不幸な小狐は幸せを探す   作:うしさん

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スイーツ部は第八話にほんの少しだけ登場しています。


ケーキリベンジマッチング③

 

 

「そしたら最初はお互いに自己紹介から始めよっか~」

 

 

席に着いて、おそらく最年長である私が最初に声を上げる。仲良くなるための基本は自己紹介だ。ユキちゃんとみんなが距離を縮めたきっかけも自己紹介だったし。

 

 

「どっちから始めるの?」

 

「私たちからでいいのではないでしょうか?」

 

「そうだね~。じゃあおじさんからで。アビドス高校三年、名前は小鳥遊ホシノ。よろしくぅ」

 

「おじさん・・・。初っ端から濃い人が来たわね…」

 

「濃さなら私も負けない…。

練乳よりも濃い自己紹介を──────」

 

「ナツは黙ってて」

 

「あはは…すみません、続けてください…!」

 

 

さっきも思ったけど、すごく賑やかな人達だ。自己紹介ひとつでここまで盛り上がってくれるなんて。私も自己紹介をした甲斐が有るってものだ。

 

 

「次は私がいきます〜!アビドス高校二年、十六夜ノノミです!よろしくお願いしますね♪」

 

「うぉでっk」

 

「だから喋るな!!純粋な子供がいる前でその発言はさせないわよ!」

 

「・・・もがもが…」

 

「あははっ!面白い人達だね!もしかして芸人さんなの?」

 

「ほらナツ!アンタのせいで私たちが芸人だと思われてるじゃん!」

 

「すみませんすみません!私達は芸人ではないんです…!何度も邪魔してごめんなさい!」

 

「あ、あはは……」

 

 

やっぱりとても仲がいい。ただのやり取りをしているだけでこの賑やかさだったら、ユキちゃんが芸人だと勘違いしてしまうのもしょうがないのかもしれない。

 

 

「ん、次は私。同じく二年、砂狼シロコ。よろしく」

 

「うん、よろしく。

ほら、あのクールさをアンタも見習ってよ」

 

「無理」

 

「堂々と諦めるな!」

 

「あ、でも言葉数が減ったからこれはこれでアリかもね!」

 

「ア、アイリ…?言葉は時に凶器にも成り得るんだよ…」

 

 

お互いに当たりが強いように見えるけど、それが仲の良さの裏返しなのだろう。それだけ信頼しあっているという証拠だ。

 

 

「あはは…それでは私も・・・

アビドス高校一年生の奥空アヤネです!よろしくお願いします!」

 

「よろしくね!なんだか私、アヤネちゃんとは仲良くなれそうな気がする!」

 

「奇遇ですね!私もです!」

 

「・・・アレじゃないの?苦労人ポジション的な…」

 

 

「しっ!ヨシミ…!今は二人をそっとしておいてあげて…」

 

「えぇ…?よく分からないけど分かったわ・・・」

 

 

確かによく考えたら二人は似たような立ち位置なのかもしれない。最近のアビドスでは、好き勝手に動く私たちを宥めてくれるのがアヤネちゃんの役割みたいになっている気がする。トリニティの子たちもアイリと呼ばれる子以外がハチャメチャな事をして、それをアイリちゃんが窘めているのかもしれない。

 

だけど本質的にはみんな似たような雰囲気を感じるから、なんだかんだで四人一緒になって、とんでもない事をしていたりするのかも…

 

 

「じゃあ私ね!同じく一年、黒見セリカよ。よろしく!」

 

「おっ、カズサと同じネコ仲間じゃ~ん。またたびとか好き?」

 

 

「「ネコじゃない!!」」

 

 

「うぉ、ゴメンて...そんなに怒んなくてもいいじゃん……」

 

「ナツ、今のはアンタが悪いわ。初対面の相手にデリカシー無さすぎよ」

 

「カズサちゃんにも被弾しちゃってるし、謝った方がいいんじゃない?」

 

「さっき一応ゴメンって言ったんだけど…

──────わかった…!わかったからそんな目で見つめないでぇ…

・・・あの、ごめんなさい……」

 

「別に私もそんなに怒ってるわけじゃないわ。仲良くしたいと思ってるし」

 

「か、かんしゃぁ~!セリカ様~!」

 

「ちょっと!様はやめてよ!」

 

「・・・私は普通に怒ってるけどね」

 

「まぁまぁ、カズサちゃん。次はユキちゃんの番だからさ、それ見て一旦落ち着こう?」

 

「まぁ、それなら仕方ない…」

 

「・・・それで大人しくなるのね」

 

 

危ない危ない。放っておいても最悪なことにはならなかったとは思うけど、とりあえず落ち着いて貰えて良かった。ユキちゃんの名前を出したら落ち着いてくれるかなって思って言ってみたけど、まさか本当に効果があるなんて驚いた。

 

次はユキちゃんの番だ。いつも通りの元気な自己紹介で空気を変えてもらおう。

 

 

「最後はボクだね!雪白ユキです!最近アビドス高校に入れてもらいました!よろしくお願いします!」

 

 

相変わらず元気で良い子だ。私たちくらいの年齢になってくると立場とか色々気にしちゃうけど、このコは何にも囚われない自由さを持っている。この間もゲヘナの風紀委員長ちゃんとの緩衝材になってくれたし、今日もこの四人と良い関係を築けそうだ。

 

四人の反応を見てみると、みんな優しい目でユキちゃんを見守っている。あのコはこの店に来てからずっと尻尾と耳が忙しなく動いている。すごく大きな尻尾と耳だから対面から見ても目立っているのだろう。目に見える感情というのは接する上でとてもありがたい。楽しそうな姿を見ると、自然と自分も楽しい気分になるものだ。

 

 

「いやぁ~、この間見た時も可愛いなって思ったけど、こうして近くで見るとつい愛でたくなってしまう…。カズサが撫でたくなった気持ちも分かる…」

 

「そうでしょ?」

 

「そうね。なんていうか母性が刺激される感じ?」

 

「私も後で撫でさせて貰おうかなー」

 

 

みんな口々にユキちゃんに対する感想を言ってる。このコを可愛がってくれる人が増えるのは私としても嬉しい。人との触れ合いが好きなこのコの事だから、きっと今も楽しんでいるだろう。この四人にはこれからもユキちゃんの遊び相手になってくれたらありがたい。

 

それに学校存続の綱渡りをしている私たちに、何かあった際のユキちゃんの預け先が増える訳だし。そんな状況には私が絶対させないつもりではいるけれど、選択肢が増える分にはメリットしかない。

 

 

「そしたら今度はこっちの番だね!私からいくよ?

トリニティ一年、放課後スイーツ部の栗村アイリです!よろしくお願いします!」

 

「おーよろしくねぇ」

 

「放課後スイーツ部って何をする部活なんですか~?」

 

「それを語るには一言では語りきれぬ。私たちの全てを目の当たりにする覚悟は出来ているか…」

 

「普通に喋りなさいよ」

 

「まぁ要するにこいつが言いたいのは、長くなるから後回しにしようってこと。先に私たちの自己紹介を済ませちゃうね」

 

「そういうことだ」

 

「じゃあ次は私!同じく一年、伊原木ヨシミ!よろしく!センパイ」

 

「そういえば三人が先輩だったね。今更ですけど敬語の方がいいですか?」

 

「いやいやぁ、全然気にしなくていいよ~。私達もお堅いのはイヤだしさー。名前も好きなように呼んでよ」

 

「ありがとうござい、ます。

・・・いや、ありがとう。ホシノさん」

 

「別に呼び捨てでもいいのに」

 

「まぁ一応目上なわけで、最低限の礼儀というか…」

 

「ぷぷっ...なによ?カズサってそんなカタギな性格だったっけ?ヤクザ上がりなの?」

 

「ぎくぅ!!そそそ、そんな訳ないでしょ!?バカなこと言わないで!」

 

「あからさまに怪しいわね…。だけどここで追及するのはやめとくわ」

 

「というわけでヤクザ上がり(仮)の自己紹介をどうぞ。」

 

「やめろ!!!ナツ!!ぶん殴るよ!?

・・・はぁ。同じく一年、杏山カズサ。よろしく…」

 

 

気を遣って呼び捨てでもいいよって言ったつもりなんだけど、なんか悪いことしちゃったかな…?カズサちゃんのテンションが一気に下がってしまった。なんとなく怯えているようにも見える。

 

それにしても凄い動揺してた。まぁカズサちゃんの正体が何だとしても私は気にしないんだけど。

 

これで自己紹介が終わってないのは残り一人だ。あの子は最初からすごく独特な雰囲気を漂わせてるから気になってたんだ。

 

 

「ふっふっふ…。遂に真打登場…。キヴォトス一番、最新最高の自己紹介をしてやろうぞ!

私の名は───────!」

 

「あ、こいつの名前は柚鳥ナツ。意味不明なことしか言わないから適当にあしらっとけばいいよ」

 

 

 

「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

 

 

 

「わた、しの、名は・・・・・・

 

 

「・・・ふふっ、だめだよカズサちゃん…」

 

 

「あはっ…」「うふふっ…」「んふ」「くふっ」「……っ!」

 

 

 

「くくっ、ふふふっ!あはははは!よくやったわカズサ!やっぱりあんたは最高よ!」

 

 

やっぱり面白い人達だ。ナツちゃんは少し可哀想な感じになっちゃったけど、これが普段のスイーツ部のノリみたいなものなのだろう。互いに信頼しているからこそできるイジりや煽りは、安心感すら感じさせる。

 

 

「くっ…無念・・・」

 

「あははっ!ナツちゃん元気だして!すごく面白かったよ!ボクもう一回見たいなぁー」

 

「マジ勘弁してください。でも慰めてくれてありがとね…。なんていい子なんだろう。いいこいいこ」

 

「うひひっ!お耳も一緒に撫でてー!」

 

「おぉ...!本当にいいの…?カズサも触らせてくれないのに」

 

「私がアンタなんかに触らせるわけないでしょ。何されるか分かんないんだし。ユキちゃんもそんな事言わないで早く逃げた方がいいよ」

 

「えー?でも、悪い人じゃないし…」

 

「まぁ、それはそうだけど…」

 

「それじゃあ失礼して…。

───────わァ~…もふもふだぁ〜」

 

「浄化されたわね」

 

「ん!ズルい!私も我慢して耳はあんまり触ったこと無いのに!」

 

「シロコも触っていいよ」

 

「えぇっ!アビドスのシロコさんですら触ったことがないっていうのに、ナツちゃん()()()が最初でいいのかな…?」

 

「アイリ酷い!『なんか』ってそんな事言う子じゃなかったのに…!」

 

「あ、ごめん!ナツちゃん!悪気は無かったんだけどつい…」

 

「悪気無いのが一番ツラいのだ。」

 

 

すごく賑やかだ。ケーキを食べに来たはずなんだけど、ほとんどみんな手が進んでない。せっかく来たのに食べないのも勿体ないし一応言っておこう。

 

話の邪魔はしたくないから落ち着いた頃を見計らって声を掛ける。私も他のケーキを食べてみたい。

 

 

「みんなぁ、ケーキ食べ放題の元取ろうよ〜。おじさんは期間限定のケーキ食べたいなー」

 

「あ、そういえば話に熱中し過ぎてケーキ全然食べてなかったかも」

 

「ナイス声掛け。ホシノおじさん…!」

 

「うへ、それなら良かったよ〜」

 

 

そうして、それぞれケーキをつまんだり、新しくケーキを持ってきたりしながら話は続いていった。そこで色々気になったことをみんなが質問していく。

 

 

「そういえば先程の自己紹介の時に後回しにした話なのですが、放課後スイーツ部の皆さんは普段どんな活動をされてるのでしょうか?」

 

「あー、そんな話もあったね」

 

「ここは私が説明し…」

 

「ナツに説明任せるとろくな事にならないからアイリお願い」

 

「あはは…。私たちは普通にスイーツを楽しむための部活動です。スイーツのためならどこにだって行きますよ!もちろん常識の範囲内で。洞窟なんて以ての外です!」

 

「洞窟…?そんなとこに行ったの?」

 

「行ったのはこのナツバカだけ。その後色々あったんだけど、あの記憶はもう思い出したくないから別の話にしない?」

 

「そうなんだ…。じゃあこの子に会ったのはいつ?」

 

 

洞窟の話もかなり気になるけど、確かにユキちゃんに会った時の話も気になる。カズサちゃんが初対面の時から撫でたいと思うくらいにテンションが上がっていたそうだけど、その時から性格は一切変わってないみたいだ。ユキちゃんは今も楽しそうに話を聞きながらケーキを頬張っている。

 

 

「昔々、それはひと月も経たない程昔のこと…。私たちはアビドスの地にて終焉を迎えるエデンがあるという噂を聞きつけた。スイーツの求道者として、その終わりを見届けないわけにはいかない!そうして我々調査隊はアビドスの砂地へと向かった……」

 

 

 

「───────ごくり…」

 

 

「・・・いや、普通にスイパラが閉店セールで安くなってたから行っただけなんだけど…」

 

 

 

「そうして我々がそこで目にしたのはなんと・・・

───────ユキちゃんだ!!!」

 

 

「急に端折ったわね!!?」

 

「めんどくさくなっちゃって」

 

「いいツッコミよセリカ!ナツ相手にはそれくらいで丁度いいわ」

 

 

だんだんとウチのみんなもスイーツ部のノリに慣れてきたみたいだ。私も最初はびっくりしたけど、今は気分も上がってきている。隙を見て程よく茶々でもいれてみよう。

 

 

「それでユキちゃんはどんな様子だったんですか〜?」

 

「あの時は女の人と手を繋いでケーキを選んでたよ。ちょっとすれ違っただけなんだけど、これでもか!ってくらいに尻尾が暴れてたから目立っててさ。私達もそれを見て可愛らしい子だねって話をしてたんだ」

 

「あの時同じお店にいたの?」

 

「そうよ。あの時はお店の中でもすごく目立ってたわ。すれ違う人皆がユキちゃんのこと二度見するくらいにはね!」

 

「えー!声掛けてくれれば良かったのにー!」

 

「いやその時私たち知り合いじゃなかったでしょ?!」

 

「あ、そっか。そうかも。そうだよね!ヨシミちゃん賢いね!」

 

「なんかこの子、ナツとは違うナニカを感じるんだけど…」

 

「ゴメンね~、ユキちゃんちょっとだけおバカさんなんだ。今、頑張ってお勉強中だから色々教えてあげてね」

 

「おバカって勉強したところで治るものなの!?」

 

「さぁねぇ」

 

 

確かに学力とは別のおバカって勉強したら治るのだろうか。でもおつむが弱いところがこのコの愛嬌でもあるからそのままでいて欲しいんだけど。

 

そうしてケーキを食べながら二人の様子を眺めてた。すると二人で話していると思ったら、ヨシミちゃんが立ち上がり、ユキちゃんのところにそろりそろりと移動して頭を撫で始めた。さっき撫でてみたいって言ってたから念願が叶ったようだ。ユキちゃんも嬉しそう。

 

他のみんなもそれぞれで会話が盛り上がっている。みんな楽しそうで良かった。

 

だけど私は、最初にカズサちゃんの姿を見た時からずっと気になっていることがある。聞こう聞こうと思っていたけど、聞くタイミングを逃していた。聞くなら今しかない。そう思い、話を切り出してみる。

 

 

「スイーツ部のみんなに少し聞いてみたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「聞いてみたいことって、何か気になることでもあった?」

 

「うん。あのさ、今って平日の昼間じゃん?みんな学校はどうしたのかな〜って思ってねー。あ、別に説教とかじゃないから安心してね」

 

「うっ…」

 

「あはは…」

 

「あー、まぁ気になって当然だよね…」

 

「私もそれ気になってました〜。トリニティは今日お休みなんですか?」

 

「結論から言おう。

──────トリニティは休みでは無い!!」

 

「えぇっ!?そうなんですか?!それではなぜ…」

 

「スイーツの探求をする上で犠牲は付き物…。世の中の絶対不変の真理なのだ」

 

「このことに関しては言い訳のしようもないわ…。期間限定ケーキを食べるためには人が少ない時間帯じゃないと中々ありつけないから仕方なく、ね」

 

「そのおかげで今こうして食べられてるから満足はしたかな。普段はあんまりこういうことはしないんだけど」

 

「なるほどね〜。部活動なら仕方ないよね」

 

「そ、そうよ!部活動だからね!仕方ないわよね?」

 

 

そういう理由なら納得だ。それほど夢中になれるものがあるのは良いことだと思う。部活動として活動しているのなら、部費とかも多分スイーツに回せるはず。少し羨ましいかも…。

 

こういった事を繰り返して上に目を付けられたら大変だと思ったけど、普段はあんまりしていないと聞いて安心した。歳をとると余計な心配が増えてヤになっちゃうよホント。

 

 

「あれ?でもボクがこの前行った時も昼間だったよね?その時も学校無かったの?」

 

「あ」

 

「い、いやーあったような無かったような…」

 

 

(・・・あれ?もしかしてちゃんとサボってる?サボっちゃっているのかな?)

 

まさかユキちゃんの口からこんな致命的なコトを突きつけられるなんて、この子達も思ってもいなかったはずだ。言い分はちゃんと聞いてあげよう。

 

 

「ご、ごめんなさい!あの時も学校ありました…!だって、仕方なかったから……」

 

「閉店セールの値段がちょっと魅力的過ぎたのが悪いのよ!」

 

「それにアビドスはちょっと遠かったしね…。でも本当に安心して!あの日と今日以外はほとんど休んでないから!」

 

「ほとんど、ね……。あんたたち()()()スイーツ部を名乗ってるのにそれでいいの?」

 

「ぐっ…!なにも言い返せない…!」

 

「・・・ふふふ、放課後スイーツ部とは世を忍ぶ仮の姿…」

 

「げ…」

 

 

セリカちゃんの鋭い意見に、ここでナツちゃんが参戦してきた。カズサちゃんはナツちゃんが声を発した瞬間に顔を顰める。さっきから大人しいと思ってたけど遂に来た。今度はどんなとんでもない発言が飛び出して来るんだろう。少し楽しみにしている自分がいることに驚いた。

 

 

「ちょっとナツ、変なこと言わないでよ?」

 

「変なこととはなんだ!変なこととはぁ!?」

 

「あぁ、はいはい。悪かったね。さっさと言いたいこと言いなよ…」

 

「・・・ふふふ、放課後スイーツ部とは世を忍ぶ仮の姿…」

 

「うへ…そこからやるんだ…」

 

 

「その真の実態は・・・・・・」

 

 

「「「「「「実態は……?」」」」」」

 

 

 

 

 

「────そう!私たちは平日日中スイーツ部だったのだ!!」

 

 

 

 

 

 

「な、な、な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「ねぇユキちゃん。コレはそんな驚くほどの話じゃないわ。私たちでさえよく分かってないんだから」

 

「へ?そうなんだ。じゃあびっくり損だぁ」

 

「ユキちゃん…?そんな事言わないで…?」

 

「あははっ!ユキちゃんもナツの扱い分かってきたじゃん」

 

 

やっぱり意味不明なことだった。「平日日中スイーツ部」って名前からしてただの不良生徒の集まりな気がする。百パーセント上の方から目をつけられるような名前だ。だけどコレもいつものナツちゃんのトンデモ発言のようで、他のスイーツ部の子は呆れている。

 

 

「ナツもバカなこと言ってないでケーキ食べなさいよ。せっかく学校抜け出してまで来てるんだから」

 

「バカなこととはなんだ!バカなこととはぁ!?」

 

「もういいわ!この話はこれでおしまい!私ケーキ取ってくるね」

 

「あ、私も行きます♪」

 

「ボクも!次抹茶ケーキ食べてみたい!」

 

「おじさんも行こっかなー」

 

 

そうしてその場は一旦収まった。私の聞きたかったことも聞けたし、後は普通にケーキを食べながらおしゃべりして楽しもう。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、もう結構な時間が経っている。制限時間も残り一時間くらいだ。ただひたすらに食べ続けるだけだったら、今頃確実にお腹いっぱいになってたはず。だけどこうして喋っているおかげでペースも落ちるし、お腹も空いてくるしでもう少し食べられそうだ。

 

 

そうして私たちはケーキを頬張りながら残りの時間を楽しく過ごした。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

一時間後、制限時間が終わりお会計を済ませて店の外に出た。ユキちゃんは目標だった全種類制覇も、スイーツ部の子達が手伝ってくれたおかげで達成出来たみたいで、とても満足そうにしている。後で私からも感謝を伝えておこう。

 

今はアイリちゃんがユキちゃんのことを撫でている。席に座っている時は少しだけ離れていたからようやく撫でることが出来たようだ。この短い時間で、みんなとても仲良くなったと思う。これもスイーツのおかげなのだろう。アイリちゃんが語ってくれたスイーツ談議はすごく面白かった。私も思わず聴き入ってしまうくらいに。

 

そうして時間も時間だし、という感じで自然と解散する流れになった。

 

 

「スイーツ部のみんな、今日は本当にありがとね。すっごく楽しかったよ〜!ユキちゃんのお手伝いもしてくれたみたいだし、改めて感謝させて欲しいな」

 

「いえいえ!こちらこそありがとうございました!勇気を出して誘って良かったです!」

 

「私も楽しかったわ!普段食べないケーキとかもユキちゃんのおかげで食べれたし!新しい発見もあったしね!こっちこそ感謝したいくらいよ!」

 

「ん、機会があったらまた遊ぼう。」

 

「それもいいかもね。そしたら連絡先交換しようよ。それなら気軽に連絡取れるしさ!」

 

 

カズサちゃんの提案でみんなと連絡先を交換した。私も今日はとてもいい気分転換になった。こうして他の学校の子と遊ぶのも悪くないかもしれない。ぜひまた機会があれば一緒に遊びたい。今までこんな交流なんてした事がないから初めは戸惑ってた部分もあったけど、とても楽しい思い出になった。

 

 

「それじゃ、またね!」

 

 

そう言って、スイーツ部の子達は私たちとは反対方向に歩いていった。帰り際にカズサちゃんがユキちゃんに、こっそりと内緒話をしていたみたいだけど何だったんだろうか。ユキちゃんの顔を見る限りとても嬉しそうだったから悪い話じゃ無さそう。

 

私たちの連絡先しか無かったユキちゃんのモモトーク画面には、新しくスイーツ部の四人の名前が加わった。ユキちゃんはその画面を事ある毎にチラチラと眺めてはニマニマとしていた。

 

友人が増えて嬉しいのは私も同じだ。何かあったらまた声をかけてみよう。

 

そうして私たちは、楽しかった思い出を噛み締めながらアビドスへの帰路についた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

今日ボクに新しいお友達が出来た。トリニティという学校の四人だ。ボクの不注意から始まった関係だけど、みんなとても優しくてすごく楽しかった。放課後スイーツ部っていうところに所属している四人は賑やかな人達だった。

 

アイリちゃんは三人のまとめ役みたいな感じで、ボクにチョコミントの素晴らしさについて語ってくれた。今日はチョコミントケーキなんてものは無かったから今度食べてみたい。どんな味がするのかな?

 

ヨシミちゃんもボクにすごく構ってくれた。たくさんケーキを食べさせてくれたし、たくさん撫でてくれた。ヨシミちゃんのツッコミは鋭くて面白かったな。ボクも参考にしよう。

 

カズサちゃんはすごく優しい。ボクが最初ぶつかったのに怒りもしないで、ボクの心配をしてくれるんだから。その後もちょくちょくボクのことを気に掛けてくれたし、撫でるのが上手だった。気持ちよくてついノドから声が漏れてしまった。

 

ナツちゃんはなんというか、とんでもない人だった…。場を引っ掻き回す天才で、カズサちゃんとヨシミちゃんのツッコミが止まらなかった。だけどちゃんとボクにも優しく構ってくれたし、たくさんお話もしてくれた。たまに意味わかんないことも言ってたけど、それも含めて面白かった。

 

 

連絡先も交換して、これでいつでも連絡出来るようになった。モモトーク画面も人数が増えてとても嬉しい。スイーツ部のみんなの名前を見る度に今日の思い出が頭の中に溢れて、すごく楽しい気分になってくる。

 

帰り際にカズサちゃんに呼ばれてこそこそばなしをされた。どうしたんだろう?って思ってたけど、

 

「アビドスの人達に言いづらいこともあると思う。だから部外者の私たちに何かあったらなんでも相談して」

 

ということだった。

 

気を遣ってこんなことを言ってくれた。確かにボクはアビドスに居候させて貰ってる身だから、言いづらいことも少ないけどある。そういうことも全部相談に乗ってくれるってことだと思う。それを察して、こそっと言ってくれるなんてやっぱりすごく優しくて良い人だ。

 

 

話は変わるけど、アビドスへの帰り道でホシノおねえちゃんにまたあの質問をされた。「行きたい所とかやりたいことは何かある?」っていう質問。この間ケーキを食べたいって言って、今日こうして連れてきてくれた。なんでこんなにボクによくしてくれるんだろう?

 

そう疑問に思ったけど、あと少しだけ甘えさせて貰うことにした。ボクがしたい事…。いくら考えてもそれらしきものは思い浮かばない。だけど、ふとヘルメット団のおねえさんとの記憶が蘇る。出会ったばかりの最初の頃、薄汚いボクをお風呂に入れてくれた。世間知らずのボクには衝撃的だった。

 

なんでそんな鮮烈な記憶を忘れてたんだろう?ボクは普段学校に備え着いているシャワーを浴びている。だからお風呂に入ったのはあの一回きり。ホシノおねえちゃんにお風呂に入ってみたいことを伝えよう。

 

あの心の芯から温まる感覚は今思い出しても心地良い。毎日入れたら良いんだけど流石にそこまでの贅沢は言わない。ただでさえアビドスのみんなの金食い虫になってしまっているんだから。

 

お風呂に入れてもらった後は、今までボクに使ってくれたお金を返すためにバイトをしよう。そして早く元のアビドスを取り戻すためにお金を稼ぐんだ。ここまで甘えさせて貰ってる分はちゃんと恩返しをしよう。

 

 

覚悟も決まったところで、ボクは気が抜けてしまったみたいだ。お腹いっぱいになってるし、電車の揺れが心地良い…。

 

揺れた勢いでホシノおねえちゃんの膝にあたまが乗っかってしまった。

 

ボクは為す術もなくその暖かな手で夢の中へと誘われる。

 

 

瞼が重たい

 

意識がふわふわとしてくる

 

大人しく眠りにつこう

 

明日もまた楽しい日々が待ってるんだから

 

 

おやすみなさい……

 

 

 

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