不幸な小狐は幸せを探す   作:うしさん

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心、許し

 

 

・・・その日は、ボクにとって世界が変わった日になった…

 

 

目に焼き付いたあのひとの姿が忘れられない

 

ピンチの時に颯爽と現れ悪いやつらを成敗する

 

まるで物語の中に登場するヒーローのようだと思った

 

 

 

その戦いの中では何が起こっているのかボクにはほとんど分からなかった。

 

だけど戦闘中、あのひとが時折見せる辛そうな、苦しそうな表情。

 

それを見たボクは、無意識のうちに声援を飛ばしてしまっていた。

 

そのひとが来るまでに感じていた恐怖と身体の震えは、既になくなっている。

 

『そのひとについていけば怖い物なんて無い』

 

そうボクに思わせるほどの、言葉にできない迫力。圧倒的な強さ。

 

全てが終わった後、ボクに向けられた優しい声と表情...

 

 

その瞬間、ボクはそのひとに堕ちてしまっていたみたいだ…

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「やめろ!!!」

 

 

その現場に到着して目に入ったものは、想像していた状況の中で一番最悪なものだった。

 

あのコの無事な姿を見て安心したかった。そしてもう一度しっかりと話して、一緒に学校に帰ろうって言ってあげたかった…

 

 

・・・だけど、だけど…!

 

 

どうしてまた、こんなにも酷いことを⋯⋯!

 

 

私の目に映るのは、身体を縛られ壁に寄りかかり、虚ろな目でぐったりとこちらを眺める小狐ちゃん。

 

その隣にはあの日、小狐ちゃんを守りに来て私が撃ち抜いてしまったヘルメット団員。その人は地面に横たわり気絶している。

 

その二人の周囲には数人のヘルメット団員と恐らくは⋯

 

・・・本物のヘルメット団のボス

 

 

こうしてみると本当によく似ている。

今はヘルメットを着けているから顔は見えないけれど、姿かたちは瓜二つと言っても過言ではない。

 

こいつが全ての元凶⋯

 

あのコに酷い役割を押し付け、私がまんまとその罠に引っ掛かってしまった。どんな思考回路をしていたらあんなにも胸糞悪い作戦を思いつくのだろうか。

 

 

「・・・本当に、偽物だったんだ⋯」

 

「あぁ?テメェは、アビドスの...こんなところに何の用だ?

わざわざ私たちを追い掛けてたとでもいうのか?」

 

「違う。私が第一に用があるのは壁に座り込んでいるそのコ…」

 

「そうか。だが今は私たちの用事がまだ済んでいないんだ。また後でにしてくれよ」

 

「そっか…。なら先に私のもう一つの用事から片付けさせてもらうよ」

 

 

私は怒りに身を任せ、小狐ちゃんの周りにいるヘルメット団に肉薄する。一瞬にして近づいた私に気づかない様子の団員から、一発づつショットガンで撃ち抜いて⋯うちぬいて⋯⋯!

 

─────撃ち抜いていこうとしたけれど、あの時の光景が脳裏に過ぎって引き金がうまく引けないっ⋯!

 

 

「・・・っく...なんでさっ⋯!」

 

 

私の身体はどうしてしまったというのだろうか。

理由は分かり切っている。

わざわざ言葉にする必要はない。

 

ショットガンを使えない代わりに、打撃主軸の戦闘に切り替えよう。

 

目の前にいたやつの脚を払い、体勢の崩れたところを身体をひねって回し蹴りを繰り出す。

 

そしてそのまま近くにいた奴に向かい、盾を構えて突撃する。叫び声を上げながら銃を撃ってくるが全て盾によって防がれる。

そいつの目の前に辿り着くと同時に盾で薙ぎ払い、弾き飛ばした。

 

周りの奴らはそれを見て軽いパニックを起こし始める。

この状態の集団なら相手にならない。

 

私はそのままの勢いで殲滅を続けた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「これで一対一になったね」

 

「クソっ...バケモンが⋯!銃を使わないなんて手加減でもしたつもりか?」

 

「ねぇ、ヘルメット団のキミさ。そのコを誘拐して囮として使ったんだってね…?」

 

「・・・あぁ、そうだよ。そっくりだろ?顔面以外は」

 

 

そう言ってヘルメット団のボスはヘルメットを外す。

改めて見ると、頭部だけが明らかに違うと分かる。

 

 

(こんな単純なことになんで気づけなかったかな⋯)

 

 

いくら後悔しても消えない悔しさがわき出てくる。すると、そいつは声のトーンを上げ再び口を開いた。

 

 

「・・・どうだったか?お気に召したか?私からのプレゼントは。そこの狐が言うにはしっかりと撃たれたらしいな!」

 

「しかも死にかけたとか!!どんだけ私に恨みがあんだよ!!笑えてくるぜ、ほんと...」

 

「あ~あ。そんな殺しかける程の怪我を負わせるなんて、どれだけ酷い奴なんだろうな?まさかお前じゃないだろうな?」

 

 

 

「───────っっっっ......!!!!」

 

 

 

・・・胸が、苦しい…何も言い返せない…!

 

あんな酷い怪我を負わせたのは私。殺しかけたのも私。

 

やっぱりあのコは私のこと恨んでるよね…。逆に恨まないわけがないよ…

 

昼間はああやって私に怒っていないって言ってくれたけど、怒ることと恨むことは似ててもまた別の感情だ。

 

 

「ん?なんだその反応は。まさか本当にお前だったのか?!」

 

「────そうだよ。私が殺しかけた」

 

「・・・まじかよ。じゃあなんでまたこいつに用があるなんて言ったんだ?殺しかけたんだろ?お前が」

 

「っ!そのコを連れ戻すためだよ…。お前みたいなやつから守るために私たちの学校で保護するんだ」

 

 

「そうかそうか。

─────なら、無事護れるといいな?」

 

 

そう言って、そいつは静かにハンドガンの銃口を小狐ちゃんに向けた。

 

今から何をしようとしてるのか理解してしまい、

慌てて駆け出す。が─────

 

 

「────っ!やめろっ!!!!!!」

 

 

夜の公園に乾いた銃声が木霊する

 

 

「・・・うぅっ!!!いたいっ…!!いたいよっ…!!」

 

 

あのコの肩に着弾する。虚ろだった顔が痛みで歪む。青い病衣に血が滲み、段々と紫色に変色していく。

 

 

「・・・おまえっ...!!」

 

「どうした?護るんじゃなかったのか?」

 

「絶対に...絶対にお前は許さない…!」

 

「ははっ!やってみろ、よっ!」

 

 

そこから私たちの戦闘が始まった。

 

あいつが最後の言葉を言い放つと同時に、銃口を向けて発砲してくる。

 

私は難なくそれを盾で防ぎ、肉薄する。攻撃に移ろうとするが相手の姿を見ると、その姿があのコと重なって身体が攻撃をすることを躊躇ってしまう。

 

「おらっ!こっちだ!」

 

その隙に、盾を掴まれ私の頭上に飛び上がって後ろを取られる。

普段であれば絶対にありえない。だけど今は私の状況が最悪だ...

 

「くっ……!」

 

「なんだぁ!?そんなもんか!?」

 

すぐさま振り向くが、数発身体に銃弾を喰らってしまう。

一つのテンポの乱れから、私の行動はどんどんと遅れていく。

 

相手の攻撃自体は私にはダメージとして効果が薄いが、体力がガンガンと削られていく。

 

さっきまで散々走り回っていたせいだろうか…。

それにしてもこの体力の減りはおかしい⋯⋯

 

 

「・・・お前、何をした...?」

 

「あぁ、お前は喰らうの初めてか。盾使ってるもんな。

何故か私が力を込めて撃った銃弾に当たるとみんなそう言うんだ。今はハンドガンを使ってるが、普段スナイパーをやってるのはそのせいだ。後ろから確実に仕留めるために、なッ...!」

 

 

再び発砲してくるが、小休止が入ったお陰で自分のペースを取り戻すことが出来た。盾で堅実に防ぐ。

 

この力も所謂、神秘というものなのだろうか

 

・・・厄介だ...

 

アヤネちゃんが言うには、あの時のノノミちゃんの怪我は出血の割に大した怪我では無かったらしい。

 

それなのに意識を持ってかれたのにはコイツの力も含まれるのだろうか...

 

今は考えるだけ無駄だ。

 

この戦いは長引けば長引くほど私が不利になる。

速攻だ。速攻でケリをつけよう。

 

相手の姿を見てしまうと身体が止まってしまう為、盾で相手の姿を隠しながら突撃しプレスに向かう。

 

「そんなん喰らうかよ」

 

しかし難なく避けられる。相手の姿も見ることも出来ないで攻撃が当てられる訳がない。そんな初歩的なことすら忘れてしまうほどに動揺している。

 

集中さえ出来ていれば対象が見えなくても銃弾を当てられるというのに...!

 

 

・・・どうすればいいッ…!

 

引き金は引けない

 

攻撃は、当てられない

 

相手の力は厄介だ

 

私は完全に攻めあぐねている⋯

 

 

苦虫を噛み潰したような顔で、相手を睨み付ける。

 

そいつの奥には壁にもたれかかった小狐ちゃんの姿

 

そのコは、拳を握りしめ私たちの戦いを涙を流しながら眺めていた。

 

 

すると、突然立ち上がった。

 

一体どうしたのだろうか…

 

 

 

「・・・がんばれっ...」

 

 

 

「・・・え...?」

 

 

 

「頑張れッ!!!!!おねえちゃん!頑張れ!!!そんなやつに負けないでっ!!!」

 

 

 

「───────っっ!!!」

 

 

 

 

・・・衝撃的だった...

私はてっきり完全に嫌われて、恨まれているものと思っていた。

 

だけど、だけど⋯!あんなにボロボロの姿で健気に私のことを応援してくれている⋯!

 

その期待に応えたい。もう一度護らせてもらうチャンスが欲しい。

 

今度こそ絶対に傷付けさせない。

 

その為にもまずはコイツを...

 

 

そのとき、私の中で何かが吹っ切れたような気がした。

 

ショットガンを強く握り直す。盾を持つ手に力を入れる。相手の姿をしっかりと視界に収める。

 

そして、腰を入れ脚を一歩後ろに引く。

 

次の瞬間、私はあいつの目の前、下から顔を見上げる位置にいた。

 

その勢いのまま相手の顎下に銃口を突きつけ...

 

───────引き金を、引いた...

 

 

「・・・グゥっ...!!!」

 

 

鳴り響く発砲音。

 

虫を潰したような声を上げ後ろに仰け反る小さな身体。

 

倒れる寸前で脚を踏み出し耐えしのぶ。

 

 

「ッ!テメェッ...!!」

 

「ふぅん。やるじゃん。伊達にヘルメット団のボスやってないね」

 

「っチィ!・・・オラァっ!!」

 

「効かないよ」

 

 

急襲に対する怒りに身を任せ発砲するが、私には効かない。

 

大切な人の大切な盾があるのだから...

 

 

「さっさと眠りなよ」

 

「・・・っ!カハッ...!!

て、めぇ...く、そ....ガハッッ!」

 

 

トドメといわんばかりに、引き金を引き腹部に数発撃ち込む。

最後に私の怨みを込めた回し蹴りを喰らわし、前方に吹っ飛ばした。

 

それであいつは気絶し、戦闘は終了した。

 

 

「・・・はぁっ...はぁっ...はぁっ...!」

 

 

疲れた⋯。普段よりも負担が大きい

体力的にも、精神的にも...

 

私は盾を地面に立てて、寄り掛かる。息が整うまでその姿勢でいようと思った。

 

 

・・・だが、そうはいかなかった

 

 

目を瞑っていた私の身体は、急に何かに押し倒されたのだ。

気を抜いていたために、あっさりと倒されてしまう。

 

まだ意識があったのか、と敵の様子を確認しようと目を開けると...

 

 

 

そこには───────

 

 

 

私に飛び着き、涙を流す小狐ちゃんの姿⋯⋯

 

 

 

「お、おねぇちゃん...!!!ごわがっだよぉ...!!

うわぁぁぁぁん....うぅ、あぁぁぁぁ....ひっく...

・・・たすけてくれて、ありがどう....!」

 

 

その姿を見て私は拘束を解いてやり、自然と腕を回し抱き締め返していた。

 

 

「・・・ごめんねっ...!さっきは護れなくて⋯!もうキミのことは誰にも傷つけさせやしないよ。ずっと私が傍で護るから...!安心して私たちの所に帰っておいで!!」

 

 

「うぅ、うぅぁ...うわぁぁぁぁぁあん...!!」

 

 

私の出来うる限りの優しい声、優しい表情を意識し、必死に語りかける。

 

このコを安心させてあげたい。ただその一心で...

 

 

その後はしばらく、そのコが泣き止むまでぎゅっと胸元で抱き締めてあげた──────

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・ごめんなさい。急に抱きついちゃって...」

 

 

そのコが泣き止むと、いきなり私に謝ってきた。そんなの全然気にしなくていいのに。

 

 

「ぜんぜん大丈夫だよー。寧ろ謝るべきなのは私の方。ごめんね...

肩の傷の様子はどう?すぐに処置するよ」

 

「これくらいならだいじょうぶ、です!」

 

 

本当に大丈夫なのだろうか...

一応見せて貰って処置はしてあげよう。やって損することなんて無いだろうし。

 

というわけで傷口を見せてもらい簡単に包帯を巻いてあげた。

本格的な処置は明日アヤネちゃんにお願いしよう。

 

すると、小狐ちゃんは急に何かを思い出したかのように元いた場所へと駆け出した。

 

 

「・・・そうだ。おねえさん...ボクよりもおねえさんを助けてあげて!」

 

・・・っ!そういえばそうだった。おそらく今回もこのコを庇おうとしたのだろう。

本当に優しい人だ。

 

私も謝らないといけない。とりあえず起こしてあげよう。話はそこからだ。

 

 

小狐ちゃんが肩を揺すって呼び掛ける

 

「おねえさん...!おねえさん!起きて...!起きてよぉ...!」

 

「・・・んぅ...もう、やめて...」

 

「あと少しだっ...起きて!起きて起きて起きて!!!」

 

 

少しヘルメット団の人が可哀想に見えてきた。休日の子供に無理やり起こされる母親みたい...

 

 

「・・・っは...!小狐ちゃん...?

そうだっ!大丈夫!?酷いことされてない!?」

 

 

「起きた!ボクは大丈夫だよ!あのおねえちゃんが助けてくれたんだ!

すっごくカッコよかったなぁ〜

びしっ!ばしっ!バンバン!ってあっという間にあいつらをやっつけてくれたんだ!!おねえさんにも見せてあげたいくらい!」

 

 

小さな身体をめいっぱい使って、大きな身振り手振りであっちこっちに動き回る。しかも早口で大げさに言うものだから私としては少し恥ずかしいかも...

 

 

「いやぁ、そこまで言われると照れるなぁ…」

 

「へぇー!そんな凄い人が⋯⋯

─────っ!あんた...!なんでこんなとこにいるの...?」

 

 

やっぱりそういう反応だよね...当然だ。

 

 

「おねえさん!ピンクのおねえちゃんはボクたちを助けてくれたんだよ!?睨んじゃだめ!」

 

「・・・そう、だったんだ…。それならお礼を言わなきゃだね。ありがとう。たすけてくれて」

 

「気にしないでいいよ。逆に私に謝らせて欲しいんだけど、いいかな…?

・・・あの時は、本当にごめんなさい。話も聞かずにいきなり撃ち抜いたりなんかしちゃって…」

 

「あたしも、あの時はあなたに酷いことを言った。ごめんなさい...

これで、おあいこにできないかな...?」

 

「キミがそれでいいなら…」

 

 

改めてあの日のことを思い返すと、精神が磨り減るほどに色々なことが起こっていた。

 

ヘルメット団が襲撃に来た。ノノミちゃんが撃たれて気絶した。私はそれで自分を抑えられなくなった。

 

・・・小狐ちゃんが囮として姿を現した。

そのコを守りに来た子を撃ち抜いてしまった。

最終的には小狐ちゃんを殺しかけてしまった...

 

全て私が暴走してしまった結果の出来事だ。

あの時言われた言葉はかなりショックだったけれど、人を殺しかけることとは比べ物にならない。互いに謝ったところで釣り合わない。

 

 

「・・・本当に、おあいこになるのかな?何か言ってくれれば可能な限りでなんでも応えるよ」

 

 

「あたしがそれでいいって言ってるんだからこの話はこれでおしまい!そもそもね、アビドス高校に襲撃しに行ったあたしたちヘルメット団が百パー悪いんだから…。あたしは撃たれて然るべきだったんだよ。あなたが小狐ちゃんを撃ってしまったのも元を辿ればヘルメット団のせいなんだから、あんまり気に病みすぎないようにね…」

 

 

「そっか⋯。そういえばあの時、気付いたら姿が見えなくなってたけど⋯⋯」

 

「あー、あの時ね。あたしが目を覚ました時、既に小狐ちゃんは血に塗れてた。離れたところから見ても殺されたと思った…」

 

「・・・うん…」

 

「それであたしは逃げ出したんだ。あなたには勝てる訳がないし、小狐ちゃんの方に向かった所で返り討ちにされると思ってね。それに医学の心得なんてものは持ってないから何も出来ずに目の前で命が失われるのが怖かった…」

 

「・・・そっか…」

 

「だからあたしは、ヴァルキューレにそのまま急いだんだ。事前に準備していた写真を全部提供した。小狐ちゃんを助けるのがもう無理なら、せめてあいつらに報いを受けさせようって思って…」

 

 

そうだったんだね...

やっぱりこの人が情報提供者。

 

そのおかげでどんどんと捕まっているというのは、私たちにとっても喜ばしいことだ。学校を襲われる心配も、みんなが怪我をする心配も無くなる。今日を最後に小狐ちゃんが酷い目に遭うことはもう無いだろう。

 

 

「本当にありがとね…。きみのお陰で私たちの学校に平穏が帰ってくるよ」

 

「ううん。あたしも、小狐ちゃんの命を繋げてくれてありがとう…。あたしはあの時、小狐ちゃんの命を諦めちゃったからさ、これからも小狐ちゃんの事をよろしくね!」

 

「きみはこれからどうするの...?」

 

「とりあえずヴァルキューレに通報するよ。そしてあたしも自首してコイツらと一緒に刑を受ける。じゃないとあの子に顔向け出来ないからさ!」

 

 

そう言って笑顔を作り、ヴァルキューレに通報を始めた。通報して数十分後、ヴァルキューレの生徒がやって来て次々にヘルメット団の拘束をしていった。

 

 

「御協力感謝致します。こいつらは暫く前から私達も為す術がなく、手をこまねいている状態でしたので。ここ最近で手掛かりが一気に増え、こうしてあなた達が捕まえて下さいました」

 

「あの...!あたしは何もしてません!捕まえたのはこの人です!」

 

「・・・貴女は、この間情報を提供して頂いた…。はぁ、貴女も立派な協力者ですよ。感謝致します」

 

 

そう言って頭を下げるヴァルキューレの人。仕事に忠実な人って感じがしてかっこいいかも。すると私の隣にいた団員の人は言葉をゆっくりと綴り始めた。

 

 

「あの、実はあたしもこのヘルメット団の一員だったんです...!なのであたしの事も捕まえてください。そうじゃないとあたしの気が済まないんです」

 

「そうですか⋯。貴女が望むならそうしましょう」

 

 

そうして彼女は手錠を掛けられた。

だけどその顔は却って清々しいものになっていた。

 

 

「きょくちょー!こっちはもう拘束し終わったよー」

 

「そうか。ならさっさと連れて行け」

 

「ちぇー。夜勤だから暇かなって思ってたけど、なんで私が入る時に限ってこうなるんだろ…」

 

「黙ってさっさと運べ!こっちも夜勤で人が少なかったからわざわざ生活安全局を呼んだんだ!ドーナツくらいなら買ってやるから仕事をしろ!」

 

「えー!ほんと〜!?それなら頑張っちゃおっかなー。局長太っ腹〜」

 

「・・・失礼致しました...それでは私はこれで」

 

 

「あ、そうだ...!」

 

 

歩きだそうとした瞬間ふと声を上げ、ヘルメット団の彼女が突然私の方に振り向いてきた。

 

 

「アビドスの人っ!!小狐ちゃんはこの世界のことをまだ何も知らない!だから色んなことを経験させてあげて欲しいの!お願いねっ!」

 

 

去り際にそう残して、ヴァルキューレの人達と、ヘルメット団はその場から立ち去った。

 

そうしてその場に残ったのは私と小狐ちゃんの二人っきり。このコは疲れてしまったのか、うとうとと船を漕いでいる。あれだけ慕っていたおねえさんとの別れだと言うのに何をしているんだこのコは…

 

・・・まぁ、それもこのコらしいっちゃらしいのかな...?

 

 

仕方がないので私の背に乗せ、学校に戻ることにした。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

夜のアビドスを悠々と歩く。

 

 

学校を出る前まで、この夜は私の心を不安にさせる暗闇の世界だと思ってた...

 

だけど、こうして無事にヘルメット団は捕まり、このコの信頼を得ることが出来た。

 

私たちの学校は平穏を取り戻し、新たな青春の物語(ブルーアーカイブ)が幕を開けるだろう。

 

 

 

改めて空を眺める。

 

 

満天の星空。

 

スポットライトのように私たちを照らす大きな月。

 

天を覆う光の輪。

 

 

こんなにもこの夜は光で満ち溢れているというのに...

 

 

・・・それに気づかせてくれたのはこのコ。

 

私にとって命の輝きの象徴...

 

希望の光...

 

 

 

 

 

 

 

─────純白の髪が星灯で白銀に輝いて見えた

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

・・・そこは誰もいない暗闇。

 

その暗闇にも負けることの無い程の黒。

 

人型のソレはコツコツと足音を立ててその道を歩く。

 

暗闇に響く独白は、まるで呪詛を吐く人形のようだった。

 

 

「クックック...遂に暁のホルスに合流しましたか。

 

この世界に突然現れた謎の神秘...

 

私も謎を探っていましたが、この間漸く理解しました...

 

回数制限付きの命の代用。

 

このストックが無くなったら一体どうなることやら。

 

楽しみにさせて頂きましょうか⋯

 

 

 

─────── 九尾狐の成り損ない⋯

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】
ここまでお読みくださり本当にありがとうございます。小説を書くのは初めてだったので、疑問に思った部分も多かったかもしれません。申し訳ないです。

元々この辺りでキリ良く終わるつもりでしたが、有難いことに思っていたよりも沢山の方に読んで頂けているので続きをちゃんと書こうと思います。最後の部分は急遽それっぽく差し込みました。

次から始まる幕間は本編に結構関わってきます。曇らせタグはまだ死んでません。
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