パワードノーチラス君がわりかし作者の思い描いているレンの高機動戦闘術に近い動きしてて笑いました。駄作者の駄文じゃ伝わらないと思いますが、レン君の動きはアレに似た様な感じです。
んで、だいぶ前に言っていたコラボの話、あれSAOの派生作品にしようかと思います。TeaBreak編として(笑)
それでは、どうぞ。
「がはっ!!」
その瞬間に起きた出来事を、シンドは全く理解できていなかった。かなり強い――例えるならまるで何かの物体が落下したような――衝撃が背中より襲ったかと思うと、気づいた時には自分の体は地面にうち伏せられていた。
――何故
「くっ――」
混乱が生じ、シンドが体を起こそうと腕に力を加えたその時――
「動くな」
人間味の感じられない、まるで機械のように凍てつききった声とともに、このうすら暗い中でゆらりと光る刃が、シンドの首元に突き付けられた。
「この……」
「くくくっ、残念だったな」
刃は正確に首元へと突き付けられており、顔を動かすことは叶わないが、それでも聞こえてくるその声だけでシンドはその主を察した。
「何故……どうして俺の尾行が分かった?レンクスッ!!」
「どうして?クククッ」
帰ってきたその声には、まるでそんなシンドに対する嘲りと凍てつくような冷たさが混じっているようだった。ソレがなお、シンドの胸の内にあるあるモノを煽った。事尾行と戦闘に関して、シンドは絶対な自信があった。特に、尾行に関しては。そして事実、彼の尾行は隊の中でも隊長であるベノナを除けば頭一つ飛び抜けていた。《スカウティング》の中のmod“ストーキング”による強力な補正は、他のプレイヤーの近くを許すことはない。今回も、手抜かりなど一つもなかったはずだ。なのに何故……レンは気づいたのか。
「答えろっ!!」
「確かに、お前の尾行は完ぺきだった。お手本のように、な。気難しいこの《スカウティング》を、ここまで使いこなせるプレイヤーはめったに見ない」
「お世辞はいい!!」
「はぁ、少しは落ち着いたらどうだ?」
のらりくらり、あくまでも発する声は冷たく、レンは剣幕に訪ねてくるシンドの言葉をいなす。
「だが、完璧だからこそ、その穴に気づけなかったんだよ。お前は」
「穴……だと……?」
シンドには、レンに言っていることが理解できずにいた。“ストーキング”……いや、《スカウティング》スキルそのものに、欠点などあろうはずもない。
「俺を尾行しているとき……使ったmodは大方“ストーキング”だろうが……アレには致命的な弱点が一つだけある」
「……」
「足運びの
「くっ……」
それこそ、レンの秘儀たるシステム外スキル、“アウェアネス”の威力だった。いくら“ストーキング”が独特であろうが、それでもやはり聞き取るのが至難の業であるのには変わりない。それを聞き分けたと言ってのけるレンに、シンドは改めてその底の知れなさに戦慄した。
「さて、そっちの質問には答えたんだ。次は……」
そこでレンは言葉を区切ると、突きつけていたS-ナイフをシンドの首から外し、、空いている左手で彼の襟部分を掴み、そして
「ぐはっ」
一気にその体を引き起こし、シンドを壁際へと叩きつけた。衝撃に揺らぐ、その視界。それでも何とか体を立て直そうとするシンドの首に、レンは自身の腕を強く押し当ててその動きを封じた。
「ぐっ……がはっ」
「今度は、俺の番だ」
「っ!!」
その時初めて、シンドはレンの表情を目の当たりにした。フードの端からのぞかせる、その紺碧色に含まれた、ヒトのものとするにはあまりにも無機質で凍てつき、それでいて何かに絶望したかのような、深い闇をたたえた、その瞳を。
「答えろ、何故俺を尾行した?」
「ぐ……づ……」
「ああ……せいぜい慎重に答えろ、さもなくば」
――殺す
まるでそう言わんばかりに、レンは右手に持ったS-ナイフの刃先をちらつかせた。動こうとしても、レンは首元を肘で押さえつけながら完全に拘束している。圏内では人を殺すどころか、ダメージを与えることすら能わない。しかし、やりようなど幾らだってある。これによって、レンがオレンジプレイヤーへと変わることもない。何故なら、彼はシンドによって尾行されていたのだから。こういった場合、双方のカーソルは変わることなく、殺害以外の何をしても犯罪者とはならないのだ。そんな事よりも、シンドは向けられた殺気の“重さ”とその“質”に粟立った。未だかつて、これ程までに濃厚で、こんなにも鋭利な死の予感を、感じたことはあっただろうか。いやそもそも……目の前に居るプレイヤーは、果たして人間と呼んでもいいのだろうか。一体何を経験すれば、人は、こんなにも人間性の欠如した、凍えるほどのおぞましいものを纏えるのか。向けられたそれに、シンドは己の喉が渇いていくのを感じる。しかし――
「フン……」
「うん?」
おおよそ多くのプレイヤーが、その絶対的なまでの死の気配に震え上がるであろうその状況下で、シンドは僅かばかりの皮肉と、余裕めいた表情を織り交ぜ、口元を僅かに釣り上げた。
「……教える……かよ……あんたみたい……な……薄汚い……裏切り者にな」
「へぇ?死にたいのか?」
それを見届けた途端、レンの向ける殺意の密度が、より一層濃く、そしてその気配が、より一層低くシンドの体へと纏わりつく。それでも、彼はそんな微笑を浮かべるのを、止めることはしなかった。声すらも満足に出せないほど、レンの押さえつける腕は強くなり、向けられたその刃は、確実にシンドの首元を捉えている。
「ナメ……るなよ。ヤルならヤレよ……裏切り者」
彼にはある確信と、そして何にも代え難い信念があった。まず一つ、レンは自分を殺せはしない。ここでは、絶対に。そもそも圏内においてプレイヤーのHPが減少するなどまずありえないのだから。シンドが耳にした話によれば、確か“圏内事件”とかいうプレイヤー殺害事件があったらしいが、結局その真相はなんとも子供だましのような既存のシステムを組み合わせて仕立て上げただけのトリックで、実際には誰も死んでいなかったと記憶している。つまり、いくら絵入りで氷結した殺気を浴びせようが刃を首元に突き立て脅そうが、レンにはシンドを殺せないのだ。転移結晶などを利用してレンが場所を圏内から外へ移動させれば話は別だが、シンドは既にある仮説を立てていた。今のレンには、自分を殺害しようなどといった意図はなく、むしろこちらが有している情報を吐かせるために脅しているのではないかと。が、そんなのはただの仮設でしかなく、今シンドの、常人なら気が狂いそうになるほどの“濃密”な殺気を前にしようが揺るがないその遺志は、ひとえに彼が持っているプライドと誇り、そして“攻略組”としての“忠”によるものだった。
――目の前に居るプレイヤーは、攻略組としての誇りを捨て、あまつさえ大切であるはずの“仲間”すら売った“裏切り者”――一人の攻略組として、そしてヘルに見初められし
――殺すなら殺せ。俺は絶対にお前には負けない
そんな気概を以て、シンドは不敵なまま睨み返す。果たして――そんなシンドの態度に、レンは何を思ったか――しばらく、彼は探るかのようにシンドを見つめた後、やがて突如として、興味が尽きたかのように発していた殺意を霧散させた。
「ガ……ハ……グゥ」
同時に、今まで押さえつけられていた腕から解放され、肺が、体が、空気を求めて喘ぐ。
「これだけの殺意を浴びせてもなお吐かないとはね……」
「ハァ……ハァ……」
「……まいったな。俺の負け、だ」
見上げるようにしてにらむシンドを尻目に、レンは背中を向けると、肩をすくめながらおどけて見せた。その姿は、先ほどまで重い殺気を放っていたプレイヤーと同一人物とは思えないほど、むしろ恐ろしくなるまでに穏やかで、多少なりとも腕に覚えのあるシンドでなかろうとも、その後ろ姿は目に見えて明らかに
――今しかない。
酸素不足にあえぐ中で、シンドはそう確信した。そう、目の前でおどけているこの“裏切り者”に反撃するには、今この瞬間を於いて他にはないと。悟らせることが無い様に、シンドはほんのわずかな呼吸すら押し殺し、腰の鞘から静かにククリを引き抜くと、未だレンがこちらの動向に気づいていなことを視認するや否や――一息の内に立ちあがって、ククリを振りかぶった。狙いは、頭部強打による混乱と、致命場所である首への斬りつけ。そのために、大きな半弧を描くようにククリを軌道に乗せてレンの視界の外――死角から強襲する。
――とった!!
それはシンドにそう強く確信させるほどに、タイミングも、角度も、軌道からスピードのどれをとっても、最高の一撃だった。
「ああ……だからお前なら……」
漸くその強襲に気づいたのか、レンがそうポツリとこぼす。しかし、もうすでに遅い。今からどう行動しようが、シンドのククリの方が一つ早い。そう、本来ならば。
ガスッ。程よい硬さと、柔らかさを併せ持つ肉と肉がぶつかり合う……そんな鈍い音。
「馬鹿な……」
しかしそれは、シンドが狙っていたような、ククリがその頭部を綺麗に
「に……」
決して反応できぬはずのソレを、レンが振り上げた左腕で受け止めた……音だった。正確には、ククリを握る手の付け根あたりに、だが。シンドの感じる時間の流れ、刻む一秒一秒が、唐突に、細かく分割されたかのようにスローになってゆく。レンは、受け止めたそれをそのまま外側へと力を逃がすようにして腕を斜め下に反らす。それだけで、驚くほどにあっけなく、シンドの
「そう来るだろうと……信じてた」
体術スキル《八極拳》。その極地たる受け流し技――“纏”――気づくべきだったのだ。自然界において、わざとスキを見せることによって
「スキだらけだ」
「グッ!!」
レンは丁度流れで力の乗った右腕で、シンドの後頭部より僅かにしたのうなじ部分を打ち付ける。鋭い衝撃とともに、シンドの脳が前後に揺れる。
「ふっ」
吐き出す息一つ、軸足を入れ替えたレンは、一時的に脳震盪にも近い状態へと陥ったシンドの右――体重の乗った足の膝裏部分――を、更に蹴りぬいた。それが、シンドという人物が体制を維持できる、限界点だった。軸足を蹴りぬかれ、なすすべなく宙へと倒れ込む体、レンは踏み込むと、仰向けに宙ぶらりんとなったシンドの、腰と顎下にそれぞれ手を添えて、そのまま慣性に逆らうことなく、僅かに足を切り返し、
「はぁ!!」
思い切りシンドを地面へと叩きつけた。“人”という体の構造上逃れることのできない弱点や、力の支点を正確に突いた、まさに己の技量のみでここまで上り詰めた連だからこそできる離れ業だった。
「ぐがぁ!!」
かなり派手な硬質の音とともに、尋常ならざる衝撃がシンドの全身を駆け巡る。
「残念だったな。CQCじゃ俺の方が上だ。けど……」
そこでレンは不意に言葉を区切ると、転がったククリナイフを拾い上げ、鮮やかな手さばきでそれをクルリと回し、刃をシンドへと向けた。
「ククリ捌きと、攻撃時の気配の消し方は見事だった。いいセンスだ」
「レ……ン……」
次第に遠のいて行く景色。レンの言葉すらどこか遠く、それでもシンドは、最後までその姿を目に焼き付けた。己を打倒した、レンの姿を。
「
「く……」
そんな言葉を聞いたのを最後に、シンドの意識は深い闇の底へと落ちていった。
***
「さて、どうしたもんかな」
気絶したシンドを見やりながら、レンはそうポツリと漏らした。あえてスキをさらし、無力化したまでは概ね目論見通りだった。あえてレンが尾行に気づいていながら撒くのではなくこんな裏路地にまで誘い込んだのも、一重にシンドから情報を入手することにあった。諜報部隊であるタークス隊の隊員ともなれば、時にはそこらの攻略ギルドすら軽く凌駕するほどの情報網を以て重大な機密情報を有していることも少なくはない。今、アスナたちを始めとする攻略組や多くのフレンド達との交流を絶ったレンには情報を入手できる手段が存在しない。それをシンドから入手しようとしたのだが、レンの予想と違い、彼はその固い信念を以て最後まで情報を吐かなかった。あれだけの質の、かなり強い殺気に当てられたにもかかわらずだ。
ありとあらゆる痛みはプレイヤーから排除され、感じるのはただ単に不愉快な違和感だけというこのSAOでは、現実と異なり肉体的な苦痛による尋問、拷問などの有用性は低く、主に精神面からのアプローチ――例えばレンがしたように殺気を当てひるませる、恐怖心を煽るなど――以外ではほとんど効果はない。最も有効なのは殺さない程度にHPを削ることだが、それも“圏外”というごく限られた場所でしか意味をなさない。よって、これ以上時間をかけても吐きはしないだろうと考えたレンは、恐怖による“尋問”ではなく気絶させることにした。
圏内ではPVPモード以外or自殺以外でHPが減少することはあり得ない。が、その反面で攻撃自体には判定が存在し、被ダメージによる
そんなゲームシステムを利用して、プレイヤーに対して強い衝撃を与えることで気絶させるPK方法がある。ステータスによっていくら人外じみた身体能力を手に入れようとも、中身が“ヒト”である以上は疲労もするしお腹だって空く。それなら気絶もするというわけだ。
「確かこの先に小さな民宿があったっけな……」
頭に叩き込んでおいたこの層の地理を思い出しつつ、どこに運ぶかを決めたレンは、シンドの体をうつぶせに転がし、その脇の下から自分の首を差し入れ、肩の上にシンドを担ぎ上げ――いわゆるファイヤーマンズキャリー――た。
「重…………」
AGIこそカンストしているレンのステータスだが、STRに関しては攻略組でも平均の下くらいしかないため、本来なら人ひとり担ぐにもかなりキツイものがあるが、どうやらシンドの装備が軽装だったことが幸いし、辛うじてだがレンにも運ぶことはできた。
「さてと」
再度周囲を見渡し、誰にも見られていないのを確認したレンは、裏路地のさらに奥へと消えていった。
***
「おばさん、部屋一つ貸して」
「あいよ。一泊1000コルだ」
「ん」
「まいど。担いでいるのは、アンタの連れかい?」
「まあね。そんなとこ」
「気を付けなよ。魔物に殺されちゃ元も子もないからね。命あって物の種、さ」
「ハハハ、善処するよ」
あの裏路地よりさらに先、サブストリートからまた二つ外れた場所にある宿。少々ボロがきはじめた階段を上がれば、ギシギシと軋みを上げる。当然NPCを除けばプレイヤーなぞレンとシンド位なものだが、だからと言って彼が気にすることはない。レンからしてみれば、表にある小奇麗な宿の数倍心地がいい。
「はぁ……」
部屋に入り、ドアをロックし、担いでいたシンドをベットの上に下す。
「……」
今から自分のすることは、まず間違いなく犯罪行為そのものだ。それを行うのに戸惑いがないわけではない。が、その是非を問う時間が、レンには残されていない。“気絶”と“睡眠”は違う。彼がシンドをオトしてから既に十二分が経過。精神力の強いプレイヤーなら、そろそろ気が付いてもおかしくはない。
「悪いな」
それがただの気休めだと理解していても、レンはどうしても口にせずにはいられなかった。きつく目を閉じ、やがてレンは意を決し高野陽のその瞳を開く。シンドの、だらりと下がった右腕を掴み、ウィンドウを立ち上げの動作をする。もちろん、レンには立ち上がったシンドのウィンドウを見ることはできない。そこで、今度は自身のウィンドウを立ち上げ、そのウィンドウと見比べるように左手を動かす。おおよそ五回ほどの試行の後、レンはようやくそのボタンを押した。そのボタンこそ、《ウィンドウ可視化》ボタンに他ならない。これで、他人であるレンにもシンドのウィンドウを目にすることができる。
「さてと……」
手早く、レンはその手を操る。メール欄、《案件:D-18-01》、《機密事項:D1-3,4,2,14,3,4,14,19,15》、《機密事案:RE,U3-04,17,18,12,23,4,21,8,19,18》……そして、《機密命令:Ff3-R-22,10,5,19,3,15,21,20》
「……これか」
様々な情報を、まるで機械のような正確さでインプットしていく中、その指が止まる。不規則な数字とアルファベットの羅列。しかしこれがタークス隊の人間、そして解読法を知ったレンならわかる。《機密命令:レン-偵察》内容:
『この受け取り手である各員に告ぐ。危険監視人物:レンクスを見つけ次第偵察、のちに拘束せよ』
それは、レンに対して出された束縛命令。”F“とはつまり、レッドプレイヤーと同等の扱い。つまりは、攻略組すべてに対する、敵対者であると。
「なるほど。こいつが言ってたのはそういうことか」
もう、レンは日の目を浴びはできない。
「概ね、予定通りか」
ひび割れるように脳裏を木霊する痛みを、かみしめて押しとどめる。どんな罪を重ねようとも、それでみんなを守れるならそれでいい。それなら、犯罪者だろうと、殺人鬼の汚名すら着せられてもかまわない。
――約束
――うん
果たさなくては。嘗て結んだ、その誓いを。
「――時間がない。Poh、お前の筋書きはもう見えた。悪いが、これ以上思い通りにはさせない」
シンドの持つ情報が100%確実であるのならば、すでに“五人”のプレイヤーが殺害されていることになる。今は“レン”という明確な
「そろそろ仕掛けるか」
自分のウィンドウを閉じ、未だ気を失ったままのシンドを寝かしつけ、ただ一つ、かすかな声と共にドアノブを回す。
「
シンド Perk3:デッドサイレンス
レン Perk3:アウェアネス
元ネタは勿論CoDその中のBO2のパークですね(笑)サーチ民だった方には結構なじみ深い単語では?他の人には足音が聞こえないけど、レンには例外、と。作者のお気に入りパークは昇順安定、マラライ、早業ですね。BOのM1911デュアルはイケメン。
文中に出てきた暗号ですが、暇な方は解いてみてください。わりかしポピュラーなモノに作者流のアレンジを加えたものです。