うさぎ追いし鋼鉄、宇宙へ翔びし蠍星 作:システマチック発光ネズミ
久しぶりの投稿です。リハビリがてら書いてるので、文字数少ないのは悪しからず。
「こんにちは。篠ノ之さんのお宅で間違いありませんか?」
「そうだけど。キミ、だれ?」
真夏の、蒸し暑い塀の外と、クーラーの効いた、電算機まみれの快適な屋内。
かたや齢5か4かといった少年と、かたや人外じみたスペックの女子高校生が、剣呑とした雰囲気で、マイク越しに言葉を紡ぐ。
「篝火アカホシと言います。姉が"頭が私より良い奴がいた"とのことでしたので、ご挨拶に」
「…声色からして4,5歳か。得た知識を見せびらかしたいんだったら他所でやれよ」
「人型のロボットって好きです?大体8mくらいの」
女子高生…いや、これからは少女と呼ぼうか。
少女は内心めんどくさかった。たかが幼稚園やそこらのガキが、いきなりインターホンを鳴らしては"人型のロボットは好きか"と聞いてくる。めんどくさいと思うのも至極当然な感情であり、しかしなぜか行動を起こす気にはなれなかった。
何故だろうか。少女は自身の脳内物質の調整さえも自由自在にできるというのに、頭の片隅では"聞くべきだ"という声が響いていた。
ある種の直感や、虫の知らせとでも言える幻聴を、脳内物質で押し潰さんという気にもなれなかった。
少女はいわゆる夏バテや、熱中症に陥っているわけではない。原因を探っていると、答えは唐突に降ってきた。
「8m級の人型完全二足歩行ロボットの設計図を持ってきました。ぜひ見てほしい」
「…ホンモノ?」
提示されたのは、明らかなオーパーツ。少女が現在描いているものと同質のものだった。
実家の工場でも間借りして作ってきましょうか?と問いかける少年に、とうとう少女は根負けした。襖から数歩先の扉に手をかけ、カギを開ける。
少年はその少し向こう。開閉式の柵が付いた門の前にいた。
「入ってきなよ。柵は登っていいから」
__思えば、ここが分岐路だったのだろうか。
薄鼠色の少年は、設計図を広げていった。
倉持技研、第三研究所。
現在のパワードスーツ産業においてはシェア率第3位を誇る日本の大企業、倉持技研の中でも、"IS以外のパワードスーツ"について研究している部署である。
「……朝か。ん~…懐かしい夢だったな」
そんな第三研究所の一室。ハイエンドモデルのタワー型パソコンが所狭しと並ぶ部屋で、青年は目が覚める。
見れば、目の前の机にはスリープ状態で真っ暗な画面と二割ほど中身が残っているマグカップ、眠気ゆえか解読困難ないくつかのメモ書き。
「ああ…矢部さんにどやされる前に片付けないと。_っと、ラムネラムネ」
見慣れた緑のプラスチックの蓋を開け、青年はブドウ糖の塊を口に放り込む。糖が脳を動かし始めたのか、あるいは条件反射か…青年の意識は完全に覚醒し、作業を始める。慣れた手つきでパソコンを起動させ、昨日執筆していた論文を確認する。
「"遺伝子の類似によるISの誤認起動"…まぁ有り得ない話じゃないだろうが」
複数のモニタに乱雑に張り付けられた付箋に目をやる。"ISの起動条件"、"A-10神経"、"ISコア人格の判定基準"…その中でも、赤文字で強調された文字があった。
「"織斑一夏によるISの起動"、か。全く…アイツめ、今度はISコア人格でも誑かしたのか?」
これこそ、ここ1ヶ月彼を悩ませている原因であった。
本来、ISというのは女性しか起動できない。男性がなぜ起動できないのかというのはISの登場以来の謎であり、とある事件から10年近く経過した今でも原因は不明だった。
しかし、こいつはどうだ。ものの見事に起動させやがったではないか。
これのせいで、世界は騒然となった。
"女性はISが使えるから偉い"なんて頭の痛くなるような独自理論を展開する
まぁ、織斑一夏がISを起動してからの流れは容易に予想できた。想定外だったことと言えば、何の因果か青年が適性検査に引っかかったくらいだろう。
「…今考えてもしょうがないな。飯食い行くか」
部屋を出て、階下にある社員食堂を目指し歩く。どうやら寝相がよろしくなかったのか、肩や腰に若干のこわばりを感じるが、生活には問題ない。そのまま券売機でカツカレー定食を選択し、いつもの席に座って食事をする。現在時刻は午前5時30分と比較的早い時間だったが、それなりの人数が食堂内にいた。
「おはようございます、若」
「若はやめてくれ、島さん。一応とはいえここのトップだぞ?せめて所長呼びでだな…」
「ははは」
隣に座った壮年の男性は、軽く笑って流した後「そういえば」と続ける。
「IS学園への入学手続きは終わりましたかな?」
「もう終わってる、あとは荷物の搬入とあの分厚い教本の読破だけ」
「なるほど…ふむ、これならカエル頭の調整も間に合いそうですな。ああ、搬入に関しては、かのブリュンヒルデがやってくれるそうです」
「千冬さんが?…まあ、ありがたく思っておくか。よし、今日は1030からやろう。3課のカワバタ班に連絡を頼む。試験項目は114から…うん、最後までやってしまおう」
頭の中で淡々と予定を組んでいく青年。
IS学園への入学まで、あと数日。
「さて…もう少しで追いつきますよ、束さん」
【人物紹介】
・篝火アカホシ
本作の主人公。篠之乃家とは交流があり、特に篠之乃束とは開発者仲間。篠之乃束が発明したISと同時期に、8メートル級の人型二足歩行ロボットを発明し、現在では倉持技研第三研究所にて所長を務めている。
〈ステータス〉
IS適性:――
ビット適性:――
STR:B
AGI:B
INT:A
EDU:A
APP:A
SIZ:C