原点にして頂点「アルセウス様ありがとうございます。でもいつか一発殴らせてください」 作:ゴーイングマイペース
オヒサシブリデス(小声)
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――ロケット団へと入団し、そろそろ1年となる。
この1年でオレは、シャドーで培ったダークポケモンの知見、あるいはロケット団が持つ優れた遺伝子改造技術を活かし、様々な研究を重ねてきた。
その結果、オレはシャドーにいた時は至れなかった、ダークポケモンの新境地へと至ってみせた。
――
更に最近では、これは偶然でこそあったものの、ボスから特別に言い付けられていた「
尤も、事前に聞いていた報告通りなら随分と厄介な子供に守られているようなので、入手まである程度時間はかかるだろうが……そこはヤツ等に頑張ってもらうとしよう。
……フン、これ以上はオーレでのイヤな過去を思い出しそうだ。これ以上はやめておこう。
ともかく総合して、この組織に来てからは充実した研究を行えており、順風満帆であると言えるだろう。
……オーレで全てを失ったオレを拾い、再び最高の研究環境を与えてくれたこの組織とボスの恩には、オレなりに報いなければという気持ちがある。そして、今の研究はそのボスがオレの技術を信じて任せてくれた任務だ。必ずや期待以上の成果で報いてみせる。
……さて、そろそろ仕事に戻るとしよう。ボスからの特別指令は当然大事だが、現状オレにできることはまだない。ならば組織に最大の利益をもたらすため、RDポケモンの更なる強化と発展に勤しむとしよう。
次はどのようなアプローチから攻めようか。単純なダークポケモン化による精神改造は今のところ頭打ちである。やはりここは、更なる遺伝子操作・調整を詰める肉体改造を継続するとして、具体的には……そういえば。
つい先日、どうやったのか知らんが、
うむ、あの種を使って実験をすれば、今後のRDポケモン強化に繋がる知見も大いに得られることだろう。幾らか融通してもらうとしよう――
ボルグファイルE1
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5月○*日 10歳 クチバシティ クチバジム
『VSクチバジム! ジムリーダーマチス、イナズマ アメリカン! 前編』
サント・アンヌ号の修理の日々が明けて、とうとうクチバジムに挑戦する日がやって来た。
昨日のうちに体と心をしっかりと休め、作戦も練り上げた。準備万端、いざ行かん――と、気合を入れて宿を出ようとしたのだが。
「え、リーフが?」
「は、はい。もう少しだけ鍛えてから行く、後で合流するから、って朝早くに……」
「鍛えてって、ジム戦の当日にまで……?」
どうやらリーフは早朝から特訓のために、一足早く出かけてしまったらしい。
確かに特訓は大事だが、ジム戦の日の早朝にまでとなると流石に過剰だ。……いったいどういうつもりなんだろうか。
「……あの、レッドさん」
「ん?」
リーフの意図が掴めず、俺が怪訝に思っていると、イエローが少し不安げに声をかけてきた。
視線を向ければ、イエローの表情には明らかな不安の色が浮かんでいる。リーフの不在も合わさり、俺の胸にもザワリとした嫌な感覚がよぎった。
「ボク、サント・アンヌ号の事件があってからここ数日、ずっとリーフちゃんと一緒にいたんですけど……リーフちゃん、本当にずっとバトルばっかりしてたんですよ」
「うん、そう言ってたな。まあラムダに負けたことを相当悔しがってたし、それが良い発奮材料に――」
「違うんです。リーフちゃん、
「……なんだって?」
イエローの言葉に、まさかそこまで、と今度は俺の声色が変わった。
二人が行動を共にしていたのは本人たちから聞いていたし、なんならロケット団の再襲来に備えて『波導』による気配探知を念の為常に広げていたから、そこは既知の事実だった。
だけど、リーフがそれほどまでに自分を追い詰めているとは……そこまでとは思っていなかった。
確かにここ数日、夜に聞く話からも「随分と根を詰めているな」ぐらいは察していた。だけど、リーフは俺、グリーン、ブルーを合わせた四人の中でも普段は一番落ち着いている。だから少しの違和感は覚えつつも、「敗北の悔しさをバネにやる気を滾らせているだけだろう」と、その時は深く考えていなかった。
しかし、ジム挑戦の当日早朝にまで特訓に飛び出すほどの焦りとなると話は別だ。これは……
「……よし、今日のジム戦は中止だ。今すぐリーフを連れ戻しに行こう」
「え!? だ、ダメですよ! ただでさえ随分と長くクチバシティに滞在しちゃってるんですから! リーグ申し込み締め切りの10月に間に合わなくなっちゃいます!」
「いやイエロー、そんなことよりリーフの様子が」
「リーフちゃんのことならボクに任せてください! というか、今の話もそのつもりでレッドさんに伝えたんです。レッドさん、こういう時くらいボクを頼ってください。一緒に旅をしてる仲間なんですから!」
「で、でも……」
「……レッドさん」
「う、……わ、わかったよ」
ふ、普段とは打って変わって、押しが強い……!
トキワシティからここまで、旅のアレコレに揉まれてきたことでイエローも成長しているってことか……? まさかこんな形で実感することになるとは……!?
というわけで結局、俺はイエローの言葉を信じてリーフのことを任せ、一人でクチバジムへと挑戦しに行くことになった。
正直、イエローに全てを丸投げすることへの不安と罪悪感が胸をかすめる。けれど、一度信じると決めたのだから――そう頭を無理やり切り替え、俺はクチバジムへと向かうのだった。
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「ヘーイ! 待ってたヨ! ユーが噂のスーパールーキー、マサラタウンのレッド! ここまでユーがウィンしてきたジムリーダー達から、よーく聞いてるヨ!」
いつも通りタツヒコ、フミオ、オルソンのジムトレーナー3人をサクッと倒し、無数のゴミ箱を漁って中に仕掛けられた2つのスイッチを探すという、少々手こずるギミックを解除。無事にジムリーダー・マチスへの挑戦権を得ることができた。
……いや、全然いつも通りじゃなかったわ。なんだよゴミ箱を漁って挑戦権を得るって。頭おかしいのか。おかげでジム戦に集中できちゃったじゃねえか。
――と、アルセウスフォンに通知が来たな。今回のジムクエストだろう。なになに……
☆サブクエスト14:クチバシティポケモンジム ジムリーダー マチスに勝利せよ
| 達成条件 | 達成報酬 | |
|---|---|---|
| マチスに勝利 | ①ひきかえけん ×1 ②エレキブースター | |
| 手持ちを1匹も瀕死にせず勝利 | ①すごいとっくん(きんのおうかん) ×20 ②わざマシン(秘伝)「フラッシュ」 ×1 ②わざマシン(秘伝)「そらをとぶ」 ×1 | |
| マチスに認められる(わざマシンの獲得) | ①以降の通常任意報酬(すごいとっくん他)倍化 (常時×2) |
相変わらずの大盤振る舞いである。というか「ひきかえけん」って……ハナダシティの『ミラクル・サイクル』で使える自転車引換券か?
神様が自転車の引換券をくれるってどういうことだ……? いや、ハナダジムの報酬も各種釣り竿だったけどさ。
……まあいいか。神様の基準なんて俺にわかるわけもない。今は目の前のジム戦に勝つことだけに集中しよう。
俺がそんな益体のないことを考えていると、マチスが今回のジムチャレンジについてのルール説明を始めてくれた。
「サテ、ユーは既にバッジを2つ持っているので、3個目のジムチャレンジからは使用ポケモンのレベルを揃える『初心者救済措置』は無くしたうえで、シングル3×3となりマース! とはイエ、ラストチャレンジである8個目のバッジまでジムリーダーはバトルで全力を出すことを許されていないのデ、そこは安心してイイヨ! ちゃんとそこそこのレベルのポケモンでファイトしまース!」
これはマサラを出る前に調べていたので知っている。この世界のポケモンリーグ公式ルールの1つだ。ざっくり言えば「バッジを2つも手に入れてるなら、どんなトレーナーでも手持ちのレベルはいい感じに上がっているだろうし、ある程度の戦術も身に付けているはずだから、これ以上同じ気遣いは過剰だろ」ということだ。
だがそれでも、バッジ数から推定されるチャレンジャーの適正レベル以上のポケモンは繰り出さないでくれる。つまり3つ目のジム以降は、原作ゲームでありがちな「レベルを上げて物理で殴る」戦法でのゴリ押しすら可能とも言える。
いやあ、流石リーグ公式。なんともお優しい配慮で……なーんて言うとでも思ったかバーカ!
俺は去年シロナさんから聞いてるから知ってるんだぞ。8個目のジムチャレンジの難易度が、ただの「全力」なんて生易しいものじゃない。ジムリーダーではなく『1人の強豪ポケモントレーナー』として本気で叩き潰しに来る、
つまりだ。7個目までの制限に甘んじて高レベルポケモンで雑に勝ち進み、トレーナーとして身に付けるべき技術を疎かにする……なんてことをしたら、レベル制限も戦術制限もなくなる最後のジム戦で確定で詰む。
何も優しくねーよ。チャレンジャーへの配慮に見せかけた、容赦のない篩だよこれ! こっっっっっわ!! リーグ公式こっっっっっわ!!!
「ン? どうしたんだイ、ボーイ? 急に面白い顔をしテ。……ハッハア、ナルホドナルホド。タケシ達から聞いていた通りニ、かなりプロミシングなボーイのようダ」
俺を見てニヤニヤとするマチス。おちょくりやがって……つうか多分だけどそのエセ外人っぽい喋り方もわざとだろ。良い性格してるなこの人!
「ト、それはそれとしテ、更にもう1つ。3つ目のジムチャレンジかラ、ジムリーダーは手持ちポケモンの内1匹にアイテムを持たせることが許されマース! そして最後に……ミーも、タケシ達がパッショネートに教えてくれたユーの実力を、ジムリーダーとしてのポジションが許す限り味わってみたいヨ! Are you okay?」
好戦的な笑み。そして剥き出しのワクワクと期待を向けてくるジムリーダー。
なるほど、ここからは持ち物ありか……恐らくはエースに持たせてくるはずだ。毎度のことながら、これまでにない厳しいジムチャレンジになりそうだ。
だが、その問いかけに対する俺の答えは、もちろん――いつも通り!
「――望むところです! よろしくお願いします、マチスさん!」
「Very good! それでハ――ヘーイ! プア リトル キッド! ユーのハンパなパワーでは戦場じゃ生き残れないネ。ミーは、戦争でエレクトリックポケモン使って生き延びたネ! 皆ビリビリシビレて動けナーイ! ユーも、同じ道を辿るに違いナーイ!」
――ジムリーダーのマチスが勝負を仕掛けてきた!
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「そんじゃあ、マチス少佐 VS チャレンジャー、マサラタウンのレッドのバトルを始めるぜ。――バトルスタート!」
「GO!
「ビリリ!」
「いけっ!
「バギュアアッ!」
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レッド◓◓◓ VS マチス◓◓◓
ゾンタ:Lv23 ▣
[▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬]
VS
ビリリダマ:Lv25
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「ホウ、
「ビリリリリ!」
マチスの声を受け、早速とばかりにビリリダマから“スピードスター”が発射される。
なるほど、まずは必中技で手堅く攻めてきたか。先発として様子見は役目ってことか?
それならその呑気さ、遠慮なく突かせてもらう!
「ゾンタァッ!」
「バギャアッ!」
当意即妙、俺の声に応えたゾンタはすぐさまその場から一息に加速。
自身へ向かって次々と降り掛かってるく星々を瞬きの間に躱し――
「ギュルアアッ!」
「ビリィッ!?」
――見後、“でんこうせっか”で後の先を取ってみせた。
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ゾンタ:Lv23 ▣
[▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬]
VS
ビリリダマ:Lv25
[▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬]
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「よし、修行通りの動きが出来てるな! 偉いぞ、ゾンタ!」
「ワーオ、“
「ビ、ビリッ!」
主人の問いかけへと即座に力強い返答をするビリリダマ。HPバー表示の通り、“でんこうせっか”では大したダメージは与えられていないようだ。
が、代わりに先手を取ってバトルの流れをこちらへと引き寄せられた。ゾンタも修行で仕込んだ通りの動きが出来ているし、これなら他の作戦も問題無く実行してくれるだろう。
よし、このままどんどん押し込んでやるぞ!
「しかしフーム、“でんこうせっか”ですカ……ならバこっちは、ローダメージなアタックムーヴなど全て弾いてしまいましょウ! ビリリダマ、“
「ビリィ!」
「と、ゾンタ、全力でフィールドを走り続けろ! 足を止めたらその一瞬でやられるぞ!」
マチスの指示を受け、ビリリダマが猛然とバトルフィールドを転がり始めた。
なるほど、これでは
一石二鳥の良い戦法だ。ゾンタが見せた攻撃に、即座にここまでの答えを出してくるとは。――流石だな、ジムリーダー!
「ハッハー! ただ走り回るだけではジリ貧ですヨ! ビリリダマはスピードに長けたポケモン、更に“ころがる”で加速し続けていル! ――さあ、これをどうビートしますカ。チャレンジャー!」
「え? ジリ貧? ……あ、そうか」
一瞬何を言われているか本気で分からなかった。が、そうか。うっかりしていた。
確かにマチスの言う通り、通常、ビリリダマの
やはりジムリーダー、種族値の具体的な数値など知りもしないだろうに、自分のポケモンの種族特徴をしっかりと把握している。普通に考えれば、このまま避け続けた所でいつかは追いつかれて終わりだ、というのは正しいだろう。
ああ、本当にうっかりしていたよ。なにせ――今のゾンタが目の前のビリリダマにスピードで負けるなんて、これっぽっちも考えていなかったからな!
「――Why?! どうしていつまで経ってもビリリダマが、リザードに追いつけなイ!?」
マチスの驚きの声がフィールドに響く。余程自分のビリリダマのスピードに自信があったのだろう、たった今目の前に映っている光景――ゾンタがビリリダマの“ころがる”を躱し続けるという異常事態に理解が追いつかないようだ。
ふっ、当然! ゾンタはS努力値へと極振りしているからな! 今のゾンタのスピードは、ビリリダマとほぼ同速か、なんなら少し上回っているだろう。
そっちがスピードならこっちはハイスピードだ。一生かかっても追いつけんぞ!
「ビ……ビリィッ!」
いつまで経っても捉えられない敵に業を煮やしたのか、ビリリダマが“ころがる”を中断し、今度はタイプ一致の必中技“でんげきは”を放ってきた。“でんこうせっか”による差し込みを覚悟してでも、まず確実にゾンタへとダメージを与えてやるって腹だろう。
だけど甘い。スピードで勝てないなら、とでも思ったか、ビリリダマ。……その程度を対処できないほど、俺はゾンタを甘く育成しちゃいないぜ!
「“がんせきふうじ”!」
「ギュラアッ!」
「ビリッ!?」
「What!? 今度は……いや、ソレは! ナルホド! そしてその強度、バッジ2つにして良く育てられている! グレイト!」
気合一声。迫り来る“でんげきは”を防ぐようにして放たれた複数の岩――“がんせきふうじ”は、見事にその役目を果たし、“でんげきは”を遮断してみせた。
その事実を前に、今の一撃に一撃に自信があったらしいビリリダマが驚愕の表情を浮かべる。そして主人であるマチスも一瞬だけ目を見開いたが、すぐに思い当たる節があったのか、納得の表情を顔に浮かべた。
それもその筈、今の“がんせきふうじ”は……ニビジム戦で学んだ「相手の素早さを下げる効果を持つ“がんせきふうじ”を、足止めではなく盾として使う戦術」だ。同じ地方のジムリーダーとして交流があるのだろうし、タケシの戦術ならマチスも既知のものだろう。
もちろん、ただの猿真似ではジムリーダー相手の公式戦になど使える訳もない。だが、この“がんせきふうじ”には、ジムリーダーのポケモンが放ったタイプ一致攻撃を喰らっても、一発では破壊されないだけの「強度」がある。
そしてこれまた当然ながらこの強度の理由は、ゾンタが
ありがとうタケシさん。アンタとのバトルは、しっかり俺達の血肉になってるぜ!
そして――ここだ!
「よし、
「! グァウ!」
「と、シッカリ、ビリリダマ! “ころがる”を――」
「ビリッ――」
俺が見出した一瞬のチャンス。その瞬間の指示に、ゾンタは即座に応え――
「――バ、ギュラアアアッ!」
「ビ、リィイイイイイイッ!!?」
「オーノー! そんな、たった2回のアタックで!? ビリリダマ!」
――“がんせきふうじ”による複数の岩壁によって自身の姿が遮られた、その一瞬の死角を狙って“あなをほる”を発動。
相手の行動の隙を与えないスピードをもって一気に接近――ここまでを
「――そこまで! ビリリダマ、戦闘不能!」
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レッド◓◓◓ VS マチス◓◓◓
ゾンタ:Lv23 ▣
[▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬]
VS
ビリリダマ:Lv25
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タマムシ近郊 17番道路から野生のイーブイが姿を消す 専門家「未知の巣から一斉捕獲か」
【タマムシシティ】
タマムシシティ近郊の17番道路(サイクリングロード)周辺の草むらや林道でまれに姿を目撃されていた野生のイーブイが、ここ一週間の内にまったく確認されなくなっていたことが分かった。
この明らかな異常事態について、本紙がタマムシシティ内の「ポケモンだいすきクラブ」会員であり、長年17番道路の生態観察を私的に定点記録し続けていた熱心なイーブイ(ブイズ)愛好家、及び周辺エリアの学術的な生態調査を行っていた民間のフィールドワーカー数名に取材したところ、
「ここ数日、草むらをどれほど根気強く捜索してもイーブイちゃん達の気配や特有の鳴き声が感じられないんだ!」
「過去に付けられた古い痕跡こそ残っているものの、縄張りを示す新しい足跡や、直近に食べ残された木の実などの形跡がパタリと見られなくなった」
という驚愕の証言が一斉に得られた。
イーブイは環境の変化に適応しやすい遺伝子を持つ一方、野生の個体数は極めて少ないなど生態の多くが謎に包まれたポケモンとして知られており、特にカントーで唯一野生のイーブイが目撃される17番道路の巣の正確な場所は、カントーでは長年の謎とされていた。
タマムシ大学のニシノモリ教授は、「これまで誰もその所在を知らなかった17番道路沿いの『巣(集団生息地)』を何者かが発見し、一斉に捕獲した可能性がある」と指摘。市場での高額転売や、特定の進化石を用いた違法な強制進化実験に利用される懸念もあるとしており、国際警察や地元自治体は連携して、周辺の防犯カメラの解析や不審な車両の捜査を進める方針だ。
また、現場である17番道路を拠点とする暴走族たちからは、他にも黒い服を着た不審なグループの目撃証言が相次いでいる。
「黒い服を着た集団」ということで、カントー・ジョウト地方の裏社会で暗躍する犯罪組織「ロケット団」の仕業ではないかと市民の間で噂になっている。また同組織については近年、オーレ地方の訛りで喋る団員らしき男たちが目撃されるなど、外国地方の組織と合流し規模を拡大したという噂がある。非合法な活動を行う外国人が裏社会で一大勢力を築くマフィアに合流したということで、市民からの治安の悪化を懸念する声が徐々に高まりつつある。
さらに最近では、彼らが奇妙なポケモンを使用しているとの不穏な情報も浮上している。
実際に彼らの襲撃を受け、自慢のボスがバトルで完敗したという暴走族たちは、
「うちの
「普通なら怯むようなダメージを負ってるように見えても、痛がる素振りすら見せずにヘッドのポケモンへ突っ込んでいきやがってよ。まるで人形みたいで不気味だったぜ」
「目とか……やたら頑丈な体とかもそうなんだけどよ。纏めて……なんていうか、ただ黒ずくめ野郎の命令をこなすためだけに動いている……そうだな。機械、みてーだったよ」
と、当時の様子を恐怖混じりに語っている。
これらの目撃談を整理すれば、それはポケモンが「感情や個性が一切見られず、忠実にトレーナーの指示だけを遂行する状態」という、まるでロボットであるかのような有様になって使役されているということであり、彼らが纏っていた雰囲気の異様さを物語っている。
これについてニシノモリ教授は、
「もしその噂が事実であれば、強力な薬物の投与や、過酷な強制調教が行われている可能性がある。しかし、単なる調教にしては『感情や個性が一切見られない』という証言は、生物学的に極めて不自然だ。裏社会の組織がいったいどのような方法でポケモンをそのような状態に陥れているのか、私のような専門家でも見当がつかない。そして、本当に生き物としての心を失ったかのような状態で戦わされているのだとすれば、それはもはや悪質な虐待の域すら超えている。ポケモンと人との本来の絆を根底から覆すような異常事態であり、学術的にも倫理的にも決して許されることではない」
と強い危機感を募らせている。
イーブイが姿を消したことも合わさり、さらなる事態の深刻化を懸念する不安の声が、今も地域一帯に広がっている。
ポケモン新聞社 カントーヤマブキ本社
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後書き
改めましてお久し振りです。今回は久しぶりのジム戦でしたが、やっぱりスポーツとしてのバトルを書くのは楽しいです。(その代わりマチスの口調は難しいですが)
では次回はクチバジム後編となります。ちなみにもう完成しているので、明日の同じ時間に投稿します。
お気に入り登録、高評価、ご感想、誤字脱字のご報告もお待ちしております。*1
①kiakia様
②Goro5656様
③水代様