まあ、最近自室が寒過ぎて、こたつのあるリビングから出たくないってのもありますがね(笑)。恐るべし、日本のコタツの魔力。
「心配してくれて、どうもありがとう。それじゃ、お言葉に甘えて、出口まで護衛頼んでもいいですか?」
ギルド《月夜の黒猫団》それが、レンとキリトが助けたギルドの名前だった。
リーダーだというケイタは、レンとキリトに
「ありがとう」
と、頭を下げ続けていた。
「いいんだ、たまたま通りかかっただけだし。な?キリト」
「そうだな」
キリトの武器に使う、強化用の素材集めのために、当時前線よりも下だったフィールドで、二時間ほど狩り続けていたレンとキリトは、モンスター群に追われていた黒猫団の一団と遭遇したのだ。
「ちょっと前、支えましょうか?」
リーダ格と思わしき人物に、キリトが話しかけると、少しだけ驚いていたが、
「すいません。お願いします。やばくなったら、逃げてくれていいですから」
やがて首を縦に振った。レンとキリトは、それぞれの武器を鞘から抜いて、武装ゴブリンの集団へと切り込んだ。
とはいっても、その最中、レンはトマホークなどは勿論、B-ナイフも使うことはなかったし、キリトも、ごく初期のソードスキルしか使用しなかった。ビーターと悪名高
いキリトの、ばれてしまった時の反応を恐れてのことだった。
三時間はかかったが、前線よりも十下のフィールドでの狩りなど、危機感も何も抱かないキリトとレンにとって、そこまで手こずるものではなかった。
「ありがとう…ほんとに、ありがとう。凄い怖かったから…助けに来てくれた時、ほんとに嬉しかった。ほんとにありがとう」
ゴブリン群を一蹴し、パーティーメンバーが大喜びしている中で、涙ぐみながらも、何度もお礼を言ってくる黒髪の棍使いのことを、レンとキリトは、いつまでも忘れることはないだろう。
その後、レンとキリトが後衛として加わった一行は、無事主街区に戻ることができた。
「酒場で一杯やりませんか?」
そんなケイタの発言に流されるまま、レンとキリトは酒場へとついて行った。
「それでは!我々を助けてくれたキリトさんとレンさんに!乾杯!」
彼らにとって、決して安くはないだろうワインで祝杯をあげた。
とても楽しそうなパーティーなんだな…
それが、レンの抱いた月夜の黒猫団の印象だった。
攻略組内では、フィールドでの助太刀などはお互いさまという暗黙の了解がある。なので、こんな風にお互いに喜びあい、感謝してくれるこのパーティーが、レンにはことさら新鮮に映った。
それぞれが簡単な自己紹介を済ませ、場が落ち着いてきたところで、少し言いずらそうに、ケイタが小声でレンとキリトのレベルを尋ねた。
「俺は……」
素直にレベルを伝えようとしたことで、レンは口をつぐんだ。ハイランカ―プレイヤーが低層の狩り場を荒すのは、たといそんなつもりでなくとも、決して歓迎される行為ではない。レンは、今まで隠してきた事が全て水の泡と化すことを恐れたのだ。
「?」
そんなレンを見て、サチが不思議そうに首をかしげるも、
「俺達はレベル四十二だよ」
と、無論ウソではあるがキリトが返したため、怪しまれることはなかった。
「へえ、そんなレベルであそこが狩れるんですか!」
「敬語はやめにしよう。――といっても、基本的には隠れ回って安全に狩れそうなやつを狩るだけのことだ。効率は悪い。なあ、レン」
「あ、ああ。そうだな」
勿論、大ウソ。
本当はレベルが二十も上のキリトとレンにとって、よほどのことがない限りピンチに陥ることなど、ありはしないのだから。
「へえ、じゃあさ…キリト、レン、急にこんなこと言ってなんだけど…君達ならすぐに他のギルドに誘われちゃうと思うからさ…よかったら、うちに入ってくれないか」
しらじらしく答えたキリトとレンを、微塵も疑うことなく、顔を上気させながらケイタが言い募った。
「ほら、僕ら、レベル的にはさっきのダンジョンくらいなら十分狩れるはずなんだよ。ただ、スキル構成がさ…君達も十分に分かってると思うけど、前衛できるのはテツオだけでさ、どうしても回復がおっつかなくて、ジリ貧になっちゃうんだ。キリトと、レンが入ってくればずいぶん楽になるし、それに、おーい!サチ!ちょっと来てよ」
手を上げ、ケイタが呼んだのは、先ほどレンに首をかしげていたサチだった。
「こいつ、見ての通りメインは両手用長槍だけど、もう一人に比べてまだスキル値が足りないんだ。今のうちに盾持ち片手剣士に転向させようとしてるんだけど、ね。キリト達なら、コーチしてくれるだろうし」
「なによ、人をみそっかすみたいに」
そんなケイタが不服だったのか、サチは頬をぷくっと膨らませてから、チロリと舌を出した。
「だってさー、私ずっと遠くから敵をちくちく突っつく役だったじゃん。それが急に前に出て接近戦やれって言われても、おっかないよ」
「だから、盾の後ろに隠れていればいいって何度も言ってるのに…ほんと、 お前は相変わらず怖がりさんだなあ」
そんな何ともないような会話でも、彼らの仲の良さがうかがえる。
キリトが、ジトっとレンをにらんだ。確かに、間合いの短いB-ナイフや、S-ナイフで、超近接レンジで斬りつけや蹴りやパンチやらを繰り出すレンには、接近戦が恐ろしいなどとは、考えたことすらなかった。
「まあ、その気持ちは俺にもわかるよ」
そんなキリトの目線に耐えられず、レンは適当に話を濁した。
そんなレンとキリトを見ながら、ケイタは照れたように笑った。
「いやー、うちのギルド、現実ではみんな同じ高校のパソコン研究会のメンバーなんだよね。特に僕とこいつは家が近くて…あ、でも心配はしなくていいよ。みんないい奴だから、キリトとレンもすぐに仲良くなれるよ、絶対」
「ギルドか…」
FPSでこそ、レンはクランに所属したことは何度もあるが、このSAOにおいて、今まで入ったことも、入ろうと思ったことも思ったことのなかったので、決めかねていた。
「じゃあ…仲間に、入れてもらおうかな。改めて、よろしく」
キリトは少しぎこちない笑みを浮かべながらもそう言った。そんなキリトを見て、レンも決めた。
「そっか。うれしいが、その件は断るよ、ケイタ」
そんな返答を予想していなかったのか、キリトは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「キリトには悪いが、色々とやりたいこともあるしな」
それを聞いたケイタは、少し残念そうにした後、
「そうか。じゃあ、気が変わったらいつでも入ってくれよ」
と、快くうなずいてくれた。
「じゃあな、キリト」
「ああ、今までありがとう」
「気にすんなって」
そう言って笑っているキリトの顔は、今まで見たことがないほど軽やかだった。
今の今まで、“ビーター”としての、プレイヤー達からの羨望、妬み、尊敬、怨嗟をその身に背負ったキリトが、やっと安心できる明るい居場所を見つけることが出来たんだ、とレンは思いながら、酒場を後にした。
***
今にしてみれば、自分も入っておけばよかった。と、今のレンは思う。
俺も入っていれば、もしかしたら、あの事件は防げたのかもしれないのに…
と。
しかし、ソレはあくまでもIFの話。いまさら言っても仕方のない事だった。
そして、あのとき感じた、言いようのないナニカ。
あのとき、レンが断ったのは、確かにやりたいこと、いや、やらなければならないことがあったからだが、その他にも、あの場所は自分にとってふさわしい、レンクスという存在がいてもいい場所ではない、と、なにか強く感じたからだった。
「ハァ、よく分からないな…」
レンは、ベンチから立ち上がり、ますます冷え込んできた街の夜道を歩き出した。
レ&カ「「後書きコーナ〜!」」
(←コタツで温もりながら
カ「いやー、蜜柑が美味い。やっぱ冬の名物詩だわ」
ムシャムシャ(←モサモサ蜜柑を食う音
レ「本当、コタツから出たくない。コタツを発明した人物は称えられるべきだな」
夢「ダラ〜っとし過ぎよ、お前ら」
カ「本人がダラ〜っとしてるなら説得力ないがな」
夢「うっ」
レ(そーー(←蜜柑にこそっと手を伸ばす
夢「あ!俺のとっておいた蜜柑が!!」
レ「しゃ!!もらった!!」
夢「てめー、返しやがれ」
レ「やだね」
カ「ハア、程々にな。そういや駄作者からの置き手紙で、【アンケートのご意見を絶賛募集中です】だってさ。俺からも、よろしく頼んだ」