くるりと回ったペンライトが扉の先の暗がりを照らす。すべての窓がカーテンで閉ざされたこの建物の中は、時間が止まっているかのように思えた。
「ほこりと蜘蛛の巣だらけだな。ホントにここが目的地なのかよ。」
新品の帽子に蜘蛛の巣が絡みつき、うざったらしく翔子はぼやく。片手間に持つペンライトが照らした先に、偶然スイッチらしきものが見えた。ツカサが迷わずそれを点けると、曇りガラス越しにドアの向こうが照らされる。
「この先だ。」
ドアノブを回し、重い扉をゆっくりと開く。その先には、1台の古めかしいカメラ。何組かの丸机と椅子。そして――
「この絵って…!」
切れかけの白熱電球の仄かな光が照らした背景ロール。そこに大きな風都タワーと仮面ライダースカルが描かれている。ほこりを被り、色がくすんでいるそれは、誰かが来るのをずっと待っていたかのように思えた。
「なんでおやっさんが描かれてんだ…」
「この構造、そしてこのカメラ。間違いない。ここは光写真館。かつてディケイドが拠点としていた場所よ!」
惹かれるように。導かれるように。ツカサはそれに近づこうとする。ベータの放ったケミーがこの施設全ての明かりを点けたのと同時に、ロールを維持するひもが1人でに下に引っ張られた。
「新たなディケイド。使命を得た今、ようやくあなたの旅は始まった。もう後戻りはできない。」
どこかで声がした。ガラガラと落ちてきた新たな背景ロール。それはこの施設に見合わないほどに新しく、不自然だ。描かれているのは、暗がりの中に一人で立つ、黄色い蛍光色の戦士。バッタのような装甲を纏ったそれの名を、ベータは知っていた。
『速報です。都内飛雷インテリジェンス本社付近にテログループ、滅亡迅雷.netが現れました。現場の高橋さん。』
突然点いたテレビがニュースを映し出す。テレビ局から一転、高層ビルに向けて進軍するロボットたちがそこには映り、ヘルメットを被ったリポーターが様子を説明し始めた。
『こちら飛雷インテリジェンス本社です。大勢のマギアがビルへと進軍していきます。あ!あれを見てください。』
『Authorize』
カメラが一瞬ぶれ、遠く離れたビルの屋上に立つ人影にフォーカスしていく。低いベース音を響かせながら、空から屋上へと届いた光が巨大なバッタを作り上げる。跳ね上がったそれと共に人影が飛び降りた。映し出された2つのデジタルエフェクトが彼の前で重なると、手に持つ何かを翻して彼は叫んだ。
『変身!』
『プログライズ!』
一つの恐怖なく放たれるその言葉。ベルトに何かを刺した瞬間、黒いパワードスーツが彼を包んだ。巨大なバッタがらせん状の紐になって装着されると思えば、着地による煙で姿が見えなくなる。
「この世界は…」
『現れました!我らが仮面ライダー!ゼロワンです!』
『飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a rider kick.』
白煙の中から現れる一人の戦士。赤い瞳が光る時、運命が動き出す。カーテンが開き、世界と繋がる。ここは「ゼロワンの世界」。窓を開ければ、至る所でアンドロイドが人と共に暮らすのが見える。空と海で星が光った。今、時代を0ではなく、1から始めよう。
【次回 仮面ライダーダークディケイド:フェイク】
【ゼロワンの世界編】
お読みいただきありがとうございました。外伝の方も含め、感想、評価、お気に入り等々していただけると幸いです。次の世界をどうぞ首を長くしてお待ちください。それでは。