【オルクセン王国史/二次創作】変わり者亡命白エルフと氏族長代理のその後   作:Telfe262

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終.戦時中のことと、その後のことと

 …とまあ、あたしたちがエルフィンドを脱出してから、ベレリアント戦争が始まるまではこんな感じで過ごしていたってわけさ。

 

 始まってからも、しばらくは普通に過ごしてた。とはいえ戦地に関心を持ってなかったってわけじゃない。

 最初の頃、陸軍はモーリアを落として、海軍はファルマリアの軍艦を焼き払ったと知らされた時はもう大盛り上がりさ。その後も大きい出来事があるたびに盛り上がっていたっけなあ。

 

 ただ、みんな落ち込んだり、怒ったりする出来事もそりゃあったよ。アハトゥーレンが砲撃された時とか、屑鉄戦隊が壊滅したと聞かされた時とかね。

 特に屑鉄戦隊の時がなあ…あの時は時折戦地からの郵便が届いたりしてたんだけど、「シルヴァン川を渡る時、屑鉄戦隊が助けてくれた」って話も出ててね。

 フィンリーとかも「戦争が終わったら、3隻の乗組員たちに来てもらえるならヴァルダーベルク総出で歓待したい」って話してたから、さ…

 

 まあそういうことがありながらも、やるべきことはやっていた。

 ただ、アンファングリア旅団に入ったみんながいなくなっちゃったから、その分農作とかの手間は増えていたのは確かだけど、後備師団とか、近隣の皆さん方が手伝ってくれてね。本当にありがたかったね。

 あとは…旅団のみんなが送ってくれたお金をもとに共同基金作って農具を買ったり、土地とかの整備に使ったり、みんなの居宅の設備充実させたりとか。あるいはみんなで戦地で必要なもの集めたり、買い集めようがないものは自分らで作ったりして送ったりとか、試行錯誤しながら後方から出来る限りの事をしようとしてたよ。

 そうそう、他にはファーレンス商会やヴィッセル社が、エリクシエル剤とか刻印式魔術板とか作るのに協力したりとかもしたっけ。あれ、作るのにある程度魔力や魔術の心得が必要だからさ。正直あれはみんなかなり気合入ってたなー、「このエルクシエル剤が、出征したあの子の命を救うかもしれない」「この刻印式魔術板を使って輸送した食品が、出征したあの子の腹を満たすかもしれない」って。まあ気合入ってたのはあたしもなんだけど。

 

 まあ、あたしたちもあたしたちなりにいろいろやって、みんながベレリアント半島から帰ってきた時にはもっと住みやすくなってるって喜んでくれてね。フィンリーもあたしも報われたと思った瞬間だったよ。

 

 え? その辺は知ってる? いろんな人の回想録とかで読んだ? さいですか。

 じゃあみんなやった系のエピソードは省くとしようか。

 

 フィンリーは氏族長レベルって事もあって、いろんなものの責任者になってたりしたっけな。共同基金の運営にも関わってたし、あといろんな団体がやってくれる救恤金の受け入れとかもやったり。実はフィンリーって、将来の氏族長候補だったこともあっていろいろ教育受けててさ、軍人よりも事務員とか官僚とか、そういうのが向いてるクチでね。結果的にはヴァルダーベルクに残ったのは良かったんだろうとあたしも本人も思ってる。

 

 あたしは基本的にはフィンリーの手伝いかな。金額とか、土地の面積とかいろんなあれこれの計算したりとか。当時は電卓なんて便利なモノはなかったからねえ。他にも農業全般に、オルクセンの法律とか規則とか確認して、土地やら建物の建設やらでやろうとしてる事が問題ないか確認取ったりとか、あとは…ともかくいろいろ。

 そうそう、ブレギエルの姉御殿と一緒に、国内外の記者相手にいろいろ暴露してやったりもしたな。あたしたちは大部分があの民族浄化の時に反抗して逃げ出した脱走兵だから、実情をよく知ってるわけだ。知ってる事は何もかもぶちまけてやったよ。

 レーラズの事件なんかもあって、キャメロットとかの外国でもエルフィンドに向けられる視線は厳しいものになってたと聞く。それにあたしらの暴露も相まってより厳しくなっていた…と思いたいね。

 

 あとは、軍の手伝いしたりとか。ほら、あたしらは当時のエルフィンドの奴らからしたら異端ではあったけど、オルクセンに逃げ込んでくるまではエルフィンド国民として一応は白エルフの社会にいたわけだからね。その辺の情報提供したりした。戦中の占領地でのあれこれとかの参考にしようとしたみたいだ。実際役に立ったかは知らないけど。

 それと、あたしとかフィンリーとかもういくらかは、ディアネンにいたこともあったからね。ベレリアント戦争の終盤、ディアネンを軍が包囲してた時にも情報提供はしたね。地理的な、どこになにがあるとかそういうの。一度参謀本部にちょろっと呼び出されたのとは違って、今度は参謀本部近くのホテルに泊まり込みでみっちりとね。

 …まー、思う事がなかったかというと、さすがにそりゃ嘘になるね。なんだかんだ、フィンリーと最初に会って、いろいろ遊んで回った街だったわけだから。一緒に行った場所も、ギャラリーとか劇場とかの中には、運悪く流れ弾食らって焼けちゃったり吹っ飛んだりしたところもあったらしいって聞くし。

 

 え? なんで「らしい」かって? 簡単な話、あたしはディアネンには行ってないからね。というかフィンリーたちと一緒に脱出して以来、ベレリアント半島、シルヴァン川の向こう側には1歩も足を踏み入れてない。確かにあっち側は生まれ育った場所ではあるけど、故郷とは言いたくない。あたしの故郷はもうヴァルダーベルクなのさ。

 

 …うん、そうだよ。確かに軍への情報提供とかいろいろやったりはしたけど、全部オルクセン本国での話。直接現地には行ってない。

 いや、正直行かなきゃならんかも、とは思ってたんだ。場合によっちゃ現地住民とかに化けていろいろ調べたりとかあるのかなと思ってた。ただ、知っての通り、戦後のベレリアント半島は結構な食糧難だったからね。つまり、牛缶とか小麦粉の袋とか、そういうあれこれで釣り糸垂らせばわざわざ密偵仕立てるまでもなく、結構情報は集まってきたそうだよ。あっちからドルアノアとか、あとフィンリーのとこの子とかが帰ってきた時に聞いた。いや、食べ物効果、ほんとにすごかったらしいよ。まあその分アダウィアル・レマーリアンみたいなのも出てきちゃったわけだけど。

 

 だから軍もわざわざ異端の白エルフ連れてくる必要はないと判断したみたいでね。おかげで行かずに済みました。良かった良かった。

 

 とはいえ、軍絡みだと詳しい話はできないけどね。確かにもうとっくにベレリアント半島はオルクセンに併合されたし、OKBだってもうずっと前に解散してる。でも守秘義務ってやつは続いてるからね。まだもう数十年しないと話せない事も多いし、中には一生話ができないようなのもある。

 

 まあそれだけじゃアレだし、あたしとかかわりのあるみんなについて軽くその後を解説しておこうか。

 

 

●フィンリエル・アダリル

 

 あたしの一番の親友。今でも。

 戦後、自治区という扱いになったヴァルダーベルクの区役所で働いて、最終的には都市局長にまで上り詰めた。

 しばらく勤め上げて退職。あたしとしては彼女はまだまだ現役で行けると思ってたんだけど、ずっと同じ者が同じ地位に残っていたら良くない、老害になる前に後進に席を譲るべきというのが彼女の考えだった。

 これはフィンリーだけじゃなくて、あの民族浄化の時にエルフィンド軍に殺された氏族長の考え方でもあったそうだ。だからこそ将来の氏族長候補としてフィンリーを育成してたってわけ。フィンリーはその考え方も受け継いだわけだ。

 公職は離れたけど、今でもヴァルダーベルクに住んで、いろいろなとこの顧問や相談役なんかをやってる。

 

 

●ドルアノア・ファロスディス

 

 逃避行の時にあたしたちを導いてくれた人物。なんだかんだ、今でもたまに話す仲だ。

 彼女はアンファングリア旅団で猟兵部隊の中隊長として従軍。ベレリアント戦争を生き残り、アンファングリア旅団がアンファングリア機甲師団になった今でも現役だ。

 第2猟兵連隊の大隊長として、今もバリバリやっている。フィンリーの氏族の中には彼女の部下もいるんだけれど、その子曰く「将来は連隊長も夢じゃないかも?」だそうだ。

 

 

●フィンリエルの氏族たち

 

 あの忌まわしい事件を生き延びたのは、フィンリー入れて22名。今にして考えると、ほんと運のいい面々だよね。

 氏族長代理はどうにか生き残ったし、他のみんなもすぐドルアノアたちと合流出来て、それ以上は欠けずにオルクセンへ逃亡できたんだから。でもって、彼女らの幸運は筋金入りだったんだよね。いやまあ運だけでなく実力も多分にあるけどさ。

 フィンリー入れて8名が残留して、14名が従軍した。その14名はみんな生き残った。それを知った時のフィンリーの喜びようといったら! 

 今ではみんなそれぞれの道を歩んでるよ。ヴァルダーベルクに住んで、フィンリーの秘書をしてる子もいるし、アンファングリアに所属し続けてる子もいれば、退役して民間で働いてる子もいる。中にはオルクセン飛び出して遠く道洋の秋津洲に行ってる子までいるんだ。

 でも、外に行ってる子たちも、時々ここに来る。なんやかんや、彼女らにとっても故郷はもうヴァルダーベルクなのさ。

 

 

●シルヴァン川越えで合流した面々

 

 シルヴァン川を越える時に合流した12名。うち9名がアンファングリア旅団に入った。

 彼女らもみんな生き残った。彼女らにとっても、ヴァルダーベルクは、そしてフィンリーは帰る場所になっていたそうだ。

「最初は氏族のみんなの仇を取れるなら命は惜しくない、相打ちでも自爆でもなんでもしてやる、と思っていた。でも、ヴァルダーベルクで暮らすうちに、勝って、生きてアダリル氏族長代理のところへまた戻ってくるのが一番の目標になった」って言ってた子もいたよ。

 フィンリーのとこの子と同じく、みんな今ではそれぞれの道を歩んでる。アンファングリア旅団に所属している子もいれば、民間で働いてたり。ちなみにフィンリーのとこの子と一緒に秋津洲に行ってる子もいるよ。あっちで一緒に住みながらいろいろやってるそうだ。

 まあ、彼女らにとっても故郷はもうヴァルダーベルクなんだけどね。時々やってくるよ。

 

 

●クリストフ・アルレスハイム

 

 ベレリアント戦争が始まって終わるまで、彼はずっとヴァルダーベルク分室に居続けた。戦時中もいろいろ世話になったよ。

 で、戦後3年くらいして異動していった。一時はOKBに出向して、ベレリアント半島に行った事もあったそうだ。今も農務省で働いていて、ある部署で課長補佐をしているって話だ。

 私人としての彼はというと、第三軍に所属している弟さんは無事にベレリアント戦争を生き延びたって話だ。いや、良かったよ本当に。

 ちなみに弟さんだけど、例の部隊への選考には参加したけど一次選考で落ちたんだとか。なんでも高所恐怖症だったんだってさ…

 

 

●亡命白エルフ

 

 シルヴァン川越えに同行する格好でオルクセンにやってきた人数は3桁。ただ、開戦後ちょっぴり増えた。

 開戦直後にエルフィンドを離れたり、あるいは前々からエルフィンド本国を離れていてキャメロットなんかに滞在していた、言っちゃなんだけど反政府系の白エルフの中にはオルクセンへやってくる連中もいた。

 ほかには国境近辺にあたしらと似たような連中がいくらか潜伏していて、エルフィンドに攻め込んだオルクセン軍に保護を求めたなんてこともあったんだ。中にはその日までダークエルフと一緒に隠れ潜んでた奴までいた。大したもんだよね。

 基本的にはみんな戦時中は残留組のダークエルフたちと一緒に農業とか物品製造とかそういうのをやってたね。なかにはあたしみたいに軍に呼び出されて情報提供してたのもいるけど。

 で、そんな亡命白エルフたちはなんやかんや8割はヴァルダーベルクに住んでるよ。他の2割もほとんどはシルヴァン川よりこっち、オルクセン国内にいる。さすがにベレリアント半島に戻ったって奴は、あたしが知ってる限りはいないかな。どっちみち非主流派なのは変わらないし、一歩間違えれば報復の対象だ。戦争はとっくの昔に終わったとはいえ、遺恨はなかなか消えないもんさ。

 

 

●シンウィアル・ブレギリル

 

 で、あたしはどうしてるかっていうと、今でもヴァルダーベルクに住んでる。で、今は文化交流協会のヴァルターベルク支所で働いてる。

 いくらか前までは自治区役所でフィンリーと一緒に働いてたけど、彼女が辞めるって言い出したんで一緒に辞めた。フィンリーの言う通り、あまりに長く居座るってのも考え物だからね。軍や政府は実際そうして身を引いてる面々は多いし。

 さっきも言った通り、フィンリーとの友情は今も続いてるよ。この後も一緒に秋津洲から輸入された映画を見に行く予定だしね。

 

 え? 後悔はしてないかって? 

 ま、細かい事だとそりゃもちろん後悔してることはあるさ。あの時アレを買っておけばよかった、だとか、あの時もっとうまいやり方があったんじゃないか、だとか、そういうの。

 でも、大局的には後悔は全然してないね。民族浄化が始まる時に脱走してフィンリーのところへ奔ったのも、一緒にオルクセンに亡命したのも、その後もヴァルダーベルクにいるのも…後悔したことは一度もない。

 もし記憶を持ったまま過去に戻ったとしても、あたしはたぶん最終的にはフィンリーたちと一緒にオルクセン、ヴァルダーベルクにいるはずだ。

 

 

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