原点にして頂点「アルセウス様ありがとうございます。でもいつか一発殴らせてください」 作:ゴーイングマイペース
前回もご感想をくださった皆様、まことにありがとうございました。皆様のご感想を燃料にやる気を燃やし、なんとか書き上げることができました。
というわけで、予告通りVSタケシです。
ちなみに戦うのはレッド君だけです。リーフちゃんとブルーちゃんはバッサリカット。3人も戦わせるとテンポ悪いなんてもんじゃないし、何より2人は手持ちに“すごいとっくん”をしていないので。
敵も味方も1対1体個体値を調整するなんてやってられねえ! 2人とも早く手持ちを全匹6Vにして!(他人事)
ではレッド君VSタケシ、お楽しみになっていってください。
※更新・修正履歴
2024/11/16
誤字……とは違いましたが、良いと思ったので修正。
「レッド◓◓◓ VS タケシ◓◓×」
→「レッド◓◓◓ VS タケシ◓◓◓」
他、同様の表示も修正。
@huey様、ありがとうございました。
2024/11/25
「スキルリンク」を「いかさまダイス」に修正。
2025/09/23
①脱字修正
2025/10/06
①加筆修正
2025/12/17
①加筆修正
4月〇△日 10歳 ニビシティ ニビジム
『VSニビジム! ジムリーダータケシ、強くて硬い
ニビシティに到着し、ニビ科学博物館をみんなで見学したりして英気を養い、翌日。
いざジムに挑戦だとニビジムの門を叩き、原作ファンからしたらある意味伝説である『しまった! 10000光年は……時間じゃない! ……距離だ!』でお馴染みのジムトレーナートシカズを退けて、俺、リーフ、ブルーは無事ジムリーダータケシへの挑戦権を得た。
ちなみに、イエローはリーグに挑戦するつもりが無いので今回はずっと観客席だ。
「そこまで! 勝者、マサラタウンのブルー!」
「やった、勝ったー! よくやったわ、ゼニガメ!」
「戻れ、イワーク。よくやってくれた。……おめでとう! さあ、俺に勝った証としてポケモンリーグ公認グレーバッジを授けよう!」
そして今は、先ほどタケシに勝利したリーフに続き、ブルーがタケシに勝利したところだ。
ブルーはトレーナーゾーンまで走って自分に飛び付いて来たゼニガメをしっかり抱き留め、互いに満面の笑みを向け合い勝利の喜びを分かち合っていた。
2人とも初めてのジムリーダー戦ということもあり少々苦戦した場面こそあったものの、バッジ0個の初心者トレーナー相手ということでタケシが低レベルのイシツブテ、イワークの2体を使用していたという事情もあり、リーフはフシギダネ、ブルーはゼニガメを中心にタイプ相性で割と優位に戦いを進め無事バトルを終わらせてみせた。
うーん、やっぱりフシギダネとゼニガメって強いわ。ヒトカゲも“メタルクロー”を覚えるからなんだかんだでいわタイプとも戦えるし、流石カントー御三家って呼ばれるだけの強さがあるよな。
……2人の戦いを見てたら俺も欲しくなってきた。どっかのタイミングでゲットできないかなー。
おっと、そういう計画は一旦脇に置いておこう。
「よし、次は俺だな。行くぞピカチュウ!」
「ピッカ!」
2人の勇姿を見ていたピカチュウは気合十分。そしてタケシ戦も想定して鍛えたバタフリーとマンキーのボールからもやる気十分の気配が伝わって来る。
ちなみにポッポはいわタイプに対して相性不利に加え、バタフリーと違っていわタイプの防御力に対する有効打すら無いので流石に今回は選出しない。次のハナダジム戦で頑張ってもらうことにしよう。
そしてついでに明かしておくと、ニビジム戦に際して、最早お馴染みになったアルセウスからの新クエストはこんな感じである。
――――――――――――――――――――――――
アルセウス様の頼み事
☆サブクエスト4:ニビシティポケモンジム ジムリーダー タケシに勝利せよ
・達成条件:
・
②こうらのカセキ ×1
③ひみつのコハク ×1
・
②すごいとっくん(ぎんのおうかん) ×20
・
――――――――――――――――――――――――
見て分かる通り、とんでもない大盤振る舞いだった。
メイン報酬としてポケモンの化石というのは、ニビシティが石の町と呼ばれているのにちなんでいるのだろうか。なんにせよ、気前が良すぎて逆に怖い。
……これ、今から始まるタケシ戦が報酬相応の難易度だったりしないよな……?
「っと、ダメだダメだこんなんじゃ」
実態がどうであるにせよ、挑むには違いないのだ。俺がこんな調子じゃ前で戦ってくれるポケモン達も不安になってしまう。
――さあ、初のジム戦、気合入れていくぞ!
「頑張れー! レッドさーん!」
「……頑張って」
「そうよ! まあアンタなら心配無いと思うけど、今年のマサラのトレーナーでアンタだけ負けとか恰好付かないんだから、負けるんじゃないわよ!」
「うんうん、先日ヒトカゲで俺に勝ったグリーンといい、今年のマサラタウンは実に豊作だな。――それじゃあ、次はようやく君の番だな。ピカチュウでサカキさんのニドキングを下した、マサラタウンのレッド」
「……え?」
仲間達からの声援を貰い意気込んでバトルコートに突入した俺だったが、タケシの口から飛び出したまさかの発言によってせっかく奮い立たせた闘志に冷や水をかけられてしまった。
じ、ジムリーダーが盤外戦術だと……!? っていや違うそうじゃない。なんで……!?
「そう驚くことはないだろう、一時期カントー中であれだけ騒がれていたんだから。それにサカキさん――“最強のジムリーダー”の名前は俺達リーグ関係者にとってはそれなりに重い名だからな。皆が君に注目しているぞ……ポケモン界の次世代を担う期待の新星としてな」
「……oh……」
己の過去の所業が牙を剝いて来たパターンだった。
いや違う、俺は悪くない。悪いのはサカキ――つまりロケット団だ。なんてやつらだ、こんなところにさえトラップを仕掛けているとは。やはり一刻も早く滅ぼさなくちゃ(使命感)。
「だから、君には先に俺を破った2人と同じ初心者用の手加減は適用せず、難易度を1つ上げさせてもらう。強敵と分かっていながら余りに楽々と勝たせてしまうとこちらもマズいことになる。故に少々キツくなるかもしれないが、これもジムリーダーとしての務めでな。悪いが、平気な顔で乗り越えて行ってくれると嬉しい」
社会に蔓延る邪悪を一刻も早く駆除しなければならないという崇高な義憤に駆られている俺を他所に、タケシは続けて不穏なことを言ってくる。
そうしてブルー戦で使ったイシツブテとイワークのボールをジムトレーナーに預けたと思ったら、代わりに受け取ったのは――なんと、3つのボールだった。おいおいおい、1匹追加かよ。
「見ての通り、使用ポケモンは3体――3×3だ。おっと、流石に主力を出してレベル差で圧殺するなどといった無法はしないから安心してくれ。とは言えコイツ等も皆ブリーダーによってかなり鍛えられてはいるが、専用の装置では君のポケモンと同じレベルまで下げて戦わせるし、対初心者用以上の訓練もさせていないから俺の本気の指示にも対応できない。要は君の様なバッジこそ0個でも初心者とは呼べないトレーナー用のポケモン達さ」
「……そこまでっすか」
「更にこのバトル、
つまり、レベル以外は
マジかよ。いくら難易度ベリールナティック想定だったとはいえ、流石に最初のジムはある程度楽できると思っていたんだけど。いきなりハードかベリーハードぐらいはありそうなジム戦になりそうである。
やったねアルセウス、貴方の報酬は割りと適正だったみたいですよクソがよぉ!
「言っただろう、君には期待しているんだ。それに――その顔。大歓迎といった表情に見えるが?」
「え……俺、そんな顔してるか? ピカチュウ」
「チュウ!」
相棒に聞けば、元気良く肯定の返事を返された。しているらしい。ついでにと観客席に回っていたブルー含めた3人の方を見れば、返ってくるのは揃って呆れ顔や苦笑い。やっぱりしているらしい。
「マジかー……」
なんだろう、勘弁してくれよっていう気持ちも確かにあるんだけども……言われてみると、確かに逆境に燃えている気もしてくる。
そうだ、これは――サカキとの戦いの時と同じ……。
「――いよぉしッ!」
パン! と両頬を自分で叩き、改めて気合を入れ直す。
そうだ、どうせ辿り着くべき先はポケモンリーグ。更にはその頂点なんだ。
この程度の逆境、笑って乗り越えてやるぜ!
そして、俺の様子を見たタケシもニヤリ、と笑みを浮かべ気合十分。これでお互いの準備は完全に整った。後は――バトルで語るのみ! 絶対に勝つ!
「もう大丈夫です。それじゃあ……改めて! 俺はマサラタウンのレッド! よろしくお願いします!」
「うん、良い目だ。それじゃあこちらも改めて――俺はニビポケモンジムリーダーのタケシ! 俺の硬い意志は俺のポケモンにも表れる! 硬くて我慢強い! そう! 使うのはいわタイプばっかりだ! ふはは! 負けると分かってて戦うか! ポケモントレーナーの性だな。いいだろう! かかってこい!」
――ジムリーダーのタケシが勝負を仕掛けてきた!
――――――――――――――――――――――――
「それでは、ジムリーダータケシ、そしてチャレンジャーレッドのバトルを始めます。――バトルスタート!」
「いけっ! バタフリー!」
「フリィィィィィ!」
「まずは小手調べだ。カブト! 頼むぞ!」
「キシキシ!」
審判をしてくれている
ちなみにバタフリーはいわタイプによって4倍弱点を突かれてしまうが、その代わりに特殊攻撃である“ねんりき”を使える為、いわタイプの全体的な特徴であるペラペラの【特防】を突くことが出来る。その突破力を期待しての先発選出である。更に「ふくがん」によって高精度になっている“ちょうおんぱ”や各種粉技も駆使すれば、一体程度なら完封も出来るだろう。
――記念すべき初の公式戦、その先発勝負。まさに俺のトレーナーとしての今後が占われる試金石と言っても過言では無い。
故に、こんな所で苦戦などしていられない。速攻で終わらせてやる!
俺が意気込むと同時に、バトルコート脇上部の電光掲示板にバタフリーとカブトのHPバー、そして双方の残りポケモン数を示す3つのボールマークがそれぞれ表示される。*1
――――――――――――――――――――――――
レッド◓◓◓ VS タケシ◓◓◓
――――――――――――――――――――――――
そしてそれと同時に、早速タケシが仕掛けてきた。
「では行くぞ! “ひっかく”!」
「距離を取って躱せ! そのまま風に乗せて“いとをはく”だ、カブトの動きを封じろ!」
小手調べという言葉の通り、まずは低威力の技で突っ込んできたカブト。
当然そんな分かり易過ぎるテレフォンアタックに引っ掛かるような鍛え方はしていないので、すぐさま“かぜおこし”で距離を取らせ躱させると同時に、“かぜおこし”の勢いに乗せた“いとをはく”で【素早さ】を下げに行く。ニビシティに来るまでの道中で、リーフ達相手に修行しながら予め仕込んでおいた戦術の1つである。
「キシッ!?」
「落ち着けカブト、その程度なら無理やり“アクアジェット”で――「“ちょうおんぱ”! 続けて“しびれごな”!」ふっ、やるな! まずは確実に動きを封じに来るか!」
粘性の糸に囚われたカブトを“アクアジェット”で無理やり脱出させようとしたタケシだが、こちらとて当然そんなことをさせるわけがなく、「ふくがん」で命中精度が増した“ちょうおんぱ”と“しびれごな”で二重に行動を縛る。
そしてタケシが技の指示より落ち着かせることを優先した為、指示を受けるのが若干遅れたカブトはこの2つをモロに受けてしまい、見事に【混乱】&【麻痺】の二重苦に陥った。
「キシィ……!? キ、キシッ!」
「今だ! “ねんりき”!」
「フリィ!」
「ギシィッ!?」
その隙を逃さず、追撃の“ねんりき”で仕留めに掛かる。バタフリーの赤い複眼から光と共に放たれた念力は身動きが取れないカブトを容易く捕らえ、そのままサイコパワーでカブトにダメージを与えた。
しかもどうやら“ねんりき”の追加効果である相手を【混乱】状態にする力が“ちょうおんぱ”によって受けた【混乱】を更に強化したようで、カブトは“ねんりき”を喰らう前より更にもがき苦しんで自傷も気にせず暴れまわる。
そしてそのまま続けざまに2回“ねんりき”を指示し、更に【混乱】による自傷ダメージも合わさったことでカブトのHPバーを押し込み続け、戦闘不能まで追いやった。
「そこまで! カブト、戦闘不能!」
――――――――――――――――――――――――
レッド◓◓◓ VS タケシ◓◓◓
――――――――――――――――――――――――
「よしよしよし! よくやったぞ、バタフリー!」
「戻れ、カブト。良くやってくれた。――流石だな。小手調べとは言ったが、まさかいきなりこうもアッサリとやられるとは思わなかった。だが次はそう簡単にはやらせんぞ――イシツブテ!」
「こっちだってそうは行きません、このまま勢いに乗らせて貰いますよ――戻れバタフリー! 頼むぞ、マンキー!」
「ラッシャイ!」
「ムキィィィィィ!」
続けて出されたタケシの2番手はイシツブテ。こちらはバタフリーを引っ込めてマンキーだ。
まあ、バタフリーは事前に仕込んでおいた戦術が上手くハマったおかげでダメージをまったく受けていない。なので突っ張ってもよかったのだが、せっかくのジム戦だ。可能な限り手持ちに経験を積ませたいので交換することにした。
「かくとうタイプか。ならばイシツブテ! “かたくなる”!」
タイプ相性の不利を補うべく、場に出たばかりのイシツブテに【防御】上昇を指示するタケシ。
これは面倒だ。“からてチョップ”の連撃で一気に押し込むつもりだったのだが、これで必要回数が最低でも1発は増えてしまった。
「なら――マンキー! “きあいだめ”だ! 一気に行くぞ!」
「ムゥゥゥゥゥッキィィィィィ!」
相手の積み技に対抗し、こちらもマンキーに【急所率】を一気に上げる“きあいだめ”を指示。俺の指示を受けたマンキーは深く息を吸って全身に気合を漲らせ、勢いよくイシツブテに飛び掛かっていった。
これでこのバトル中、マンキーの“からてチョップ”は元々の「急所に当たり易い」効果と合わさり確定で急所に当たるようになった。まあ元の威力が低い技だから結局は最低でも2発は必要になるのだが、それでも3発と2発の差は大きい。このまま一気に押し切ってやるぜ。
「む、攻撃力を上昇させる積み技か……? イシツブテ! こちらももう1度“かたくなる”だ!」
「え? ……あ、そうか」
不可解な指示に一瞬思考が固まるが、すぐに理解が追いつく。タケシは“きあいだめ”を知らないのだ。
「(サカキとのバトル前の騒ぎで分かったことだけど、この世界って分かり易いエフェクトとかがある積み技以外全然知られてないんだよな)」
例えばさっきイシツブテが連続で使った“かたくなる”は、ポケモンが分かり易く全身に力を籠める動作をするうえに鈍く発光するエフェクトまであるので、目で見て凄く分かり易い積み技だ。
このような積み技、或いはデバフ技なら割と大体の人がその効果を知っているのだが、今の“きあいだめ”のような一見ポケモンの動作しか表れない技は全然知られていない。
じゃあどの程度知られていないのかというと、なんと低レベルポケモン御用達の“なきごえ”や“しっぽをふる”までもだ。これを知った時は流石にカルチャーショックだった。
「(そうは言っても、状況からすぐに積み技の類と推測して瞬時に対策をしてくるのは流石ジムリーダーって言った所か。そりゃそうだ、
知らないのならわざわざ「今からする攻撃は全部確定急所です」等と教えてやる義理も無い。
まあ実際にダメージを受ければ流石に【急所率】アップの効果だと気づくだろうが、それまでは真正面から受けて立ってくれるということだ。ありがたく胸を借りさせていただくとしよう。げっへっへ。
「よし行け、マンキー! そのまま“からてチョップ”!」
必要な準備も整ったので、“からてチョップ”で一気に勝負を決めるべく指示を出す。
マンキーは決して素早いポケモンではないが、イシツブテもこれまたいわタイプらしく鈍足なポケモンなのでマンキーより遥かに鈍い。その利を活かして一気にマンキーが肉薄する。
よし、これで――。
「前方に“がんせきふうじ”で盾を作れ!」
「っ! マンキー下がれ!」
タケシの指示を聞いて咄嗟にマンキーに追加の指示を出すが、一拍間に合わずイシツブテが投げ付けてきた“がんせきふうじ”の直撃を喰らってマンキーが吹っ飛ばされる。おまけに急所に当てられたようでHPバーが一気に4割も削られてしまった。
「ムキィィィィィ!」
「今だイシツブテ、連続で“いわおとし”! 投げまくれ!」
「落ち着けマンキー、相手の思う壺だぞ! 一か所に固まるな、岩の周りを回り続けて的を絞らせないようにしろ!」
すぐに復帰して再び接近したマンキーだが、予期せぬ攻撃にキレたらしくタケシの指示通り城塞のようにイシツブテを守る盾と化した“がんせきふうじ”に“からてチョップ”で殴りかかりはじめたので、改めて指示を出して意識を切り替えさせる。
生憎、1発だけ追撃の“いわおとし”に被弾してしまったマンキーだが、不幸中の幸いと言うべきかその痛みで頭に上った血が少し下がったらしく、まだ怒り顔ではあるものの俺の指示に応えイシツブテの周りをグルグルと回り始めてくれた。
うむうむ、俺とピカチュウのちょうきょ……教育の成果がちゃんと出ているようで何よりだよマンキー君。HPバーが合わせて7割近く削られたのは痛いけども。
「(――なるほど、“がんせきふうじ”を相手の
さっき俺がバタフリーに粉技の補助や回避手段として“かぜおこし”を転用させたように、タケシもイシツブテに“がんせきふうじ”を防御手段として転用させたわけだ。
しかも、地面から持ち上げただけの岩なら“からてチョップ”を受ければ簡単に割れそうなものなのだが、どうもやたら頑丈な岩のようでマンキーが1発殴っただけでは割れなかった。
あの頑丈さ……どうやら元は攻撃技の“がんせきふうじ”である為、イシツブテの
「さっき言っただろう? 君には初心者用の手加減はしないと」
「バトル始める前には捨ててたから大丈夫です。お気遣いなく!」
「ふっ、そうか。ではこの“がんせきふうじ”の盾、どうやって突破する?」
タケシの言葉にイシツブテを囲むようにして守る“がんせきふうじ”の盾を改めて観察する。さっきも言ったが、“からてチョップ”でも1発だけでは割れない頑丈な岩である。これはトレーナーの俺が頭を使ってマンキーを突破させなければなるまい。
――改めて語るまでも無いかもしれないが、この世界のポケモンバトルはゲームのようにポケモンがボーッと突っ立ったまま攻撃を待ち続け、受けてくれることなどありえない。敵も味方も普通に回避しようとしまくるし防ぎまくってくるし、なんなら目の前のイシツブテのように自分の体以外のもので使えるものがあればなんでも盾として利用してくることだってある。単純に【
それこそさっきのバタフリーや今のイシツブテみたいに、攻撃技を攻撃以外に転用するというゲームではあり得ない手段を使うことも当たり前の世界なのもあり、ゲームのように「特殊アタッカーならA0個体が基本」みたいな理屈は割と通用しないかもしれない。*3
いやまあ勿論、現実にA0個体が存在したらそれはそれでメリットもあるので結局はトレーナーの腕次第なんだろうけど。
さて、話が少し逸れたが、問題はタケシが言うように目の前の盾をどうやって突破するかだ。
とは言っても、これは大して難しくもない。――簡単な話だ。邪魔だというなら取り除いてやれば良い。ついでにまたまた転用させてもらってな!
「マンキー、その岩を“ちきゅうなげ”でイシツブテに叩き付けてやれ!」
「なに!? いかんイシツブテ、避け――」
タケシが咄嗟に俺の指示へと対応しようとするが、岩に囲まれて身動きが取りづらかったのもあり、イシツブテがタケシの指示に応えるよりも俺のマンキーが動く方が早かった。
「ムッキィィィィィ!」
「ラ゛ッ!?」
素早く岩を持ち上げたマンキーは、そのまま“ちきゅうなげ”を使ってイシツブテに思い切り岩を叩き付けた。相当勢い良くいったらしく、その威力にイシツブテは仰け反ってしまい隙だらけになる。
ところで本来“ちきゅうなげ”は物では無く相手本人を掴んで投げ飛ばす技だが、この世界ではこのように持ち上げたものをぶつける形でも固定ダメージ効果が発揮される。尤も、投げ飛ばしたり等手を離してしまうと効果が無くなるので結局は近接専用技なのだが。
そしてダメージ固定技ということは、当然レベルを低く抑えられているイシツブテにはかなりのダメージとなり、電光掲示板のイシツブテのHPバーが一気に4割近く削られる。更にイシツブテはまだ体勢を立て直せていない。
つまり――とどめのチャンスだ!
「そこだマンキー! “からてチョップ”!」
「ムキィィィィィ!」
「ラ゛ア゛ァ゛ッ゛!? ……ラッシャイ……」
確定急所“からてチョップ”を受け、更にそこへ“ちきゅうなげ”のダメージも合わさる。
思いがけず苦戦させられたイシツブテだったが、マンキーの怒りの一撃の威力により、やっと地に沈んでくれた。
「そこまで! イシツブテ、戦闘不能!」
――――――――――――――――――――――――
レッド◓◓◓ VS タケシ◓◓◓
――――――――――――――――――――――――
「やったぜマンキー! お前もよくやってくれた、後はゆっくり休んでくれ!」
「戻れイシツブテ、すまなかったな。……ここで一体ぐらいは持っていかせてもらうつもりだったんだがな。驚いたよ、本当に強いな君は」
「いえ、俺もあの“がんせきふうじ”と“いわおとし”のコンボにはしてやられちゃったので」
実際あのコンボにはかなり驚かされたし、同時に勉強にもなった。正に流石ジムリーダーというべきだろう。タケシが“きあいだめ”を知らなかったからこそ一気に逆転できたが、そうじゃなかったらやられていたのはマンキーだったかもしれない。
「ふふふ、バッジ0個のトレーナーに気を遣われてはジムリーダーとして立つ瀬がないな。――だからこそ、ここからは更に遠慮なくいかせてもらう! いってこい、イワーク!」
「こっちも遠慮なく胸を借りさせてもらいます! お前の出番だ、頼むぞピカチュウ!」
「グオオオオオッ!」
「ピッカァ!!」
さて最終戦、互いにエースを繰り出してのラストバトルだ。
相手のイワークも意気軒昂だが、後輩達の活躍を見ていた俺の相棒もイワークと同じかそれ以上に気力を充実させている。頼りになるぜ!
「ここで出してくるという事は、やはりそいつが例の“なみのり”を使えるというピカチュウだな。ふむ、同レベルだし一発でも喰らったら4倍弱点で一撃か。ならば――最初から全力で行かせてもらおう! イワーク、“がまん”だ!」
「……えっ?」
予想外の指示に、思わず気の抜けた声をだしてしまった。
“がまん”? あの? 受けた攻撃を倍にして返すけど2ターンも動けないっていう、あの?
そりゃ高耐久力を誇るイワークなら使えないこともないだろうけど、正直デメリットの方が遥かに大きい気が……。
「続けて“ロックブラスト”と“いわおとし”! 撃って撃って撃ちまくれ!」
「グオオオオオアッ!」
「って何ぃぃぃぃぃッ!?」
完全に不意打ちだった。まさかの“がまん”をしつつ口から連続技である“ロックブラスト”、更には“いわおとし”まで連射してくるイワークである。
“がまん”のデメリットである行動不可仕様をガン無視だと!? いったい何がどうなってんだ!?
「チュウッ!?」
ピカチュウも“がまん”の仕様を知っている為、俺と同様に完全に不意打ちだったらしく珍しく3発も貰ってしまいHPバーが3割弱ほど削られてしまった。
「その様子だと、“がまん”の本来の仕様については知っているようだな。だが見ての通り、このイワークには“がまん”をしつつ攻撃を可能とする特別な訓練をさせている。尤も、コイツはできるのはまだこれぐらいで動くことはまったくできないんだがな。だからこその対初心者用というわけだ」
「コイツ、
言っている意味が理解できない、というか理解を拒んでいる自分がいる。つまりだ、タケシは「本来の主力にはこのイワーク以上に反則級の怪物がいるぞ」と言っているのである。
「反則でしょうこんなの!」
「ここまでの攻防で問題無いと判断した。これもまた言っただろう? 悪いが、平気な顔で乗り越えて行ってくれると嬉しい、とな」
「――ああもう、やりますよ、やってやるよコンチクショウ! ピカチュウ、まずはいつも通りだ! 走りまくって的を絞らせるな!」
「チュウッ!」
言われなくても、とばかりにいつも通り“かげぶんしん”、更に“こうそくいどう”を始めるピカチュウ。
しかし対初心者用とはいえ流石にジムリーダーのエースというべきか、的確にピカチュウのイヤなタイミングと場所に“ロックブラスト”や“いわおとし”を放ってくる。
おまけにこれまた訓練の成果とでも言うつもりなのか、本来“ロックブラスト”の発射回数は2~5回とランダムである筈なのに、ほとんどを4回以上撃ってくる。疑似「いかさまダイス」かよふざけんな!
「(くそ、下手に“なみのり”を最大威力で当てようと適切な距離を取ろうとしても妨害されまくるうえに、そのまま近寄らせてもらえずにじり貧。かといって開き直って遠距離からちまちまと攻撃しても、“がまん”で一気に返されて一瞬でお陀仏しかねない、か)」
つまり攻撃のチャンスはそう回ってこないうえに、一気に決めず下手な攻撃で攻めればこちらの寿命を一気に縮める。故に可能な限り少ない数の攻撃で勝負を決めなければならないわけだ。
隙が無さ過ぎである。これがバッジ0個の挑戦者にやることかよぉ!
「(一応、“なみのり”以外の有効打が無いでもないけど……)」
イワークに対し同じく4倍弱点を突ける“くさむすび”だ。だがこいつを上手く発動させるには、あのイワークの猛攻を掻い潜って肉薄する必要がある。が、ピカチュウは既にダメージを喰らってしまっているしリスクが高い。
それでも成功させられれば、それこそ一撃でイワークを戦闘不能にも出来るだろうが……どうする……!?
「――チュウッ!!!」
「ピカチュウ?」
俺が何とか打開策を出そうと頭を悩ませていると、相棒から大声が発せられる。
釣られてその顔を見れば「任せろ」と言わんばかりの不敵な表情で俺に一瞬視線を寄こし、すぐまたイワークの猛攻に突っ込んでいった。
「……そうか、そうだな」
予想外の事態に少し弱気になっていた。
何をやっているんだ俺は。心を強く持て、前を見ろ、視線を逸らすな! 隙ならピカチュウが必ず作ってくれる。そしてその隙を活かすのは――俺だ!
「どうした、回避ばかりしていても勝つことは出来ないぞ! このまま負けを認める気か!?」
更なる猛攻を仕掛けてくるイワーク。だが、俺はもう動じなかった。俺の相棒なら必ずこの状況を打ち破ってくれると信じたからだ。
「行けぇええええ、ピカチュウウウウウっ!」
喉が避けるかと思う程の声量で相棒に声援を飛ばす。額からイヤな汗が伝って目に入って来るが、意地で拭わず戦場に視線を固定し続ける。
「(来い……来い……来い……!)」
じっとピカチュウを信じてチャンスを待つ。集中力が一瞬でも途切れれば命取り。決して目を逸らさない。
果たして――ピカチュウは俺の期待通り、いや、期待以上の動きで応えてくれた。
「チュウウウウウ……ビッガァ!」
「なっ、なんだと!?」
「グワゥ!?」
「おっ……おおお! よくやったぞピカチュウ!」
そう、なんと我が相棒はイワークへと突っ込んだ勢いそのまま次々に飛んで来る岩の一つへと真正面から突っ込み一回転、その尻尾で“いわくだき”を発動し叩き砕いてみせたのである!
“なみのり”はともかく物理まで強いとは考えていなかったのだろう、タケシが、そして自分の技を真正面から破られたイワークが動揺を見せる。
――ここだ!
「ピカチュウ、その砕いた岩をイワークに向かって“アイアンテール”でかっ飛ばせ! 視界を奪うんだ!」
「ピッカー、チュウ! チュウ! チュウ!」
「っ、いかんイワーク、避けろ!」
そして一瞬で攻防が真逆の状況になった。
砕けて地面に散らばった岩の破片を次々にイワークの顔面目掛けてかっ飛ばすピカチュウ。タケシもすぐに気を取り直してイワークに回避の指示を出すが、間に合わず破片の一つがイワークの眉間にジャストミートしてしまった。更に散らばった破片が目に入ったらしく、思惑通りに視界を奪うことができた。
イワークはピカチュウの続けざまの反撃に狼狽え、まだタケシの指示に応えることが出来ない。その隙にピカチュウが一気に肉薄し、彼我の距離が0になる――!
「今だピカチュウ! “くさむすび”ッ!!!」
「ピィィィィッ、カァッ!!!!!」
「グォオオオオオッ!?」
気合一発、ピカチュウの最後の大声と共にバトルーコートの地面から生えた草がイワークに絡みつき、そのまま轟音と共に一気にイワークを引き倒した。
4倍弱点に加え、“くさむすび”は対象の体重が重い程威力が上がる技なので、当然イワーク(210kg)に対しては最大威力が発揮される。
故にそのままイワークが起き上がることはなく――HPバーが一瞬で0まで押し込まれた。
「そこまでッ! イワーク、戦闘不能! よって勝者――チャレンジャー、マサラタウンのレッド!」
「い……っよっしゃあああああああああああああ! やったぞピカチュウ! よくやってくれた!」
「ピカッチュウ!」
「……見事だ。完敗だな、これは」
――――――――――――――――――――――――
レッド◓◓◓ VS タケシ◓◓◓
WINNER マサラタウンのレッド!
――――――――――――――――――――――――
「やったやったー! レッドさんが勝ったー!」
「はー、やっぱりアンタ強いわよねー! ま、わかってたことだけど!」
観客席から聞こえてきた仲間の歓声に応え、サムズアップを送る。すると向こうも返してきてくれた。
はー……、サカキの時もそうだったけど、強敵を打ち破った時のこの達成感、癖になるな……!
勝利の感慨に浸っていると、少し呆然としていたタケシも我に返ったようでこちらへやってくる。
「結局、終始良いようにやられてしまったな。……まさか、いくら期待の星とはいえバッジ0個のトレーナーがピカチュウに“くさむすび”を覚えさせているとは思わなかったよ」
「いやぁ、コイツ天才なもんで……」
「チュウッ♪」
決着の後、俺の胸に飛び込んできたピカチュウの頭を撫で繰り回しながら答える。
実際、今の俺のポケモンではピカチュウ以外誰もあのイカれたイワークを突破できなかっただろう。つくづく、この相棒に出会わせてくれた自分の幸運に感謝の気持ちが止まらないな。
「だとしても、その天才を見事に活かしバトルを勝利へ導いたのは君の、トレーナーの力だ。――さあ、俺に勝った証であるグレーバッジ、そして君の実力を称えこの“がんせきふうじ”と“がまん”のわざマシンを授けよう! 受け取ってくれ!」
「……はい!」
過ぎた謙遜は嫌味になるだろうという事で、素晴らしいバトルをしてくれた強敵からの賛辞、そしてジムバッジとわざマシンを受け取る。
これは……まさにあのタイミングだろう。よし、やるか!
「グレーバッジ――ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
これで1つ目、やっと1個だ。
でも、こうして初のジム戦に勝利したことで少し自信が増した気がする。きっと他のジムリーダーたちもとんでもないポケモンを繰り出してくるのだろうが、この調子で研鑽を積めば必ず勝ち抜いていけるだろう。
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☆サブクエスト4:ニビシティポケモンジム ジムリーダー タケシに勝利せよ
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?????「うーん、これならもっと豪華な報酬を用意してもよかったかもしれないですね^^」
「……レッド」
「ん? どうした、リーフ」
俺が明るい将来の展望を描いていると、何やら神妙な雰囲気を漂わせたリーフがいつの間にか俺のすぐ目の前に立ち、真剣な顔を向けてくる。
そういや、さっきの歓声の中にリーフの声が無かったような……。
「……私の、ううん、私達の先生になって」
「……えっ?」
――どうやら、一難去ってまた一難、ということらしい。
いやまあ、望むところではあるんだけど……何がどうしてそういう結論に……?
これが0になると戦闘不能(瀕死)と見做され、負けとなる。
つまり、“かたくなる”を使って【防御】ランクを上げた(【防御】ステータス1.5倍)ところで急所に当たればそれを貫通してしまうので、全く意味が無くなってしまう。
ポケモン原作ゲームにおいて、ほとんどのポケモンは攻撃手段として物理攻撃、特殊攻撃それぞれ得意と苦手がハッキリしており、よほど【攻撃】【特攻】の両種族値が高くない限り、低い方のステータスは使われないので切り捨てられる場合が常。使わない種族値を抜きにしてポケモンの性能を表す「実質合計種族値」等という用語すらある程。
特に特殊アタッカーは下手に【攻撃】のステータスが高い場合、“イカサマ”という自分の【攻撃】ステータスを参照して攻撃される技の存在や、【混乱】による自傷ダメージが高くなる等のデメリットのみが発生する状況が多々ある為、【攻撃】の個体値のみを0にした「5V」が好まれる傾向にある(当然育成方針によるので一概には言えない)。
後書き
アニポケ戦闘書いてて楽しいぃぃぃぃぃ!(でも大変)
さて、一番最初のジム戦ということもあり、ポケモン初心者様にもバトルの内容が分かり易くなるよう工夫してみたつもりですがどうだったでしょうか。原作要素とアニポケ要素とをごちゃ混ぜにしているので逆に分かり辛かったですかね?
しかも初の3×3ということもあり、滅茶苦茶長くなってしまうという。分割することも考えたんですが、どうにもキリが悪くなってしまうので結局一纏めに。サクサク進行とはいったいなんぞや。
うーん、今から頂くご感想が怖いぜ……。
では、次回からは3番道路~オツキミ山へ行きます。皆様、またお気を長くしてお待ち頂けますと幸いです。
ご感想もお待ちしております。*1
……あ、VSタケシ戦に熱を入れ過ぎて力尽きたので、経験値計算なんかを反映するのは少し時間を置いてからやります。ユルシテユルシテ……。
①安価に取り憑かれた奴様
②天ノ羽々斬様
③sleif様
④通りすがりの読者N様 ※改めまして、貴重なご意見ありがとうございました。
設定そのものの改変要望等で無い限りはとてもありがたいので、
お気づきになられたことがあればまたよろしくお願いいたします。
⑤暁真也様
⑥通りすがりのハーゼ様
⑦くさんちゅ様