不幸な小狐は幸せを探す   作:うしさん

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この二次創作内に登場するアプリ又は商品名等の固有名詞はフィクションです。


タイミー雪白

 

 

ボクは今日、初めてアルバイトをする。恩返しへの第一歩をついに踏み出すのだ!アルバイトをするにあたって、いろいろなことをセリカちゃんに教えてもらった。

 

バイトの探し方から選ぶコツ、どのような仕事があるのかまでしっかりと教わった。他にもバイトをする上で気を付けないといけないことや、注意点も教えてくれた。

 

時は数日前まで遡る───────

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「いい?ユキちゃん。バイトは思っている以上に簡単じゃないわ。私みたいに慣れている人にとっては大した問題ではないけど、初めてやる人にしてみれば慣れないことの方が多いから大変だと思う」

 

「・・・ごくり...」

 

「そんなユキちゃんのために私が手取り足取り、アルバイトが何たるかを徹底的に教え込んであげるわ!」

 

「おー!」

 

 

アルバイトについて教えて欲しいと頼んだ次の日には、セリカちゃんのアルバイト座学が始まった。ボクは座学があんまり好きではないけど、これもみんなの役に立つための勉強だ。そう考えるだけでやる気が漲ってくる。

 

 

「まずはバイトの基本、仕事を選ぶことから始めるわ。自分に合った仕事内容、仕事内容に見合った給料を見ると選びやすいかもね」

 

「なるほどー。セリカちゃんは今までどんな仕事をしてきたの?」

 

「私は割となんでもやるわ。最近だとシロコ先輩と一緒に賞金首を捕まえに行ったりしたけど、これはユキちゃんには危ないわね。他には飲食店のホールスタッフ、街の掃除、草むしりとか、かな」

 

「ほぅほぅ」

 

 

仕事にはたくさんの種類があることは何となく分かってはいたけど、挙げ始めたらキリがなさそうだ。さすがに賞金首を捕まえるのは無理だけど、草むしりくらいならボクでも出来そう。ホールスタッフも頑張れば何とかなるかもしれない。

 

 

「そしたら実際にアプリで一緒に確認しながら見よっか!」

 

「アプリ?どんなアプリなの?」

 

「まぁ、アプリと言っても色々あるんだけど、仕事を仲介してくれるアプリって言うのかな?例えば私が使ってるのは『アルバイトル』とか『ホームタウンワーク』とか『Tie Me』とかね」

 

「へぇー、たくさんあるんだね~」

 

「その中でも最近私がよく使ってるのは『Tie Me』よ!最近急に流行り始めたから使い始めてみたけどなかなか使いやすいのよね、タイミー」

 

「じゃあ、それ入れてみよーっと」

 

 

セリカちゃんの言う通りにスマホを操作し、タイミーアプリをインストールしてみる。すると、何かの入力画面が出てきた。名前、住所、電話番号、その他もろもろ。これを入力すればいいのかな?

 

 

「セリカちゃん、これどうすればいいの?」

 

「あーそれね、上から順番に入力していけば大丈夫よ。住所は……私の住所でいっか!一回スマホ借りるわね」

 

 

そう言ってボクのスマホをポチポチとしてくれる。生憎とボクはアビドス高校の居候だし、なんて入力するべきか分からない部分もあったけどセリカちゃんがなんとかしてくれた。さすがバイトのプロだ。

 

必要な情報を全て入力し終わり、すぐにバイトを探すことにした。

 

 

「一番最初にやるバイトとしては単純な作業の方がいいかもしれないわ。簡単なことから始めて、少しずつ慣れていくのがいいと思う。先に聞いておくけど、ユキちゃんは何かやってみたいこととかある?」

 

「ん〜難しい質問……」

 

 

改めて聞かれると、自分が何をしたいのかなんて考えたこと無かった。ボクは何から始めたらいいんだろう?最初だからお給料はあんまり重視しなくていいかな。まず何をするかだ。ここからボクのアルバイト生活が始まるのだから、嫌なスタートは切りたくない。どうしよう...

 

 

「なかなか決まらない時は、自分が何をしたいかより何をしたくないかで選ぶのがおすすめよ!それだけでかなり候補が絞られるから決めやすくなると思うわ!」

 

「したくないこと……。ええと、ボクはまだお店で働くのは大変だと思う」

 

「うん。そしたら飲食店のスタッフは一旦外れるわね。他には?」

 

「あとは、すごく重たい物を運んだりするのも厳しいかも」

 

「そうね、確かにユキちゃんには大変かも…。それじゃあ引っ越し業者とか工場も無しっと。そこまで絞れたなら私から良さそうなものを紹介するわ!」

 

「ほんと?!ありがとう!セリカちゃん!」

 

「最後の質問!ユキちゃんは人と関わる仕事と、基本一人で黙々と作業するのはどっちがいい?」

 

 

この質問には迷わずすぐに答えられる。アビドスのみんなと出会うまでボクはずっと独りぼっちだった。だけどこうしてみんなと一緒に過ごしていると、人と関わることの喜びや楽しさが分かったんだ。人との縁は大事にしたい。この間アイリちゃんが言ってた『一期一会』という言葉は、多分そういうことなんだろう。

 

 

「ボクは人と関わる仕事の方がいい!」

 

「そっか!じゃあこんなのはどう?たくさんの人と関われて、尚且つ単純な作業!はいコレ、ティッシュ配りのお仕事よ!」

 

 

そう言ってスマホの画面を見せてくれる。それを覗き込んで、内容を確認してみる。

 

 


【《未経験歓迎》誰でも出来る!ティッシュ配りバイト!】

○日時:□○△‪✕‬年☆月●▶日

○場所:アビドス商店街

○時間:10:00〜15:00(休憩1時間、時間外労働無し)

○時給:1,000円(即払い)

※交通費 実費 上限1,000円


 

 

なんだか良さそうかも!未経験歓迎で誰でも出来るなんて、ボクにピッタリのアルバイトだ。街中でティッシュを配ればいいんだよね。これならバイト未経験者にふさわしい難易度だと思う。

 

さすがセリカちゃん!いい仕事を持ってきてくれる!

 

 

「おぉー!それがいい!ボクこれやりたい!」

 

「よしっ!じゃあ決まりね。私も一緒に申し込むから当日は一緒に行こっか!」

 

「うん!ありがとうセリカちゃん!!プロアルバイターの名前は伊達じゃないね!」

 

「うっ...その名前は忘れてちょうだい…」

 

 

あとは当日が来るのを待つだけだ。持ち物とか何持ってけばいいんだろうか。必要な物とかはあるのかな?練習とかしておいた方が……。

 

・・・セリカちゃんがいるなら全部後で聞いてみよう。当日も一緒に着いてきてくれるのならすごく心強い。少し緊張するけど、やってみたら何とかなるはず。これでようやくみんなの助けになれるんだ。そう思うとなんだか楽しみになってきた。

 

 

「あ、ひとつだけユキちゃんに教えておかないといけないことがあったんだ」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

一段落ついたと思ったら、どうやらセリカちゃんがボクに教えたいことがあるらしい。さっきボクが疑問に思ったことを察して教えてくれるのかな?それとも別の……

 

 

「・・・これからユキちゃんが一人でバイトに行きたいってなった時は、必ず私たちの誰かに何処に行くのかを伝えて欲しいの。何のバイトをするのかも一緒にね」

 

 

なんだ、そんなことか。それくらいならボクでも出来る。今までは基本的に誰かと一緒じゃないと外に出ちゃダメって言われてた。だけど今回ボクがバイトをしたいと言ったところ、ボク以外のみんなで話し合い、そこでボク一人での外出が出来るように決まったっぽい。

 

だけど夜の外出はまだダメみたい。さすがに夜の街中を一人で歩くのは危険だって。

 

どうやらずっとアビドス校舎に閉じ込めておくのも良くないって話になったらしい。ホシノおねえちゃんは最後までボクの一人での外出に反対だったみたいだけど最終的に、成長の機会を無くすのは…っていう意見で折れたようだ。

 

ボクをすごく大事にしてくれるのはとっても嬉しい。だけど、ボク一人でも出来るんだってところをみんなに見せて安心させたい。本音を言うとたくさん褒めてもらいたい。頑張ったねって言いながらあたまを撫でて欲しい。そしてそのままギューってして欲しい。

 

バイトを頑張ったら合法的にやってくれると思う。

別に何の法にも触れてないけど。

 

 

「うん。わかったよ。ちゃんと伝える。」

 

「そ!それならよかったわ。最近は闇バイトとか流行ってるらしいからね。仲介アプリも対策はしてると思うけど、たまにあるらしいのよね。他にもSNSとかにはそういうのが流れてるって最近ニュースになってるから気をつけるのよ?」

 

「・・・そんなのがあるんだ…。気を付けないとだね」

 

 

闇バイトか…。でもボクはそんなのに引っかからない。今までの酷い暮らしのせいで警戒心だけはあるつもりだ。ボクのセンサーはそういうものに敏感なのだ。別に急に大量のお金が欲しいって訳でもないし、コツコツと働いていこう。

 

 

「バイト先も決まったところで、次はティッシュ配りのコツを伝授するわ!今までの経験で培ったテクニックを叩き込んでいくから覚悟しなさい!!」

 

「はいっ!セリカ教官!」

 

「・・・私が悪かったわ。お願いだから普通に呼んで……」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

───────と、こんなことがこの間あった。

 

 

今はセリカちゃんと二人で現地に向かっているところだ。アビドス商店街は、ボクも時々連れて行って貰ってる場所で、みんな優しくていい人たちばっかり。ボクがアビドス高校に入学して初めてここに連れてきてくれた時には、ここの店の人達はサービスだって言って色んなものをくれた。

 

その後もちょくちょく遊びに来るけど、相変わらず可愛がってくれる。そんな人達の近くで働けるのなら安心感も倍増だ。セリカちゃんも着いてきてくれてるし、今日は楽しいバイトになりそう!

 

学校を出てから数十分。ボクたちは事前に知らされていた集合場所に到着した。今はバイト開始の三十分前。時間に余裕はある。

 

 

「ユキちゃん、建物の中に入って声掛けてみよっか。早く準備した方が後が楽だしね!」

 

「うん!」

 

 

そう言って、扉を開けて二人で建物の中に入る。建物の中は簡易的な集会所のようなところで、机や椅子が所々に並べてある。中はそんなに広くはなく、奥の方には今日配る大量のポケットティッシュがダンボールの中に詰めてあった。

 

 

「ごめんくださーい!タイミーから来た黒見ですけどー!誰か居ませんかぁー!」

 

「雪白もいまーす!」

 

 

声を掛けてみてもなんの反応も返ってこない。誰も居ないのかな?やっぱりまだ時間じゃないしもう少し経ったら来るのかな?

 

なんて思ってたら、ボクたちが今入ってきた入口が開き誰かが入ってきた。

 

ってあれ?よく見たら黒柴のおじちゃんだ!ボクも商店街で話したことがある。

 

 

「いやぁ、ゴメンなさいね。声が聞こえてきたもんだから急いで来ましたよ。ところでお二人が今日来てくれたバイトの子かな?

・・・あれ?ユキちゃんとセリカちゃんじゃないかい!?」

 

「こんにちは、黒柴のおじちゃん!タイミーから来た雪白ユキです!今日はよろしくお願いします!」

 

「知ってると思うけど、同じく黒見セリカです!よろしくね!おじちゃん!」

 

「こちらこそどうぞよろしくおねがいしますね。いやはやまさか見知った二人が来てくれるなんて、世の中なにがあるか分かんないもんだねぇ」

 

 

ボクもびっくりだ。アビドス商店街って聞いてたから、もしかしたら知ってる人もいるかもとは思ってたけど早速知り合いの人と出会うなんて。もしかしてセリカちゃんはこれを見越してボクにこのバイトを紹介してくれたのかな。ボクが安心して働ける様にって。うれしいな。

 

 

「それじゃ、時間は少し早いけど早速始めていきましょうかね。その分早く終わらせるから安心してくださいよ」

 

 

そう言って、黒柴のおじちゃんはティッシュ配りのやり方について教えてくれた。やること自体は事前にセリカちゃんに教わっていた通りだ。これならボクも何とかやれそう。

 

説明が終わると更衣室に案内され、用意されていたエプロンを着ることになった。無難なデザインだけど黄色く目立つ様な配色だ。

 

そうしてボクたちは今日配るティッシュが入った箱を持って、指定の位置についた。ここからボクの初めてのアルバイトが始まるんだ!なんだかわくわくしてきたかも!

 

 

「ユキちゃん、私が教えたとおりにやれば大丈夫だからね!教えたことは覚えてる?」

 

「うん!明るく元気に笑顔で!だよね?」

 

「そうよ!よく出来ました!ユキちゃんならそれが出来ていれば、大抵の人が立ち止まってくれると思うわ。ティッシュ配りは見向きもされないのが精神的に一番キツイからね…」

 

「ボク頑張るよ!全部配りきってみせる!」

 

 

気合いは十分だ。こっから時間がくるまで全力で配りまくろう。配置につき数枚のポケットティッシュを手に持つ。この場所は、人の少ないアビドスの中でも特に人が集まる場所だ。来る人みんなにティッシュを配ることが出来たら、ダンボールの中身は空っぽになるはず。

 

すると早速ボクの近くを通りすがる人が見えた。教わったことをちゃんと意識して声をかける。

 

 

「すみません!ティッシュいりませんか?」

 

「あぁ、遠慮しとくよ。ありがとうねお嬢さん」

 

 

ダメだった……。記念すべき一人目は失敗に終わってしまった。だけど無視されなかっただけマシだ。悔しいけどまだまだ始まったばかり。こっから頑張って配っていこう!

 

 

「すみません!ティッシュどうですか?」

 

「ありがとう。ちょうど欲しかったんだ」

 

 

・・・やった...!貰ってくれた!ボクの初めてのお客さんだ!誰かのために何かをしてお礼を言われるのってすごく嬉しいかも!なんだか楽しくなってきた!もっと頑張ろう!

 

 

「ティッシュどうですか?!」

 

「あらあら、可愛らしいお嬢ちゃんね〜。おひとつ貰うわぁ」

 

 

「ティッシュいりますか!?」

 

「ふふっ、ありがとうね」

 

 

「ティッシュいりませんか?」

 

「おっ、ありがとうな。嬢ちゃん頑張れよ!」

 

 

(───────嬉しい……!)

 

みんな優しい。ティッシュも貰ってくれるし、頑張れって応援してくれる。これなら最後まで上手くやれそう!やりがいってこういう事を言うんだろう。ボクが誰かを笑顔にしている。これだけでバイト代以上の価値がある気がする。

 

そうして昼休憩まで全力で配り切った。箱の中身は半分を下回っていて、この調子で配ったら想定よりも早く配り終わりそうだ。とりあえず今はゆっくり休もう。配ってる時は疲れは感じなかったけど、こうして座っていると思っていた以上に身体は疲れているみたい。

 

 

「ユキちゃんおつかれ〜」

 

「あ、セリカちゃん!おつかれさまです!」

 

「どう?初めてのアルバイトは」

 

「んー、なんかうまく言えないけど...楽しい!みんな優しいし頑張れって言ってくれるんだ!」

 

「そう!良かったわね。多分みんなユキちゃんの頑張ってる姿を見てくれてるのよ。私が遠目から見ててもユキちゃんすごく楽しそうだったしね」

 

「そんなに分かりやすかった...?」

 

「あははっ、それはもう誰が見ても丸わかりよ!初めてティッシュを受け取ってくれた瞬間、シュンとしてた尻尾がいきなり激しく動き始めたんだから!」

 

「・・・そうだったの...?」

 

「そうよ!そっからはずっとふりふりしてたわ。みんなユキちゃんの尻尾を見てたし」

 

 

恥ずかしい…!意識してなかったとはいえ、勝手に動いてたなんて...。だけどボク自身も尻尾を動かさないようにする方法なんてわからない。嬉しかったり楽しかったりすると無意識に動いてしまうんだから。

 

 

「まぁでも、無理に抑える必要は無いわ。ユキちゃんが楽しそうに配っていたからこそ、ああやってティッシュを貰ってくれたり応援してくれたりしたんだと思う。だからユキちゃんの好きなようにやりなさい」

 

「そっか。そうなんだ!そしたらまた午後も頑張るぞ!」

 

 

どうやら無理に感情を抑える必要は無かったみたい。ボクが自由にやっていればみんなティッシュを貰ってくれる。難しいことは考えなくてもいいんだ。

 

誰かの役に立てて嬉しい。そんな気持ちをずっと持っていれば、それだけで上手くいきそう。

 

休憩時間は始まったばかりだ。お弁当を食べて午後に備えよう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「よしっ!じゃあ午後も頑張ろっか?」

 

「うん!」

 

「ユキちゃん、セリカちゃん、一応終わる時間は決まってるけど全部配り終わったら上がって貰って大丈夫だからね。終わったらお給料を渡すから私に声をかけてくださいな」

 

「分かりました!」

 

「はいっ!それじゃあ行ってくるね!」

 

 

午後のアルバイトが始まった。お昼時を回ったせいなのか、午前の時よりも人の姿が多く見える。これだけ人がいたらすぐに終わりそうかも。バイトが終わったら初めての給料でアビドスのみんなに何か買っていってあげよう。今までのお礼を込めてお菓子とか買ってみようかな。

 

そんなことを考えているうちに、ボクの目の前を人が通りかかる。ボクはさっきのように声をかけてティッシュを配り続ける。時間が経つにつれて、ダンボール箱の中にあるポケットティッシュは段々とその数を減らしていく。

 

良い調子だ。最後のひと踏ん張り、元気を振り絞ってもっと頑張っていこう!

 

 

「ティッシュいかがですか!!」

 

「お、ありがとねぇ〜。ユキちゃん」

 

 

 

・・・・・ん?なんか聞き覚えのある声が聞こえてきた気がする。今貰ってくれた人を改めて見ると、見慣れたピンク色の髪をしたひと。

 

 

 

 

「───────ってなんでここにホシノおねえちゃんが!?」

 

 

「いやぁ、ごめんごめん。どうしてもユキちゃんがうまくやってるか心配になっちゃってさ〜」

 

「来てくれたのは嬉しいけど、セリカちゃんもいるし大丈夫だよ!ホシノおねえちゃんはボクのことを心配し過ぎだってば!」

 

「うへぇ、おじさん心配性だからさぁ。ユキちゃんのことになるとつい不安になっちゃうんだよね~」

 

「・・・ん...そっか。ありがと。でもボクが居る場所がよく分かったね?」

 

「・・・っ!!う、うへへぇ...そこはおじさんが持ってるユキちゃんへの愛情パワーで何とかしてみたり…なんて....」

 

「すっ、すごい!そんなパワーがあるの?!ボクもみんなのこと大好きだから愛情パワー使えるのかな!」

 

「つ、使えると思うよ~!ユキちゃんが持ってるスマホに力を込めればきっとね…」

 

「スマホ……?なんでそこでスマホが出てくるの?」

 

「まぁまぁ、細かいことは気にしないでさ~。おじさんもユキちゃんのこと応援してるからね!バイト頑張ってねぇ〜」

 

 

・・・・行っちゃった。何だったんだろう?来てくれて凄く嬉しかったけど、なんかモヤモヤする。愛情パワーってなんだろう?ボクにも使えるのかな?

 

スマホを使えばボクの位置が分かる特殊能力か…

 

確かにすごい能力だけどボクはあんまり使わなそうかも。今の話は一旦忘れてティッシュ配りに戻ろう。

 

ホシノおねえちゃんの顔を見たらみんなが恋しくなっちゃった。アビドス校舎に帰ったらたくさんホシノおねえちゃんに甘えよう。きっと褒めてくれるはず!

 

 

その後は特に何事もなくティッシュ配りを続けた。ホシノおねえちゃんが来てくれたのがいい気分転換になったみたいだ。疲れを忘れてダンボール箱が空になるまで働き続ける。最後のひとつを配り終えた後、身体の力が抜けてその場に座り込んでしまった。

 

この場所に座り込むのは良くないと思って、最初に入った建物の中に移動した。その中には誰も居ない。セリカちゃんはまだ配ってる途中なのだろう。

 

手伝いに行こうと扉に手を掛けた瞬間、勝手に扉が開いてボクはそのままの勢いで倒れ込んでしまった。

 

 

「うわぁっ!いでっ…」

 

「あっ、ごめんねユキちゃん!大丈夫!?怪我とかしてない…?」

 

「う、うん……。多分大丈夫だよ」

 

「本当にごめんなさい...外に出ようとしてたんだよね?何かあったの?」

 

「ボクの分が終わったからセリカちゃんを手伝いに行こうと思ってたんだ。帰ってきたってことはもう終わったの?」

 

「そうだったのね…。ありがとうユキちゃん。私の分はちょうどさっき終わったわ!」

 

「そっか!時間よりも早く終わったね!ラッキー!」

 

「そうね!お給料を貰ったら少しだけ商店街でも見て回ろっか?」

 

「うん!楽しそう!」

 

 

そうしてボクたちは黒柴のおじちゃんからお給料を貰い、ボクの初めてのアルバイトは無事終了した。その後はセリカちゃんの提案に従って、二人で商店街を散策した。

 

ボクはその中で、アビドスのみんなで食べるのに丁度よさそうなお菓子を初めての給料で買った。今まではみんなにお金を払ってもらっていたけど、自分で稼いだお金で何かを買うって良い気分だ。

 

みんなは喜んでくれるかな?隣にいたセリカちゃんはとても喜んでくれていたから多分大丈夫なハズ。

 

これからもバイトをしてお金をじゃんじゃん稼いでいこう。今まで僕に使ってくれていたお金をみんなに返してから、学校の借金を返す手伝いをしよう。ボクがみんなの為に出来ることはこれだけなんだから。

 

 

次はなんのバイトをしよっかな?

 

 

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