不幸な小狐は幸せを探す   作:うしさん

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脱狐の如く

 

 

 

prrrrrr.....prrrrrr......

 

 

「・・・ふぁぁ...」

 

 

私が目を覚ましたのはスマホの着信音だった。

 

時刻は午後三時過ぎ。五時間くらいぐっすりと眠ることが出来た。この心地良さは久しぶりだ。

 

相手はセリカちゃん。一体どうしたのだろうか。セリカちゃんとシロコちゃんは二人で指名手配犯を捕まえに行っていたはずだ。このタイミングで掛けてくるということは、何か重大な何かが起こったのだろうか。

 

電話に出る。

 

 

「もしもし?セリカちゃんどしたの?」

 

『ホシノ先輩!大変よ!やっぱりあの子はニセモノだったみたい!』

 

 

色々と説明が足りない。寝起きの頭では上手く考えられないからもう少し詳しく説明して欲しいかも…

 

 

「なになに~?ちょっと落ち着きなって。もう少し具体的に言ってもらわないと、おじさんも歳だからよく分からないよ~」

 

『私たちと年齢あんまり変わんないでしょ!?ってそんなこと言ってる場合じゃなかった...。よく聞いて、ホシノ先輩。あの小狐はやっぱりニセモノだったのよ!』

 

 

さっき本人の口から説明されたけど、どうして今になって電話で知らせてきたのかと疑問に思う。

 

 

「いきなりどうしたの~?さっきその話は本人から直接聞いたじゃん。まさか証拠でも見つけたり?」

 

『・・・そのまさかよ...』

 

 

まさかだった…

証拠というのはいったい何だろう。

 

 

『私とシロコ先輩はいつも通りにヴァルキューレの指名手配一覧を眺めていたの。そしたらアイツらガタガタヘルメット団の指名手配が追加されてたのよ!!ヘルメットを着けていない顔出し状態で!』

 

「・・・えっ...!」

 

 

・・・驚いた。ヘルメット団は基本的に指名手配をされても捕まえることは難易度が高い。というのもヘルメット団という名前の通り、普段はヘルメットを装着しているため肝心の顔が見えないのだ。だから指名手配をかけてもヘルメットを変えるだけで簡単に逃げ果せてしまう。

 

だから、ヘルメット団を指名手配する時は可能であれば、顔写真付きが望ましいとされているのだ。

 

しかしそんな奴らが簡単に顔を晒すとは思えない。可能性があるとしたらそいつらに近しい者だけだろう。今回の提供者は一体誰なんだ…

 

 

『こっそり教えてもらったんだけど、今回の提供者は仲間割れを起こして、ボロボロの状態でヴァルキューレに駆け込んできた元ヘルメット団らしいわ。』

 

「・・・へ~そんなこともあるんだねぇ...」

 

 

・・・確証はない。

だけど私には心当たりが一つだけある…

 

あの日あの時、あの小狐ちゃんを守るためにやってきたという背の高いヘルメット団員。学校に戻る頃には、気付いたら居なくなってたけど…

 

小狐ちゃんがヘルメット団のボスではないと判明した今、あの人の行動の意味も変わってくる。本当にただあのコを守るためだけにやってきたということになる。

 

だとしたらあの人にも申し訳ないことをしてしまった…。会えるかは分からないけど機会があれば謝罪がしたい。

 

 

『あの子の言っていた通り、ボスの耳は猫耳で顔も結構違うわ。なんていうか戦場に慣れている人の眼付っていうか、鋭い顔つきをしてる!あの子のぽやぽやとした顔とは似ても似つかないわ...!』

 

「そっか、ヘルメットで…」

 

『そうよ!ヘルメットさえ付けてなければあんな間違いは起こらなかったの。本当にアイツら、酷いことをするわ…』

 

「そうだね。セリカちゃん達も無理しないでね。あいつ等は厄介だからさ。捕まえられなくても二人が無事に帰ってくることが私にとっては一番大事だから…」

 

『・・・っあぅ…。何急に恥ずかしいこと言ってんのよ…!!私が言いたかったのはこれだけ!!それじゃ!』

 

 

電話が切られてしまった。らしくもなく普段は言えないような気恥しいセリフが口から漏れてしまったみたいだ。

 

今の話を聞いて、改めて隣のベッドに目線を向ける。

何事も無かったかのように、よだれを垂らしてすやすやと眠っている小狐ちゃん。こんなにも戦闘とはかけ離れたような平和な、悪く言えばだらしない寝顔は私でもしないだろう。

 

どこからともなく愛しさが溢れてくる。出会ったばかりの時のシロコちゃんも可愛らしかったけれど、このコも負けず劣らずだ。

 

自然と身体が動き、手が小狐ちゃんの頭へと伸ばされる。純白の綺麗な髪をそっと撫で付けると、擽ったそうに身を捩らせ口元には笑みを浮かべている。撫でる度に顔の大きさ以上ある耳がぴこぴこと揺れる。

 

 

(・・・うへへ...かわいい...)

 

 

これを庇護欲というのだろうか。若しくは母性を擽られているというのか。私にもそんなものがあったなんて新しい発見だ。

 

私はそうやってしばらく撫でながら、同じベッドでうとうとと微睡んでいた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

気が付いたのは、既に外が暗闇に包まれている時間帯だった。

 

この暗さならみんなはもう帰ってしまっているだろう。久しぶりに気持ちよく眠れるようになったからって流石に寝すぎたかもしれない。

 

ここ最近私はずっと保健室に居たから、他の事はみんなに任せっきりになっていた。悪い事をしたなと思いながら、明日からは私がみんなの為に動こうと心に誓いベッドから身体を起こす。

 

そこでふと感じる違和感。理由の分からない寒気...

 

隣を見ると、そこには誰も居ない。意識を落とす前までに存在していたはずのあのコが居ない。

 

 

(お手洗いにでも行ったのかな…)

 

 

なんて甘い現実逃避をしている暇なんてない。

逃げ出したんだっ!ここから…!

 

いくら私のした事が赦されたといっても、私があのコを殺しかけた事実は無かったことにはならない…!

そんなあのコにとってこの場所は敵地となんら変わりない…!

 

いくらなんでも気が抜けすぎだ、私…!

 

自分の事ばっかり考えてあのコの気持ちをなんにも考慮していなかった!

 

まず最初に心の底から安心できる場所だと信頼してもらう為に動くべきだったのに…

 

・・・探しに行こう。

 

身体は今日目覚めたばかりだ。

そんなに遠くには行っていないはず…

 

あんなボロボロの状態で夜のアビドスを歩くなんて自殺行為に等しい。無法者がそこら中に溢れているのだから。

 

 

私は装備を手に取り、急いで学校から飛び出した。

 

毎晩のパトロールを重ねてきたことで判明した、悪い奴らが溜まりやすい場所。そこから虱潰しに探し回る。

 

 

「はぁっ...はぁっ...!・・・くっ...」

 

 

たいして疲れていない筈なのに息が上がる。心臓の鼓動が普段より早い。あのコが心配で仕方ない。

 

今の時点で六ケ所の怪しい場所を回った。現在進行形でスケバンが溜まっているような場所もあったけど、無視して次の場所へと急ぐ。

 

やはり夜は治安が悪い。昼間には見ないガラの悪い奴らの姿が、視界の端によく映り込む。

 

ただひたすらに走り回っているけれど今の私には何の手掛かりもない。早く見つけないといけないというのに、逃げ出した先の目途が立たない。こうして探し回っている間にも酷い目に遭っているかもしれない。

 

そう考えるだけで冷や汗が止まらない…

 

 

 

すると、一つの銃声がアビドスの夜に響き渡る

 

 

何の手掛かりもない私にとって、それは道標のように感じられた。

 

 

(こっちか…!)

 

 

急いで音のした方向へと向かう。学校を出てから一体どれくらい経ったのだろうか。ずっと走りっぱなしでそろそろ身体が重たくなってきた。

 

音だけを頼りに走り続ける。

 

 

ふと、遠くの方から誰かの声が聞こえた気がした。

この辺りには確か公園があったはずだ。誰か居るとしたら恐らくそこだろう。

 

走り続けてようやく公園が見えてきた。ただでさえアビドスには人が少ないというのに、夜の公園に誰かがいるなんて普通は思わない。さらに言えば、この地区は人をほとんど見かけることのない特に寂れた地区だ。

 

だけど私は見逃さなかった。その公園に溜まっている奴らが、二つの人影を壁に追い詰め複数人で囲んでいるところを…

 

 

 

私はあそこで襲われているのがあのコでないことを祈って、突撃しようと銃を構えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ふと額に何かが触れている感覚を覚え、意識が覚醒する。

 

窓の外を見ると、太陽は沈み星が輝いていた。

夜が来た。

 

ここから逃げ出すには絶好のタイミングだ。

 

行動に移そうと思い、もぞもぞと布団から出ようとする。

 

・・・が、そこで違和感を感じた。ボクのあたまに触れる手の感触。小さいけれど温かくボクを包むようなおおきな手。

 

隣を見ると、ピンク髪のあの子が気持ちよさそうに寝ていた。

 

瞬間、ボクの身体は強張り冷や汗が溢れ出てくる。あの時のような酷い人ではないと分かった今でも、心に染みついたトラウマは消えてくれないようだ…

 

実際ボクは、この人に対しての悪感情は既に無くなっている。だけど、心の底から信頼できているかというと、そうではない。()()()()さえあれば克服できるかもしれないとは思うけど、そんな上手い話は簡単には見つからないだろう。

 

いろいろと試行錯誤しているうちに、ボクの心がストレスで壊れてしまう気がする。

 

だからボクはここから離れなければならない。迷惑はかけたくない。この人もボクに対していろいろと遠慮してしまうだろう。ボクがここから居なくなることが、互いにとっての上策なのだ。

 

そう思い、震える身体を抑えつけ、そっと起こさないように布団から抜け出す。

 

抜き足差し足忍び足だ。

 

長きに渡るホームレス生活で鍛え上げられたボクの忍び足は伊達ではない。カエルやいなごを捕まえるために鍛え上げられたこの特技は、人間にも通用する。と信じてる。

 

試したことがないから分かんない。

 

 

荷物なんて一つもないから手ぶらでその部屋から出る。初めての場所だから、探り探りで出口を目指す。

暗いから転ばないようにしないと、と思いながら建物の中を彷徨い続けた。

 

至る所に扉がある。どこを開いても同じようなお部屋。ボクはとんでもない場所に迷い込んでしまったのではないだろうかと、心が不安になってきた…

 

やがて歩き続けているうちに、開けた空間が見えてくる。周囲を見渡すと、一つだけガラス張りの扉が開いている。ボクはそこ目がけて駆け出した。

 

ボクは閉鎖的な空間から脱出した時の解放感が好きだ。一気にボクの世界が広がる気がする。空気も澄んでいて気持ちいい。

 

そしてボクはその場所から逃げ出した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

その街は寂れていた。夜だから人の気配がほとんどしないのは当然だけど、それだけでは説明できないような物悲しさが漂っている。至る所に砂が積り、かつて栄えていたであろう住宅街は明かりが一つも存在しない。

 

ボクが今、こうして周囲を見渡せているのは夜空に広がる満点の星空の光のおかげだ。

 

 

──────なんて奇麗な星月夜…

 

いままで散々見てきて、そこにあるのが当たり前のように思っていたけれど、改めてみるととんでもなく美しい。

 

 

一つ一つが存在を主張するかのように光り輝くお星さま

 

太陽と対を成すかのようにこの世界を見守るおおきなお月さま

 

それらを繋ぐように夜の海に浮かぶ幾何学的な模様たち

 

 

そのどれもが主人公のように無くてはならないものとして夜空に存在している。

 

それと比べると、ボクなんてちっぽけな存在だ。

 

地面に這いつくばり一日一日を生きるので精一杯な毎日。いつ死んでもおかしくないようなこの世界でも、この星空を見るだけで救われるような気持ちになってくる。

 

ボクが死んだらあの星空の仲間入りをするんだ。

それがボクの密かなユメ...

 

何もできなかったボクだけど、星になれたら誰かを照らすことが出来る。

 

今を生きるボクの救い。

ひとりで生きていくための希望。

 

 

今、この夜はボクだけのモノだ。

 

後ろで手を組み、尻尾を揺らす。

 

一つ一つの星々を眺めながら夜の世界を歩く。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

いったいどれくらいそうして歩いただろうか。相変わらず周囲には人の姿は見えない。

 

・・・が、視線を感じる。どこからか見られている…

 

人の気配が少ないだけに、この感覚は余計に目立っている。

 

 

(なんのためにボクを見ているの...?)

 

 

少しずつ少しずつ、不安が募っていく。心なしか空気もどんよりとしてきた気がする。

 

さっきまでの心地よさを返して欲しい。新たな門出を世界にも祝われていると思っていたのに…

 

幸先の悪いスタートだ。

どうしようか…?逃げた方がいいのかな。それとも視線を感じなくなるまで歩いたほうが...

 

 

・・・その瞬間、突如として空気が変わった...

 

後ろの建物の影から響く足音。地面を蹴ってこっちに近づいてくる...!

 

ボクは慌てて走り出すが、足音はどんどんと迫ってくる。

 

 

(やばいやばいやばい...!!急げ急げ!!捕まったら終わりだ!!)

 

 

必死に前だけを見て、がむしゃらに脚を動かす。

 

だがしかし、寝たきりだった身体をいきなり動かしたせいだろうか、

脚が縺れてふらついてしまう。

 

そして不幸は続く。

 

脚を縺れさせ、偶然足を置いた先には小さな段差が待ち構えていた。

 

 

「・・・あっ、あわわ...ひゃっ...いだぁっ...!」

 

 

ボクは回避する余裕なんかなく、つまずいて派手に転んでしまう。

 

そこでついに、倒れ込んだまま後ろを振り向いてしまった...

 

 

 

────目の前にいたのは、ガタガタヘルメット団のボスその人…

 

 

そいつはいきなりボクの胸ぐらを掴み、ロープでボクを縛り付ける。その手際は恐ろしく速かった。抵抗する暇もなく縛り上げられる。

 

 

「・・・やだ!なにするの...!はなせ!はなせよっ...!!」

 

「騒ぐな。ぶん殴るぞ」

 

「────っは、はぃ...」

 

 

身体がだめなら唯一動かせる口で、と思ったが

たったの一言で黙らされてしまう。

 

ドスの効いた威圧感のある声。アジトで団員にからかわれていた時とはまるで別人かのような雰囲気に、ボクの身体は恐怖に竦み始めていた。

 

ボスはそのままボクを引きずり歩いていく。

 

 

「くっ、ぐぅ...っぅあ...」

 

(・・・痛い...熱い...苦しい...)

 

 

地面との摩擦で燃えるような熱さに身体を捩らせながら、声を漏らすのを我慢している。

 

永遠とも感じられる拷問のような責め苦を味わいながら耐え続ける。

 

そうしていると、急に歩みが止まった。続く痛みから解放されたおかげで、周りの様子に耳を傾ける余裕が生まれた。

 

耳を澄ます。

 

 

・・・そこでは聞くに堪えない泣き声と悲鳴が響いていた

 

さらにいうとその声には聞き覚えがあった。

短い間だったけどボクのお世話をしてくれたあの優しい声…

だけどその声が今は聞きたくないっ!

 

今すぐに耳をふさぎたい衝動に駆られたけれど、縛られているせいで塞ごうにも塞げない。

最悪なやり取りが耳に入ってくる。

 

 

「・・・ごめんなさい...!ごめんなさい...!ごめんなさい...!」

 

「なぁ、それで許されるとでも思っているのか?お前のせいで私たちのヘルメット団は壊滅寸前だぞ?」

 

 

(いったいおねえさんが何をしたというの...?なんであんなに謝っているの...?)

 

(・・・やめて!殴らないであげて…蹴らないであげて…!撃たないであげて!)

 

 

ボクは思わず涙がこぼれる。

 

そこにボスが乱入する。

 

 

「ホントにな。テメェが私たちをポリ公に売ったおかげでどんどんと逮捕されている。今日だって賞金稼ぎの奴らがわんさかと私たちを襲ってきた。それもこれも全部お前と、この糞雑魚小狐のせいだかんな?」

 

 

そう言ってボクの身体は宙に放り出された。

 

 

「・・・あっ...うぅっ...」

 

 

情けない声を上げながら無様に地面を転がる。

 

 

「────っ!小狐ちゃん!!!生きてたの....?

・・・あんた達、この子は関係ないでしょ!?今すぐに開放してあげて!!全部あたしが悪いんだから!!」

 

「関係ないね。こいつさえ来なければこんな状況にはならなかった。全ての元凶。疫病神だ。」

 

「・・・あぅ...」

 

 

自分でも薄々感じていたことだけれど、他人からこうして真っ向から言われるとかなり傷つく…

またボクのせいでおねえさんが酷い目に遭ってしまっている

最悪だ…!ボクのせいで、ボクのせいで…

ボクは何のために存在してるんだろう…?

 

 

「作戦を立てたのはボス!あなたでしょ!?」

 

「確かに作戦にコイツを採用したのは私だ。そして面倒をお前に見させたのも私。団員には悪いと思っている。どうしようもないクソ野郎な私は、私自身がこの結末にケリをつける。明日私だけ自首しに行き、そこで他の団員の行動権は私が握っていたと言う。情状酌量の余地はあるだろう。

 

・・・だが、その前にお前らをどうにかしないと気が済まねぇんだよ!!これは感情的な問題だ!理性の問題じゃねぇ!!今日同時にオマエらを捕まえられたことは奇跡だ...!!天は私に味方している!!」

 

「・・・くっ、勝手なことを…。結局はあなたが全部悪いってことなんだからさっさと自首しに行きなさいよ!既に捕まった団員はあんたの行動が遅かったせいで捕まったってことじゃない!!」

 

「黙れよ…」

 

 

夜の街に一つの銃声が響き渡る...

 

 

「ガハッ...!」

 

 

その弾を喰らった対象は、それで静まり返った。

 

 

・・・次はボクだ...

 

 

そんな空気がひしひしと感じられる。

逃げたい...!だけど逃げられない...!この拘束がどう足掻いても解けそうにない!

 

 

「お前はどうしてやろうか。こうしてここにいるってことは、アビドスの奴らには特に何もされなかったのか?」

 

「・・・うたれたよ…」

 

「あ?なんだって?」

 

 

「撃たれたよ!!お前のせいで死にかけた!二回目だ!!ボクにとってはお前が...お前の方が疫病神だ!!」

 

 

どうしても我慢ができなかった。口から漏れてしまうのを抑えていたが、洪水のように言いたいことが溢れ出てしまった。

 

 

「うるせえよ!!ホントにテメェ...!ぶっ殺すぞ...!!」

 

 

そう云い放ち、転がるボクのお腹を蹴り飛ばす。

 

 

「ぐっ...!がはっ...!!」

 

 

そのまま壁に身体が激突し、ずるずると腰が地面に落ちてくる。お腹を蹴られるのは何回目になるのだろうか…

などと、妙に冷静な思考があたまを過ぎる。

 

もう、死んでもいいのかもしれない。

ボクが生きてたところで誰も幸せになりっこないんだから

 

もしもボクが夜空の一部になれたとしたら、他のお星さまにいじめられたりなんてしないよね...

あんなに奇麗な輝きを放っている裏で、もしこんなにドロドロとしたことが行われてたら何も信じられなくなっちゃう。

 

 

目の前にはヘルメット団のボスが銃を構え、月を背に立っている。ボクは全てを諦め目を瞑る。

 

 

「・・・じゃあな。ニセモノ」

 

 

銃から鳴るカチャンという音が嫌に耳に響く。

 

 

 

ボクは何も言葉を発さずに、

その瞬間を待つ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

眼をあけ、声のした方に視線を向ける。

 

 

 

 

 

・・・銃声は聞こえなかった。

 

 

 

 

 

そのかわりに響いたのは……

 

 

 

 

 

───────ピンク髪のあの子の叫び声だった

 

 

 

 

 

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