原点にして頂点「アルセウス様ありがとうございます。でもいつか一発殴らせてください」 作:ゴーイングマイペース
※更新・修正履歴
2025/10/07~10/31
①各ポケモン設定ページ記載の種族値と実数値を、箇条書き形式から表形式へと変更
②各ポケモン設定ページ記載の技の一覧を、箇条書き形式から表形式(タイプ別)へと変更
↑設定の見直しも含めて、大幅改訂を行いました。とはいえ中身は特に変わっていないので、ご注意ください。
2025/11/01
①誤字報告を適用。アカン、すげーネタバレ誤字やった……。
神代刹那様、ご報告ありがとうございました。
5月○×日 6ページ目 10歳 クチバシティ サント・アンヌ号
『最悪の
「ふう、やっとここまで来れたな。これで後はリーフとイエロー、あと船長を助けるだけだ!」
「……ああ、ここに来るまでにお前が開けた風穴にさえ目を瞑れば、あとはそんだけだな」
天井ブチ抜きによるショートカット(物理)作戦を決行し、爆速でデッキまで上がってきて現在、俺、そして俺のことを凄い目で見てくるグリーンは1階にあるデッキに続く登り階段の前まで来ていた。
……うん、俺だってグリーンの言いたいことは分かってるよ? けど、その、ねえ? 言い訳はさせてほしいっていうか、ほら。
「……いや、その、ほら。今はさ、とにかく一刻も早くリーフ達の所に駆け付けるのが重要じゃん? だからスピードが必要な状況だし。あの時はああやって勢いで誤魔化す手しか思いつかなかったっていうか」
「誤魔化せてるヤツなんかあの場に1人もいなかったわ、マジでどうすんだあの中層からこの1階まで綺麗に開いちまった吹き抜け! しかも罅とか一切入ってない綺麗な円形の穴なのがまた腹立つんだよ、無駄に高度なことしやがって!」
「ええと、『一点に凝縮された本物のパワーってヤツはムダな破壊をしないもの』ってどっかのオカマも言っててだな」
「そっちの説明は別に求めてねえんだよ! オッサンやジョーイさん達の目を思い出してみろ、結局、船の入り口で別れる時までお前のこと『こいつマジか』って目で見てたからな!?」
「うっ」
胸が、胸が痛い……!
確かにさっき、デッキに突入する前に誘拐被害者を安全な場所まで連れて行って仲間と合流してくる、と船の出入口で一旦分かれたハンサムさんと誘拐被害者達は、俺のことをなんとも言えない目で見ていた気が……。
……うん、勢いで誤魔化すことは考えてたけど、せめてハンサムさんには「後でちゃんと謝りに来ます」って言っといた方が良かったっすね、ええ……。
「さ、流石に事態が解決したらすっ呆けたりしねーから。あくまで時間が惜しい今この状況に限って誤魔化しただけで「誤魔化せてねえっつってんだろ!」……ちゃ、ちゃんと後でお詫びその他諸々の筋は通しに行くから……」
「俺に言ってもしょうがねえだろ! ……ていうかよ、いかにも『状況に急かされて仕方なくやりました』みたいに言ってるけど、お前、穴開けてる時に少しでも躊躇したのか?」
「……………………チュウチョシテタヨー」
「おいせめてこっち向いて言え」
グリーンのジト目に耐え切れなくなり、目を逸らしてしまう。り、リーフ達を助けてロケット団を倒した後に、筋を通しに行くつもりなのは嘘じゃないんで……。
「と、ともかく! 後はここを登ればデッキだ、行くぞグリーン!」
「……後で必ず謝りに行けよ。――で、今デッキはどんな状況なんだよ、探れるんだろ?」
「ああ、ちょっと待って――――は?」
「? おい、どうしたレッド」
「……リーフの手持ちの波導が、6匹とも、ほとんど感じ取れなくなってる」
「なっ!?」
グリーンが驚きの声をあげるが、正直それどころじゃない。俺達がここまで来る僅かな時間で、一体何があった!?
さっき、リーフとイエローがロケット団と戦っていたのは確かだ。が、その時に言ったように、2人は決してそんじょそこらのトレーナーにやられる程ヤワじゃない。負けるとしても、あくまで予想外の『何か』があった場合の話で、それも俺達が駆け付けるまでに時間がかかり過ぎた場合だけだと思っていた。
だからこそ、その予想外も起こさせない為に、色々な無茶を承知のうえで強引なショートカットを決行したのである。
それなのに……まさか、俺達の予想を遥かに超えるような『何か』がデッキで起きてるのか!?
「急ぐぞ、グリーン!」
「あ、おい! 待てよレッド!」
グリーンを置き去りに、一気に階段を駆け上がる。後ろでグリーンが何か言ってきているのが聞こえるが、もうそれどころじゃなかった。
「――リーフ、イエロー! 無事か!?」
焦りで足が縺れそうになったのを気合で捻じ伏せ、五段飛ばしで一気に階段を駆け上がってデッキに突入。
波導で2人の居場所を突き止め、2人の気配がする地点へと一直線で向かうと、そこには。
「――! れ、レッドさん!!」
「な!? れ、レッド!? 何でだ、足止めを突破してきたにしたって早過ぎるだろ!? あのバカ共、いったい何をやってるんだ!?」
「イエロー! 良かった、まだ無事だったか! リーフは!?」
「そ、それが……」
すぐさま目に入ったのは大勢のロケット団に囲まれながらも、デッキにいた乗客らしい人達と共に戦うイエロー。そして俺を見て驚きの声を上げる、恐らくはこの事態の首謀者だろう、船倉入口で1度会った、発している波導には覚えがあるのに変装しているせいで誰か分からないニセ副船長。
そしてニセ福船長の対面で、デッキに膝を突いて項垂れているのは……リーフ? まさか、負けたのか!?
「――っ!」
「な、くそ、待て!」
「待つか! ピカチュウ、“ほうでん”!」
「ピッカァ!」
「ぐお!?」
ともかくこんな状態のリーフを敵の目の前に置いておく訳にはいかないので、波導で一気に距離を詰めてリーフを抱き上げ掻っ攫った。
ニセ副船長が何か言って来るが気にせずにピカチュウへと“ほうでん”を指示。その強烈な光で目を眩ましてやり、その隙にイエローと乗客たちの方へ行き合流した。
「き、君は? この子達の友達かい?」
「お、おお……レッド君、待っていたよ……お゛ふ」
「そうです! っと、船長さん、これ薬です! ……リーフ! しっかりしろ、リーフ!」
乗客の1人が声を掛けてくるが、返事をする間も惜しく一言だけ返し、そして船長にも急いで酔い止め薬を手渡してリーフへと声を掛ける。が、反応がまったく無い。
「くそ、レッド! お前速過ぎんだよ……って!? おいリーフ、どうしたリーフ! おい!」
「リーフちゃん、リーフちゃん!」
「…………あ、グリーン、イエロー、それに……レッド。……ごめん、私……負け、ちゃった……」
追いついて来たグリーンが、明らかに様子がおかしいリーフを見て、普段は余り見せない兄としての顔をしてリーフへと大声で呼びかける。イエローも同様にリーフの肩を揺さぶり、必死な様子だ。
その甲斐あってかリーフもやっと反応を返してくれたのだが、それでも明らかに自失した様子で、とてもまともに話せる様子では無かった。
普段から泰然とし過ぎているぐらいなリーフが、ここまで消沈するなんて……いったい、どんな負け方をしたらこうなるんだ!?
「リーフ、大丈夫か!? 一体アイツに何されたんだ!」
「……あの、ポケモンに……私のポケモン、みんな……」
「あのポケモンって何――――――」
リーフの言葉に、恐らくニセ副船長のポケモンのことを言っているのだろうと、と意識をそちらに向ける。
「……、…………」
そして、
「……マタドガス? いや、これは……なんだ……? ポケモンなのか……!?」
「……――――――」
そこにいたのは、一見すれば何の変哲もない、普通のマタドガスにしか見えなかった。体色も、肌の質感も、表情も、どこにでもいそうなマタドガスだ。マサラタウンの学校にもマタドガスはいたから、これは間違いないと断言できる。
しかし、ただ一点……無言で佇むその身から発されている波導……気配が、ただただ“異様”としか表現できないおぞましさを感じさせる。そう、何というか『生き物を見ている筈なのに、まるで無機物を見ているかのようだ』とでもいうか。
高レベルだと感じさせるような、強大な圧力を持つ波導というわけではない。恐らくだけど、ピカチュウを多少上回る程度のレベルでしかないだろう。しかしやはり、生物が発するにしては不気味過ぎる波導。
……もし『
「……!? ピカ、チュウウウウウウウウ……!!」
ピカチュウもその異質さを感じ取ったのか、「なんだコイツは!」と尻尾を逆立てて激しく威嚇しだす。というか、相棒の俺でも珍しいと感じるレベルで嫌悪感を剥き出しにしている。
……いや、よく見たら、周りの乗客達のポケモンの中にも一部、あのマタドガスに嫌悪感を向けているのがいる……?
「……最初は、リーフちゃんが圧倒的に優勢だったんです。あの人が最初に出したドガースを、あっという間に3体も倒しちゃって」
「イエロー?」
マタドガスを見ながら語り出すイエロー。その声、そして目には、誰が見ても明らかなぐらいの恐怖、そして困惑が宿っていた。
「あの副船長のニセモノさんは、誰が見てもリーフちゃんと比べて弱くって、リーフちゃんもヤドン1匹で余裕そうにバトルを進めてて。……でも、最後……あのニセモノさんが最後に出した、あの黒いオーラを纏ったマタドガスに、ヤドンがあっという間にやられて! ……その後出した残りの手持ち5匹も、ほとんど同じように……」
「あのマタドガス1匹に、あっという間に6タテ?」
それが本当なら、あのマタドガスはただおぞましいだけじゃなく、相当強力なポケモンだということになる。
何せリーフの手持ちの中には、どくタイプの攻撃の威力を1/4に抑えて受けられるポケモンが2体……ニドキングと、クチバシティに来る前に進化させたゴローニャがいるのだ。なのにあっという間にやられたとなると……これは、かなり不味い状況かもしれない。
……って、ん? ちょっと待て……ちょっと待てよ?
今、イエローはあのマタドガスのことを何て言った?
……黒い、オーラ?
「お、おいイエロー、もうちょっと詳しく話を」
「ぐ、くそっ、ボスに恥を搔かせた時とといい今回といい、毎度毎度舐めた真似しやがってこのクソガキども……! お前が来たら逃げようかと思ってたが……もう許さん! そこの小娘と同じように、ロケット団の新しい力で……この
余りに聞き逃せないことを言ったイエローからより詳しいことを聞き出そうとしたその時、ピカチュウの“ほうでん”で目眩ましをされたニセ副船長が視界を取り戻した。涙が浮かんだ目を腕で擦りながらこちら、というか俺を睨み付け、気炎を噴き上げていた。
まだ目潰しを下だけの筈だが、どうも相当頭に血が上ってしまっているようで、俺が現れた時の狼狽え振りから一転、怒りを剥き出しにしている。
……というか、今、言いやがったよな? こいつ、言いやがったよな!?
あのマタドガスのことを、
「イエロー、俺には見えないけど、確かにあのマタドガスは『黒いオーラ』を放ってるんだな?」
「え、は、はい、そうです」
「……そう、か」
「黒いオーラ? ……そんなもん見えねえぞ?」
どうやらグリーンには、俺と同じようにイエローの言う『黒いオーラ』は見えないらしい。周りの乗客達も同じように確かめようとしているが、やはり見えないらしく困惑している。
それもその筈だ。俺の知識の通りなら……そのオーラは、特別な才能が無ければ視認できない、『ダークポケモン』の証なのだから。
――ダークポケモン。
それは、ポケモン第三世代の外伝作品である、オーレ地方を舞台とした『ポケモンコロシアム』、そしてその5年後の描く『ポケモンXD 闇の
主な特徴しては、特殊な技でレベルやタイプ相性以上の戦闘能力を発揮できること、特別な才能を持っていなければ視認できない『黒いオーラ』を全身から放っていること等がある。
また戦闘能力が高められるという改造の代償なのか、他のポケモンから嫌われ易い、という特徴も持つ。
そしてこれらの特徴は、旅に出て一か月でジムバッジ2つ取得という、この世界では間違いなく上澄みの実力を持つリーフが短時間の内に一方的に負けたらしいこと。イエローが、何故かは分からないが『黒いオーラ』を視認できているらしいこと。そしてこの場のポケモンの一部があのマタドガスへ嫌悪感を向けていることから、そっくりそのまま当て嵌まる。
と、いうことは、あのマタドガスは……ダークポケモンだということだ。
……なぜ、ロケット団がダークポケモンを……!?
「……おい、ニセモノ野郎。そのマタドガスを、一体……どこで手に入れた?」
「ああ? どこで? はっ、ちげーよ。コイツはな、何処ぞから仕入れたもんじゃねえ。……ぐはは!! 流石に自慢のオトモダチを一方的に倒したコイツの力が気になるか? それともビビっちまったかあ!?」
「いいから答えやがれ! そのマタドガスは一体何なんだ!」
「はっ、良いだろう。冥途の土産に教えてやるぜ。……作ったんだよ。俺達ロケット団の手で、俺達の目的、世界征服の為の新たな力を……ダークポケモンをな!」
「……ダーク、ポケモン?」
怒りながらも俺の様子に気を良くしたのか、ニヤニヤと腹の立つ表情で俺を煽って来るニセ副船長がとうとう『ダークポケモン』と決定的な言葉を口にした。
イエローはその名称を聞き、相変わらず恐怖の目でマタドガスを見ながら呟く。その体は細かく震え、男の言葉を聞くのがやっとという具合だ。
「そもそものきっかけは1年前。……そう、テメエがボスに恥を掻かせやがったあの時だ」
「あの時?」
いや、そういえばさっきも『ボスに恥を搔かせた時とといい』って言っていたな。
そしてコイツ等のボスと言えば当然、サカキのことだろう。つまり……俺がサカキと戦った、去年のトキワジムでのバトルのことか?
確かに、俺とピカチュウを舐め腐ったお返しに恥を搔かせてやったが……あれとダークポケモンがどう繋がるというのだろう。
「あの時、色々と条件が特殊だったとはいえ、当時まだ正式にトレーナーにもなってねえテメエに負けたボスは……『最早カントー・ジョウトのみに力を求める段階にはない』と、更なる力を世界中からお求めになられた」
話していて腹でも立ってきたのか、また男が強い怒りの表情を俺に向けてくる。
というか、あの時あの時と、どうも妙にトキワジムでのバトルに触れる時に強く情感が込められているような気が……コイツもあの時あの場にいたのだろうか。
まあ、ロケット団ならトキワジムにいることはそう不思議ではないけど……いったい、誰なんだコイツは?
「……ん?」
いや待て、『ボスが俺に負けたせい』って今言ったかコイツ。……言ったよな、うん。そんなようなことを言った。
……え゛? ちょっと待ってちょっと待って!? え、今コイツがダークポケモン使ってるの、俺の所為なの!?
「するとだ、面白い拾い物をしたわけだ。オーレっつう地方でつい最近レオって奴に壊滅させられたっていう、『シャドー』っつう組織の残党をな。でだ、そん中には随分と面白い技術を……ポケモンをダークポケモンに改造する技術を持ったヤツが含まれていた訳よ」
「はあ!? シャドーの残党ぉ!?」
「あ? なんだ、知ってんのか? この国じゃあそんな有名な組織じゃ無かった筈だが」
男が俺の反応を訝しむが、正直俺はもうそれどころじゃなく、突然叩き付けられた数々の情報を処理するので一杯になっていた。
まず、レオに壊滅させられたシャドー残党のロケット団合流。これだけでもとんでもない事態だが……そう言われると、確かに思い当たる節がある。
レオがシャドーを壊滅させたというのは、『ポケモンコロシアム』のストーリーのことだろう。そして先に軽く触れた通り、『ポケモンコロシアム』には続編である『ポケモンXD 闇の
そしてこの2作品の間の空白期間は、これまたさっき触れた通り5年と結構な開きがあるのだが……実はシャドーという組織は、この2作品共通の敵なのである。あるのだが……この2作品のシャドーは組織名こそ同じではあるものの、中身はそれぞれでまったくの別物なのだ。
(そう、シャドーは2作品それぞれで、ボスも幹部も戦闘員も、その中身が全員変わっている! 5年の間に組織図が完全に書き換わった組織! そして、レオによって壊滅させられた最初のシャドー構成員の中には……
いや、間違いないだろう。考えたくも無いことだが……恐らくは。
(ロケット団に、拾われた……! ロケット団と、シャドーの一部が合流だって……!?)
最悪だ。これ以上ないくらいに最悪だ。原作だと、初代シャドーのその後はほとんど不明だったが……少なくともこの世界では、ロケット団にその一部が吸収されたのだ。
そしてその結果、ダークポケモンの技術がロケット団の手に渡り、こうしてダークポケモンが生み出されている。……恐らくもう既に、このマタドガスだけではなく、もっと大勢のポケモンがダーク化改造を施されているに違いない。
それも、俺とピカチュウがサカキに勝ったことの、結果として。……最悪だ。本当に最悪のバタフライエフェクトだ。
「そんで、手に入れた新技術で改造を施したのがこのダークマタドガスって訳よ! こいつは良いぜ、本当に最高だ! 普通のポケモンより強力な技を使えるようになってて、1年目でバッジを2つ取るようなスーパールーキーも一方的に打ちのめす! それでいて、どんなヘボトレーナーの指示にも忠実に従う道具さながらの自我の無さ! 正に最高の戦闘兵器だ!」
「くっ……!」
トレーナーとして決して許してはいけない暴言を言う目の前男に対して何か一言言ってやりたいが、それも自分に責任の一端があるのかもしれないと思うと、上手い言葉が出てこない。そんな道理は無いと善意ある第三者なら言ってくれるかもしれないが、こういうのは理屈じゃないのだ。
「ところでよ、不思議に思わねえか? なんでこうもベラベラと、俺が色々教えてやると思う?」
「……知るか」
自分の語りで興奮したのか、更に調子に乗った表情でこちらを嘲りながらニセ副船長が問いかけてきた。
俺は正直もうそんな些末事はどうでもいいぐらいの気持ちなので、自分でも驚くほど冷たい声で返答したのだが、それすらも目の前の男には気分を良くする材料でしかないようで、更に笑みを深める。
「そう釣れないこと言うなよ。それはな、もう何をテメエ等に知られようが、何にも問題が無いからよ。言っただろう? 冥途の土産ってよ。……さっき、そこの小娘を一方的に倒してやったことで確信したのさ。このダークマタドガスさえいれば……レッド、テメエを過剰に警戒する理由なんかもう無いんだってなぁ!!!!!」
「なっ!?」
そう言って、ニセ副船長は体を回転させる。
その勢いで身に纏った服が何故かバッとはためいて飛んでゆき……中から、ほぼ全身黒ずくめで、胸に大きく赤い「R」が描かれているロケット団の団員服を纏った男が現れた。
「お、お前は……!」
「!!!!! ピカ、ピカピカピカ、ヂュウウウウウウウウッ!」
腰のベルトには変装に使うらしい、メイク用の化粧道具。紫の髪、タレ目で泣きぼくろ。今でこそ怒りと興奮の表情をしているものの、常ならば飄々とした物腰を感じさせそうなその顔。
俺は、その顔にとても覚えがあった。そして俺の横にいたピカチュウも、その男の顔を見た途端に答えに辿り着いたようで、尻尾を激しく逆立て、マスコットキャラがしてはいけない凶悪な顔で威嚇を始める。
そうだ、俺はコイツを見たことがある。ピカチュウもだ。気配に覚えがあるという俺達の感覚は間違ってはいなかったのだ。
それは、さっきの推測通りトキワジムでのバトルの時。コイツはあのバトルの審判をサカキに任されていた。だから、その
そして他の要素……レベルの高い変装術、しかしお粗末な演技力、手持ちにはドガースとマタドガス。これら全てが、1人の男の名前を指している。
そう、コイツは――!
「――ラムダ!!!!!」
「へっ、そうよ! 俺こそがロケット団4幹部の1人にして……今、ここでテメエに引導を渡す男、ラムダ様だ!!!!!」
そう男……ラムダは、今までで一番威勢の良い顔で名乗りを上げた。
ラムダ……原作ゲームでは第4世代にあたる『ハートゴールド/ソウルシルバー』で初登場した、ロケット団四幹部の内の1人だ。
その物語内では、主人公に軽く捻り潰される程度の実力しかない『ドガース5体にマタドガス1体』という、ネタとしか思えない手持ちポケモンを率いる幹部なのだが……どうやらダークポケモンを手にしたことで、相当に強化されているようだった。
「――副船長様ー! すみません、レッドがこっちに……あ、いやがった!」
「あ、変装解いてる! ラムダ様ー!」
「……お、なんだ。何か色々話してる間に、お前らに出し抜かれた部下達も戻ってきたな。こりゃ良い」
「な!? く、ダークポケモンや
どうやら、標的に自分達がスルーされたことに気付いた下っ端達が、話をしている間にデッキに到着してしまったらしい。気を付けて波導を探っていたつもりだったのだが……次々と突き付けられた現実に気がそぞろになりすぎた。
せっかくショートカットしてリーフ達と合流できても、これじゃあ片手落ちだ。我ながら間抜け過ぎるチクショウ!
「ごめんなさいラムダ様ぁ! 下の階の応援にはちゃんと行ったんですけど、そいつ等なんでかいなくなってまして!!」
「一体どうしてと思ったら、1階まで天井がぶち抜かれてるのに気付いて、慌てて戻ってきました!」
「黙りやがれこのマヌケ共、まんまと出し抜かれがって! ボスにはしっかり報告するからな、後で覚えていやがれよ!」
「ヒイイイイ! それだけはご勘弁を!」
「勘弁してほしかったら今からちゃんと働くんだな! ――さあて、こっちの戦力も充実したことだし、いい加減、最終ラウンドと行こうじゃねえか。あんまりダラダラ長引かせてると、港の国際警察どもも突入してくるだろうしな。テメエもそこの小娘みてえに、あっという間に片付けてやるぜ。……おい、テメエ等仕上げだ!」
「「「「「おおおおおッ!」」」」」
ニセ副船長の言葉に、イエローとデッキの乗客達を取り囲んでいた下っ端達、そして合流してしまった下階層から俺達を追ってきた下っ端達が咆哮する。
くそ! ……ともかく、これ以上はもう考え事をしている時間は無い!
「チッ! おいリーフ、ちょっと待ってな! おにーさまがこんな奴等すぐに蹴散らしてやる! そこで俺のライバルを倒すとか言ってる、ふざけた野郎も含めてな!」
「いや、グリーンは、リーフをイエローと一緒に頼む。あの下っ端達から守ってやってくれ。俺は……
「はあ!? 何言ってんだ、俺だってこいつに
「頼む! やらせてくれ!!!」
「……クソが、貸し一だぞレッド! ぜってー勝てよ! ――行くぞ、ラッタ! ピジョン! ユンゲラー!」
「れ、レッドさん……!」
「頼むイエロー、もう少し踏ん張ってくれ! コイツは……必ず俺が倒す!」
「……わかりました! 怖いけど、ホントに怖いけど、レッドさんが傍で戦っていてくれるなら……ボクだって、もう少しだけ! ――チュチュ! ゴロすけ! コリンダ! お願い!」
「おっと、我々を忘れては困るなお嬢さん!」
「私達だってまだまだいけるぞ!」
「皆さん……ありがとうございます! レッドさんが必ずアイツを倒してくれるので、それまでよろしくお願いします!」
グリーンとイエロー、そして先程までイエローと共に戦ってくれていた乗客達が改めてリーフを庇う陣形を取り、ポケモンを繰り出す。
よし、イエローはどうやら俺が来る時まで大量の下っ端相手に持ち堪えられていたようだし、そこにグリーンも加わった。これなら心配する必要は無いだろう。
後は……俺がラムダを倒すだけだ!
「ラムダ! リーフの仇、取らせてもらうぜ! ――最初から全力全開でいくぞ、ピカチュウッ!!!!!」
「ピッカアアアアア゛ッ!!!!!」
「言ってろクソガキが! テメエを叩き潰す俺様の名前……しっかり脳ミソに刻み付けていきやがれ! ――行くぞぉッ! マタドガス!」
「………………………………」
――ロケット団幹部のラムダが勝負を仕掛けてきた!!!!!
後書き
というわけでぇ……散々引っ張ってきた、今回の事件に関わっているロケット団ネームドキャラは「ラムダ」でした!
皆さん、意外と回答に幅がありましたが……これは作者のヒントの出し方が下手糞過ぎだったかな。次は気を付けます!
そして、前書きの更新・修正履歴に書いた、今回の投稿と同時期に各キャラや各ポケモンの設定を一斉更新ですが……箇条書き部分を表形式にしたりして(作者に)見易くしただけで、肝心の内容はほとんど更新されていないのでご注意ください。
そして今回、この大幅改訂作業をして思ったことが1つ。……ハーメルンさん、特殊タグに折り畳み機能とか追加してくれないかな……。
さて、次回は『VS ロケット団幹部ラムダ』となります。
ラムダがレッドへの警戒を忘れ、ここまで自信満々になるダークマタドガスの秘めし力とは? そしてレッドとピカチュウはどう戦うのか?
サント・アンヌ号編もいよいよクライマックスです。
では皆様、またお気を長くしてお待ち頂けますと幸いです。ご感想、誤字脱字のご報告もお待ちしております。
*1
①天ノ羽々斬様
②蜜柑25963様
③通りすがりのハーゼ様
④MSTSM様
ラムダが操るダークマタドガスに、どうやら一方的に負けてしまったらしいリーフ。何故そこまで一方的に負けてしまったのか?
-
レベル差により発生する、技威力の差
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ダークポケモン特有の能力、技
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両方で理解らされた