お隣の天使様:真昼視点   作:和泉将樹

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天使様の年越し

 なんだか雲の上にいるような感覚だった。

 ふわふわ、ふわふわ。

 春の陽だまりような暖かさ。人をどこまでも深い微睡みに誘うような、そんなぬくもりを感じる。

 わずかに揺れているのが、逆に心地よい。

 多分自分は眠っているのだろう――と思いかけたところで、そのぬくもりが離れていく。

 ああ、どうせならもっと――と思いかけ、重い瞼をわずかに開いた。

 

(え!?)

 

 すぐ目の前に周の顔があった。

 声をあげなかったのは、本当に奇跡だと思う。

 まともに直視できなくて、慌てて目を閉じる。

 少し硬めのマットの感覚と、直前に見えた光景から、ここが周の寝室で、彼のベッドに自分が寝かされいるのは、すぐわかった。

 

(いったい、どうして――)

 

 年末を周と過ごし、年越し番組を見ながら彼と年越しをした。

 日替わり直後に、立て続けに届いた友人からのメッセージに返信していたことまでは覚えている。

 しかし、最後の送信ボタンを押して、一息ついた後の記憶が――ない。

 

(もしかして、眠ってしまった?)

 

 先日、周の母志保子が来た時のように、ついうっかり眠ってしまった……のだろう。

 今日は朝早くから買い物、おせち作り、夕食――年越し蕎麦を作って、さらに普段まず起きていない日替わりまで起きていた。

 確かに、疲労もあるし眠くなるのはいいとしても――男性のすぐ横で眠ってしまった、というのはあまりにも迂闊過ぎた。

 多分彼は、色々迷った挙句、こうやって自分のベッドで寝かせることを選択した、というのは分かる。

 無理やりにでも起こせばいいのに、と思うが、そうしようとしない彼の優しさは、この二カ月一緒に過ごしてきて、真昼にもわかるようになっていた。

 その配慮はとても嬉しいとは思う。

 

(で、でも……)

 

 いくら周が常識をわきまえ、かつ紳士的とはいえ、彼も男だ。

 男性は好意の有無にかかわらず、そういう行為に及ぶこともできる――と聞いたことがある。

 もし、彼が今そのような行為に及べば――真昼は思わず身を固くしてしまった。

 起きたことに気付かれるか、と思わなくもなかったが、幸い彼が気付いた気配はない。

 同時に、彼ならば、そんなことはしないのでは、という期待もあった。

 

(私に興味、ないはずですし、とても常識的だし、すごく優しいし……)

 

 真昼が嫌がるようなことは絶対にしない、という信頼は、こんな場面でも変わらない気がした。

 

 すると、頭に何かが触れた。

 彼の手だ。

 

(あ……なんか……気持ちいい……)

 

 髪を少し梳くような、そんな触り方が、なぜかとても優しく感じた。

 幼子をあやすような撫で方で、とても気持ちがよくて、全身の緊張があっという間にほどけていく。

 そうしていると、彼の手が移動して、頬に触れた。

 まるで、壊れ物を扱うかのような、優しく繊細な触れ方。

 真昼よりやや体温が高いのだろう。

 その少しだけ暖かい手は、とても心地よかった。

 

(とても……安心できる……)

 

 こんな気持ちになるのは、いつ以来だろう。

 少なくとも、小雪が職を辞してからは、なかった気がする。

 

 そうしているうちに、頬の暖かさが離れていった。

 もっとしてほしい、と思ったが、すでに睡魔が全身を支配しており、瞼を開けるどころか、唇を動かすことすら難しかった。

 そのまま、心地よい眠りにすべてを委ねてしまう。

 

「――――」

 

 かすかに、周が何かを言った気がした。

 多分だが、「おやすみ」と言ったのだろう。

 

(おやすみなさい、周くん)

 

 朦朧とした意識の中で、かろうじてそれだけを思って、真昼は安らかな眠りに落ちていった。

 




別名『天使様の狸寝入り』(笑)
まあこれはやらねば、ですね。
翌朝の寝ぼけてすりすりするのも書いてみたいと思いましたが、意識がまともにない&その後のシーンを書かないと不自然になるし、そうするとほぼ原作コピーになるのでそこはなしです。
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