最強転生者の最強じゃない救世主物語 〜救世主は辛いけど頑張ります〜 作:まんさ
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イグナスが発足した翌日、自室でクロエと打ち合わせを行なっていると、コンコンと軽快な音が扉から聞こえてくる。
「あ、出ますね」
「私も行くよ。クロエがいないと話が進まないし」
私はクロエと一緒に扉を開けに行くと、見た事のない女性が立っていた。その女性は私よりも身長が少し高く赤毛のミディアムヘアが特徴の女性であり、案の定と言うべきか美人さんだった。
「アカリデス様でらっしゃいますね?」
「はい…どちら様ですか?」
「国王秘書官のルメリア・サリウス・ルメシスです。ガイウス王から言伝を預かって参りました」
「こ、国王秘書官!?ぞ、存じ上げず申し訳ありません」
慌てて頭を下げると、ルメリアさんはクスッと笑う。
「いえ、アカリデス様とは関わりがありませんでしたから、知らないのも無理はありません」
「あ、あはは……」
美人さんでかつ親しみやすさを感じる笑みを浮かべるルメリアさんにドキドキしつつも、私は初めてのお客様を部屋に案内するのだった。
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ルメリアさんをテーブルに案内すると、見計らったようにクロエがお茶菓子を持って来てくれる。そしてお茶とお菓子の順番でルメリアさんの前にお出しした後、ぎこちない動作で頭を下げる。
「ご、ごゆっくりどうぞ」
「ふふ…ありがとうございます」
ルメリアさんは緊張で硬い動きのクロエに安心させるような笑みを浮かべた後、
「いただきます…」
と言って小さめのクッキーをひとつ食べた。そして綺麗な動作でお茶を啜って「ふぅ」と一息ついた後、改めて私を見る。
「国王秘書官を務めるルメリア・サリウス・ルメシスと申します」
「お、お世話になっております。アカリデス・アルカディウス・イグナスです」
そしてお互いに「宜しくお願い致します」と言った後、私はルメリアさんの名前に聞き覚えがある事に気が付く。
「あ、あの…ルメリアさんはサリアのご親族の方ですか?」
「ええ、妹のサリアがお世話になっているようで」
あ、やっぱりお姉様だったんだ。改めてルメリアさんを見ると、サリアと同じように髪質がフワッとしていることに気が付く。
「サリアからアカリデス様のお話をよく聞きます」
「そ、そうなんですか…?」
「それはもう…沢山」
沢山!?な、内容が気になる。悪口じゃないと思うけど、サリアが私の事をどんな風に思っているのか興味がある。でも姉妹の話をあまり聞く訳にいかないし、話してくれるまで聞かないようにしよう。
「わ、私の方こそサリアさんにはお世話になっております。彼女のお陰で魔術も発動できるようになりましたし、本当に感謝の念が堪えません」
そう言うと、ルメリアさんは優しげな笑みを浮かべる。
「ふふ…伝えたらきっとサリアは大喜びするでしょうね」
その笑みは先程の他人に向ける笑みとは違い、心の底から嬉しく思っているような包容力のある笑みだった。
サリアとの話で空気が和む中、ルメリアさんが真面目な雰囲気で話を切り出す。
「本日より、ガイウス王とイグナスを繋ぐ連絡役を私が担当することになりました」
「ルメリアさんが?」
「ええ。ガイウス王は多忙につき、今後は私を介して命令を下すそうです」
「そうなんですね…」
「そしてガイウス王に謁見がある場合も、先ずは私にお話しください」
確かに何回も王様に会いに行くのは面倒臭かったし、厳かな騎士達と顔を合わせるのも疲れる。ガイウス王は仮にも王様だし、気を遣って喋らないといけないのも大変に思っていた。それにあのイケオジ王は腹にいちもつを抱えまくっている。腹の探り合いは単純に疲れるし、間に入ってくれるのはありがたい。
「それに際しまして、今後は業務が終了する18時頃を目安に日報を提出するようにしてください」
日報か……聞いたことあるけど、日々の業務の報告書見たいなものだよね?大変そうだけど、公の物だから内容をしっかり考えて提出しないと。
「私は基本的に王室の隣にある執務室におりますので、直接渡すか部屋に入って右にある報告書入れに投函してください」
「はい」
「そして今後のイグナスの活動ですが、基本的には今やっている事を進めてください。アメリア殿には私から伝えておきますので、引き続き宜しくお願い致します」
「はい、わかりました」
先程までの親しみやすい雰囲気からガラッと変わり、ルメリアさんはクールな仕事モードって感じで話を続ける。
「そして、クロエ・シエス・シヨニケスには新しい部屋が用意されます」
「えぇ……!?」
突然の報告に後ろからクロエの驚いた声が聞こえてくる。
「クロエ殿もイグナスの一員ですから、相応の待遇はご用意させていただきます」
「は、はい…」
クロエは使用人の時とは違う扱いに慣れないのか、震えた声で返事をする。
「それと…こちらをご覧ください」
ルメリアさんは堅そうな鞄から何枚か書類を出す。
「…これは?」
「イグニア王国でのアカリデス様の立場を証明する書類と、レモラ政執会との契約書類です」
「な、なるほど……クロエ?」
文字が読めない私の代わりにクロエに読んでもらうと、彼女は丁寧に説明してくれた。
内容は、アカリデスこと私が正式にイグニア王国の住民になった事と、レモラ政執会との雇用に関する書類だった。これらの書類のお陰で私の口座が用意されて給料も発生するらしい。何だかアルバイトみたいな感じだけど、私は晴れてイグニア市民となった訳だ。
「アカリデス様の直筆署名が必要になりますので、今一度ご確認を」
「はい」
私はクロエと肩を並べ、都度説明をしてもらいながら文章を確認した事を伝えると、
「こちらに署名を」
ルメリアさんは細くて長い指で書面にある空欄を指し示す。そして私は練習したロマリア語を用い”アカリデス・アルカディウス・イグナス”としっかり書くのだった。
*
「これで契約は以上になります」
「はい、わざわざお越し頂きありがとうございました」
私は椅子から立ち上がってクロエと一緒にお辞儀をすると、ルメリアさんは期待するような眼差しを向けてきた。
「レモラ政執会より、イグナスの益々のご活躍とご発展をお祈り申し上げます」
するとルメリアさんは立ち上がり「それでは」と言い部屋から出ようとしたので、私は慌てて扉の方に案内する。
「あぁそれと…」
途中、ルメリアさんが思い出しように立ち止まる。
「な、何でしょうか?」
「サリアはああ見えて寂しがり屋な所もありますので、引き続き一緒にいてあげて下さい」
「え…?」
「それでは」
ルメリアさんは綺麗な動作で頭を下げた後、そのまま廊下の奥へと歩いていった。
「………」
もしかして私とサリアの関係を知ってる?主に魔術の練習中、ほぼ毎日恋人のように抱き合ってた事とか……。知られていたら改めて挨拶をしないといけない気がする。でも結論づけるのはまだ早い、今度サリアに聞いてみよう。
*
ルメリアさんとの初邂逅が終わった日の夕方、私はクロエに夕食を誘われた。場所は彼女のご自宅らしく、急だし悪いと思って遠慮したのだが、クロエはお父様をどうしても紹介したかったようで潤んだ瞳でお願いをされた。そんな表情を見て断れる筈もなく、私は了承するしかなかった。
そんなこんなでデイス宮殿から目的地まで向かっている途中、クロエと色々な話をした。
クロエのご自宅は東区ウルシアスという場所にあるようで、デイス宮殿から歩いて30分程の所にあるらしい。そこで初めて知ったのだが、クロエのお父様は魔道具店を経営されているようだ。一人で経営しているらしく、少ない稼ぎながらもクロエを大事に育ててくれたらしい。お母様はクロエが物心ついた時には亡くなったようなのだが……流石にそれ以上は聞けなかった。
魔道具店に到着すると、クロエは嬉しそうに私を見る。
「少々お待ちを!」
そして明るい足取りで店内に入って行き、直ぐに一人の男性と一緒に出てくる。その男性は私を見るや否や興奮した様子で近づいきて、人の良さそうな明るい表情を浮かべて話し掛けてくる。
「アカリデス様でらっしゃいますね!娘がいつもお世話になっております!」
どうやらこの方がクロエのお父様のようだ。私は失礼の無いように笑顔を浮かべる。
「い、いえ、こちらこそです!娘さんにはいつもお世話してもらうばかりで」
丁寧なコンビニ定員のようにクネクネとした明るい声色でそう言うと、お父様は一層笑顔になる。
「娘に聞いた通り、アカリデス様は丁寧で物腰柔らかい方だ!」
「え、クロエに私の事を?」
「勿論です!クロエは帰ってくる度、嬉しそうにアカリデス様のお話をするんです」
「え、え…?」
「今日何があったとか、綺麗な方だとか、いつも気に掛けてくれて優しいとか…それはもう嬉しそうに」
気分良く話すお父様に、クロエは慌てて話を遮る。
「ちょ、ちょっとお父さん!そんな話いいから、自己紹介してよ!」
「あ、これはこれは失礼致しました。シヨニケス魔道具店店長ドエリス・シエス・シヨニケスと申します」
その後、お父様であるドエリスさんは仕事が残っていると言うことで店に戻り、私はクロエと一緒に魔道具店の2階へと上がるのだった。
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リビングのある2階に案内され、私は速攻でソファーに座らされる。そしてクロエは張り切った様子で「腕によりをかけて料理をさせて頂きます!」と言い、鼻唄をしながら厨房に向かっていった。
父と娘が織りなす勢いで借りてきた猫のような状態になってしまう私だったが、ふと部屋からクロエの匂いが香ってきた事に気が付く。
「………」
棚には可愛い木彫りの動物や、花の入った花瓶など色々な物が飾られており、クロエが生活してきた場所なのだと実感する。
「クロエ…」
私はふとした時に香ってくる女の子の匂いが好きだ。好きな人なら尚更。だってその人に包まれてるようで、心が満たされるから。
そう思いながら彼女の名前を呟くと、
「どうされました?」
厨房からクロエの声が聞こえてきた。
「………」
「アカリデス様?」
私はソファーから立ち上がり、不安げな表情を浮かべるクロエの元に歩いていく。そして彼女の事を思いながら手を握った。
「えっ」
クロエは体を少しビクッとさせるが、直ぐに私の手を受け入れてくれた。そして優しく握り返してくれた後、不思議そうな表情で私を見上げる。
「…如何されましたか?」
「いつもありがとね」
「え…?」
感謝の言葉を伝えると、クロエはポカンと口を開ける。
「仕事から帰ると綺麗な部屋がお出迎えしてくれて、クロエの美味しい料理が食べられる」
「き、急に如何されましたか…?」
クロエは顔を赤くして目を逸らす。そんな彼女の言動が、私の疲れた心をいつも癒してくれた。
「支えてくれてありがとう……これからも宜しくね?」
私はそう言いながらクロエを抱きしめると、普段は感じることのないクロエの髪の匂いが鼻腔をくすぐった。綺麗なブロンド髪からは女の子らしい優しい香りが伝わってきて、以前サリアと抱き合った時のような安心感に包まれる。
「はい……私も貴女様をお支えできて、何よりも嬉しいです」
するとクロエも寄り添ってくれ、私達は暫くの間抱き合うのだった。
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お父様と3人で楽しく食事をした後、私とクロエは1日の疲れを癒す為に近くの公衆浴場に来ていた……のだが、運が良いのか悪いのか浴場に誰もおらず、クロエと2人きりでお風呂に入る事になった。
全裸で2人だけの状況に少しの恥ずかしさを覚えるが、誤魔化すようにクロエを見る。
「こ、この前はクロエに体を洗ってもらったし、今度は私が背中を流すよ!」
「え!?あ、はい…」
クロエは頬を赤くしながら静かに頷いた後、側にあった木製の風呂椅子に腰をかける。
「あ……」
するとクロエの綺麗な背中と、いつもは纏められている綺麗なブロンドの髪が目に映る。
「綺麗…」
思わずクロエの髪に手を伸ばして手櫛をすると、きめ細かい髪の感触が伝わってき和やかな気持ちになる。
「あ、あのっ」
いつになっても背中を流さない私が気になったのか、クロエは体をこちらに向ける。しかしその瞬間、二つの山がご来光した。小さな身長に似合わない大きな膨らみは私のよりも遥かに大きく、思わず登ってみたくなる程に魅力的な山だった。
「………」
「あ、アカリデス様?」
このままだと普通に襲ってしまいそう。でもそんな事をしたら絶対に嫌われる。
私は生殺しをされて悶々とした気分になるも、嫌われたくない一心で心を無にする。そして洗浄液を布に染み込ませ、彼女のすべすべな背中を洗い始めるのだった。
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心が無になった私は大したもので、クロエを襲わずに任務を熟していた。今は自身の髪を洗いながら備え付けの洗浄液に関心する余裕も持ち合わせており、クロエの体に乱された心はすっかり落ち着きを取り戻していた。
前の世界の石鹸やシャンプーにコンディショナーには負けるが、この世界の洗浄液も大したものだ。髪用と肌用が一緒にも関わらず、しっかりと汚れも落としてくれる事に加え、意外にも髪がサラサラになる。この点に関しては前の世界よりも優秀だ。そして香りは……不思議と無臭だ。
「ふっふん♪」
この世界の衛生事情が思ったよりも良い事に気分が上がり、呑気に鼻唄をしていると後ろに気配を感じる。
「…?」
溜めたお湯で髪を洗い流して振り返ると、胸の前に手を当てて何とも言えない表情をしながら私を見下ろすクロエがいた。
「ど、どうしたの…?」
「今度は私がアカリデス様のお体を流します」
クロエは静かにそう口にする。
「えぇ!?い、いいよ!今日は二人で来たんだし、仕事じゃないんだからさ!」
するとクロエはしゃがみ込み、とろんとした目で私を見つめてくる。
「駄目…ですか?」
クロエの胸がグラビア雑誌の表紙の人みたいに強調され、無にしていた私の心は邪念に包まれていく。
「え、えとっ」
クロエの山と山頂に目が釘つけになる私だったが、慌ててクロエの顔を見る。すると愛らしくも色っぽい表情と、断れる事を恐れているのか悲しげな目をするクロエが目に映った。
「そ、それじゃっ、お願いしようかな…?」
そんな表情を向けられて断れる人はいないだろう。私はクロエに背中を向けて了承の返事をする。
「はい…それでは失礼します」
クロエは洗浄液を手に馴染ませた後”直接”私の背中を触ってきた。
「ひゃっ!?」
「い、いかがされましたか…?」
クロエの手に思わず反応してしまう私だったが、こんな経験は滅多にないと心の中で言い訳をし、そのままクロエに背中を流してもらうのだった。
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「終わりました」
やっと終わった……クロエの手で背中を触られて欲情しない私を褒めて欲しい。
「あ、ありがとうクロエ!」
「次は前もさせて下さい」
「後は自分で…って、え!?」
この娘は今何と言った?前も洗う?私の体を?
「さ、流石に前は自分で洗うよ!ただでさえ仕事以外で洗ってもらっちゃって申し訳ないし、後は自分でー」
私はそう言いながら振り返ると、先程と同じように目をトロンとさせるクロエがいた。
「駄目…ですか?」
「あ…」
これはダメかもしれない。主に私の理性が…って、いやいやいやっ!私は”皆の救世主”だから!ここで理性を飛び越えてしまえば以前の私と変わらない。バーで初めて会った女性に誘われて頭空っぽでホテルに付いて行く私と何ら変わらない!この世界の私は救世主、前の自分とは違うのだ。
「えーと…」
そう思って断ろうとするも、クロエは私の気持ちなど露知らずに寂しげな表情を向けてくる。
「貴女様のお役に立ちたくて…」
「うっ…」
こ、これはクロエの為だ!彼女がこんなにも求めてくれるのは殆どなかった。従わない訳にはいかない。
「う、うん…お願い」
「ぁ……!はい!」
そして前身を向けると彼女は一瞬目を丸くさせるも、直ぐに元の表情に戻る。そして私の胸を自身の手で洗おうとした時、何かを思い出したのか手を止める。
「折角ですから全身を洗わせて下さい!」
「え…?」
クロエに体を触ってもらう状況で余裕も無くなっている中、突然の提案で私は頭が真っ白になる。
「あちらに寝台がありますから、そこで流させていただいますね?」
クロエは私の腕を掴んで立ち上がらせ、そのままズンズンと歩みを進めていく。そして私を台の上に仰向けで寝そべらせ、横で何やら作業を始める。
「…………」
勢いに流されて何が何だか分からずにいると、横からぬちゃぬちゃと音が聞こえてくる。気になって横を見ると、クロエは自身の手を使いながら洗浄液と思われるヌルヌルの液体を巧みに扱っていた。
「アカリデスさま…」
するとクロエは私の体をじっと見た後、いつもの可愛らしくも真面目な表情で私の目を見る。
「貴女様にご満足いただけるよう、誠心誠意洗わせていただきますね?」
その後、クロエは私の体を”隅々”まで洗うのだった。