原点にして頂点「アルセウス様ありがとうございます。でもいつか一発殴らせてください」   作:ゴーイングマイペース

48 / 49
前書き














|・ω・*)チラ


030(カントー19) クチバシティ(サント・アンヌ号) 10歳 10

5月○×日 10ページ目 10歳 クチバシティ サント・アンヌ号

『一難去って』

 

 

「よう、丁度そっちも終わったみてーだな」

 

 背後からの声に振り返ると、少し疲れを感じさせつつも「やりきった」顔をしたグリーンがすぐ後ろにいた。

 

「おー……そっちも終わったか」

 

「ピカー……」

 

 返事をしつつ、グリーン達が戦っていた方へと目をやる。

 すると、共に戦ってくれていた紳士ら乗客の手によってお縄になっている下っ端達の姿があった。

 一様に笑顔で明るい雰囲気で下っ端達を縛り上げている様子からして、大過なく勝利を収めたようだ。

 

「うん、皆、怪我が無さそうで良かった……俺は……ダメだ、疲れた」

 

「なんだよ、この俺様のライバルがそんなダレた声出しやがって。あの薄ら笑いヤロウ……っつうか、あの妙なマタドガスか。そんなに強かったのか?」

 

「強い、うん、強かったんだけど……それだけじゃないっていうか。色々な要因が合わさって、とにかく厄介だった。……もし、このマタドガスと同じようなポケモンをロケット団がこれから先、使い出すとしたら……かなりマズいことになるかもしれない」

 

 今は手の中にあるモンスターボールを眺めながら、改めてさっきまでのバトル……戦闘を思い出す。

 40という高レベル(捕まえてから確認した)、最悪の手段により5年も時代を縮めたことによる『ダークわざ』の力……どっちかだけならともかく……本当に、厄介なんてものではなかった。

 ピカチュウの高いステータスと優れたセンス、そしてルール無用という条件が無ければ……負けはせずとも勝てもせず、時間切れとなってラムダには逃げられていたかもしれない。そしてイエローも……。

 

「ふーん……? でも、結局は俺達みたいな旅立って1ヶ月のガキにも負けるようなチンピラ集団だろ? そりゃリーフは負けちまったみたいだけどよ……それだってそのマタドガスだけ飛び抜けて強かったってだけで、後はみんな弱い手持ちだったみたいだし……考え過ぎじゃね?」

 

「……グリーン、お前、自分は下っ端としか戦わなかったからって、ロケット団を甘く見過ぎじゃないか? そりゃ大半の団員はお前の言う通りただのチンピラだけど……あれでも歴とした『ポケモンマフィア』なんだぞ。でなきゃリーフがそこらのチンピラに負けるかよ」

 

「はっ、じゃあリーフはまだまだだったってだけで、そんでお前はビビり過ぎなんだよ! あんま深刻に考えんなって、次ヤる時はリーフももっと強くなってるだろうからもう負けないだろうしよ。……いや、なんなら可愛い妹の為に俺が全部倒しちまおうかな! ハハハハハッ!」

 

 ロケット団を壊滅させ英雄になった自分でも想像したのか、機嫌良さそうに大笑いするグリーン。どうやら今回の事件でロケット団の下っ端集団相手に勝利したことで、大分自信を付けた(お調子に乗ってしまった)らしい。

 

 ……大丈夫かコイツ、その内どっかで痛い目に遭って取り返しのつかないことにならなきゃいいけど。

 今言ったようにロケット団はなんだかんだ言ってもカントー・ジョウトにその悪名を轟かせているマフィアなんだし、今回のリーフみたいにバトルで負けただけで済むなんていうのは大分運が良い方だってことが分かってるんだろうか。

 

「ピカ、ピカチュウ」

 

「え、あ、そうだ、リーフ! それにイエロー! 2人は!?」

 

 と、俺の隣でぐでっと転がっていたピカチュウが「リーフとイエローは?」聞いてきた。

 そうだよ、2人は!? あと船長!

 

「ああ、向こうで祝勝ムード全開の乗客のオッサン達に囲まれてるぜ」

 

 グリーンが指を指す方を見れば、確かにそこには勝利の喜びに沸き立っている乗客達に囲まれている2人(あと船長)の姿があった。

 良かった。いやよく考えればグリーンがこの場にいるんだから一緒に戦っていたイエロー、そしてリーフが無事なのは当然なんだけど……良かった。

 

『いやあ、本当に凄かったよイエローちゃん!』

 

『君は正に勝利の女神だ!』

 

『どうだね、是非ウチの息子の……』

 

『いやっ、あの、ボクはその、そんなたいしたことなんて全然!』

 

「……ん?」

 

 いや、2人というか……イエローを囲んでて……なんかどっかで見たことある雰囲気なような。

 ……アイドルに熱中してるファン集団? いや、そりゃイエローはかなり可愛いけど……なんであんなに大勢からあそこまで熱狂的に褒め称えられてるんだ?

 

「見ろよ。イエローのヤツ、すっかり勝利の女神サマ扱いだぜ。なんせ一緒に戦ってた俺等のポケモンの回復まで一手に担ってたぐらいだからな。まあ、もし誰か1人、今回の下っ端との戦いでのMVPを挙げるとしたら俺も正直アイツに譲るけどよ。……体力も状態異常もあんな一瞬で回復させるとか、マジでなんなんだアイツ」

 

「え? 状態異常を?」

 

「ああ、体力を回復させるのと同時に治してた。トキワ人がポケモンを回復させられるのは知ってたけど、中にはああいう凄いのもいるんだな。こう言うとアレだけど、確かにロケット団がわざわざ警察が近くにいるのを承知で踏ん張ってでも攫おうとするだけあるわ」

 

「……それは」

 

 おかしい、確かにイエローはポケモンに「さいせいりょく」を付与するという形でバトル中に迅速な回復をさせる、公式大会出禁級の【力】を持っているけど……状態異常まで回復させるほど強力だっただろうか。

 というかそれじゃあ、まるで「さいせいりょく」だけじゃなくて……。

 

「悪いグリーン、もうちょっと詳しく「レッド君、グリーン君、待たせてスマナイ!! 今加勢する……あれ?」……すみませんハンサムさん、もう終わっちゃいました」

 

「な、なんだってぇ!?」

 

「……おっせーよ、オッサン。もう全部終わっちまったよ」

 

 ――と、頭に浮かんだ疑惑について確かめる為にグリーンからもう少し詳しい話を聞こうとしたが、しかし次の瞬間、息せき切って登場したハンサムさんの大声で遮られてしまってしまった。

 タ、タイミングが絶妙に悪い……! いや、この人に悪気は無いどころか、俺達を心配して急いで来てくれたのはその滴る汗と荒げた息からメチャクチャ伝わってくるんだけど……!

 

「す、すまない。結局君達に肝心な所を全て任せる形になってしまって……っと、そうだ! この事件の首謀者がこの場にいた筈だが、何処に行ったか知らないかい!?」

 

「……えーっと、それもすみません。向こうの方にブッ飛ばしちゃいました……」

 

「……ブッ飛ばした?」

 

「……はい」

 

「……そ、そうか。いや、何と言うか……凄いんだね、君は」

 

 さ、さっき船に大穴を開けた時と同じ目を向けられている……! おかしい、いや確かに捕まえた方が良かったのは分かってるんだけど、腹が立ってたからつい思いっ切り……っておいグリーン! 「うんうん」頷いてんなよこの野郎!

 

「グレッグレッ」

「ゼ、ゼニィ……」

 

「ああ、いや、気にしなくて良いよ。ありがとなお前等」

 

 と、ハンサムさんの反応で俺が気を悪くしたと考えたのか、グレッグルに謝まられてしまった。

 そしてゼニガメは……うおお、目をキラキラさせて俺とピカチュウを見てる……「す、すごい……」って尊敬の眼差しを向けてきている……! この事件で関わったほとんどの人達が俺をドン引きした目で見てる中で、なんて良い子なんだ……!

 

「……と、ともかく、そういうことならこうしちゃいられない、ヤツを今すぐ捕らえなければ! あの男には聞きたい事、確かめなければいけないことが山ほどあるんだ!! 失礼、また後で時間をくれ!!!」

 

「あ、はい……また後で」

 

「……なんつーか、絶妙に締まらねえというか……なんか気が抜けるよな、あのオッサン」

 

 また慌ただしい様子で俺がラムダをブッ飛ばした方へと走り去っていくハンサムさんに、グリーンは何とも言えない脱力した顔をしていた。

 

「――まあともかく、これで後はハンサムさん達国際警察に任せれば大丈夫だな!」

 

「ああ、だな。ったく、こんなことに巻き込まれるならじーさんの名代なんか引き受けなきゃ良かったぜ」

 

「よく言うぜ、『ボンジュール』とか言って浮かれてたくせに」

 

「それはもういいだろうが!!! ――あ」

 

「ん? なんだよグリーン、脅かすなよ。早くリーフ達の所に行きたいのに、まだ何か……あ゛っ」

 

 そのまま一件落着と弛緩した空気が流れたと思ったら、グリーンがまるで見てはいけない物を見た、とでも言うかのような声を発した。

 一体何だと俺もそちらを見ると……そこには。

 

「…………………………………………」

 

 ――船底の倉庫で捕まっていた、本物の副船長さんがいた。

 そして、静かに、悲しそうにする彼の視線の先には……俺達のバトルの余波で半壊した、つい先程までの豪華絢爛さとはかけ離れた様相へと劇的ビフォーアフターを遂げたサント・アンヌ号の甲板が。

 う、うん、そりゃそうですよね。船長が体調絶不調でしたし、副船長である貴方がね。事態が収束したら確認にも来ますよね、職場ですし。

 

「……………………………………………………………………………………」

 

 次いで、ふっ、と動かされた視線の先には……あっ、そっちの方は……ここからは見えないけど……俺が空けた、というかぶち抜いた……吹き抜けがある方、です、ね…………。

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

「大変申し訳ございませんでしたぁああああああッ!!!!!」

 

 

 

 明日からしばらくの俺の予定が、サント・アンヌ号の修理作業の手伝いに決定した瞬間であった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

☆緊急クエスト!:ダークマタドガスを倒せ!

 

 

必須(メイン)条件:達成

任意(サブ)条件:達成

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだって? どこにも!?」

 

「は、はいハンサムさん……そのレッド君が吹き飛ばしたという方向をどれだけ捜索しても、どこにも姿が見当たりません!!」

 

「……………そうか、わかった。クソッ! 逃がしたか……!!!」




後書き

 気が付けば4月……今年も厳しい冬でしたが、皆様はいかがお過ごしであったでしょうか。
 作者は転職活動したり、Switch版ファイアレッド・リーフグリーン発表に伴いとうとうSwitch2と中古Switchを購入したり、レッツゴーピカチュウ&イーブイに手を出したり(現在カントー4タイトル同時進行中。やっぱりフーディンはカントーにて最強)と色々気ままにやってました。楽しかったです。(小並感)
 そのうち他のSwitchで遊べるタイトルにも手を出したいなぁ。

 そしてすみません。サント・アンヌ号編はこれで正真正銘終了で、そして前回、エピローグ後にクチバジム戦と言いましたが、ちょっと長くなってしまったので分割します。
 多分次々回ぐらいにジム戦になりますのでご承知おきください。


 では皆様、またお気を長くしてお待ち頂けますと幸いです。
 お気に入り登録、高評価、ご感想、誤字脱字のご報告もお待ちしております。*1

*1
2025/12/24 ~ 2026/04/02にご感想をくださった方々です。まことにありがとうございました。
①蜜柑25963様
②オレンのみ様
③猿の守護者様

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。