不幸な小狐は幸せを探す   作:うしさん

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温もり、安らぎ...

 

 

突然だけど、ボクは今銭湯という場所に来ている。

 

どうしてこんなことになったかというと、トリニティから帰ってくる時にボクがお風呂に入りたいとおねだりしたからだ。その後の展開は割と早かった。

 

電車に揺られて眠りにつき、アビドスに帰ってきて目を覚ましたと思ったら、目の前には銭湯と呼ばれる建物があった。今はちょうど夕方頃。シャワーを浴びるにはちょうどいい時間帯だ。だけど、ボクは銭湯がどんな所なのかは正直よく分かっていない。

 

お風呂に入りたいと言った後に連れてこられたのだから、お風呂に関連する建物である事には間違いないハズ。この敷地全部がお風呂だったりするのかな?それにしては広すぎない?ボクが前に入ったお風呂は確かドラム缶風呂って言ってた気がする。お風呂って全部アレくらいの広さと大きさじゃないの?

 

こんな事になるのなら、もっと詳しくお風呂について聞いておくべきだったかも…。いや、今からでも遅くない。今のうちに聞こう。わからない事はその場で聞くのが良いってアヤネちゃんが言ってたし。

 

 

「ね、ねぇ。ここってどんな場所なの…?お風呂に入る場所?」

 

「ん?そうだよ〜。本当なら温泉に連れて行ってあげたかったんだけど、さすがに今からは厳しいから代わりに銭湯に来たんだぁ」

 

「おんせん…?おんせんってなに?」

 

 

銭湯がお風呂に入る場所だっていうことは分かった。だけどまた知らない単語が出てきた…!「おんせん」っていう名前の響きだけでみると、なんか良さげな感じがする。

 

感想が曖昧すぎるって?そんなのボクだって知らないよ!「おんせん」が何だか分かんないんだから!良さげは良さげだ。

 

という訳で分かんないのならその場で聞くのが一番。律儀に言われたことを守れるのがこのボク、雪白ユキなんだ!

 

 

「温泉が何か、かぁ〜。あんまり詳しく考えたこと無いなー。誰かユキちゃんに説明出来る?」

 

「ん。地面から湧き出たお湯につかること。シロ、分かった?」

 

「えぇっ!?お湯って地面から出てくるの!?おんせんに入るためにはわざわざお湯が出る場所を探さないといけないの!?」

 

 

衝撃の事実だ。お湯が出る場所を探し当てないとおんせんに入れないだなんて…。おんせんに入る為に一回一回地面を掘ってたら手間がかかるどころじゃない。今からおんせんは行けないのも当然だ。

 

多分銭湯はお湯を溜めてお風呂にするんだろう。ドラム缶風呂もドラム缶にお湯を溜めただけだったし。これでまたひとつ賢くなった。シロコに感謝しないと。

 

 

「ええと…その説明は間違ってはいないのですが、ユキちゃんがすごい勘違いをしてそうなので少しだけ補足させて下さい!」

 

「え?勘違い?」

 

「温泉は一度見つかったら暫くは無くなりません。ですので温泉に入ろうとする度に掘り当てる心配は無いんです!それに、温泉は観光地にもなっているので行こうと思えば行けるんですよ?」

 

「へぇー!そうだったんだぁ。それなら安心だね!」

 

「今からだと温泉に行くのは厳しいので、今日はこの銭湯に来たんです!」

 

 

なるほど。温泉ってそんな感じなんだ。不思議だなぁ。地面からお湯が出てくるだなんてびっくりだ。でもわざわざ温泉を見つけ出して入るなんて、どうしてそんな手間のかかることをするんだろう?お風呂に入りたいのなら銭湯みたいにお湯につかるだけでいいのに。

 

 

「それじゃあ、どうしてみんな温泉に行くの?お風呂じゃダメなの?」

 

 

分からなければ聞くのが一番!今日だけでも分からないことがたくさんだ。ホシノおねえちゃんにも「おバカさん」って言われちゃったから賢くならないと…!

 

 

「温泉にも色んな効能があるらしいわ。お肌がすべすべになったり、怪我が回復したり、身体の凝りがほぐれたり。私もいつか行ってみたいのよねー」

 

「すごっ!そんな効果あるんだ!いいなぁ〜ボクもすべすべになりたいなー」

 

「ユキちゃんは充分すべすべですよ〜!羨ましいくらいです!ほらっ、こんなにほっぺがもちもちなんですから♪」

 

「あぅあぅ」

 

「ん、ずるい。私もやる」

 

「あばばばば」

 

 

なにが起きてるんだろう。気付いたらほっぺが集中攻撃されていた。右側からも左側からも、ほっぺたをぺちぺちむにむにと好き放題だ。ボクも途中から抵抗することなくそれを受け入れている。なんだか楽しくなってきちゃった。

 

 

「あはは…」

 

「いやぁ〜仲良しでいいねぇ。おじさんも混ぜて貰いたいくらいだよぉ〜」

 

「まったく、何やってんのよ…。羨ま...じゃなくってユキちゃんもイヤならイヤってちゃんと言いなさいよ?」

 

らいひょうふらよ。らんかたのひいひ大丈夫だよ。なんか楽しいし

 

 

そうして暫くむにむにされてた。結局全員に。

 

それが終わったと思ったら、ようやく銭湯に突入するみたいだ。銭湯がどういう場所かはしっかりと理解した。さっきホシノおねえちゃんに聞かれて思い出したばかりのお風呂だけどすごく楽しみだ。

 

ボクの知識にあるお風呂はドラム缶の形しか知らない。中にはどんなお風呂が待っているんだろう?そうやって想像するだけでわくわくが止まらない。

 

入口を通り中に入ると、そこは独特な温かい匂いがした。辺りを見回すと正面には受付があり、そして奥には道が続いていて、その道の入口には赤い布が掛けられている。多分あそこがお風呂への入口なのだろう。

 

そして右側に目を向けると、畳が敷かれた広い休憩スペースがある。そこにはポツポツと人が座っていて、瓶の飲み物を飲みながら雑談をしている人が見えた。お風呂上がりなのか、皆ホカホカとリラックスしているようだ。

 

 

「おじさん銭湯なんて久しぶりに来たよ〜」

 

「ん、私も久しぶり。最後に来たのはいつだったかな」

 

「そしたら最初に受付を済ませてしまいましょうか☆」

 

「今日はなんの準備もしてきていないので、タオルや石鹸類は全て借りますね!」

 

「私も手伝うわ!」

 

 

みんなは手際よくお風呂に入る用意を進めていく。ボクは何が何だか分からないからただ見ているだけだ。今度また来る時のために勉強しとかないと。今のうちにしっかりと観察して、何をしないといけないのか覚えよう。

 

そうして一通り準備が終わり、受付の奥の赤い布が垂れている道を進んでいく。すると目の前に扉が現れた。それをシロコがゆっくりと開ける。ボクたちは後ろから続いて扉の向こうへと足を踏み入れた。

 

 

「おー!なんだここ!?」

 

 

ボクの目の中に飛び込んできたのは、柔らかい木の色をした温かく広い空間。洗面所がいくつか並んでいて、扇風機が所々で回っている。夕方頃だからなのか、人の姿が少し見られる。

 

 

「ここは着替える場所だからまだお風呂じゃないよ〜。」

 

「さすがのボクでもそれくらいは分かるよ!そこまでおバカじゃないもん!」

 

「うへぇ、ごめんごめん」

 

「あはは…」

 

「早く入ろう。私は先に行くから。シロも後で洗ってあげる」

 

「え、シロコ先輩はやっ!もう準備万端じゃない!」

 

「ボクも行く!すぐ準備するね!」

 

 

なんだかわくわくしてきた!あの扉の向こうにはどんな世界が広がっているんだろう?心の高まりに従い、ボクもさっさと服を脱いでシロコのところに向かおう!

 

 

「ユキちゃん、脱いだお洋服はこのカゴの中に入れてくださいね〜」

 

「うん!わかった!」

 

「テンションが上がりに上がってるわね…」

 

「尻尾の揺れが凄いです…。セリカちゃん、ここの位置だと尻尾風を感じられるよ」

 

「・・・ほんとだ。扇風機みたい…」

 

 

ボクは着ていた制服をぽんぽんと脱いで、シロコが向かった方向へ小走りで向かう。洗ってくれるって言ってたから中に入ったらまずシロコを探そう。

 

 

そうしてついに、ボクはお風呂へのとびらを開いた。

 

 

 

「うわぁ〜!すっごーい!!」

 

 

 

ボクの視界が開けて見えてきたのは、辺り一面が湯気で包まれた真っ白な世界。よく見ると地面には黒いタイルが敷き詰められていて、所々にいくつかのお風呂がみえる。奥にはガラス張りの部分があり、その向こう側にはまたお風呂らしきものが見えてくる。外の景色を眺めながらお風呂に入れるなんて楽しそう!

 

一通り観察し終わったところで、シロコを探すことにした。座ってシャワーを浴びてる人が何人か見えるけど、多分あの中のどこかにシロコは居るはず。お風呂に入る前には身体を洗わないといけないっておねえさんから教わった。それを思い出し、ボクはシャワーゾーンを探し始めた。

 

 

「シロ、こっち」

 

「うわっ!びっくりしたぁ」

 

 

後ろから急に肩を触られ、驚きと共に飛び上がってしまった。

 

振り向くとそこにはシロコがいた。頭に水色のシャンプーハットをつけていて、髪の毛は泡でもこもこだ。そうしてシロコはボクの手を引いてシャワーのところまで連れて行ってくれた。ボクはシロコの隣に座り、洗い終わるのをぼーっと待つ。

 

数分後、全身を洗い終わったシロコはボクのことを洗ってくれるみたいだ。ボクの後ろに立ち、シャワーを頭から浴びさせてくれる。普段は自分でやることも多いけど、こうして誰かにやってもらうのは久しぶりだ。

 

 

「シロ、何かあったら言って。」

 

「うん。分かった。今はとくに何ともないよ」

 

「そっか」

 

「うん、ありがと」

 

 

シロコは優しくあたまを洗ってくれる。泡が目に入らないように気を遣ってくれるし、手付きから優しさが伝わってくるようなソフトタッチだ。さっきの列車の中でも寝ていたのに、また眠気が襲いかかってくる。それくらい気持ちがいいってこと。

 

 

「ふぁぁぁ〜〜……」

 

「寝ちゃダメ。寝たらお湯を水にしちゃうよ」

 

「はっ!それはイヤ!」

 

 

危ない危ない…。危うく眠ってしまうところだった。お耳を洗われるとどうしても気が抜けちゃう。それにしてもお水は酷いと思う。そんなことされたら心臓止まっちゃう。

 

まぁ実際にシロコがそんなことをするとは思わないけど。なんだかんだ言って、シロコはボクのことをすごく大事にしてくれてるんだろうなって感じる。細かい気遣いが所々から滲み出てるのだ。ボクの目は誤魔化せない。

 

 

「リンスまで終わったから次は身体を洗うね」

 

「ふぁい…。おねがいします」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「シロコ?」

 

 

どうしたんだろう?急にシロコが静かになってしまった。いつもなら何かしらお話してくれるはずなんだけど…。振り返ってシロコの顔を覗き込む。

 

 

「・・・シロ、身体は普通に洗っても大丈夫…?」

 

 

そういうことか…。みんなが普段から優しく接してくれるものだから、ボクも気にすることが無くなって忘れていた。そういえばボクの身体には見るに堪えないくらいの傷が残ってた。痛み自体は既に無くなっている。普通に洗ってもらってもなんの問題もない。

 

本当なら、こんな醜い身体は公衆の場で見せるようなものでは無い。もう少し周りに気を遣うべきだった。こんなのを見てシロコも良い気分はしないだろう。

 

 

「痛みとか無いから普通に洗って大丈夫だよ。

・・・ごめんね。こんな汚い身体で…。」

 

「大丈夫。どんな姿だとしてもシロはシロ。私はそんなこと気にしない。だから安心していいよ」

 

 

そう言ってボクのことを抱き締めてくれる。

 

 

(──────あたたかい…)

 

 

肌と肌が直に触れ合っているせいで普段よりも熱が直接伝わってくる。ボクの全身にシロコのあたたかさがじわじわと広がっていく。

 

辛いとか悲しいとか、そういった感情は一切無いけど自然とあたたかい()()が目尻に浮かんでくる。

 

全身が濡れていて良かった…。シロコにはバレてないことを願うばかりだ。

 

 

「・・・うぅっ…ありがとう…シロコ」

 

「シロはもっと私に甘えるべき。遠慮しないで」

 

 

本当にボクは幸せ者だ。こんなにやさしい人達に囲まれているんだから。いつか絶対に恩返しをしてみせる。優しさは優しさで返す。何倍にもして返そう。

 

みんな嬉しくて思わずボクを抱き締めて、いい子いい子してくれるような飛びっきりのことをしてあげよう。みんなどんな顔をするのかと考えるとわくわくしてくる。

 

 

「それじゃあ洗うね」

 

 

そう言って、シロコはボクの身体を洗い始める。小さなタオルを泡立てて、撫でるように擦っていく。肩から始まり、腕、胴体、手指の先からつま先、細かいところまで丁寧に丁寧に洗ってくれる。こういう優しさを見せてくれるシロコのことが大好きだ。

 

全身を一通り洗い終わって、シャワーで泡を流してくれる。これでお風呂につかれるけど、その前にお礼を言わなくちゃ。こころからの感謝を込めて…

 

 

「・・・あの、ありがとう。洗ってくれて。

───────しろこ、()()()()…」

 

 

「・・・!!」

 

 

ボクはシロコのことを初めて見た時から何となくの直感で『シロコ』って呼んでいたけど、これからはちゃんと呼ぼう。たしか『シロコ先輩』って呼んで欲しいって言っていた気がする。これならシロコ先輩も喜んでくれる...よね?

 

 

「・・・シロ、そのままでいいよ。『先輩』は付けなくていい」

 

「で、でもっ…!」

 

「いいの。私もユキからは『シロコ』って呼んで貰いたい。そっちの方がユキのことを近くに感じられる気がするから」

 

「ほんとうに、いいの…?」

 

「ん。いいったらいいの。だから私もユキのことは変わらず『シロ』って呼ぶ。私だけの特別な呼び方。シロは子分でも妹分でもない、私たちの大切な仲間だから」

 

 

「・・・う、うぅ...!シロコ!!」

 

 

「うん...。どうしたの、シロ」

 

 

 

「───────だいすき!」

 

 

 

「ん、私も。大好きだよ。」

 

 

思わずシロコの胸に飛び込んでしまった。心がほんのりとあたたかい。『好き』の気持ちが胸いっぱいに広がっている。まだお風呂に浸かっていないはずなのに、ボクの体はあたたかさで満ち溢れている。

 

 

「あ、でもせっかく呼び方を変えるのならホシノ先輩みたいに『シロコおねえちゃん』って呼んでみて」

 

「・・・イヤっ!シロコはシロコで十分だよ!」

 

「ん、残念…」

 

「そんな落ち込まないでよ!ボクが悪いことしたみたいな気分になるじゃん!」

 

 

(まったく!せっかくの良い気分が台無しだよ!やっぱりシロコはシロコだね)

 

これからも今まで通り接しよう。そしていつか絶対に勝負に勝ってみせる。次にシロコを好き放題する権利を手に入れるのはこのボクだ。

 

 

「いやぁ〜楽しそうなことしてるねぇ〜。おじさんたちも混ぜてよー」

 

「お二人で何をお話ししてたんですか〜?」

 

 

ふらっとみんながやってきた。そうして、その質問にボクとシロコは同時に目を見合わせる。心が通じ合う。

 

 

自然とお互い口角が上がり、同じタイミングで口を開いた。

 

 

「「ひみつ!」」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「何よ二人して秘密って…。先にお風呂に行ったはずの二人に何があったの?」

 

「私も気になります…!ですがなんだか二人だけの空気、みたいなものを醸し出しているような…」

 

「秘密ったら秘密だよ!」

 

「うん。秘密。私たちはケモ耳同盟だから」

 

「・・・いやいやいや!それを言ったら私もなんですけど!?もしかしてハブられてるの私!?」

 

 

あの後、ボク達はみんなでお風呂に入ることにした。今は外のお風呂で景色を眺めながら温まっている。これは露天風呂って言うらしい。外の涼しさとお風呂の温かさでずっとここに居られそう。それを呟いたら、逆上せちゃうからダメだよって言われてしまった。ざんねん。

 

中にある他のお風呂も全部入った。ダイジェストでお風呂レポートでもしよう。

 

 

まずは王道、普通のお風呂!普通のお風呂とは言ってもただのお風呂じゃない。とにかく広い!ドラム缶なんて比にならないくらいデカい!デカすぎんだろ!

 

それだけです。

 

 

次に炭酸風呂!ボクが知っている炭酸はサイダーとかコーラくらいなんだけど、まさかそこにつかるなんて発想は無かった。入ってみた感想としては不思議な感覚だった。としか言えない。上手く表現出来ないけど、フルーツサイダーの中にいる果物たちの気持ちが分かったかもしれない。

 

 

三つ目はジェットバス!壁から強力なジェット噴射が出てきていて肩凝りとかに効くらしい。ボクは肩凝りとは無縁だからよく分かんないけど、ジェットの勢いで飛ばされるからそれを楽しんでた。

 

結構楽しかったです。

 

 

最後は水風呂。冷たかった。なんでこんなのがあるんだろう?聞いてみたらサウナって言う所から出た後に入るお風呂らしい。そのサウナはボクにはまだ早いって止められちゃった。いつか水風呂が気持ちいいって思える日が来るのかな。

 

 

そんな感じで一通りのお風呂に入った。お風呂ってなんて素晴らしいものなんだろう。温かくて気持ちがいいし、普段口に出せないようなことでも素直に言えてしまう。みんなとの心の距離が縮まった感覚がする。ボクはコレを勝手に「お風呂マジック」と呼ぶことにした。

 

ただの銭湯のお風呂でここまで気持ちが良いのなら、本物の温泉はどれだけ良いものなのだろうか。チャンスがあったら絶対に行ってみたい。

 

毎日お風呂に入りたいけど、たまに入るからこそ幸せに感じる。そう思い込むことで、お風呂入りたい欲求を我慢しよう。

 

・・・だけど時々、お家について行ってお風呂に入れさせて貰えないかな?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

お風呂から上がり、今は着替えて休憩スペースで涼んでいる。心の芯からポカポカしていて、あたまがふわふわする。今ここにいるのはボクの他に、シロコとアヤネちゃんとセリカちゃんだ。ホシノおねえちゃんとノノミちゃんは買いたいものがあるって言って、どこかに行ってしまった。

 

四人でしばらくお話をしていると、買い物に行った二人が手に何かを持って帰ってきた。

 

 

「お〜い、みんなー買ってきたよ〜」

 

「お待たせしましたー☆」

 

「何を買ってきたの?」

 

 

思わず聞いてしまった。二人の手には蓋の着いたビンが六個。中身はどうやら飲み物らしい。

 

 

「お風呂上がりと言ったらやっぱり牛乳だよねぇ」

 

「牛乳…?なんで牛乳なの…?」

 

「言われてみれば確かに…!何故かお風呂上がりは牛乳ってイメージ着いてるけど、なんでなの!?」

 

「まぁまぁ、そんな細かいことは気にしないでさ〜。美味しく飲めればそれが一番でしょ?」

 

「それもそうね」

 

「それでは早速みんなで乾杯しましょ〜♪かんぱーい!」

 

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

 

やっぱり難しいことは忘れるに限る。今の話は無かったことにして、それぞれ牛乳の瓶を手に取り蓋を開ける。ひんやりと冷えた瓶が、お風呂上がりの身体にちょうどいい。そうして瓶に口をつけ、ぐいっと一口飲んでみる。

 

 

(・・・あれ?なにこれ?おいしい!止まらないよ!)

 

 

「んーおいしい!なんかいつもよりおいしく感じる!」

 

「ん、不思議」

 

「ユキちゃんとシロコ先輩飲むの早くない!?」

 

「あはは…二人とも口の周りにお髭が付いてますよ?」

 

「可愛らしいです〜!写真撮っておきますね☆」

 

「ノノミちゃん、後でそれおじさんにも送って欲しいな〜」

 

「それではグループの方に送っておきます!」

 

 

お風呂上がりの牛乳は最高!新しい発見だ。これもまたお風呂マジックなのかも。あっという間に飲み干した瓶を捨て、みんなが飲み干すのを待つ。アヤネちゃんが最後に飲み干したのを確認してから、銭湯を出て帰ることになった。

 

 

今日はとても楽しかった。朝からみんなで遊んで、トリニティまで行って念願だったケーキを食べた。そこではまさかの出会いがあって、四人もお友達が増えた。みんな優しくて面白い人達だ。

 

その後はボクのおねだりで銭湯に来た。今日だけでボクのやりたかったことをたくさん出来た。みんなには本当に感謝しかない。お金だって払ってくれてるし、面倒だってずっと見てくれる。みんなは他にやりたい事だってある筈なのに、ボクのために時間を使ってくれてる。

 

ボクがみんなに返せることってなんだろう?そう考えた時に、真っ先に思い浮かんだのは学校の借金だ。これを返済する手伝いが出来たら、みんなにとって一番の恩返しになるんじゃないかと思う。

 

幸いなことに、アビドスにはお金を稼ぐことに関してのプロがいるのだ。セリカちゃんにバイトを紹介してもらってコツコツとお金を稼いでいこう。最初はひとりじゃ心細いから着いてきて貰いたいけど、慣れてきたらちゃんと一人で働きに行くんだ。

 

行動は早い方がいい。早く覚えればその分たくさん稼ぐことが出来るんだから!歩いて帰ってる途中だけど早速行動に移そう!!

 

 

「セリカちゃん!ボクにバイトを教えて!!」

 

 

 

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