不幸な小狐は幸せを探す 作:うしさん
※原作キャラ傷付く描写あり。自衛お願いします。
悪夢
窓から差し込む陽射しで、海の底にあった意識が段々と水面まで浮上する。
意識が覚醒する感覚。お昼寝から醒める時とはまた違った目覚め。
目覚ましはまだ鳴っていない。時計を見ると設定した時間の二十分前。
二度寝をしよう。まだ気持ちよく眠れる。そう思い再び目を閉じる。
しかし、なかなか上手く寝つけない。普段であればすぐに意識は沈んでいくはずなのに。
頭の中を無にして無理矢理にでも眠ろう。そう思えば思うほど、余計な雑念が頭の中を過ぎっていく。
(・・・だめだ...眠れそうにないなぁ)
大人しく諦めて布団から出よう。こんな日もあるか、と考えながら毛布を剥がしベッドから降りる。ぬいぐるみをきれいに並べ直す。その後めいっぱい伸びをしながら欠伸を噛み殺す。
(早起きは三文の徳って言うしね。良いことでも起こるのかなぁ)
早起きとはいっても、普段とほとんど変わらないじゃないかというツッコミはさておいて、学校に行く準備を始める。顔を洗い、跳ねた髪の毛を櫛で梳かす。必要な荷物を鞄に詰める。愛銃も忘れない。
軽く朝ごはんを口にし、飲み物でながす。普段通りの朝だ。だけど今日はいつもより早起き。それだけで気分は少し上がる。たまにはこんな朝も悪くないかもね。
家を出て学校に向かう。今日は何をしようか。勉強?バイト?それとも指名手配犯の確保でもしに行こっか?やっぱりお昼寝かなー
学校に着いたらみんなと相談しよう。そう思い、ここ最近のことに関して物思いにふける。
最近は特に、ヘルメット団の襲撃が多くなってきている。最後に来たのは一昨日。前々から苦労させられてたけど、あの時も最後の最後でスナイパーにやられてしまった。
あのスナイパーはすごく厄介だけど、ついに正体が判明したのだ。
今まで散々好き勝手されていた分、捕まえたら少しは痛い目を見てもらおうと私たちの意見は一致した。
背格好は多分私よりも小さいと思う。だからといって容赦はしない。戦場に立ち入ったのなら撃たれる覚悟をするべきだ。ましてや一方的に撃ってくるスナイパー。容赦なんてするわけが無い。
まぁそんな上手く私たちの目の前にノコノコと出てくるはずが無いんだけどね...
それはまるで鴨が葱を背負って歩いてたら棚から牡丹餅が落ちてくるような、そんな感じだ。
(いやぁ〜ナイナイ。私たちはいつも通り追い払うだけだよ)
頭を横にふるふると振って甘い考えを切り捨てる。前を向き直すと、もう学校の目の前だった。
考え事をしていると時間が経つのはあっという間だ。校門を通り、みんなが集まる対策委員会の教室の前に立つ。今日も頑張ろうと気合を入れ扉に手をかける。
「おはよ〜」
「おはようございます〜☆ホシノ先輩」
「あっ、おはようございます!ホシノ先輩!今日はいつもより早いですね?」
「いやぁ〜、なんか目が覚めちゃってねぇー。おじさんもう歳だからさぁ」
「私たちと同年代なのに何言ってるんですか!?」
「そいえばシロコちゃんとセリカちゃんは?」
「二人はまだ来てないですねー。多分もうすぐ来ると思いますよ?」
「そっかそっか。それじゃあみんな揃ったら今日やる事でも決めよっか?」
「そうですね、いいと思います!」
「賛成ですー☆」
みんなに挨拶を済ませ、席に着く。二人を待ってる間はノノミちゃんの膝枕にでもお世話になってよっかな。
「ノノミちゃ〜ん、おじさんの枕になって欲しいんだけどいいかな?」
「いいですよー!それじゃあこっちに来てください!」
「やった〜まくら確保だぁ」
「ふふっ、ホシノ先輩は甘えんぼさんですね?」
「何やってるんですか...おふたりとも...」
ノノミちゃんのひざを枕に目を閉じる。ここの眠り心地はいつだって最高だ。あっという間に意識がふわふわとしてくる。
意識の狭間で彷徨っていたら、どうやら二人が登校してきたようだ。体勢をそのままにおはようをする。
「ん、おはよう。ホシノ先輩」
「おはよう!先輩!・・・って朝から何してんのよ!?」
「ふふーん、いくらセリカちゃんとはいえ、ここは譲れないよ?」
「別にいいわよ!!そんなことより今日どうするのか決めないと!」
「うへーそんなことって言われたぁ。おじさん悲しいよーノノミちゃ〜ん」
「よしよし、ホシノ先輩はいい子ですからね~。
セリカちゃん、めっ!ですよ?」
「うぇっ?!コレ私が悪いの??!一体どうすればいいっていうのよ...!?」
「まぁまぁセリカちゃん、そんなカリカリしないでさぁ。のんびりいこうよ〜。とりあえずやること決めよー」
「くっ...!何を言っても無駄だってことが分かったわ...」
いつも通りの日常、普段通りのやり取りが私を安心させる。私にとって居心地のいい場所、それがここにある。
今日もまた、莫大な借金と向き合いながらも私たちなりの青春を送っていくんだ。
・・・そう思ってた
窓の外の校庭がなんだか騒がしい。人気のない周囲に響くような銃声。重たい重層甲の乗り物が走る音。校庭の砂がじゃりじゃりと音を立てて舞い上がる。それに加え、猿のように甲高い叫び声も聞こえてくる。それを察知したみんなが次々に口を開く。
「あれ...?この音に、あの声...まさかっ!」
「ん、ヘルメット団...」
「もう!またあいつらなの!?しつこいったらありゃしないわ!!」
「物資もどんどん減っていきますし、どうしましょうかー?」
「うへぇ、また来ちゃったかぁ。とりあえず迎撃しよー。
あ、あとスナイパーを見つけたら要注意だよ?捕まえられそうだったらどんな手を使ってでも捕まえてね」
「わかったわ!けど珍しくやる気ねホシノ先輩」
「まぁちょっと思うところがあってねー。おじさんも張り切るってもんよ~!」
「それでは私はいつも通りサポートに徹しますので、皆さんよろしくお願いします!!」
その一言で戦闘が始まった。
皆が校庭に移動し、相手を牽制しながら銃を撃つ。相変わらず人数が多い。対する私たちはたったの五人。今までヘルメット団の侵略に耐えて来られたのもみんなのおかげだ。本当に感謝している。
「あー!もうっ!うっとうしいわね!!そこをどきなさい!!」
「ギャーッ!」「いてっ」「ぐえっ」
隣を見るとセリカちゃんが怒りながら突撃していた。一見めちゃくちゃな戦い方に見えるが、相手の動きをよく見て相手の隙を穿つような戦いをしている。そのおかげでセリカちゃん自身はほとんど被弾がなく、次々と敵が倒れていく。
ほんとうによく出来た後輩だ。今すぐにでも褒めてあげたいけど、戦闘が終わるまでは我慢しないと。
他の子はどうだろうかと辺りを見回す。ノノミちゃんが目に入った。
「いっきますよ~!!!」
「ひぃっ」「きゃぁ」
「こんなん避けれるかぁー!!!ぐはっ...」
相変わらずニコニコと楽しそう。普段から筋トレグッズを持ち歩いてるだけあって圧巻のパワーだ。見るからに重そうなミニガンをらくらくと振り回し、撃った時の反動によるブレがほとんどない。
大勢を制圧するのにぴったりだ。ヘルメット団のやつらはノノミちゃんが一番怖いだろうなぁ。
ノノミちゃんのさらに先ではシロコちゃんが遮蔽をうまく使って戦っていた。
シロコちゃんのドローンはかな~り厄介だ。うまくドローンの爆発に巻き込めれば、一気に敵の数を減らすことが出来る。しかもシロコちゃん自身の戦闘能力もかなり高いため近接戦闘に持ち込まれたら、ヘルメット団では太刀打ちできない。
なんてったってあのコをここまで育てたのはこの私!昨日のシロコちゃんとの組手では個人的な事情で容赦なくボコボコにしたから、負けず嫌いのシロコちゃんは鬱憤も溜まってるだろう。
今シロコちゃんを見ると遮蔽から飛び出して次から次へとヘルメット団を張っ倒していた。おいたわしやヘルメット団。
空中を見るとシロコちゃんのとは別のドローンが飛んでいた。これはアヤネちゃんのドローンだ。今ちょうどセリカちゃんに追加の弾倉が届いた。私たちの戦いには、今やアヤネちゃんの物資の補給が必須になっている。今のように弾薬を届けたり、傷ついたらドローンが飛んできて傷を癒したりしてくれる。
どちらも戦闘継続に欠かせないものだ。アヤネちゃんの補給がない戦闘に戻れなくなっちゃったかもなぁ。先輩として頼りっきりになんないようにしないと。
そうやってみんなの戦いを観ながら、私も盾とショットガンを構えヘルメット団の数を着実に減らしていた。
また今回も無事追い払えそうだなぁ。みんなには怪我とかしてほしくないし、さっさと追い払おう。
そう思い、気合を入れ直そうと一瞬気を緩めた時、私の身体がピリピリとした危険信号を感じ始めた。
(なんだ!?こんな感覚を覚えさせるような奴なんてアイツしかいない!・・・どこからくる...?)
危険を感じてからここまでコンマ一秒。脳内で警鐘が最大まで大きくなる。本能で身体を動かす。咄嗟に盾を構えた瞬間、ものすごい衝撃が私に襲いかかる。
・・・腕がしびれる⋯。明らかに今までの弾の威力とは違う。私が危険を感じるほどの威力。これはキヴォトスでは違法とされているものだ。
私は盾で受けたから無傷で済んだけれど、生身のみんなが喰らったら今までのように痛いだけでは済まされないだろう。
それにほとんど音が聞こえなかった。おそらくサイレンサーでもついているみたいだ。私は奇跡的に気付けたけど、いつ狙撃されるかなんて分からない...
盾で受けた衝撃から撃ってきた方角は分かった。位置も特定出来た。十中八九、あの改造戦車からだ。
土煙が舞い上がる中、しっかりと狙い撃ってきた。本当にいい腕をしている。
その様子を見てたのか、私の近くに居たヘルメット団が私を指さし騒ぎ出す。
「はっ!見たか!今回のボスは一味違うぜ!あの
撃たれた...しかも味方に。
戦車の方からものすごい怨念を感じる。まぁ理由は察するよ...
先程より威力が弱かった為、撃たれた団員はすぐに立ち上がり、涙目で戦車の方に走っていった。私は、次の狙撃のために気を張っていたので追うことはしない。一体何だったんだろう...
みんなはまだ雑兵と戦っている。しかし、次第に数も減っていき前線が上がっていってる。それはすなわち、スナイパーとの距離が近づいていることを意味する。
「みんな!あの戦車の中にスナイパーがいるよー!第一に警戒して!隙を見て突撃しよう!」
「ん、了解」
「わかったわ!」
「了解ですー☆」
皆から返事が返ってくる。どこから攻めようか。狙撃にも気を付けなければいけない。戦車周りには、まだ数十人待機しているが、丁度いま動き出した。
全員でこちらに向かって突撃してくる。走って通った道から砂煙が宙に舞いあがり、視界が先ほどよりも悪くなる。
(本格的にまずい...今狙撃されたらどうすることもできない...!)
周囲に神経を張り巡らせ、いつでも動けるように準備を整えた。
・・・・・・が、それは無駄に終わった。
────その瞬間は私の目にはひどくスローモーションに見えた。
私の左、数メートル先で静かに後ろへ倒れる人影
腰辺りに抱えていたミニガンが地面に落下する重い音
校庭の砂がその倒れ行く身体を飲み込む
人間が倒れた時特有の、生々しい音が響く
その場にいた私たちは状況がうまく吞み込めずに呆然としていた。それにより生まれる一瞬の静寂。
次第に働きはじめる頭が、その状況を理解してしまう。
「─────っ!!ノノミちゃん!!!!」
「ノノミ先輩!!」
「っ!ノノミ!!!」
「アヤネちゃん!!ノノミちゃんをおねがい!!」
「はいっわかりました...!!」
急いでノノミちゃんのもとへ駆け寄る。今すぐにでも無事を確認したかった。怪我の具合を確かめたかった...。
・・・けれど、そこにあったのは残酷なまでの現実...
そこには脇腹から血を滲ませて意識を失っているノノミちゃんの姿。
その瞬間、私の頭の中でフラッシュバックする二年前の光景。途端に視界が白く飛んでいく。
次第に意識が現実へと戻ってくる。視界がかえってくる。
目の前に倒れているノノミちゃんの姿が、今は亡き私の大切な人の姿と重なった。
「あ、あぁ...ああああああ!」
(いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだ...!!私はまた大切な人を失うの...?同じことを繰り返すの!?
・・・私には誰かを守る資格なんて、ないの...?)
「ノノミ...!!だめっ!目を覚まして!!起きて!」
「ホシノ先輩...!どうしよう!ノノミ先輩がっ!ホシノ先輩⋯?」
(なんで私ばっかりこんなに辛い目に?私が全部悪いの...?私の、私のせいで...)
・・・そこでふと気づく。
(いや、違う。悪いのはあいつらだ。あいつらが襲ってきたのが悪いんだ。あのヘルメット団のスナイパーが狙撃してきたせいでノノミちゃんが今倒れているんだ。)
それなら...
(それなら...潰すしかないよね?)
そこからは速かった。私たちの周囲を囲むヘルメット団員を片っ端から千切っては投げ、千切っては投げを繰り返した。雑兵共は私の相手になんかならない。
「ぎゃっ」「ぐへっ」「おぇ...」
「おい...!コイツやばいぞ!全員撤退だ、ガハッ...」
「逃げろ逃げろ!!マジで死ぬぞ!!グハッ...」
次々と積み重なるヘルメット団の山は、わずか数瞬のうちに出来上がったものだ。逃げ延びたやつもいたけれど、私の目には本命しか映ってなかった。
強く地面を踏みしめる。目標を見据え、地面を掴むように駆け前へ前へと進んでいく。
スナイパーが乗った改造戦車は先ほど団員の体が飛び交っている間に撤退を始めていたため、スピードに乗り始めている。
しかし、気づいた時には戦車は私の目前にまで迫っていた。そこから大地を蹴って戦車に飛びつく。戦車の中から悲鳴が聞こえてくる。
今更許しを乞われたとしても無駄だ。前々から容赦はしないと決めていたけれど、その時の考えはまだ甘かったようだ。もう襲ってこないように軽くお灸を据えようと思っていたが、やめだ。
もう二度と襲おうなんて思わないほどに心を折らないとまた同じ事の繰り返しになってしまう。
すると、急に戦車のハッチが開いた。すわ攻撃か?と身構える。
────が、聞こえてきたのは醜い仲間割れの声
「ボスが責任取って団員を守るのが筋だろ!!」
「そうだそうだ!!アジトでは自信満々に違法弾を使うとか言いやがって!!」
「チビのくせに指図ばっかしてきやがってムカついてたんだよぉ!ちょっと銃をうまく扱えるからって調子乗んなよ?!」
「スナイパーライフルなんか持ってずっと後ろにいるから前線の辛さを知らないだろ?だったら今身をもってウチらを守ってくださいよぉ!ボスゥ!!」
その言葉の最後が発された瞬間、ハッチの中から一つの小さな人影が飛び出してくる。
その人影は着地に失敗したのだろう、地面に落ちると同時に情けない声をあげて転がる。
「うわぁ!───────ぐぅっ!がはっげほっ...。なにぃ...?」
私は戦車から飛び降り、改造戦車はそのまま走り去っていく。その場に残されたのは私と、ヘルメット団のボス兼スナイパーその人であった。
ヘルメット団の制服を着て、ヘルメットで顔を隠している。腰まで伸びる真っ白い髪、同じく白く大きな尻尾。肩には使っていたであろうスナイパーライフルが掛けられている。
その姿は事前にみんなと確認したものとすべてが一致していた。
その姿を目にした瞬間、私の胸の内には怒りが渦巻く。
まともな思考ができないほどに...
コイツを一体、私はどうしてやろうか。
怒りの矛先は収まらない
【謝罪】
展開上必要だったとはいえ、私の都合で傷つけてしまい申し訳ありません。ノノミ推しの先生方に深く謝罪申し上げます。
心配をかけさせないように先に言ってしまいますが、ノノミは全然余裕で無事です。
明日の8時か9時頃に次話を投稿します