ガシャアアアアアンッ!!と音を立てて、崩れるサラマンダ―を見届け、カズはもう何匹目か数えるのもバカらしくなってきた。
「やれやれ、少し熱が入りすぎたかな」
自分自身では戦闘狂ではないとカズは思っているが、モンスターを視野に入れるや否や、素早く周囲の状況を確認してからモンスターに突っ込んでいくその姿は、はたから見れば立派な戦闘狂である。
レン曰く、
「あいつは戦闘狂っていうか、もう戦闘凶ってレベル。絶対前世は兵隊だったんじゃないか?」
とのこと。今回も、カズは気づけば優に三十分以上もの間、マッピングなんてそっちのけで、視認するや否やモンスターと片っ端から戦闘し続けていたのだ。
おかげで、コルや経験値は少しずつ溜まっていくが、目的であるマッピングデータは少しも更新されていかないという、とても空しい状況が続いていた。
「そろそろマッピングデータの更新を…………」
しようか、と言おうとしたところで、カズの索敵スキルに反応があった。赤く点滅するその反応は、まさしくモンスターの存在を示すものだった。
「……………………………………………」
いま、カズの心の中では、凄まじく葛藤が起きていた。このまま、マッピングにいそしむべきなのか、それとも、湧出したモンスターを狩りに行くのか。
天秤が揺れ動き、カタリッと片方の皿が底に着き、遂に決断が下された。
「…もうちょっと、もうちょっとだけ狩るか」
どうやら、今日もカズのマッピングは終わりそうにもない。
***
「しまった……完全にやらかした……」
レベルアップのファンファーレを聞きながら、カズが気づけば更に一時間もたっていた。今度こそは、流石のカズも絶句するしかない。
もうこれからは、マッピングに集中しなければならない。なので、カズは最後の締めとして、経験値から得たポイントをステータスに割り振っていく。
カズのビルドは、いたって普通のバランス重視となっている。具体的内訳としては、ATK―AGIに6:4の割合でポイントを振っている。
つまり、ややATKよりのバランスビルドなのだ。余談だが、レンは3:7のAGI振り、レナは2:8の極AGI振りとなっている。バランスビルドのカズは、レンやレナのような突出したスピードなど、どこか抜きんでている部分がなく、いたってマイルドではあるが、カズは気にしない。
カズがその気になれば、キリトのように力強い斬撃を放つこともできるし、レンの劣化版のような素早い動きもできる。どんなスタイルでも器用にこなす、オールマイティーな立ち回りこそが、カズの最大の武器なのだ。
フィールドでは、まるで自分の手のひらで踊らせているかのようにモンスターの動きを正確に把握、状況に応じて様々なスタイルを扱うその様を見たプレイヤー達は、いつしか、カズのことをこう呼んだ。
“
と。それが瞬く間に広がっていき、今ではカズの二つ名として定着した。カズ本人は何気に喜んでいたりするのだが、有名になりすぎてしまうと、レンにカズのことがばれる恐れがあるので、最近、カズは下の層に向かって救助を行うときは、ローブに身を包むようにしている。
全てのポイントの割り振りが終わると、カズは自身のマッピングデータを開き、先に進もうか、それともまだ見つかっていない隠し通路や隠し部屋などの、マップの細部を更新するか。カズはしばし思考していたが、やがて顔を上げ、どこを見渡しても黄土色な砂漠のフィールドの道を戻ることにした。
***
レンガ先日見つけたような、隠し通路や隠し扉を見つけるケースはとてもまれであり、いざ探してみるとなると意外に骨が折れる。であるのに、このSAOでは、そう言ったフィールドでの“隠しダンジョン”に該当するような場所は意外と多い。
少なくとも、各層のフィールドと迷宮区には、合わせて最低でも十はあるだろう。というのがプレイヤー達の共通認識として知られている。こういった隠しダンジョンでは、MMORPGの常として、大抵なんらかのアドバンテージとなることが多い。テンプレなのは、“宝箱の中に強力な武器・防具・アクセサリー”などだろう。このSAOも例にもれず、そのようなアドバンテージとなる類のものがある。
そんな隠しダンジョンをたまたま見つけ、何の準備もないままに入ってしまい、中にいる強力なモンスターやトラップに引っかかって全滅、なんてことも少なくない。他のMMOなら笑い話ですむが、SAOに関しては笑い事では済まされない。そんな危険を少しでも減らそうと、カズはなるべくそういったダンジョンを見つけ、念入りに調査してから“警告”として知ってもらうために探索しているのだが………
「あーくそ!全く見つからねー」
思わず、カズは叫んでしまった。最初は根気よく探していたのだが、そもそも簡単に見つかってしまっては隠しダンジョンでも何でもないワケで………遂に、カズは痺れを切らしてしまった。
そろそろやめよっかな………
とカズが思い始めた時、
「あ!いたいた!!カズさーん!!」
不意に、そんな声がした。
「アレンじゃないか、どうしてここが分かった?」
「そりゃあ、ずっとカズさんに会うためにここで張り込んでいたんですから」
「おいおい………」
カズがアレンと呼んだ少年は、浅紅の髪を無造作に整え、落ち着いた流し眼が少し浅黒の肌色に妙にマッチしていた。その背中には、銅色に鈍く光る長槍を抱えている。
「まあまあ、今日という今日は必ず弟子にしてください」
「あのなあ……俺のことは忘れろっていっただろ?」
「忘れられませんよ!なんたってカズさんは俺の憧れなんですから」
「はあ………」
あくまで聞く耳持たず、といったアレンに、流石のカズもため息しか吐けなかった。
「仕方ない、チョットだけついてこい」
「いいんですか?」
「ああ」
そう言って、二人は歩きだしいた。
アレンにとって、カズは憧れの的だった。アレンがストーカまがいのことをしてまで、なぜそこまでカズに弟子入りしたがるのか。
それは、一言で言ってしまえば、アレンがカズに尊敬を、いや、酔狂していたといってもいい。
二十層でのこと、カズがいつも通りフィールドの捜索にいそしんでいると、ちょうどモンスターに囲まれ、ピンチに陥っていたアレンと出会った。
その時はローブで顔を隠していなかったので、カズが助けに入ったところ、アレンに対してカズがあの名高きホワイト・カイザーであることが一瞬にしてバレた。アレンが今まで出会ったどのプレイヤーよりも、振るう剣は洗練され、全てを見越しているかのようなその姿は当にカイザー。
そんなカズの姿が、アレンの脳裏に強く焼きつき、それからというものの、アレンにとってカズは尊敬して止まない存在となった。カズがアレンの目標であった攻略組というのもあったのかもしれない。
そうなると、アレンの行動は早かった。その後、事あるごとにカズに着いて回り、アレンはずっと弟子入りを申し出たのだ。しかし、カズは一貫してその申し出を拒否した。理由は、カズのやっていることが危険である以上、アレンを危険にさらすわけにはいかなかったからだ。しかし、アレンはあきらめることなくずっとカズを追いかけ、戦闘を見るたびに、ますます尊敬の念が強くなっていった。
***
「まだだ!まだ振りが甘い!」
「はい!!」
カズに言われ、アレンは初撃よりも鋭い突きを繰り出す。体毛が茶色のイノシシ型Mob《デザート・ボア》は、その鋭い牙でアレンをかち上げんとする。
しかし、アレンはその場から大きく跳び退いて、スキルを発動。槍を握る右手に力がこもるのを感じながら、アレンは一気に槍を投げ放つ。槍は漆黒の軌跡を描きながら、唸りを上げて見事ボアの体を串刺しにした。
「まあ、良くなったんじゃないか?」
「ありがとうございます!!」
消えゆくボアを尻目に、カズカ戦闘の感想を述べると、アレンは感極まったかのような顔をした。
「それにしても、この隠し部屋の危険度は低いか……」
「そうなんですか?」
「ああ。普通、お前じゃ危なすぎる」
カズがアレンを誘った理由は、ただ単に二人ならば作業効率が上がるだろうと思ったからである。
結果、アレンがカズの見落としていた隠し部屋を見つけ、調査のために中に入ったのだが、カズの予想に反してその隠し部屋の危険度が低かったので、アレンの実力を測るのにちょうどいいかと思い、時々アドバイスはしながらも、カズはアレンに戦闘を一任していた。
率直に言ってしまうと、アレンの実力はそこまでひどいものではなかった。まだまだレベル不足感は否めないものの、きちんと経験を積めば、いいプレイヤーになるだろう、とカズは感じた。
「湧きも終わったか。よし、ここを出るぞ」
「はい」
そうして二人は外に出た。あれだけ高かった日も、いまはすっかりと落ち、空には満天の星達が輝いていた。
「うーん。アレン、俺の弟子になるのはやめとけ」
「いやですよ」
「どうしてもか?」
「はい」
見つめるアレンの、少しだけ青みがかった黒色の瞳は、どこまでも真剣そのものだった。そんなアレンを見て、カズも考えを改めることにした。
「なら、二十三層をクリアするまで待ってくれないか?いろいろと考えたいことがある」
「本当ですか?」
「ああ、信じてくれ」
「……仕方ないですね、いい返事を待ってます」
「分かった」
「それじゃあ、今日は失礼します」
「お疲れ」
そう言って、アレンは帰り道へと歩き始めた。
「俺も帰るかな、その前に、アルゴにメール打っとくか」
カズは左手を振って、ウィンドウを出現、フレンドリストからアルゴを選択して文章打ち始めた。
“マッピングデータについて取引したいから宿に来てくれないか?”
文章を一通り見直したカズは、メッセージを送信して、アレンと同じように帰路に就いた。
***
レンとカズが二十三層の宿として使っているのが、宿屋《レ・ミゼア》である。カズが気に入った理由としては、宿代が安いから……唯それだけである。
プレイヤーの育成のために入手したコルの六割を当てているカズとしては、出来るだけ節約しておきたいのだ。
カズは部屋に入り、その値段相応のかなり年季の入ったベットに腰掛け、今日ドロップしたものを整理していると、塗装がはげて、見た目がボロボロなドアからコンコンとノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
「オレっちだヨ。入ってもいいかイ?」
「アルゴか、どうぞ」
ギギギィと音を立てて、アルゴが入ってくる。
「ヤレヤレ、相変わらずボロい宿だナ」
アルゴがあきれたように苦笑しながら周りを見渡す。
「安けりゃなんだっていいんだよ」
カズがどこ吹く風でウィンドウを操作する。
「で、例の件だが……」
「そうだナ、800コルでどうだイ?」
「いや、せめて1000だろ」
「高いなァ」
両者どちらも引かず、交渉は全くの平行線だった。
「隠し部屋も調べてるんだぞ?安いもんだろ」
「でモ、完璧じゃないだろウ?」
「そりゃそうだが…………」
そう言って、カズはマップデータに目を落とす。彼がここ数十日かけて調べ上げ、レンにも協力してもらって開放したものだ。
「せめて850コルだナ」
これが最大の譲歩たと言わんばかりに肩をすくめるアルゴを見て、カズはある切り札を切ることにした。
「…じゃあ、アルゴの切ない恋話はどうしよっかな」
「ナッ///」
アルゴが目に見えて反応する。カズはさらに畳み掛けんと言葉を続けてゆく。
「いやー、まさかあの“鼠”がなー。まさかのレンか……」
口元を釣り上げ、楽しそうに目を細めるカズは、まるで悪代官のようだった。
「く、クゥ………」
可愛らしい声と共に地団太を踏むアルゴ。
「………分かっタ」
「うん?」
「分かっタ、1050コルだ」
「まいどー」
顔を赤らめているアルゴに対し、カズはホクホク顔だった。
その日の夜、NPCの経営するレストランで、見ていると胸やけを起こしそうなほど大量にある料理に囲まれ、幸せそうな表情を浮かべる某ホワイト・カイザーが目撃されたとかされなかったとか………………………
Attention!!
今回は、作者のなんちゃって翻訳と英語がありますのでご注意を!!
夢「..............................」
パソコン「We were bone with their eyes closed.........(俺たちは目を閉じたままこの世界に生まれてくる.......)」
レ「なあ、あいつ何やってんだ?」
カ「さあな、なんでも『《CoD:AW》買うお金がないから海外のキャンペーン動画で我慢しよ』なんだとか」
レ「アホか?」
カ「多分な」
レ「あとがきどうすんだよ」
カ「なんか置き手紙で、『二人でがんばって』だとさ」
レ「ハア.........」
カ「それにしても、《ホワイト・カイザー》か。駄作者にしては結構がんばったな」
レ「何処がだよ。あんなんただの中二病全開なだけじゃん」
カ「あのなあ、それ、俺も傷つくんだが.........」
レ「知るかよ、文句はあそこの間抜けに言っとけ」
カ「そうするか。じゃあ、感想や意見、アドバイスどしどしくれよな!」
レ「待ってるぜ」
パソコン「Floppy Michel, you are aready a dead man .(終わりだ。もうお前は死んでいるぞ、ミチェル。)」
レ&カ「「お前は仕事しろ!!」」
ザシュドスッ!!(←レンの斬撃とカズの突きの音
夢「がは............」