原点にして頂点「アルセウス様ありがとうございます。でもいつか一発殴らせてください」 作:ゴーイングマイペース
皆さんのご感想がいつもいつでも作者のやる気となっています。
設定まとめながら思いついた間話集その②
……と、言いつつほとんどシロナさんのお話。
しゃあないんや、書いてて楽しいんや。
※
サブタイトルが間違っていたので修正。
いかんいかん、横着コピペがバレちゃうぜ。気を付けないと。
2024/11/03
『010 マサラタウン&トキワシティ 9歳 間話集01』に載せた相棒ガブリアスの実数値を修正(強化)しました。
また、それに伴い修正した種族値を今回の後書きに掲載いたしました。
両方にご興味を持っていただけた方は、二度手間で申し訳ございませんがそれぞれご確認の程よろしくお願い申し上げます。
2024/11/06
脱字修正。ご報告くださった汐音様、ありがとうございます。とても助かりました。
「チャンピン」→「チャンピオン」。
チャンピンとはなんぞや。
□月□日 2ページ目 9歳 マサラタウン オーキド研究所
『このポケモンワールド、思っていた以上に魔境だったらしい。~あの邪神絶対許さねえ~』
突如現れたシンオウチャンピオンからのお誘いに対し、俺は物凄くしどろもどろとなりながらも何とか「はい」と返事をすることが出来た。
シロナさんはそんな俺の様子が可笑しいのか少し笑われてしまったが、これはもうしょうがない。俺はチャンピオンがいきなり目の前に現れて堂々としていられるほど肝が据わっているわけではないのだ。
しかしお話をするにしても、まずピカチュウを回復させなければいけないので研究所の
中に入ると、いつのまにか何人かお客が到着していたらしく、その中にあのナナカマド博士がいた。
どうやらシロナさんは彼と一緒にやって来たようである。そして俺達が入ってきたタイミングで向こうも気付いてくれたようで、ナナカマド博士と話していたじっちゃんが俺に軽く紹介をしてくれた。
「先輩、この子が先ほど話していたレッドですよ」
「ほう、君が……ナナカマドだ。君のことはさっきオーキドから色々と聞かせてもらったよ」
こちらも軽く自己紹介をし、そしてお互いにやることがあるのですぐに切り上げて俺とシロナさんは回復装置の元へ。
しかしじっちゃん、ナナカマド博士に俺の話をしたのか。いったい何を話したのやら。
じっちゃんが話した内容については気になるものの、まあ後で聞けば良いやとピカチュウが入ったボールを回復装置にかける。
幸い、ガブリアスは相当きれいに手加減をしてくれていたようでピカチュウはさほど時間をかけることなく元気になってくれた。
「すぐに元気になってくれてよかったわ。ガブリアス、気持ちはなんとなく分かるけど、だからってもうあんなことしちゃダメよ」
「ガブゥ……」
「ピカチュウ、問題無いか?」
「ピカッチュ!」
俺の質問に元気よく手を挙げて応えるピカチュウ。
そしてどうも自分の状態よりも自分をあっけなく負かしたガブリアスのことが気になるのか、すぐにガブリアスへと視線を向ける。特に敵意は感じないすっきりしたものだが、熱量は凄まじい。
ガブリアスもすぐに気付いたらしいが、どうしたものかと主人であるシロナさんに視線を向ける。
「ふふっ、元気な子ね。良いわガブリアス、もう一度庭に戻ってピカチュウの相手をしてあげなさい。でも、また回復装置のお世話になるような目にあわせちゃダメよ?」
「ガブ」
主人の許しを得たことで、ガブリアスは自分に挑戦的な意思を向けるピカチュウに挑発的な顔を返し、庭の方へと顎をしゃくる。
それに対しピカチュウも「望むところだ」と獰猛な笑みを返し、すぐに2匹連れ立って外に出ていった。なんだアイツ等、バトルの申し子か何かか。
2匹が出ていったことで改めて席を移し、研究員さん達からお茶とお菓子を出して貰う。
シロナさんはお茶で口を湿らせると、先ほどから浮かべ続けている微笑ましそうな表情のままに話を始めた。
すげぇ、すぐに庭から轟音が聞こえ始めたのに微塵も動じてねぇ。
「さっきの訓練もそうだけど、回復してすぐにまた私のガブリアスに挑むなんて随分熱心なのね。ジムリーダーを倒しただけで満足しない向上心をまだ旅にも出れていないのに持ち続けていられるのは、凄いことだと思うわ」
「あれ、カントーのまだトレーナーにもなってないような小僧の武勇伝をよくご存じですね」
いきなりシロナさんから出てくるとは思っていなかった話から始まり少し戸惑う。じっちゃんの話によれば、カントーの情報は早々に他地方に出回らない筈なんだけども。
「さっきこの研究所に着いた時にもピカチュウの様子がチラッと見えてね、それでオーキド博士から貴方達の事について伺ったの。末は必ず世界中に名を轟かせるポケモントレーナーになる、って仰ってたわ。凄いのね」
「いや、そんなことないです。別に俺が何の役にも立たなかったとまで言うつもりはありませんけど、それでもやっぱりアイツの才能ありきの戦法でしたから」
「……ふふ、やっぱり、似てるわね」
「え?」
突然良く分からないことを言い始めたシロナさんに対し俺はまた戸惑い、疑問をそのまま顔に出してしまう。
シロナさんはそんな俺の様子に気付くと、おかしそうにしながら話の続きをしてくれた。
「ああごめんなさい、何のことだか分からないわよね。似てるって言うのは、昔の私と貴方、そして昔の私のガブリアスと貴方のピカチュウがそれぞれ似てるな、って思ったの」
「俺達と、昔のシロナさん達が……?」
「……他のポケモン達と比べて明らかに隔絶した強さを持つ、才気溢れたパートナーの存在。そしてそんなパートナーに対して、心のどこかで『自分の実力はこの子ありきなんじゃないか』って考えてしまう。心当たり、無い?」
「あー……」
正直言ってめちゃくちゃあった。というか『心のどこか』どころか普通に心の真ん中に毎日浮かんできていることだった。
だってアイツ、改めて考えるまでも無く強過ぎるし。
「そう仰るってことは、やっぱりシロナさんも?」
「そうね。とは言っても旅に出たらすぐに解消した程度の悩みだったけど。だから君もそんなに難しく考える必要ないわ。私達みたいに優秀な相棒がいるトレーナー皆がぶつかって当然の壁だけど、他のポケモン達を育て始めてみればすぐにはっきりすることなんだから」
なるほど、確かにその通りだ。旅に出て他のポケモンを立派に育て上げられればトレーナーとして有能、出来なければ天才のパートナー頼りの無能。滅茶苦茶シビアだが分かり易い基準である。
「って、ん?
「勿論。近場の地方で有名なポケモンだと、カントー・ジョウト統合リーグの、最近チャンピオンが引退して四天王の大将とチャンピオンを兼任することになったドラゴン使い、ワタルのカイリュー。ホウエンリーグのチャンピオンにしてデボンコーポレーション御曹司、はがね使いダイゴのメタグロス。ホウエン地方ルネシティのジムリーダーでみず使いミクリの……ミロカロス。このあたりかしら」
わーお。つまり、つまりだ。相棒カイリューに相棒メタグロスに相棒ミロカロスか。やべーぞこの世界、思ってた以上に魔境なんですけど。
……その内相棒伝説ポケモンとか出てきたりしないだろうな。元々種族値700越えのポケモンが相棒ポケモン化してるとか、そんな感じのバケモンみたいなヤツが。
…………もしもそんなのが出てきたら完全にあの邪神の難易度調整ミスだよ。ふふ、怖い……。
「君もあのピカチュウをパートナーとしてるから分かると思うけど、彼等は皆、生まれながらして他のポケモンとは比べ物にならない力を持っているわ。そして成長すればさらにその差は広がっていく……そして増長するのよ。『私は無敵のポケモンだ』って風にね」
「さっきのピカチュウみたいに、ですか」
「そうね。私も貴方ぐらいの歳の頃、ガブリアスがまだフカマルだった頃に手を焼かされてた時期が少しだけあったわ。とは言っても、さっきのピカチュウみたいに割とすぐ伸びてた鼻を折られたけどね。まだ10年も経ってないけど、懐かしいわね……」
「……えっと、今、お幾つで?」
外見で分かっていたことだが、やはりこのシロナさんはかなり若いようだ。見た感じ大人と子供の中間ぐらいだが、実際のところはどうなのだろうか。
「今年で17歳よ。チャンピオンになったのは10歳の時。あと、私だから良いけどあんまりレディに歳の話をしちゃダメよ?」
思ってたより遥かに若かった。この世界でDPPtのストーリーに相当する事態がいつ発生するのかは知らないが、相棒ポケモンの存在といい、どうやらこの世界は俺が知っている原作ゲームの世界とは色々な所が違うらしい。そしてもしかしたら、まだまだ異なる部分があるのかもしれない。
……思いがけず得たとはいえせっかくの機会だ。知っておかないと不味いことが本当にまだまだ隠れてるかもしれないし、思う存分質問させてもらおう。
その後も話は弾み、俺は日が暮れるまでシロナさんからたくさん有用な話を聞くことが出来た。
そしてシロナさんもこの時間の間に俺のことを相棒についてのシンパシー以上に気に入ってくれたらしく、マサラタウンに滞在中、色々と指導をしてもらえることになった。やったぜ。
□月〇〇日 9歳 マサラタウン オーキド研究所
『Vが当たり前のポケモンストーリー ~あの邪神絶対許さねえ part2~』
翌日。さっそくシロナさんの指導タイムである。そう長く滞在する訳ではないらしいので、少しも無駄に出来ない。
場所は昨日に引き続きオーキド研究所。
講師役はシロナさん、そして生徒に俺。あと話を聞いて集まったグリーン、ブルー、リーフのいつもの幼馴染組である。
グリーンは「これ以上お前に水をあけられてたまるかよ」と前のめり気味。女子2人もチャンピオンからの直々の指導ということで話を知るや真っ先に飛び付いてきた。
ほとんど飛び入りのようなものだったが、シロナさんはイヤな表情1つすることなく引き受けてくれた。女神かな?
「さて。こうして集まってもらったわけだけど、私もあまり長くマサラタウンに滞在できるわけじゃないから。君たちがいずれ旅に出て各々時間をかけて確立していくだろう、トレーナーとしての得意戦術や普段の育成なんかの諸々は置いておいて、ただ旅をしているだけでは中々知れない豆知識何かを伝授するわね」
「えー、どっちかっつーと俺、バトルとか見てほしいんだけどな」
「大丈夫よグリーン君、レッド君が言ってたわ。『あの3人はみんな強いけど、特にグリーンはそんじょそこらのトレーナーじゃ太刀打ちできないぐらいの実力をもう持ってる』って」
「……そこら辺のヤツに勝てても、お前に勝てなきゃ意味ねーんだよ」
「あー、グリーン照れてるー」
「……顔、真っ赤」
「やかましいぞテメー等!」
開始早々騒がしいが大丈夫かコイツ等。
シロナさんは微笑ましそうに見ていたが、流石にこのままだと話が進まないと思ったのか手をパンパンと叩いて場の静粛を促し、自分に注目を集めると改めて講義を始めた。
「それじゃ、まず1つ目は『ポケモントレーナーとポケモンブリーダー』についてね」
「えーっとブリーダーっていうと、ポケモン育成の専門家の人達のことですか?」
「それで合ってるわブルーちゃん。育て屋なんかを経営して、ポケモンの育成を専業でやっている人達のことね」
「えーっ、豆知識にしたってなんで育て屋の話なんかすんだよ。ポケモンの育成なんて全部自分でやりゃいいじゃねーか」
「ふふ、確かに最初の内はそれでも問題ないわ。けどね、トレーナーとして上を目指せば目指すほど、彼等ポケモンブリーダー、その中でも特に優秀なブリーダーとの関係は、自分のポケモンをより強く育成する為には切っても切り離せないものになるのよ」
詳しく話を聞いてみると、どうもシロナさんの言う『優秀なブリーダーと関係を持つことでポケモンがより強くなる』というのは、原作ゲームの『すごいとっくん』を指しているらしかった。
そう、ゲームにおいて『三値』と呼ばれるポケモンの重要なステータスの1つである『個体値』のいずれか、あるいは全てを
……え、この世界、割と誰でも自分のポケモンの個体値をVにしてるのん? 嘘でしょ?
「誰でもってことは無いわ。そもそもより強く上を目指す意思が無いと必要ないものだし、そこまでポケモンの能力を引き上げることを可能とする優秀なブリーダーだって滅多に見つからないしね。一地方に2、3人いたら多い方よ」
「……つまり、上のステージにいるトレーナー達は皆、トレーナーだけじゃ出来ない訓練をブリーダーにしてもらって、ポケモンを強くしてもらってるってこと、ですか?」
「その通りよリーフちゃん。私達チャンピオンや四天王、ジムリーダー、他にもエリートトレーナーとして特に世間に名を馳せているトレーナー達の主力ポケモンは皆それぞれ、そのパワー、耐久、スピードが限界まで高められている。更にエースならそれら全てが限界まで高まってると考えた方が良いわ。とはいえ凄腕ブリーダーの腕を持ってしても、流石に私のガブリアスやレッド君のピカチュウが持ってるような生まれながらのセンスまでは身に着けさせられないんだけどね」
つまりあれですか。この前戦ったニドキングも、もしかしたらDの個体値がVになってた可能性があると。
うわーい、思ってた以上に薄氷の上の勝利だったんだねー。もし努力値まで意識的に振られてたら完全アウトだったねー。
……アルセウス出てこい一発殴らせろおおおおおおおおおおおおおお!
その後、シロナさんは実際に「もちろん、私のポケモン達もみんな鍛えてもらってあるわよ」と、ガブリアス以外にミカルゲ、ロズレイド、トリトドン、ルカリオ、トゲキッスを出し、その力を披露してくれた。
だがその時、「あれ、シロナさん、もう1つ腰にボールが付いてるけどその子は見せてくれないんですか?」とブルーが質問をした。
見ると確かにボールが付いている。だけどシロナさんは困った顔をして「この子は、ちょっとね」と言ってそのポケモンを出してくれなかった。
シロナさんのポケモンでまだ見ていないと言えば、もしやミロカロスだろうか。どうして見せてくれないのだろう。
□月〇×日 9歳 マサラタウン自宅
『コイツ逞しいな』
シロナさんの講義を受け始めてから数日、いくつか明らかになった驚愕の事実に先行きが猛烈に不安になったものの非常に有益だったことには違いないので、お礼をすべく我が家の夕食に招待した。
母さん達は「こんな可愛いチャンピオンが遊びに来てくれるなんて」と大喜び。弟妹達も同様にはしゃいでシロナさんやシンオウの珍しいポケモンにじゃれついていた。
しかし不思議なことに、シロナさんはいざ夕食の時間になっても講義の時に見せてくれる6匹しか出さない。ポケモン用の食事は7匹分を頼んできたのにである。
流石に不自然に思ったので、夕食後にシロナさんにこっそり聞いてみると、「……君になら大丈夫かしらね」と言って、シロナさんが今日泊まる我が家の一室に俺を招き入れ事情を説明してくれた。
「出てきてちょうだい」
「バース!」
「ヒンバスですか。……この子がどうしたんですか? 見たところ、特に健康の問題とかも無さそうに見えますけど何か病気とか?」
「ふふ、やっぱり気にしないでくれたわね。――違うわ、あのね……」
そして教えてくれたところによると、彼女、ヒンバスはガブリアスと同様にシロナさんの手持ちでは最古参の一匹。しかし、ヒンバスはその見た目のせいで、昔からよく心無い人達から酷いことを言われたようだ。
尤も、本人は相当に図太い性格をしているらしく「ご主人様や仲間達が大事にしてくれるから、他の奴等の言うことなんか知らない」とまるで平気な女傑であるようだが、トレーナーであるシロナさんは幼いころから大事にしてきた彼女が誹謗中傷に晒されることが耐えがたいらしく、普段は彼女をボールから出さずに人目から庇いながら特別枠の7匹目として連れ歩いているらしい。
「でも、それなら進化させれば良いんじゃないですか? ミクリさんのミロカロスのことをこの前話していましたし、ヒンバスが進化することを知らないなんてことはないんでしょう?」
「私もそうしてあげたいんだけどね……。でもね、出来ないのよ」
「えっと、それはどうして?」
「……ヒンバスの進化に必要な『きれいなウロコ』がね、どうしても手に入らないのよ」
更に詳しく話を聞いてみると、シロナさんも昔から方々手を尽くして「きれいなウロコ」を手に入れようとしてはいるらしいのだが、タイミングが悪いのか、それとも天の見えざる手が2人を邪魔でもしているのか。旅立ちから7年経った今になっても、どうしても「きれいなウロコ」が手に入らないらしい。
このマサラタウンにも、ポケモン研究の権威として著名なじっちゃんを頼る為に、今回、ナナカマド博士と共にやって来たとか。
ヒンバスを撫でながら、自分の力不足を非常に悔しそうに語り続けるシロナさん。そりゃまあ、ヒンバスの現状を解決する為の手段がハッキリ見えてるのに、その為の方法が取れないんじゃ悔しくてしょうがないか。
そして、その時の俺は特に何も気負わないままに。
本当に、何でもないことだと思って“それ”を口に出した。
「それってどうしても『きれいなウロコ』を使った進化じゃなきゃダメなんですか? 話を聞いた感じだと、別に【うつくしさ】のコンディションをMAXにして進化させるのでも何も問題無いように聞こえるんですけど」
「……………………………………え?」
□月〇△日 9歳 マサラタウン自宅
『あれ、ボクなにかやっちゃいました?』
翌日、オーキド研究所にて。
我が家特製の「あおいポロック」をたらふく食べて進化したミロカロス、仰天するじっちゃん、大興奮し始めたナナカマド博士、そして大粒の涙を流してミロカロスに抱き着くシロナさんと中々に混沌とした状況の中で。
大喜びして自分に抱き着くご主人様の様子に、ミロカロスは困ったような、でも嬉しいような複雑な表情をその美しくなった顔に浮かべながら、それでも大人しくご主人様と喜びを分かち合っていた。
□月〇□日 9歳 マサラタウン オーキド研究所
『絶対に難易度調整ミスってるだろ! ~あの邪神絶対許さねえ part3~』
積年の悩みから解放されたらしいシロナさんは、それから後の数日間、「恩を返させて」とそれまで以上の熱量を持って俺達を指導し、トレーナーとして貴重な教えを沢山伝授してくれた。
お返しとして俺からはシロナさんの手持ち達や、今シロナさんが気になっているポケモンの種族値をそれとなく教えて育成方針の参考にしてもらったり、教えても問題なさそうな技について教えたりとお互いに充実した日々を過ごせたんじゃないかと思う。
他にも色々、特に努力値についても話したかったが、流石にどう説明した物か考えつかなかったのでシロナさんには申し訳ないが黙っておいた。こういう時、子供というだけで言葉に説得力を載せられないのは不便である。
いつか俺がもっと実績を手にして言葉に説得力を持たせることが出来る日がやってきたら、その時に改めて、今してもらってる指導のお礼として話をしよう。
そんな風に、シロナさんの元でグリーン達と切磋琢磨していたある日の事。
ガブリアスがピカチュウとのスパーリング後に見せた“ある技”に、俺は酷く驚かされることになった。
「マサラにいられるのもあと少しだしね。ガブリアス、せっかくだから1つ見せてあげなさい」
「――ガァァァァヴァアアアアアアアアアアアアアアッ!」
シロナさんの指示を受けてガブリアスが俺達に見せてくれた技は、一見するとちょっとカッコ良くなっただけの“ドラゴンクロー”にしか見えない。腕に纏った剣の形状をした紫色のオーラはカッコ良いし、一撃で大岩を粉々に粉砕するパワーも確かに凄まじいが、言ってしまえばただそれだけだ。別に特別な技には見えなかった。
俺と同じ感想を持ったのだろうグリーンが、思わずといった様子で「で、これがどうしたんだよ」とシロナさんに聞くが、シロナさんは「まあ見てて――ガブリアス!」と再度ガブリアスに指示。
それに頷きを返し、再度ガブリアスが裂昂の気合と共に別の大岩へと繰り出した“ドラゴンクロー”は、なんと……岩どころか、その下の地面をも深く真っ二つに断ち割ってみせた。
「は?」
「え?」
「……?」
「……チュ?」
その様を見ていた俺達は、目の前に現れた想像を絶する破壊の痕に最早言葉も無い。
「――見ての通り、この技“ドラゴニックブレイド”は、攻撃をしつつも同時に自分の攻撃力を高めてくれるの。私とガブリアスが前のシンオウチャンピオンに勝つ為に編み出した技よ」
そんな俺たちの様子を確認して満足そうにしたシロナさんは、改めて今の技の解説を始めた。
俺はそれを半ば呆然としながら聞いていたが、ふと胸元に仕舞っておいたアルセウスフォンから音が鳴っているのに気づいたので、手が震えて少しもたついたものの何とか取り出し、画面に表示された内容を確認した。
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ドラゴニックブレイド
【詳細】
・タイプ:ドラゴン
・分類:物理
・威力:80(タイプ一致補正により、実質威力120)
・命中率:100
・PP:24
・追加効果①:100%の確率で自分の【攻撃】ランクを2段階上げる(【攻撃】実数値 ×2)
・※①:この技の追加効果は1回場に出るごとにつき1回しか発動しない
【説明文】
腕に ドラゴンの オーラで 作った剣を 纏って 相手を 叩き切る。
攻撃の後 自分の 攻撃を ぐーんと 上げる。
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――つっっっっっっっっっよいわ! 強過ぎるわ!!!
なんだ“ドラゴンクロー”+“つるぎのまい”か!? アホかいくらなんでも限度ってもんがあるだろ!!! そりゃあ“じしん”を少し高く跳べば避けられたりするから「現実だから当たり前だけどアニポケ要素強いよなぁ」とか思ってたけどさぁ!!!!!
え、なに、これから先シロナさんとバトルする時が来たら、積む時に積み技特有の隙を一切見せないどころか同時にドラゴン物理技撃ってくるこのガブリアスを倒すパーティを組んで挑まなきゃいけないの!?
「ふふ、どうしたのレッド君。怖くなっちゃったかしら?」
「……そりゃあ、こんな技見せられたら誰だって怖くなりますよ。しょうがないじゃないですか」
強く震え始めた体に何とか言う事を聞かせながらシロナさんの質問に答える。そしてその間も、余りの衝撃にフル回転し始めた俺の脳味噌は延々と高速思考を続けていく。
ヤバイヤバイヤバイ。この世界、深く知る度にイカれた要素がポンポン出てくるですけど。アレか、相棒ポケモンとかみんなこの調子なのかもしかして。
……俺に課された使命って、もしかして難易度超絶ルナティックなのでは?????
いや、そうだ、ここに頼りになる人がいるじゃないか。上等だよ、この人がマサラにいる間盗めるモノは可能な限り、いや全部盗んでやる。こうなりゃ一秒だって無駄にする時間はない。やれるだけやるしかないのだ。
「……そっか。でも、それだけで終わるつもりはないんでしょう?」
「どうですかね。あ、それでシロナさん、今のって――」
俺はこの最初考えていた以上に貴重な時間をもっと有効活用すべく、シロナさんに質問を浴びせまくるのだった。
「なーにが怖いだよレッドのやつ。アレがそんな殊勝な事考えてるヤツの面なわけねーだろ」
「あの震えって、アレでしょ、アレ。武者震いってヤツ」
「……レッド、楽しそう」
「シロナお姉さまも楽しそうね、まるでホントの姉弟みたい。ナナミお姉ちゃんがコンテストで出かけてて良かったわねー」
「……こえーこと言うんじゃねーよ」
「……案外、仲良くなるかもよ?」
□月☆日 9歳 オーキド研究所
『別れ ~ありがとう、またいつか~』
様々な嵐を巻き起こしていったシロナさん、あとナナカマド博士達のご一行も、とうとう帰る日がやってきた。
「シロナお姉さま、本当にありがとうございました!」
「……ありがとう、ございました」
「ま、チャンピオンだけあって割とためになることを教えてもらったしな。礼を言っとくぜ」
「これ、グリーン!」
しんみりした場面だというのにいきなりじっちゃんに怒られ始めたグリーンを見て、皆で苦笑いを交わし合う。
それから少しの間言葉を交わすも、ずっとそうしていられる筈も無く。
「レッド君、グリーン君、ブルーちゃん、リーフちゃん。次に会う時、皆がそれぞれ立派なポケモントレーナーになっているようずっと応援してるわ。頑張ってね!」
俺達にたくさん大事なことを教えてくれた先生は、最後にそう言葉を残し、いつまでも名残惜しそうにしながらシンオウ地方に帰っていった。
彼女の期待を無下にしないよう、旅立ちの日までの数ヶ月間、これまで以上に気合を入れて頑張っていこう。
□月〇△日 9歳 マサラタウン自宅
『夢はでっかく』
シロナさんからの指導の日々から大分経ち、秋、冬と過ぎていって。
冬の寒さもほぼ落ち着き、ポッポ達が元気に鳴きながら空を飛ぶ光景がすっかりと戻ってきた春。
明日はとうとう、俺達4人の旅立ちの日だ。
「ピカチュウ、お前の方の準備はどうだ?」
「チュ!」
我が相棒もすっかり準備万端のようである。とはいってもコイツの準備とは母さんに特別に用意してもらったピカチュウ専用リュック(ポケモン世界特有の謎技術で、ある程度の大きさまでのアイテムならいくらでも入れられるリュック)に好物である「モモンのみ」を好きなだけ詰め込むことなのだが。
「別に必要になったら、どんなきのみでも実家から幾らでも送ってもらえばいいじゃないか」とは言っているのだが、やはり好きな時に食べられるという贅沢には敵わないらしい。
まあコイツにはこれからずっと一緒に頑張ってもらうわけだし、これくらいの可愛い我儘は必要経費で良いのかもしれないな。
――とうとう明日から俺とピカチュウの旅が始まる。
アルセウスからの使命という不安要素もあるけども、それでも、いったいどんな旅になるのか、今からワクワクが止まらない。
「頑張ろうな、ピカチュウ。夢はでっかくチャンピオン、いや、ポケモンマスターだ!」
「ピッピカチュウ!」
俺達は夢と希望で胸を一杯に膨らませながら、夜中まで明日の準備を続けたのだった。
?????「私が神。私がルールだ^^」
↑こんないかにもな台詞を言っているかはともかく。
シロナとレッド君を交流させつつ、シロナにこの世界の最上位層のポケモンバトルの姿についてある程度明かしてもらったりする回でした。別に全部が全部ここまで狂った世界じゃないですけどね。……たぶん。
そして頑張ってもらった彼女にはプレゼントを。作者はこれぐらいのなろう味が結構好きです。多すぎると諄くなるので、タイミングを見て程々に挟む程度ですけどね。
そして次回、とうとうマサラタウンにサヨナラバイバイです。
レッド君とピカチュウ、そして幼馴染組のカントー旅がどうなるのか。程々に気を長くして続きをお待ちください。
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2024/11/03
修正(強化)した相棒ガブリアスの種族値は下記の通りとなります。
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・合計:710(+110)
?????「美しいとまで称されるバランスを余り崩したくなかった為、相棒イーブイと同様のシンプルな強化を施させていただきました^^」