…なんだ?これ…?
視界が?頭が…ボーっとする…?
体の感覚も…なんか……
「…非常に申し上げにくいこと、なのですが…息子さんには、個性がありません…」
「どの足にも小指の関節があることから、確定的かと…」
え?個性がない?そんなことはないと反論しようとしても、口からまともな声が出ない。
「そう…ですか…教えてくれて、ありがとうございます…
…息子はこの"個性社会"で、生きていけるのでしょうか…」
コセイシャカイ?個性社会!?そんな言葉が出るのは、俺の知る限り一つしか…『僕のヒーローアカデミア』しかないじゃん!それで無個性…無個性って、人権無しで幼少期から虐め抜かれる気しかしねぇ!
…いや!まだギリオールマイトか緑谷出久ならなんとか…
「砂藤さん、そう気を落とさないで下さい。奇跡的に体内には問題がなかったので、ちゃんと生きて行けますから。」
…
……
………
はい、オワタ…
「それに、個性がないと言いましたが、その体があれば、個性届けを出しても大丈夫かと思いますよ。」
は?流れ変わったな?
医師の話を要約すると、俺は双子で産まれる筈だったが、合体して一人になったようで、
・俺は額に第3の目がある
・俺の体重は、通常の新生児の1.5倍
・俺は胴体から腕が生えている。
普通の腕の両手のひらに鼻の穴が一つづつ、胴体の腕の両手のひらに耳の穴が一つづつあり、普通の腕の中に肺がある。
・俺の腰から尻尾状に変形した両足が生えていて、その間から一つの目と口と心臓と消化器官を持った尻尾が生えている。
など、
しかし結構強くありませんかね?
障子くんと尾白くん×3を足したみたいな個性なんですけど。あ個性じゃないんだった。
「では異形型の個性ということで、当院で個性届けを出して頂くのですが、個性名は何になさいますか?」
「じゃ、じゃあ───」
個性:二重器官/
生まれ変わった俺の人生は、ここから始まった。
あれから早4年。
毎日毎日味のうっっすい粉ミルクを飲まされて心が壊れかけたり、3才で初めて立った瞬間自重で足がへし折れ、一年入院してしまったりした経験もいい思い出になった頃。
4歳児にしては達筆な名前が書かれた名札をつけて、俺は幼稚園に遅れて入園した。
「さあ!新しいお友達と遊びましょうねー!」
『はーい!』
保育士の呼びかけに応じて、めちゃくちゃかわいいロリショタ達が返事をする。いやかわいい。マジでかわいい。
「かひとくん!おいごっこしょ!かひとくんがおいね!」
10人くらいのロリショタが近づいてきたぜ!うひゃー!かわいいぃぃ!
「よーし!お兄ちゃん全力出しちゃうぞー!」
俺ロリショタと遊ぶの向いてねーわ。なぜって?
俺の体デカ過ぎんだよ!もう小学生3年くらいあるんじゃねーかな!
逃げでも全然捕まれねーし!流石に可哀想だからわざと捕まってあげたら「てーかーげーん!しーなーいーでー!」とか言って泣くし!
さっきまでめっちゃ遊んでくれたロリショタがどんどん離れていくぜ!(泣)
このつえぇ体なら雄英行けるかもだけど!友達いねぇまま過ごす幼稚園3年間がきついわ!
….そもそも雄英に行っても、原作で見たみんなと会えるのか?転生してジャストで緑谷達と同い年なんてこと、あるのか?最悪俺が知っている誰とも…
その先の考えを掻き消し、遊具で遊ぶ
いつまでも、いつまでも、今まで覚えたことの繰り返し。
幼児用の服を着て、幼児用の絵本を読み聞かせられて、清潔で汚れのない世界で遊んでも、心はその先を行っている。
俺はもうおかしくなっているとわかる。
自重で足の骨を折ったとき、感じたのは苦痛ではなく快楽。
日常の全てがゲーム感覚で、"いつもと違うこと"が起きたから楽しかったのだ。
無理矢理ハイになっているだけで、実はとっくに限界だ。
だからだろうか?
遠くで見える争いが、久しぶりに見るエンタメに見えた。
転んでケガをした男の子が、少女に傷口を啜られている。
泣き叫ぶ男の子は少女の顔を蹴る。
鼻血を出して、その場を去るその子に心を奪われた。
地面にポツポツと落ちる血を、ゆっくりと、見逃さないように、息を止めて辿る。
木の裏に隠れるように、息を潜める影を見た。
草を掻き分け、近付くと───
手に残った血を舐める少女がいた。
「…よう、『トガヒミコ』!俺と一緒に、ヒーローを目指さないか!」
『
砂藤化仁
上半身に両腕、尻尾×3が盛りだくさんだったので、赤ちゃん足ボキボキに折れてから筋肉バキバキ足になった男。
力道くんが産まれるはずだった家庭に生まれてちょっと複雑だが、ヒロアカ世界に来れて嬉しい気持ちの方が上回ってるぜ。
これからの活躍に期待。