原生林の一般転生者マッカォ 作:どすじゃぎぃさん
イビルジョーが筋肉を膨張させる。
薄くなった皮越しに、狂竜ウイルスに侵された紫色の血管が浮き出す。
”ゴオオオオオアアアアアア”
歪んだ咆哮。
「ユイカちゃん、ヘイト任せた!」
「オーケー!」
それを皮切りに、二人の狩人が動き出す。
まず、蒼色の大剣を持ったハンター――ユイカが、ポーチから取り出した種を噛み砕きながら、駆け出した。
イビルジョーは向かってくる獲物に噛みつこうとし、 「よっと」 ユイカは前転で避ける。
そして、懐へ潜り込み、縦斬り、続いて薙ぎ払い。イビルジョーの後ろ足へと斬りつける。
イビルジョーは足元にいる獲物を踏み潰そうと、右足を高く上げ、踏みつける。
その足は、ユイカに当たらない。しかし、強力な踏み込みによって、大きな振動が起きた。
その振動はユイカに伝わり、バランスを崩
「そいやっ」
――せない。
ユイカは大剣を握りしめ、その場で華麗に前転をする。
一瞬、体の浮くタイミングと振動を合わせ、奇跡的に回避した。
フレーム回避
前転という行動と、モンスターの行動のタイミングを合わせ、攻撃を回避する技。
ほんの一
そんな高難度な技を駆使して、次々とイビルジョーの攻撃を躱すハンター。
一向に攻撃が当たらないことに、イビルジョーは苛立ち、筋肉を更に膨張させる。
「ユイカちゃん!シビレ罠、落とし罠、設置終わったよ!」
「二クロ、ナイス!」
もう一方のヘヴィボウガンを持つハンター――二クロが、設置した罠の後ろで、射撃を開始する。
使用する弾丸は、雷撃弾。イビルジョーの弱点属性、電気を放出する特殊な弾だ。
二クロの攻撃が鬱陶しくなったのか、はたまた、ユイカに一向に攻撃を当てられないのが嫌になったのか。
イビルジョーは二クロに攻撃を加えようと近づき、
バリリリッ!!
「やった!」
シビレ罠に引っかかった。
二クロはここぞとばかりに
シビレ罠の効果が終わると、二クロは落とし罠の後ろに移動し、ユイカは再びイビルジョーの注意を引き始める。
この繰り返しだ。
…すごいな。
マッカォこと転生者は、初めて見るハンターたちの狩りに、感嘆した。
数多のモンスターに立ち向かい、打ち破る。
そんなハンターたちならイビルジョーに対抗できると期待していたが、想像以上だった。
だが…
マッカォはイビルジョーを見る。
口から漏れ出ているのは、狂竜ウイルス。狂竜症が、奴を蝕んでいる。
狂気に塗れたモンスターは、どんな行動をするかわからない。
ユイカはイビルジョーの攻撃を避け、隙を見て攻撃している。
二クロは次の攻撃の隙を作ろうと、落とし罠を設置している。
イビルジョーは、ジジジジッと口から龍属性のエネルギー漏らしながら、突然二クロの方を見て――
それに二クロは気づいてない!
狂竜症の影響で動きが阻害されているのか、イビルジョーは非常にもっさりとした動作で、エネルギーを溜め込む。
それに気づくと、マッカォはメラルーを降ろし、急いで二クロの下へ駆ける。
吠えて、危険を知らせる。
「ヤバッ」
罠を設置しながら、二クロも気づいたようだ。罠の設置を中断して、走り出す。
マッカォは、二クロに追いつくと、「乗れ」と頭を振った。
「え、ほんとにいいの?」
二クロは少し遠慮しながらも、マッカォの背中に乗り、しがみつく。
意外と軽いなという感想を抱きながら、マッカォは全力で走ろうとする。
そのとき、イビルジョーがブレスを吐き始めた。
走っても避けきれない。
それを察したマッカォは、足に力を込め、強く踏み込む。
鳥竜種の中でもマッカォという種は、跳躍に特化した種だ。
太く強靭な後ろ足と、抜きん出たバランス感覚で、獲物に襲いかかる。
うおおおおらぁぁぁぁぁ!!!
マッカォとして目覚め、過酷な世界を一人で生きることを強いられた
力を振り絞り、真上へと跳ぶ。
バリバリバリバリッ
「わあっ!」
直後、背中からの声と、くぐもった音とともに、濃密な龍属性のエネルギーが、マッカォの真下をくぐった。
ブレスがチッと、尾の先端に少し触れ、マッカォの肝を少し冷やしたものの、避けることに成功したのだ。
ダンッ
という音とともにマッカォは着地する。
「ありがとね。名も知らぬモンスターさん」
二クロはマッカォの背中から降りると、礼を告げ、イビルジョーを見据えた。
強力な技は避けたが、まだ狩りは続く。
二クロは移動し、再びヘヴィボウガンで撃ち始めた。
「よかった」
相棒の無事に安堵したのか、ユイカが呟く。
そして目線をイビルジョーに向けると
「えっ」
奴は誰もいない場所に、飛びかかっていた。
ズンッ
巨体が地面に降り立ち、辺りが揺れる。
ユイカは振動を避けれず、バランスを崩し、片膝をついた。
イビルジョーは、幻覚の映る赤く濁った眼に少しばかりの理性を取り戻すと、好機とばかりにユイカに飛びかかる。
ユイカはこれも避けれず、くらう。
仰向けに倒れたところを、すかさずイビルジョーの左足が押さえつけ、ユイカを地面に縫い付けた。
捕食行動
イビルジョーの大顎からこぼれた酸性の唾液が、防具をシューシューと溶かす。
奴を払いのけようと、ユイカは肥やし玉を取り出そうとするも、
「ぐっ」
何かを察したイビルジョーが足に力を入れ、牽制する。
イビルジョーが大口を開けた。
大きく避けた顎からは、獲物を前にした捕食者としての喜びが漏れる。
紫色の唾液を垂らしながら、
瞬間、ハンターが爆発する。
撒き散らされるピンク色の粉塵。
立ち込める濃厚なマタタビの匂い。
イビルジョーは思わず足を離し、ハンターは転がり、拘束を抜け出した
「ニャニャ、ニャア!!(やった、あたった!!)」
メラルーたちが手に持つのは、マタタビ爆弾。
威力は小タル爆弾に劣るものの、それでもハンターを吹き飛ばすほどの爆発力を持つ。
本来はメラルー、アイルーたちの撹乱、士気上昇に使うものだが、最近はなぜか、ベテランハンターがよく持ち歩いている。
ちなみに盗品である。
「ありがとう、助かった」
吹き飛ばされたハンターは、マタタビの匂いをまといながら、体勢を立て直す。
「もう、油断しないよ」
そして、イビルジョーに向かって駆け出した。
◆◆◆
その後の狩りは非常に順調だった。
陽動、援護射撃。
イビルジョーをじりじりと追い詰めていく。
ついに、
「弱った、二クロ!」
「はーい!」
二クロは新たな弾丸を装填し、発射。
ボフンッ
着弾した場所に、薄灰色の煙が漂う。
ユイカはイビルジョーの足元に駆け寄り、迅速にシビレ罠を設置。イビルジョーを拘束した。
弾丸が二発、三発と着弾した時、
ズゥゥン
イビルジョーが倒れた――いや、眠った。
「いえーーい、捕獲成功!」
二人のハンターは駆け寄り、ハイタッチをする。
対象の捕獲。これにより、イビルジョーとの激闘は幕を閉じた。
クエスト 高難度:最狂の暴君
QUEST CLEAR
◆◆◆
捕獲したイビルジョーは、ハンターズギルドに引き渡す必要がある。
そのため周囲で待機しているハンターたちを尻目に、マッカォはメラルーを連れて立ち去ろうとする。
そのとき、
「あ、そこのメラルーちゃんと、モンスターさん!」
ヘヴィボウガンを担いだ、ハンターの少女――二クロが駆け寄る。
「あの…もしよかったらなんですけど……わたしたちのオトモになりませんか?」
突然のオファー。
メラルーたちは目を白黒させ、顔を見合わせる。
肝心の転生者は、モンハン世界の言葉がわからず、首をかしげた。
ユイカ…防具はリオソウルシリーズ(リオレウス亜種)
武器は煌剣リオレウス
二クロ…防具はジンオウUシリーズ(ジンオウガ亜種)
武器は王牙砲