ヘッドショットすればどんな敵でも一撃で殺せるチート能力&ヘッドショット以外全て無効化される永続デバフ   作:銀髪幼女

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 あれから何度目かの偵察を終えて、徐々に体にも慣れてきた。不思議と、目が覚めてからは自分がサナであることに違和感を覚えることがなかった。記憶の混濁もなく、感覚も普通だ。どちらかというと、前世の記憶を取り戻したような感覚の方が強い。ただやはり違和感が拭えない箇所はある。

 例えば、着替えとか排泄とか、そういうのだ。昔から時折、既視感のような物を感じてきた。思えばそれは前世で見聞きしていた物だったのかもしれない。

 

 アレクの部屋に置きっぱになっていたアレクの手紙を持って、応接室へと向かう。

 プレハブは小さく狭いが、私とアレクの部屋の他に、風呂場と応接室がある。

 あまり多くは来ないが、客人は大抵この応接室へと通しているのだ。

 

「リリア、これ。戦況報告書。あとアレクの手紙」

「……またですか?」

 

 少女がめんどくさそうにため息を吐いた。

 

「手紙を届けるのは私の仕事じゃないって、何度言えばわかるんですか」

「私はわかってるよ。アレクはわかってないけど」

 

 彼女は補給係のリリアだ。前哨基地である私たちのプレハブ小屋と都市とを週に何度か往復し、食料や情報の伝達を行っている。

 彼女曰く、自分は郵便屋さんじゃないらしい。が、そんな小言を言いつつも、手紙はちゃんと届けてくれる。

 

「ニーナちゃん、私が家のチャイムを鳴らす度に期待したように戸を開けるから嫌になるんです」

 

 ニーナというのはアレクの娘だ。確か今年で11歳か、12歳だったような気がする。

 会ったことはないが、酔ったアレクがべた褒めしているのを何度か聞いたことがあった。

 

「まるで私が期待を裏切っているみたいじゃないですか。裏切ってるのはアレクさんなのに」

 

 リリアがため息を吐く。

 確かに、ただ手紙を届けているだけなのに毎回残念そうな顔をされたら、誰だって憂鬱になる。ましてや業務外労働なのに。

 そう考えるとリリアが少しだけ不憫だった。

 

「あの人、何か月家に帰れてないんですか?」

「たぶん半年以上」

「なんで? サナちゃんはともかく、偵察隊がそんな長期間休暇を貰えないなんて、聞いたことありませんけど、」

 

 ああ、そうだ。リリアのようなただの民は、今国がどういう状況に置かれているかを知らない。ここより南の都市以南に住む人々は、モンテルが戦争に負ける未来など想像だにしていないはずだ。

 

「自分から休暇を取ってないんだと思う。理由はわからないけど」

 

 故に、私たちの事をただの偵察兵だと思っている。実地偵察を行う部隊は、そのほとんどが傭兵などからなる兵士だ。特に私が率いている舞台は、仮に位置がバレて戦闘になっても、可能な限り情報を持ち帰れるよう、最低限の実力を持つ兵士しか採用されない。謂わばエリート部隊だった。

 

「会いに行ってあげればいいのに」

 

 リリアが独り言のように呟く。

 

「アレクも、会えるなら会いたいと思うよ」

 

 きっと、普段ニーナと接している彼女にしかわからない何かがあるのだろう。リリアの表情は暗く、彼女の金髪だけが異様に光って見えた。

 

「そっか。じゃあ、サナちゃんは休み取らないの?」

「私?」

 

 急に話題が私に飛んで、声が裏返った。

 

「うん。君が休んでるところ見たことないから」

「偵察で外にいる時以外が休みみたいなものだから」

「もし宿がないなら私の部屋貸すからね……?」

「大丈夫だよ、そういうことじゃないから」

「ならいいんだけど。じゃあ私は行くよ。またね、サナちゃん」

 

 彼女はアレクの手紙と戦況報告書をバッグに入れると、そそくさと立ち上がった。

 

「またね」

 

 馬に跨るリリアの背を見送る。

 

 モンテルの都まではここから南に数キロ進む必要がある。馬なら往復半日程で辿りつける距離だ。金髪が風に靡くのが見える。

 

「……それで、手紙にはなんて書いたの? アレク」

 

 それをすぐ近くで見ていたであろうアレクに声を掛けた。

 

「ったく、なんで気付くんだよ」

「私の魔力探知は凄いから。些細な揺れも見逃さない」

「俺も隠密もまだまだなんだな」

 

 アレクがため息交じりに言った。

 

「取り留めもないことだ。もう少しで帰れるとか、そういうの。……あの子には悪いが、俺が死ぬか国が滅ぶまで、手紙は届けてもらわねぇとな。あの子だけがニーナに俺が生きているって伝えてやれるんだ」

「……もしここが突破されて国が滅んだら、リリア達はどうなると思う?」

 

 敵国であるイドマートは年々兵力を増している。魔法使いによる新たな魔法、兵器の開発や、その魔法使いを育成するための学校、兵を育てるための士官学校、さらには魔法大学を設置したことで世界中の学生がイドマートに魔法を学びに来る。

 対するモンテルはじり貧で、その国土を湾岸のこの一帯まで後退させられている。その帝都までを繋ぐ橋はここ以外を封鎖し、全兵力をこの関門に置く形で陣形を取り警戒態勢を取っているほどに。

 

「もし国が滅んだら、か。珍しいな、お前がそんなこと言うなんて」

「なんとなくだよ。ただなんとなく、私たちが死ねば、リリア達も無事じゃすまないんだろうなと思っただけ」

「心配してるのか」

「そういうのじゃない」

 

 アレクのまるでそよ風でも吹くみたいな笑みに、少しむっとした。

 もはや誰も、この戦争に勝てるだなんて思っていない。思っているのは、帝都に住む民だけだ。彼らだけは、自分たちがいつまでも無事でいると思い込んでいる。

 

「素直になれよ。敵にとっては残忍な狙撃手でも、自分の友達は大事に思っている、ってのは好感持てるぜ」

「だから、そんなんじゃないって」

 

 自分は子供である以前に兵士で狙撃手だ。子供に向けるみたいな表情をされるのは、なんとなく癪だった。

 

「ま、なんでもいいさそんなこと。負けた時の事を考えて前線にいるやつなんかいないだろ」

「それはそうだけど」

 

 言い終えて、すっとアレクが表情を消した。それまでのちゃらけた様子とは打って変わって、今度は偵察中の彼のような真面目な顔をしている。

 

「まあでも、もしここが突破されたなら、そん時は、別の国にでも逃げてくれ」

「は? なんで?」

「もし最初から勝ち目のない戦だとしても、俺らが引くことはできない。まして俺は、どうしても引いちゃいけねえ理由が都にある。でもお前は違う」

 

 都前の森を眺める。ちょうど南朝したであろう太陽は高く、秋の終わりでも日差しは眩しく熱を感じた。

 

「お前はまだ子供だ。それも悪魔借りの、魔眼を持った子供だ。そんな子供の将来が、こんな下らない戦如きに奪われてたまるかよ」

 

 唾を吐くような声に、思わず怖いと思ってしまった。

 普段はふざけているアレクでも、内心はこんな感じなのかもしれない。

 アレクは帝都に娘を一人置き去りにしている。妻は病死し、彼の母が娘の面倒を見ているらしい。

 私はくしくも、彼の娘と年齢が近い。もしかしたら、重ねる部分でもあるのかもしれない。

 

「お前が悪魔を自由自在に呼び出せるとかなら、話は変わってくるんだけどな」

 

 またすぐに、いつものアレクの表情に戻った。どこまでもふざけていて、どこまでも内心の読めない仮面のような顔だ。

 私にはそれが、時々不気味に思える時がある。

 

「悪魔借りにそんな力ない。それに、もし私が悪魔を呼べるなら、こんな戦争、私だけで終わらせられる」

「わかってる。だからたとえ話だ。そう向きになるなよ」

「……なってないし」

 

 宥めるような目に、また少しむっとした。

 

「んじゃ行くぞ、()()。仕事の時間だ」

 

 ***

 

 時刻は二時を回ったところだった。季節は秋の終わりで、特に最近は六時前に日が落ちてしまう。

 

「んで、今回はどうするんだ? 隊長さん」

 

 偵察用の服を着たアレクがそういった。やや長めの髪を後ろの方で束ね、またそのほとんどを帽子で隠している。服の内側には彼が自分で使う用の弾薬が仕舞われており、腰には小銃が刺さっている。

 

「前見つけた敵の拠点を狙撃して、前線を無理やり後退させる」

「……それはだいぶ大胆な作戦だな」

「偵察に関しては自由にしていいって言われてるから」

「他の奴らからは反感買いそうだけどな」

「そんなの、私の知ったことじゃない」

「それもそうか」

 

 魔鏡に魔力を込める。手のひらサイズの鏡に他の偵察隊のシグナルが映り、通信が可能となった。

 

「みんな、聞こえる?」

『聞こえるよ』

 

 呼びかけると、鏡から一拍遅れて間延びした少女の声が聞こえた。

 

「クレナ、そっちの状況は?」

『いつでも出れるけど、私たちはあくまでサナの護衛をしてればいいのよね?』

「そう」

 

 千里眼を使っている時は、魔力探知ができない。つまり、自分の周りの状況は、耳で聞いている情報以外一切入ってこない。

 

『なら問題ないよ。いつもより危なくないしね』

 

 クレナが満足気に言った。

 私とアレク以外の偵察隊は、全てクレナの下について動いている。私たちが実際に会うことはほとんどないため、言ってしまえば実質的な隊長はクレナだ。私はただの狙撃手で、その功績があるから隊長という立場になっただけに過ぎない。

 

 彼女らはそれぞれモンテルの要塞門の左右に少し進んだところを拠点としている。なぜ一か所に集まらずに別れているのかは簡単で、その方がより多くの情報を素早く収集することができるからだ。

 

 そして今回の任務は偵察ではなく哨戒。それも、私一人をただ後方から観察し情報を提供するだけの簡単な任務だ。

 それ故の、いつもより危なくない、なのだろう。

 

 それを聞いたアレクが悩まし気にため息を吐く。

 

「……もし成功して前線を下げれたとしても、ただの時間稼ぎにしかならないだろうな」

「わかってる。けど、時間が稼げればそれでいい」

 

 私はモンテル軍の中で要として扱われている。それだけ、私の狙撃は有用だ。

 ただ、だからこそ、その私一人にほとんどを背負わせることを、アレクはよく思っていない。

 

「じゃ、行こっか」

 

 私の合図で、魔鏡のシグナルに色が付いた。これから、哨戒偵察が始まる。

 

 ***

 

 敵の拠点に直接攻撃できれば、それは大きな抑止力となる。

 

 流血を伴わず、当たれば即死の、魔法防御貫通からなる絶対的な死弾。

 さらにその弾丸自体を魔力で編んだ魔弾として装填すれば、どこから狙撃されたのかも、なぜ死んだのかもわからない。

 

 これまで勝ち続け、ついにはモンテルの国土を湾岸都市一つにまで追いやったイドマートが、ここにきて前線を上げることができず、拠点にいた兵士が謎の死を遂げていく。

 

 故に敵は前線を後退させるしかなくなる。

 そしてそれは、イドマートに対しての警告にもつながるのだ。

 こちらは()()を飼いならしているのだという、絶対的な警告に。

 




追ってくれてありがとうございます。
続き(壮大な性癖)が頭の中にあります。
ところで、ヘッドショットすれば確実に敵を殺せるってことは、世界を滅ぼしかねない悪魔とか惑星を破壊できそうな巨大な虫とか鱗硬すぎて物理ダメージ通らない鋼のドラゴンとかもワンパンできるよね。
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