以外の3人が試合観戦の興奮で疲れて寝てしまったので、起きるまでの暇つぶしも兼ねて日記を書くことにする。
この世界の“ポケモンバトル”は、前世のゲームとは色々な点で大きく異なる。
一番大きな差異は、『“ポケットモンスター”とはゲームの中のプログラムではなく実際に生きて俺たちと共にこの世界に生きる生物』であるという点だ。
これが前世のポケモン知識を多少なりとも持つ俺としては厄介であった点だった。
何が厄介かって、これまた当然のことだがポケモン達は前世のゲームにおけるバトルのようにトレーナーから指示をされるまで何もせず突っ立ってるわけなどないということである。何故なら、彼等彼女等は生きているのだから。
ターン制? 何それとばかりにバトルコートを縦横無尽に駆け回り、トレーナーの指示など待つことなく彼等は激しい技の応酬を繰り広げる。より高みのステージであればあるほど、生半可な知識と度胸しかないトレーナーでは指示どころか、たった一言さえ割り込ませることすら許されない。
そう、ポケモンバトルとは己の誇りと力を賭けた、まさしく戦争なのである。
他にも大きく異なる点と言ったら“わざ”の仕様と、それに伴うポケモンバトル公式戦ルールである。
具体的には下記の3点だ。
・技は4つまでしか習得できないわけではなく、いくつでも習得が可能
・公式戦でトレーナーがポケモンに指示できる技は1試合につき4つまで。
・ポケモン自身の判断であれば技使用数の制限は無し
これらのルールによりこの世界のポケモントレーナー達には、ポケモンにより多くの技や戦術を与える為の知識、バトル中にポケモンの邪魔にならないよう好機を見極めてここぞというときに指示を出す戦術眼、そして何より多種多様な技を繰り出すポケモン達の一挙手一投足に追従するための度胸。これらを求められる。
俺は所謂“ポケモン廃人”どころか“エンジョイ勢”とすら言えないポケモンの一ファンだったが、例え廃人がこの世界に来たとしても前世のように活躍することは難しいだろう。それだけこの世界のポケモンバトルは前世のゲームとは違うのである。
敷居が高い競技だと思うかもしれないが、だからこそこの世界ではポケモンバトルの人気が非常に高く、故に第一線で活躍するようなトレーナー達には前世のオ○タニさんやフ○イさんのように熱狂的なファンがいる。かく言う俺を含めた幼馴染組もそのファンにあたる。
見ているだけで心が熱く燃え上がるような名勝負の数々が見れることは、俺がアルセウスに対して色々複雑ながらも感謝もしている理由の1つなのだ。
俺も例の使命を抜きにしても、いつかあのポケモンリーグの華々しき舞台に立ちたいものである。
○月◇日 マサラタウン 自室
『穏やかな心を持ちながらも激しい怒りによって目覚めた伝説のマサラ人』
以前にも書いたが、今世における俺の父は所謂スーパーマサラ人である。どのような性能のナマモノであるかは「オラワクワクしてきたぞ!」な人を参考にしていただければだいたい合ってる。俺の父さん人間じゃねえ!
そんな父だが、昨日俺が夕食の席でグリーンの家で観戦したポケモンリーグ中継の興奮そのままに「俺も将来は凄いポケモントレーナーになる!」と言ったら
「そうか、じゃ、俺と一緒に明日から修行するぞ」
と言い出した。
えっ、いや無理無理無理。あんな超人バトルできないと高速で首を横に振ったが、「お前なら大丈夫、なんたって俺の子だからな」と譲らない。
どうも父として夢を語る息子に対し親心を発揮してくれているらしく、元一線級の競技トレーナーであったナツ母さんからも「トレーナーとして鍛えるのは良いことだよ」と後押しされてしまい断れる空気ではなくなってしまい、明日から三日サイクルで修行、休息、また修行という日々を旅立ちの日まで送ることになってしまった。
いやナツお母さま、テレビ中継で見る強豪トレーナー達でもお父様みたいなビックリ超人は見たことないんですけどそれは。
張りきった様子の父が「まずはかめは○波の習得を目指すところからだな」とウキウキ明日の準備を始める横で、俺もせっかくの父の厚意に応えるべく腹をくくることにした。
よっしゃ何でも来いや! か○はめ波だろうが螺○丸だろうが月牙天○だろうが習得してやらぁー!
※ここまで読んでくださった方たちへの注意点
・基本的にレッド君の家族はみんなお助けキャラです。本筋には絡ませるつもりはありません。
・スーパーマサラ人要素ですが、基本的にストーリーを円滑に進める為の舞台装置です。たまにレッド君が無双することもあるかもしれませんが、ストーリーの主軸に据える要素ではありません。
・作者はインタビュー(という名の原作ゲームプレイ)をしながら書いています。なので、投稿済みの話も後から改稿することがあるかもしれません。改稿箇所は都度アナウンスをさせていただきます。
・盛大に風呂敷を広げていますが、上手く畳めるとはまったく考えておりません。ただ書きたいように書いたらこんなのが出来てました。
以上の点にご注意の上、次話にお進みください。
さて、ファイアレッドの続きをやってこよ。