原点にして頂点「アルセウス様ありがとうございます。でもいつか一発殴らせてください」   作:ゴーイングマイペース

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前書き

 サント・アンヌ号事件 エピローグ



※更新・修正履歴

2026/04/09
①サブタイトル修正


031(カントー20) 10歳 クチバシティ11

5月○△日 10歳 クチバシティ ポケモンセンター

『俺のガールフレンドが理解があり過ぎる良い子で辛い』

 

 

 一夜明け、翌日。

 

 サント・アンヌ号での事件によって疲れ切っていたリーフ、イエロー、グリーンはポケモンセンターへと帰還後、事件の話は明日へと後回しという事で食事や風呂もそこそこに寝床に潜り込み、皆揃って朝の遅い時間まで起きてこなかった。

 俺も、普段は早寝早起きを心掛けているのだが……流石に今日ばっかりは皆と同じように熟睡してしまった。きっと火事でも起きなきゃおきなかっただろう。いや、例え火達磨になっても起きなかったかもしれない……だってホントにキツかったし……。

 

 そして昼、流石に正午頃までには皆の再起動が済んでいたので食卓を囲み、改めて昨日の事件について話をした。

 俺とグリーンの船内での戦い、リーフとイエローのデッキでの戦い、ダークポケモンもといRDポケモン、ダークマタドガス、ピカチュウが使った謎の電撃技(あとでアルセウスフォンで調べておこう)、波導スナッチボール、などなど……俺が午後からサント・アンヌ号に行かなきゃいけなかったので、それぞれ手短に話を済ませたのだが、流石にこの話題についてはそうはいかなかった。

 

「――えっ!? それじゃあ、あのニセ副船長さん……ラムダ、でしたっけ。逃げられちゃったんですか!?」

 

「ああ、さっき電話があってな。ハンサムさんに謝られたよ。……悪いのは衝動的にブッ飛ばしちまった俺だと思うんだけどな」

 

 そう、よりにもよって首謀者であるロケット団幹部、ラムダに逃げられてしまったのである。

 俺がハンサムさんへとラムダをブッ飛ばした方向を教えた後、その方向を虱潰しにし、結果、着弾したと思われる痕跡を発見したらしいのだが……その後の足取りは完全に途絶えていたらしい。

 それでも調査をしたところ、どうやらその痕跡から微かなサイコパワーが検出されたらしいことから、恐らくは“テレポート”を使えるエスパーポケモンを連れていたようだ、との結論が出たそうだ。

 ……完全に俺の失態である。画竜点睛を欠く、どころじゃない……クソッ!

 

「……レッドはちゃんとやってくれたよ。イエローが攫われるのを防いで、私の仇を討ってくれた。……あと、グリーンもね」

 

「おーい妹ー、お兄様をついでみたいに扱ってんじゃねえぞー」

 

「……だってついでだし」

 

「兄貴に対しての扱いじゃねえだろ! くっそ、今に見てろよ。必ずレッドを次のポケモンリーグでギャフンと言わせて『お兄様カッコいい!』って言わせてやるからな……!」

 

「ふふっ、あははっ」

 

 グリーンとリーフの心温まる()やり取りを見て、「ラムダが逃げた」という話を聞いて少し怯えていたイエローも気が抜けたのか笑みを零す。そしてその光景を見たことで、俺の胸の内に湧き上がりかけていた自責の念も少しだけ和らいだ。

 

 うん、なんだかんだとあったけど、こうして皆揃って次の日を迎えられた。結果を見れば決して悪い方向に転がった訳じゃないんだ。

 勿論、全てが円満に終わった訳じゃない。ロケット団の勢力がこれで衰えたわけでもないし、昨日ラムダの言っていたことが本気だったなら、またイエローを狙ってロケット団が俺達の目の前に現れるだろう。

 

 ならいつまでもクヨクヨせず……そう遠くない内にあるだろう次を見据えて、自分と仲間を磨くことに専念しよう。

 

 

 

 

 ――ちなみに、ダークマタドガスを捕まえるのに使用した「波導スナッチボール」だが……なんとも忌々しいことに、あの邪神が煽って来やがった通りに「波導でモンスターボールを弄ってポケモンを奪えるようにした」という普通どう考えても受け入れられないだろう説明には、誰1人として疑問を持ってくれなかった。

 

「え? レッドさんなら別にそれくらいやれてもおかしくないですよね? だってレッドさんですし」

 

「ギャハハハハハハッ! 良かったじゃねえかレッド、お前のことをよーく理解してるガールフレンドでよ! ハハ、ハハハハハ!!!!」

 

「……イエローも、だいぶレッドに染められてきたね。……順調、順調」

 

 俺は泣いた。

 

 

 

 

 

5月○△日 2ページ目 10歳 クチバシティ クチバ港

『船大工歴30年にして我、新たな未知に遭遇せり(by現場監督)』

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「じゃあ、今日から1週間よろしくお願いします!」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「あ、ああ……よろしく。……ところで、1つ聞いて良いかな」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「? はい、どうぞ」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 午後、約束の時間になったので、事前に伝えられていた集合場所までやって来た。

 そして、今日からしばらくお世話になる修理業者の監督さんに挨拶をしたのだが……何やら俺を見て、昨日ハンサムさんその他の人達が俺へ向けていたのと同じような視線を向けてきていた。

 ……えっ、なんで? まだ何も始まってすらいないんだから、おかしなことはしていないはずなんだけど……一体どうしたんだろうか。

 

「……それ、どうやってるんだい?」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「それ……ああ、この16体分身ですか? これは波導の力で作った分身です! 何せ俺が壊してしまった船を修理する手伝いですから! 力の限りやらせていただくつもりです!」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 どうやらこの影分身のことを聞きたかったらしい。確かに、突然同じ顔をした小僧が16人もやって来たら不審に思って当然である。

 いかんいかん、この手伝いはお詫びでもあるからと、普段はマサラで控えポケモンの面倒を見させている分身も総動員して全力で臨もうと思っただけだったんだけども……ああ、作業人数で段取りとかも変わってくるだろうし、事前に言っておくべきだったかな。

 うん、配慮が足りなかったな。反省しなければ。

 

「……えーと、じゃあ、頼むよ」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「はい、よろしくお願いしまっす! しゃー!! やるぞー!!!」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「……え、俺が面倒見なきゃいけないのこの子? え? 1週間? ……マジで?」

 

 さあ、やるぞ! バリバリ働いて早く修理を終わらせて、そしたらクチバジムに挑戦だ!

 

 

 

 

 

5月○☆日 10歳 クチバシティ クチバ港

『なんか16つ子だって子達が爆速で修理に使う資材を運んできてくれるんだけど……え、分身?(by作業員A)』

 

 

 修理開始から2日目……なのだが、流石は謎技術力でお馴染みポケモン世界というか、サント・アンヌ号修理作業は早くも佳境を超え、終盤に突入しようとしていた。

 なんならマタドガスの“だいばくはつ”で開いた穴や、俺がぶち抜いた吹き抜け穴は既に綺麗に塞がれてしまっているくらいである。

 

 当然というか俺は素人なので資材運搬程度しか仕事が無く、実際の修理については傍から見ているしか無かったのだが……その余りにも早い修理作業の様子は、修理というよりもまるで時間を巻き戻しているかのようで見ていて面白かった。かがくのちからってすげー!

 

 

 

 

 

5月○◇日 10歳 クチバシティ クチバ港

『ポケモン世界で生きるのに何が1番欲しいかって言われたら、オーキド博士とのコネかもしれない』

 

 

 修理作業3日目。

 大方の修理は終了! あとは明日1日かけて内装など細かい所を整えて修理は完了するらしい。

 正直、もっと長期間拘束されることを覚悟していたので、これは嬉しい誤算だった。ポケモン世界の超科学に感謝である。

 

 というわけで俺のタスクは順調に消化されているわけだが、実はこの間、俺のポケモン達はピカチュウも含めマサラタウンに行って貰っている。

 単純に俺がサント・アンヌ号に掛かりきりになるのが理由だが、それ以外にも、ピカチュウがラムダとの決着の時に使ったあの強力な電撃……“ピカピカサンダー”の特訓を望んだからだ。どうもあれ以降まったく発動できないようなので、腰を据えて習得したいらしい。

 

 アルセウスフォン曰く、“相棒わざ”と呼ばれる強力な専用技らしいので是非とも完全習得して欲しいが……どうも大分苦戦しているようなので、俺が修理作業から解放されるまでの間に習得することは難しいだろう。

 とはいえ焦る理由もないので、それは別に構わない。これから2人でゆっくりと習得の為の修行をしようと思う。

 

 あと、マサラタウンに送ったポケモンの中には、ラムダから奪ったあのマタドガスもいるのだが……色々と考えた結果、オーキドのじっちゃんへと託すことに決めた。

 

 勿論、始めは原作ゲームのように連れ歩き、「リライブ(ダークポケモン化解除)」をしてあげようと考えたのだが……よくよく考えてみると、「このマタドガスを原作のダークポケモンと同じように扱うのは大変危険なのではないか」という可能性に思い当たってしまったのだ。

 なにせ、このマタドガスはシャドーとロケット団というダブル悪の組織の技術ミックスというクソみたいな恐竜的深化をした改造技術の犠牲者、という時点で原作のダークポケモンとはだいぶ異なるのだ。というか「RDポケモン」などとラムダが言っていた以上、明確に原作とは異なると考えるべきだろう。

 

 というわけで、マタドガスを救うのに最も適した手段として、俺が知る限りポケモン研究の最高権威であるじっちゃんとのコネを頼ることにしたのだが……流石と言うか、じっちゃんは俺の頼みを2つ返事で「任せておけ」と快諾してくれた。

 

「ワシのポケモン研究者としてのプライドをかけて、何よりポケモンを愛する1人の人間として必ずこの子を救ってみせるとも。知り合いの学者やポケモンドクター、毒ポケモンの専門家などに声をかけ、すぐに取り掛かる。じゃからお前は安心して旅を続け、ポケモン図鑑の完成に励んでおれ」

 

 もしダメそうなら先のクエストで得たアルセウスへのお願い権を使おうかとも思っていたのだが……とても頼もしい。

 うん、きっとじっちゃんなら必ずマタドガスを救ってくれるだろう。

 

 

 

 

 

5月○φ日 10歳 クチバシティ クチバ港

『いや、君の16人分身も相当助かったけどね? イヤ本当に(by現場監督)』

 

 

 修理作業、 完 全 終 了 ! お疲れさまでしたー!

 

 まさかまさかの僅か4日、いや、1日目は午後になってからということを考えれば実質3日で巨大豪華客船の修理が完了してしまった。

 マジでポケモン世界脅威の技術力である。……と思ったら、どうも今回の事件でイエローのファンになったという、サント・アンヌ号に乗船していた金持ち達が修理費用をカンパしてくれたお陰らしい。

 塞翁が馬なんて言葉があるが、本当に何がどう働くか分からないものである。そう考えると、もしかしたら今回の事件の1番のMVPはイエローかもしれないな。

 

 

 と、いうわけで俺の3日間のタスクは無事に完了した。いやあ、長引かなくて良かった良かった。

 そしてリーフやイエロー達とこの期間でのことについて話してみると、どうやら彼女達も中々に充実した3日間を過ごしていたらしい。

 

 

 まずリーフだが、途中まで楽勝だった筈のラムダに高レベルのポケモンを出された途端に逆転されて敗北したことが相当悔しいようで、この3日間はクチバシティのあらゆるトレーナーにバトルを挑み、腕を磨いているらしい。

 そしてそれだけバトルを繰り返せば当然、高レベルのポケモンを連れた腕の良いトレーナーもいるので、戦績は勝ったり負けたりだったらしいが、それでもかなり充実した3日間を過ごしたようだった。

 

 ……正直言って今回のリーフの敗北は、ラムダが高レベルダークポケモンというインチキを使っていたせいなのも要因として大きいと思うので、そこまで自分を追い詰めるようなことはしなくて良いと思ったのだが……せっかくやる気を滾らせているわけだし、わざわざやる気に水を差すこともないので好きにやらせることにした。

 結果どの程度腕を上げたかは、来たるクチバジム戦で見せてくれることだろう。楽しみだ。

 

 

 次にイエローだが、彼女はリーフに付き添って【力】の使い方を更に練習していたらしい。

 特に、グリーンが言っていた新判明の効果である「状態異常の回復」について改めて確かめたらしいのだが……どうやら確かに、ポケモンの交換時、体力の回復と同時に状態異常の回復も発動したらしい。

 

 つまり、だ。

 

 ――今のイエローはいつの間にか「さいせいりょく(体力回復)」だけではなく、「しぜんかいふく(状態異常回復)」も含めた2つの特性を同時にポケモンへと付与する【力】を身に付けていたらしい。

 

 ……正直言って、これはもう最早「公式戦出禁!」などと言っていられる段階では無い。トキワ人の【力】について俺はそこまで詳しくは無いが、これは素人目線で見て考えても異常な才能だと思う。

 

 念の為、今回サント・アンヌ号から助けたことで仲良くなったクチバシティのジョーイさん(トキワ出身)にも話を聞いてみたのだが、「自分含め【力】によるポケモンの回復は出来ても、一時的とはいえポケモン自身に回復力を付与できる人はあまりいない。それも2種類の特性を付与できるとなると聞いたこともない」……らしかった。

 

 ……こう言っては何だが、ラムダが時間切れの危険を冒してまでイエローを攫おうとするのも頷ける。

 そして、あの時間に合って本当に良かった。イエローが無事だったのは勿論だが、こんな強力な【力】を必要とするロケット団の「目的」など絶対ロクな物じゃないからだ。

 うん、これからはより一層注意してイエローを守らなきゃな。

 

 

 ――と、いうわけでクチバシティでやるべきことは後1つ、ジム戦だけである。

 なので今日はもうゆっくり休んで、明日になったらすぐにでもクチバジムへ挑むとしよう。

 

 

 

 ああ、そうだ。グリーンだが、実はアイツは2日前にもう旅立ってしまった。

 どうやらもうクチバシティのジムバッジはゲット済とのことで、次にジムがある町の中で1番近いタマムシシティに向かう為に、ヤマブキシティのゲートが多少面倒でも通過できる内にとさっさと出発してしまったのだ。

 

 そしてどうやらこのグリーンの考えは正解だったようで、その後俺がサント・アンヌ号の修理作業を手伝っている間にとうとうヤマブキシティのゲートは完全封鎖されてしまった。ということは恐らく、ヤマブキ内部ではロケット団が我が物顔で闊歩しているのだろう。

 そしてこれまた面倒なことに、クチバ東の11番道路はなんと原作通りにカビゴンが塞いでしまっているらしい。ヤマブキのゲートが塞がれてしまった以上、できれば11番道路を抜けたかったが、下手な起こし方でカビゴンを起こすと周囲に甚大な被害が発生するらしいので、東へ抜けるルートも諦めるしかなさそうである。

 

 となると、しょうがないのでクチバの後は原作通りにハナダに戻り、イワヤマトンネルを抜けてシオンタウンに行くしかなさそうだ。グリーンと比べて大分遅れてしまうが、まだポケモンリーグまでには何ヶ月もあるのだし、ここは焦らず俺達のペースで進むことにしよう。

 

 

 ……グリーンはどうやら、タマムシの後はセキチクシティ周りで東へ向かうそうだから……俺達の出発の遅れも加味すると、たぶんシオンタウンでまた鉢合わせることになるかな?

 その時にはきっと更に腕を上げているだろう。ライバルとして再会が楽しみだ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「あー、ったく酷い目にあった。……ぐっ、まだぶん殴られた腹が痛え……レッドの野郎、次会ったときは覚えてろよ……!!!」

 

 タマムシシティの地下。

 「虹色の街」と言われ、カントーでもヤマブキシティに並ぶ大都会として栄えるこの街に存在する「ロケットゲームコーナー」を隠れ蓑としてその真下に広がる空間に、カントー・ジョウトにその悪名を轟かせるポケモンマフィア、ロケット団のアジトはあった。

 

 そして今、そのアジト内にある無数の通路の1つを、先のサント・アンヌ号事件でレッドとピカチュウに倒されたロケット団4幹部の1人、ラムダが怒りの愚痴を吐きながら進んでいた。

 どうやら、最後にレッドに負わされたダメージがまだ尾を引いているらしい。6匹目として連れていたケーシィの“テレポート”で間一髪あの場からの逃走こそ叶ったものの、無事の脱出とはならなかったようだ。

 

「結局、ボスにはヤマブキでの作戦の大詰めが近いからってことで一旦許して貰えたものの……ランスのヤツには散々バカにされちまうし。クソッ、近い内に、なんとかしてデカい手柄を立てねえと……」

 

 ブツブツと呟き続けながらも、明確な目的地を持っているのかその歩みは止まらない。

 やがてラムダはアジトの中でも更に地下深くにある1つのドアの前に辿り着き、ゆっくりとその扉を開いた。

 

「ちっ、あーヤダヤダ。ここはいつ来ても陰気な雰囲気が充満してて気が滅入るぜ。いや、“あの野郎”が来る前はもうちっとマシだったか? ……どうでも良いか」

 

 扉の先にある部屋。

 その内部は、一言でいうと……地獄。その言葉1つに尽きた。

 

 右を向けば、原形すら分からない程に分割された生物の部位のビン詰めが並ぶ棚や、ホルマリン漬けのポケモンが収まる巨大なカプセルが並び。

 左を向けば……「処分」と記された、何やら大きな袋が山積みされたスペースがある。袋の中身については……その他の部屋の内装から、推して知るべし、というべきだろう。

 

「――来てやったぜ。で、わざわざ呼び出しやがって何の用だ……ボルグさんよ」

 

 そんな、ポケモントレーナー、いやまともな人間であれば1秒だって耐えられない空間の更に奥まったスペースへと辿り着いたラムダは、そこにいた男――オーレ地方の悪の組織「シャドー」の元幹部にして、元ダークポケモン研究所の所長であるボルグへと、自分がここの暗い穴倉にやって来た理由、つまり「何故自分を呼び出したのか」について尋ねた。

 

「なに、いくつか聞きたいことがあってな。そうだな、まず、オレの最新作はどうだった?」

 

「ああー強かったよ。……生憎、それでも負けたがな! テメエ、大層自慢してやがった癖に、いざ蓋を開けて見りゃあザコ相手にしか通じねえ中途半端なガラクタじゃねえか! ふざけやがって!!!」

 

「そう怒るな。オレにとってもRDポケモンはまだまだ未知の領域、発展途上の分野なのだ。……で、ここからが本題なのだが」

 

 最近加入したばかりの筈だがもうすっかりロケット団に馴染んでいるのか、気安くラムダに語りかけたボルグは、ラムダの怒りを涼しい顔で受け流した。

 そして一応は聞いてみたといった様子で、そこまで重要な質問ではなかったのか、ラムダからの罵倒もそこまで気にしていないようだ。

 

「あ? なんだよ」

 

「なに、お前からの今回の報告の中に、是非ともお前自身の口から確かめたい事柄があってだな。……サント・アンヌ号で君が攫おうとしたトキワ人の少女……このイエローという子供が見せた【力】、これは確かな話か?」

 

「誇張はしてねえし過少にも言ってねえ。俺が見たまんまをそのまま報告した。……なんだよ、確かにこれまで攫ったトキワ人と比べても別格の【力】だったが、わざわざ俺を呼び出してまで聞くことか?」

 

 ラムダはボルグの意図が掴み切れず、逆に質問を返す。

 が、ボルグはラムダの返答を聞くと――大声で笑い出した。

 

「――ククク……ハハハハハッ!!!!! 見つけた、遂に見つけたぞ!!!!!」

 

 特徴的な前髪を振り乱す勢いで身体を捩らせ、嬉しくて堪らないと言わんばかりに腹からの笑い声を響かせ続けるボルグ。

 そんなボルグを見て、ラムダは訳が分からず改めて質問を繰り返した。

 

「うおっ!!? な、なんだ、急に騒ぎ出しやがって! あのイエローってガキがなんだってんだよ!」

 

「ウフフッ、ククク……っと、スマンな。いやなに、今すぐどうこうという話ではないのだが……あの計画の目途が立ったものだから、ついな。フフフフフ……」

 

「計画? ……って、そりゃあ、まさか」

 

「ああ、そうだ」

 

 そして、一頻り笑ったボルグは息を整え――自分の言葉を聞いて、初めて喜色を浮かべたラムダに向かって、彼の期待通りの言葉を返した。

 

 

 

 

 

「お前の言う通りの強力な【力】を見せたのなら、その子供こそがボスの悲願――『RD-M2計画』のカギとなるかもしれん」




後書き

 ちょっと情報を詰め込んだ回となりました。
 そして! 次回とうとうクチバジム戦となります! お楽しみに!!


 では皆様、またお気を長くしてお待ち頂けますと幸いです。
 お気に入り登録、高評価、ご感想、誤字脱字のご報告もお待ちしております。*1

*1:
2026/04/02 ~ 2026/04/07にご感想をくださった方々です。まことにありがとうございました。
①天ノ羽々斬様

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