原生林の一般転生者マッカォ   作:どすじゃぎぃさん

3 / 3
闘う

 

 イビルジョーが筋肉を膨張させる。

 薄くなった皮越しに、狂竜ウイルスに侵された紫色の血管が浮き出す。

 

 

 

”ゴオオオオオアアアアアア”

 

 

 

 

 歪んだ咆哮。

 

 

「ユイカちゃん、ヘイト任せた!」

 

「オーケー!」

 

 

 それを皮切りに、二人の狩人が動き出す。

 まず、蒼色の大剣を持ったハンター――ユイカが、ポーチから取り出した種を噛み砕きながら、駆け出した。

 

 

 イビルジョーは向かってくる獲物に噛みつこうとし、 「よっと」 ユイカは前転で避ける。

 そして、懐へ潜り込み、縦斬り、続いて薙ぎ払い。イビルジョーの後ろ足へと斬りつける。

 

 イビルジョーは足元にいる獲物を踏み潰そうと、右足を高く上げ、踏みつける。

 その足は、ユイカに当たらない。しかし、強力な踏み込みによって、大きな振動が起きた。

 その振動はユイカに伝わり、バランスを崩

 

「そいやっ」

 

 ――せない。

 

 ユイカは大剣を握りしめ、その場で華麗に前転をする。

 一瞬、体の浮くタイミングと振動を合わせ、奇跡的に回避した。

 

 

フレーム回避

 

 前転という行動と、モンスターの行動のタイミングを合わせ、攻撃を回避する技。

 

 

 ほんの一(フレーム)でもタイミングがずれると、この技は失敗する。

 そんな高難度な技を駆使して、次々とイビルジョーの攻撃を躱すハンター。

 一向に攻撃が当たらないことに、イビルジョーは苛立ち、筋肉を更に膨張させる。

 

 

「ユイカちゃん!シビレ罠、落とし罠、設置終わったよ!」

 

「二クロ、ナイス!」

 

 

 もう一方のヘヴィボウガンを持つハンター――二クロが、設置した罠の後ろで、射撃を開始する。

 使用する弾丸は、雷撃弾。イビルジョーの弱点属性、電気を放出する特殊な弾だ。

 

 

 二クロの攻撃が鬱陶しくなったのか、はたまた、ユイカに一向に攻撃を当てられないのが嫌になったのか。

 イビルジョーは二クロに攻撃を加えようと近づき、

 

 

バリリリッ!!

 

「やった!」

 

 

 シビレ罠に引っかかった。

 二クロはここぞとばかりにしゃがみ撃ち(連続発射)をし、ユイカもやってきて、頭へとダメージを与えていく。

 

 シビレ罠の効果が終わると、二クロは落とし罠の後ろに移動し、ユイカは再びイビルジョーの注意を引き始める。

 この繰り返しだ。

 

 

 

 …すごいな。

 マッカォこと転生者は、初めて見るハンターたちの狩りに、感嘆した。

 数多のモンスターに立ち向かい、打ち破る。

 そんなハンターたちならイビルジョーに対抗できると期待していたが、想像以上だった。

 

 

 だが…

 

 マッカォはイビルジョーを見る。

 口から漏れ出ているのは、狂竜ウイルス。狂竜症が、奴を蝕んでいる。

 

 狂気に塗れたモンスターは、どんな行動をするかわからない。

 

 

 

 ユイカはイビルジョーの攻撃を避け、隙を見て攻撃している。

 二クロは次の攻撃の隙を作ろうと、落とし罠を設置している。

 

 イビルジョーは、ジジジジッと口から龍属性のエネルギー漏らしながら、突然二クロの方を見て――

 

 

 

 それに二クロは気づいてない!

 

 

 狂竜症の影響で動きが阻害されているのか、イビルジョーは非常にもっさりとした動作で、エネルギーを溜め込む。

 それに気づくと、マッカォはメラルーを降ろし、急いで二クロの下へ駆ける。

 吠えて、危険を知らせる。

 

 

「ヤバッ」

 

 

 罠を設置しながら、二クロも気づいたようだ。罠の設置を中断して、走り出す。

 マッカォは、二クロに追いつくと、「乗れ」と頭を振った。

 

 

「え、ほんとにいいの?」

 

 

 二クロは少し遠慮しながらも、マッカォの背中に乗り、しがみつく。

 意外と軽いなという感想を抱きながら、マッカォは全力で走ろうとする。

 

 

 そのとき、イビルジョーがブレスを吐き始めた。

 

 

 走っても避けきれない。

 それを察したマッカォは、足に力を込め、強く踏み込む。

 

 

 鳥竜種の中でもマッカォという種は、跳躍に特化した種だ。

 太く強靭な後ろ足と、抜きん出たバランス感覚で、獲物に襲いかかる。

 

 

 うおおおおらぁぁぁぁぁ!!!

 

 マッカォとして目覚め、過酷な世界を一人で生きることを強いられたマッカォ(転生者)は、生き残るため、速力と跳躍力をひたすら鍛えた。

 

 

 力を振り絞り、真上へと跳ぶ。

 

 

バリバリバリバリッ

 

「わあっ!」

 

 

 直後、背中からの声と、くぐもった音とともに、濃密な龍属性のエネルギーが、マッカォの真下をくぐった。

 ブレスがチッと、尾の先端に少し触れ、マッカォの肝を少し冷やしたものの、避けることに成功したのだ。

 

 ダンッ

 

 という音とともにマッカォは着地する。

 

 「ありがとね。名も知らぬモンスターさん」

 

 二クロはマッカォの背中から降りると、礼を告げ、イビルジョーを見据えた。

 強力な技は避けたが、まだ狩りは続く。

 二クロは移動し、再びヘヴィボウガンで撃ち始めた。

 

 

 「よかった」

 

 

 相棒の無事に安堵したのか、ユイカが呟く。

 そして目線をイビルジョーに向けると

 

「えっ」

 

 

 奴は誰もいない場所に、飛びかかっていた。

 

 

ズンッ

 

 

 

 巨体が地面に降り立ち、辺りが揺れる。

 ユイカは振動を避けれず、バランスを崩し、片膝をついた。

 

 イビルジョーは、幻覚の映る赤く濁った眼に少しばかりの理性を取り戻すと、好機とばかりにユイカに飛びかかる。

 ユイカはこれも避けれず、くらう。

 仰向けに倒れたところを、すかさずイビルジョーの左足が押さえつけ、ユイカを地面に縫い付けた。

 

 捕食行動

 

 イビルジョーの大顎からこぼれた酸性の唾液が、防具をシューシューと溶かす。

 

 奴を払いのけようと、ユイカは肥やし玉を取り出そうとするも、

 

「ぐっ」

 

 何かを察したイビルジョーが足に力を入れ、牽制する。

 

 イビルジョーが大口を開けた。

 大きく避けた顎からは、獲物を前にした捕食者としての喜びが漏れる。

 紫色の唾液を垂らしながら、獲物(ハンター)にかぶりつこうとし…

 

 瞬間、ハンターが爆発する。

 撒き散らされるピンク色の粉塵。

 立ち込める濃厚なマタタビの匂い。

 

 イビルジョーは思わず足を離し、ハンターは転がり、拘束を抜け出した

 

 

 

「ニャニャ、ニャア!!(やった、あたった!!)」

 

 

 メラルーたちが手に持つのは、マタタビ爆弾。

 威力は小タル爆弾に劣るものの、それでもハンターを吹き飛ばすほどの爆発力を持つ。

 本来はメラルー、アイルーたちの撹乱、士気上昇に使うものだが、最近はなぜか、ベテランハンターがよく持ち歩いている。

 ちなみに盗品である。

 

 

「ありがとう、助かった」

 

 

 吹き飛ばされたハンターは、マタタビの匂いをまといながら、体勢を立て直す。

 

 

「もう、油断しないよ」

 

 

 そして、イビルジョーに向かって駆け出した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 その後の狩りは非常に順調だった。

 陽動、援護射撃。

 

 イビルジョーをじりじりと追い詰めていく。

 

 ついに、

 

 

「弱った、二クロ!」

 

「はーい!」

 

 二クロは新たな弾丸を装填し、発射。

 

ボフンッ

 

 着弾した場所に、薄灰色の煙が漂う。

 

 ユイカはイビルジョーの足元に駆け寄り、迅速にシビレ罠を設置。イビルジョーを拘束した。

 

 弾丸が二発、三発と着弾した時、

 

 

ズゥゥン

 

 

 イビルジョーが倒れた――いや、眠った。

 

 

「いえーーい、捕獲成功!」

 

 

 二人のハンターは駆け寄り、ハイタッチをする。

 

 

対象の捕獲。これにより、イビルジョーとの激闘は幕を閉じた。

 

 

 

クエスト 高難度:最狂の暴君

 

  QUEST CLEAR

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 捕獲したイビルジョーは、ハンターズギルドに引き渡す必要がある。

 そのため周囲で待機しているハンターたちを尻目に、マッカォはメラルーを連れて立ち去ろうとする。

 

 そのとき、

 

「あ、そこのメラルーちゃんと、モンスターさん!」

 

 ヘヴィボウガンを担いだ、ハンターの少女――二クロが駆け寄る。

 

 

「あの…もしよかったらなんですけど……わたしたちのオトモになりませんか?」

 

 

 突然のオファー。

 メラルーたちは目を白黒させ、顔を見合わせる。

 

 肝心の転生者は、モンハン世界の言葉がわからず、首をかしげた。

 

 

 





ユイカ…防具はリオソウルシリーズ(リオレウス亜種) 
    武器は煌剣リオレウス

二クロ…防具はジンオウUシリーズ(ジンオウガ亜種)
    武器は王牙砲

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。