個性:「ラジコン」
握手した人間を10分操れる。可動域を超えた動きをさせることも可能。
「未来のヒーローと、握手させてもらえないかな?」
こちらに手を差し出すAFO。
過去一番の危機に脳がフル回転する。
今、ここで疑われればゲームオーバー。
AFOが個性で俺たちを殺しても、ここは人気のない山奥。
目撃者なんていない。
『事故』か、『失踪』として処理される。
だがAFOは俺たちを即死させなかった。
何か理由があるはず。
おそらく燈矢かトガちゃん、それか両方に
そして今、燈矢の死を阻止した俺の個性を抜き取るか、俺にいらない個性を大量に与えるかして、俺を無個性化か廃人にするつもりか?
そうすりゃ2人を
どちらにせよ疑われたら死ぬ。
俺は無個性だから、個性は抜き取れないし、個性を与えられてもある程度は耐えられるだろう。
コンマ数秒で覚悟を決めて、AFOの手を取る。
「は…はい!いいですよ!」
汗を流すな。
動くな。
表情を変えるな。
瞬きの回数を意識しろ。
呼吸を整えろ。
思考を遮断しろ。
下手な行動一つで首が飛ぶ。
絶対に死んでやらねぇ!
ルート分岐も、エンディング数も!
事実上無限大のこの
バッドエンドで終わらせねぇ!!
「……ありがとう。いつかヒーローになったら、僕にもサインをくれよ?」
無限にも感じられる時間は、唐突に終わりを告げた。
「はい。
それでは失礼しまぁす!」
「わたしもあくしゅ」「トガちゃん!燈矢が燃え尽きて死ぬよ!早く!」
燈矢がブチ切れて炎出してるが、トガちゃんの捕縛ガチガチだし問題ない。
はず。だよな?
…そんなことはどうでもいい!
下山!とにかく下山!AFOが何してくるかマジでわかんねぇから!
「走って帰りまっすよー!トガちゃん、燈矢!」
「はい!」
「…ぶはっ!口塞ぐんじゃねえ!息が続かねぇんだよ!」
燈矢は無視しておいて…
落石…恐らくAFOの攻撃を4本の腕で迎撃する。
五指で触ったり、石に向かって『ぶっ飛べ』とか無駄に喋ったりしても個性の発動がないので、恐らく個性は与えられていない。
ただの握手だったのか?
…いや、そんな無駄な行動、AFOがするか?
その疑問に答えるように、四肢が止まり、言うことを聞かなくなる。
「…っは〜…握手なんかするんじゃなかったなぁ…」
俺の四肢がミシミシと音を立て、あらぬ方向に折れるのにそう時間はかからない。
「…はぁ…
四肢の痛みに導かれるまま、俺は意識を手放した。
「…い…おいてめぇ!起きやがれ!」
「…お…」
怒声が頭に突き刺さる痛みで目が覚め、視界がトガちゃんのハグで
泣き顔もかわいいね!
「おきたぁぁぁ!!」
「…おはよう…いい朝だねトガちゃん…
…俺が気絶してから何分経った?現況は?」
「大体2分くらいか?お前が落石にやられてから、倒木やら土砂崩れやらが馬鹿みたいに起こってる。何回死にかけたか…」
燈矢の体に火傷の痕が増え、焦げ臭い臭いが強まっているようすを見る限り、幾度も個性を使ったのだろう。
「…個性、使ってくれたんだな。サンキュー
「ッ…別に…トガが『かひとくんのこと、まもらないと
勘違いすんな。」
…喜んでんな…分かり
「ズビッ…とにかく
「おう。ま、俺は両手両足折れて骨が見えてっけど、まだ尻尾3本とスペアの両腕が残ってる。全然いけるぜ。」
「なんでお前冷静なんだよ…」
「痛みで脳がスッキリした」
「「なにそれ…」」
まぁ痛いし涙も出るけどさ、動けないと死ぬし…
「ほら行くぞ!俺まだ死にたくねぇから!」
一歩踏み出して、熱気を放つ
「…誰だお前は。」
「…あ、エンデヴァーさんちっすちっす。病院まで送ってください。」
涙を覆い隠すような笑みを浮かべた怪物は、
安心してぶっ倒れた。
エンデ「燈矢、あんな狂った人間と友達になっていたのか…!」
燈矢「初対面」
エンデ「えっ」
燈矢「会って10分も経ってない」
エンデ「えっ」