バタン、と扉がやや乱暴に閉じられた。
鍵をかけるのもそこそこに、真昼はベッドに飛び込む。
今の自分がどんな顔をしているかは分からないが、真っ赤になっているのだけは分かる。
(キ、キス、しちゃいました)
唇ではないにせよ、頬にキスをした。
そこまでするつもりは――千歳に頬ならやってもいいんじゃない?とは言われていたが――するつもりはなかったが、ほとんど衝動的にしてしまっていた。
会話の流れで、周が真昼の素の姿をあまり見られなくない、と吐露してくれたことがとても――とても嬉しかった。
そういう独占欲めいたものを抱えているのは自分だけではない、というのを彼の口から聞けたこと。
それはつまり、周が真昼を異性として意識してくれていて、他の人に譲りたくない、という思いがあるというのは、自分に置き換えてみれば明らかだからだ。
それがとても嬉しくて。
それを言っていることに悩む周が、とても可愛くて、格好よく思えた。
だから、そのまま伝えた。
それを伝え続けたら、周がああいう行動に出るのはさすがに予想外だったが――。
「間に手を挟まなくても、よかったのに」
黙らせるため、と言っていたが、多分本心は――。
あの場面ですらそうしてしまうのが周だと分かっているが、それでもあの自制心には恐れ入る。
だからこそ――真昼はあの衝動を抑えることはできなかった。
付き合ってもいないのに、という風に思う自分もいなくはない。
だが、それでもあの衝動は抑えられなかった。
ただ。
そもそも――明日、学校でどういう顔をすればいいのか、という現実にはちょっと頭が回っていなかった。
最近学校でも普通に話す程度には距離を近づけていたが、今の状態はどう考えても普通に話せる自信はない。
「っていうか……ご飯……」
そもそも、食事も作らずに帰ってきてしまったが、正直、食事のために再び周の家に行く勇気は――ない。
一体どういう顔をして戻ればいいというのか。
そもそもこんなほとんど茹ってるとしか思えない状態で周の側にいたら、料理に失敗する可能性すらある。
とてもではないが戻れはしない。
周には悪いが――今日は一緒に過ごすことは出来そうになかった。
「あ、周くんが悪いんです。私にキスしてくれたら……」
ボン、という音でも聞こえそうなほど顔が熱くなった。
あの時、周が手を挟まなかったら。
自分は果たしてどうしていたのか。
想像しようとして――文字通り頭がオーバーヒートしているようにくらくらした。
自分はこんな性格だったのだろうか、と思うほどだ。
周と知り合って半年。
周に好意を抱いてからでも三カ月余り。
その間、それまでに知らなかった自分自身にも多く気付かされた。
人を好きになることなんて絶対にできないと思っていた自分が、ここまで、どうしようもないほどに周のことが好きになっている。
それに何よりも驚かされる。
周のことを考えている時、心が浮き立つ。
幸せな気持ちが溢れてくる。
こんな経験は、十六年以上生きていて、一度もない。
「責任取ってください、とか言うつもりは全くないですが……」
そんな押しつけがましいことは言えないし、言うつもりはない。
ただ。
「私が好きなのは、多分ずっと――周くん、だけですよ……」
超短編(多分本シリーズ最短)
あの『頬にキス』の直後です。
まあこの後『意趣返し』と言ってしまうわけですが……。
しかしタイトルが苦しい……。