不幸な小狐は幸せを探す   作:うしさん

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独白②/そして始まる…

 

 

 

こんにちは。雪白ユキです。

 

今は保健室のベランダで一人、日向ぼっこをしています。

 

みんなはそれぞれやる事があるとかで学校に居ません。セリカちゃんが午後辺りにバイトから帰ってくるらしいです。

 

大反省中のボクはしばらくここで謹慎しています。特に誰かから言われた訳じゃないけど、色んな人に迷惑を掛けたから今は大人しくするしか無いのです。

 

 

 

・・・約束を破ってしまったあの夜、ボクは本当に最悪なことをしたと思う。

 

アビドスのみんなとの約束を破ってしまっただけに飽き足らず、ヒナちゃんにも途轍も無い程の迷惑を掛けてしまった。

 

間違ってボクのことを撃ってしまったあの時の顔は今でも夢に見る。ヘルメットが取れてボクの耳が、顔が次第に顕になるにつれて歪んでいくあの表情。風穴が空いてしまった身体を見て、苦しげに呻くあの姿。

 

ボクのせいであんなに辛そうな顔をさせてしまった。最初はあんな顔をさせる為に会いに行くつもりじゃ無かった。

 

ホシノおねえちゃんとゲヘナに行ったあの日、同じベッドの上で横になった時に見せてくれた幸せそうな顔をして欲しかった。眠れなくて辛そうだったからもう一度添い寝をしてあげたかった。ただ、普通にお話が出来れば満足だったんだ…

 

ボクはヒナちゃんが好き。あの長いふわふわとした髪が好き。ボクを見つめる鋭くも優しい瞳が好き。あたまを撫でてくれる優しい手付きが好き。抱きしめてくれる時のお日様の様な包まれる香りが好き。

 

ヒナちゃんにも直接伝えたけど、ボクはアビドスのみんなと同じくらいヒナちゃんが好きなんだ。

 

だから今回は、心の底から反省してる…。あの時の表情を思い出す度に消えたくなってしまう。だけどボクが本当に消えてしまったらみんなに心配をかけちゃうから、出来るだけ考えないようにしてる。

 

 

ボクが意識を失って目を覚ました後、三日ほどヒナちゃんとずっと一緒に居れたことはボクにとってもありがたい時間だった。ホシノおねえちゃんと離れるのは心細かったけど、ヒナちゃんがいてくれたおかげで幸せな時間を過ごせた。

 

少し時を遡ろう。あの時の時間はボクたちの距離をさらに縮めるきっかけになったんだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「それじゃ、おじさんはゲヘナの見回りに行ってくるね。ヒナちゃん、ユキちゃんをよろしく〜」

 

「うん、わかった。ありがとう、ホシノ」

 

「いやいや〜私のことは気にしないで大丈夫だからさ、ゆっくり休んでてよ」

 

「いってらっしゃい!ホシノおねえちゃん!」

 

「ユキちゃんは良い子にしてるんだよ?今度こそ行ってくるねー」

 

 

 

「「・・・・・。」」

 

 

ボク達に声を掛けてからホシノおねえちゃんはゲヘナの見回りに行ってしまった。なんでも、ヒナちゃんの抜けた穴を埋めるためにホシノおねえちゃんが抜擢されたみたいだ。

 

確かにホシノおねえちゃんはすごく強いから、風紀委員長であるヒナちゃんの代わりとしては適任かもしれない。

 

その場に残されたボク達二人きりの間に流れる空気は少しだけ気まずい...

 

さっき正面から「ヒナちゃんの事が大好き」なんて告白紛いなことをしてしまったばかりに、お互いに距離を測りかねている。さっきまで熱に浮かされたような勢いで話していたけど、時間が経つと気恥しさが勝ってきてしまった。

 

部屋が静寂に包まれる。さっきまでの気持ちが嘘では無いことも相まって、次の言葉が喉の奥につっかえて中々出てこない…

 

 

(なんて話し掛ければいいのかな…?ヒナちゃんも少し困ってるような顔してるし、とりあえず...)

 

 

「ごめんなさい!」

 

「ごめんなさい...」

 

 

「「・・・え?」」

 

 

(被った…?ヒナちゃんもごめんなさいって言った?なんでヒナちゃんが謝るの?)

 

 

「・・・ふふっ」

 

 

ボクが困惑してヒナちゃんの目を見ていると、唐突にヒナちゃんが小さく笑い声をあげた。なんの脈絡も無いけど、その顔はとても可愛らしいと思った。

 

 

「ふふっ、ごめんなさい。さっきまで普通にお話していたのに、二人きりになった瞬間静まるのは変よね。」

 

「ぼ、ボクもなんだか少し恥ずかしくなってきちゃった…」

 

 

どうやらお互いに同じような事を考えていたみたいだ。だけどこうして同じ考えを共有できた今、ボクたちのコミュニケーションを阻むものは消え去った。ここからはさっきみたいに普通に話せそう。

 

 

「ねぇヒナちゃん。ホシノおねえちゃん、大丈夫かな…?」

 

 

ふと口をついて出た言葉はホシノおねえちゃんに対する心配だった。とても強いっていうことはもちろん知っているけど、慣れない土地で一人歩き回る時の不安感はボクも知っているつもりだ。

 

ホシノおねえちゃんがボクと一緒だとは思わないけど、やっぱり不安になってしまったみたい。

 

 

「大丈夫。ホシノなら心配いらないわ」

 

「ほんとに…?」

 

「ほんとに、よ。彼女の強さは私もよく知ってる。ゲヘナの暴徒なんかに負けるような器じゃない」

 

「そっか。ヒナちゃんが言うなら安心だね」

 

 

風紀委員長のお墨付き。安心材料としては十分すぎるくらいだ。おかげで不安な気持ちが一瞬で吹き飛んでいった。変に力んだ身体が緩められて安堵のため息を大きくひとつ。ヒナちゃんにくっつきながらリラックスしていると、再びあたまの上から声が聞こえてきた。

 

 

「ユキはホシノのことが本当に好きなのね」

 

 

そんなの当然…

 

 

「もちろん大好きだよ!」

 

「ふふっ、知ってる」

 

 

「どこが好きかというと優しいところにあたたかいところ!それに強いところもかっこいいし、うへーって言いながらだらだらしてるところもかわいい!一緒にお昼寝をしてる時に撫でてくれるのも気持ちいいし・・・」

 

 

「わ、わかった。分かったから少し落ち着いて…」

 

「あ、ごめんなさい…。ヒナちゃんにもホシノおねえちゃんのいいところを知って欲しくって…」

 

「十分伝わったわ。私も随分とホシノの『あたたかさ』に助けられたし、ね」

 

 

やってしまった…。思わず興奮して話しすぎちゃった。どうやらボクは思っていた以上にホシノおねえちゃんのことが好きみたい。

 

 

「当然ヒナちゃんのことも大好きだからね!ボクは欲張りなんだ!」

 

「・・・っ!」

 

 

さっきも言ったけど改めて言葉にする。三日もしたらヒナちゃんとは離れ離れになってしまうから今のうちにたくさん甘えておかないと。

 

 

「あ、ありがとう。そう言ってもらえるのはすごく嬉しい。でも私なんかのどこが…」

 

 

「『私なんか』じゃないよ!!ヒナちゃんだって優しいしあたたかい!いっしょにいると落ち着くし髪がふわふわしててかわいいし、すごくいいにおいがする!!今だってこんなに心地いいのはヒナちゃんが隣にいてくれてるおかげだよ!あとは…」

 

 

「わかった…!ユキ!わかったからもうやめてっ…!そこまで言われると恥ずかしいわ…」

 

 

「え〜、まだまだあるんだけど…」

 

 

ヒナちゃんに思っていることを全部正直に言っただけなのに止められちゃった。ヒナちゃんの頬はうっすらと桃色に染められ、モジモジとしているように見える。

 

そんなに恥ずかしいかな?良いところが沢山あるのは素敵なことなのに。まぁヒナちゃんが恥ずかしいって言うのなら仕方がない。

 

するとヒナちゃんは頬を染めたまま、唐突にボクに目線を合わせてきて口を開いた。

 

 

「・・・そういうあなたもすごく可愛らしいわ。サラサラの毛並みにふわふわとした尻尾と耳はとても気持ちいい。人懐っこいところも騙されないか心配になるけど愛らしくて好きよ」

 

 

「────ん...!」

 

 

「それと……」

 

 

「ストップ!!やっぱり恥ずかしいかも…!」

 

 

「これで分かったでしょ?褒めてくれるのは嬉しいけれど、一気に褒められるのは恥ずかしいの…」

 

 

「あぅ…そうだね。もうしないよ…」

 

 

思っていたよりも恥ずかしかった!コレ!自分で言う時はなんとも思わなかったけど、言われる側になるとむず痒いような恥ずかしさが込み上げてくる…!もちろん嬉しいことに変わりはないけど限度というものがある。

 

・・・これからは気を付けよう…

 

 

そうしてボクたちはぽつぽつと会話を続ける。その内にどちらからともなく欠伸が出てしまい、そろそろ眠ろうかという話になった。

 

元々この時間はヒナちゃんの寝不足を解消するための時間らしい。今のヒナちゃんの顔には、一目見てわかる程に濃く疲れが滲み出ている。目の下の隈は深く刻み込まれ、見ているこっちが心配になるくらいだ。

 

 

「ねぇヒナちゃん、眠れそう?」

 

「分からないわ。だけどユキが隣に居ると何故だか眠れる気がする」

 

「そうなの?」

 

「ええ。なんだか不思議と意識が沈んでいくの。あなたのお陰よ。ありがとう」

 

「・・・えへへ。どういたしまして」

 

 

ヒナちゃんはボクにお礼を言いながらあたまを優しく撫でてくれる。そのお返しと言わんばかりにボクもヒナちゃんにぎゅっと抱きつく。

 

触れ合う身体は互いの熱を伝え合い、徐々に眠気を深めていく。ボクが役に立てているというだけで嬉しい気持ちになる。

 

そうしてヒナちゃんの瞼が閉じた事を確認して、ボクも眠気に抗うことをやめて目を閉じた。

 

 

「おやすみ、ユキ」

 

 

「おやすみなさい、ヒナちゃん…」

 

 

そこからただ一言だけ交わし、その後は静かな寝息だけが部屋に残された。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

ボクたちが目を覚ますのは毎回適当な時間だった。目が覚めてもやる事は特に無く、ご飯を食べたり二人でお喋りをしたりするだけ。だけどボクたちにとっては、このなんて事の無い時間が幸せだった。

 

何を話したかなんてほとんど覚えてない。それくらい大した事の無い会話。眠りから覚めた後、夢の内容を覚えていないのと同じだ。

 

夢から覚めた時は、楽しかった、幸せだった、怖かったみたいな曖昧な記憶だけが残る。嫌な記憶ほど残りやすいのはその通りだけど、それを忘れられる程に幸せな記憶で塗り替えてしまえばいい。

 

ヒナちゃんもボクと同じように楽しいとか、幸せだとか思ってくれてると良いんだけどな。思ってくれてるかな。そう思ってくれているならとても嬉しい。

 

気付いた時には、この幸せな時間はあっという間に終わってしまっていた。三日も一緒に居たのに物足りない気持ちになる。

 

まぁ、ほとんど寝たきりだったから仕方ないんだけど…

 

お別れをする最後の日、ヒナちゃんと連絡先を交換した。これでいつでもお話が出来る。ヒナちゃんがまた眠れなくなったら、ホシノおねえちゃんとゲヘナに向かう事も約束した。

 

ヒナちゃんの表情は三日前と比べてかなり変わった。目の下の隈は薄く、口元は柔らかく緩められ口角が少しだけ上を向いている。それを見てボクが役に立てたことを実感する。すごく嬉しい。

 

 

お別れの時には、ゲヘナの校門前でお別れのハグをしてさよならを告げた。ヒナちゃんが少し寂しそうにしていたのは見間違いでは無いことを信じたい。

 

だってボクはとても寂しい。三日も一緒に居ると、いざ離れた時身体の一部が欠けたような気持ちになってしまう。だけどヒナちゃんの居場所はゲヘナなのだ。しかも風紀委員会の委員長という立場。居なくなったら大変なことになるとセナちゃんから聞いた。

 

 

そんなこんなでアビドスに帰ってくることが出来た。

 

アビドスのみんなはすごく心配してくれたみたいで、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 

その日からまた少しだけ、みんなボクに対して過保護になった気がする。だからといって嫌では無い。それにこうなってしまった原因はボクの勝手な行動によるものだ。

 

何処かに行くにしても必ず誰かと一緒。そしてボクはバイトをほとんどしなくなった。

 

今やっているバイトはただ一つだけ。この間行ったラーメン屋さん。そこでセリカちゃんとバイトを始めた。

 

そこの大将はすごく優しい。ボクたちの事情は何も聞かず、セリカちゃんとシフトを同じ時間帯にしてくれている。

 

この事はみんなも把握している。反対されるかなって思っていたけどセリカちゃんが一緒なら、と了承してくれた。少しずつだけどまた借金のためにお金を貯めるんだ。

 

 

 

「・・・ん〜〜、ふぅっ」

 

 

色々と考えすぎて少し疲れた。長い間動かないで居たから身体を伸ばすのが気持ちいい。思い返すと、こうやって一人で物思いに耽りながらぼーっとするのも久しぶりかも。

 

相変わらず澄んだ空気に澄み渡る青空。ボクの悩み事なんか関係無いと言わんばかりに日差しが照り付けてくる。スマホの天気予報によるとしばらくはこの快晴が続くようだ。

 

モモトークの画面にはいくつかの通知が溜まっている。相手はナツちゃん。ちらっと内容を覗いてみる。

 

 


今日の夜ご飯のオカズなんだけど、

魚と月見大福で迷ってて

 

どっちがいいと思う?

 

 


 

 

・・・うん。どっちでもいいと思う。

 

ナツちゃんは定期的にこんな感じのよく分からない連絡をくれる。トリニティで出会ったスイーツ部のみんなとは、たまに連絡を取りあっている。

 

どんなスイーツを食べたとか、今日どんな事があったのかみたいな、日常のなんでもないようなことばかり。だけどあの四人のお話はとても面白いからこのモモトークがボクの密かな楽しみになってる。

 

またいつか遊びたいな。

 

 

「ユキちゃーん!ただいまー!」

 

 

「あ!セリカちゃん!おかえりなさい!」

 

 

いきなり保健室の扉が開かれ、セリカちゃんがただいまの言葉と共に午前のバイトから帰ってきた。片手にはビニール袋。中に何か入ってる。

 

ボクはセリカちゃんの声を聞いた瞬間嬉しくなって、すぐに駆け寄る。

 

 

「いい子にしてた?はい、コレお土産!お昼はもう食べた?」

 

「ううん、食べてないかも。いま何時だっけ?」

 

「今は十三時少し前くらいね。お腹空いたでしょ?一緒に食べよ?」

 

 

気が付いたらもうお昼をまわっていたみたいだ。そういえばお腹が空いている。いつもならお腹すいたら直ぐに気付くはずなんだけど、今日は少し考え事に集中し過ぎていたかもしれない。

 

セリカちゃんから袋を渡され中身を見てみる。

 

その中身は───────

 

 

「・・・あ!!おいなりさん!!」

 

 

おいなりさんだ!やったやった!ボクが好きって言ったやつ覚えていてくれたんだ!さすがセリカちゃん!

 

 

「ありがとうセリカちゃん!」

 

「ふふん、どういたしまして!喜んでくれたならよかったわ!」

 

 

いただきますをして早速ひとつ口に頬張る。ギリギリ口に入り切るサイズだから少し苦しいかも…

 

あ、やっぱり苦しい…

 

 

「ちょっとユキちゃん、頬張りすぎじゃない…?」

 

「・・・んん、んんぅ…」

 

「大丈夫…?ハムスターみたいになってるけど…。水飲む?」

 

「んん」

 

 

口いっぱいに詰まったおいなりさんを何とか咀嚼して、セリカちゃんから受け取った水を貪り飲む。好きな食べ物を目の前にすると、後先考えずに頬張ってしまうのはボクの悪い癖だ。直さないと。

 

 

「・・・ぷはぁっ!!ありがとうセリカちゃん…」

 

「あ、うん…。もっとゆっくり食べなさいよ?おいなりさんは逃げないんだから」

 

「うん、知ってる!ケーキも逃げないってこの前分かったし!」

 

「食べ物は基本逃げないわよっ!!?」

 

 

「きほん…?ってコトは─────!」

 

 

「絶対!!」

 

 

食べ物は絶対に逃げないらしい。そうしてセリカちゃんの午前中のバイトのお話を聞きながら、二人でおいなりさんを食べた。

 

そういうボクもこの後バイトに行く予定がある。昼過ぎの時間帯から日没くらいまでのシフトだ。セリカちゃんは午前のバイトからのハシゴ。本当にすごいと思う。

 

ボクだったら体力的にも気力的にもそんなに働くことは出来ない。働けて半日くらいだ。無理をすれば一日働けるけど、次の日にベッドの上から動けなくなってしまう。それにバイトの後半の時間になると、まともな思考が出来なくなる。

 

結局、一日働いた日はセリカちゃんにおぶって貰って帰った。文字通りお荷物みたいな存在になってしまった。

 

今はラーメン屋さんで半日のシフトを入れてもらってる。アビドスは人が少ないからお客さんもあんまり来ない。だけどあのお店は、人が少ないアビドスにしては結構来店数は多い方かもしれない。

 

安くて美味い。それに大将の人柄も相まってたくさんの人に愛されているのだ。セリカちゃんも看板娘として人気があるし、人が来るのは当然だ。

 

 

こんなことを考えている内に食べ終わり、二人でお喋りをしながら時間を潰しているとバイトに出発する時間になった。

 

今日も頑張るぞと気合いを入れて椅子から立ち上がる。

 

 

「それじゃ、そろそろ行こっか?」

 

 

「うん!」

 

 

必要なものだけを持ち部屋から出る。長い廊下を渡り外へと向かう。ボクたちはどちらからともなく自然と手を結び、互いの身を寄せ合い熱を感じられる距離を保っている。

 

ここ最近は誰かと外に出る時は必ず手を繋いでいる気がする。それが嬉しくないと言ったら嘘になる。ボクはみんなの温もりが好き。誰かが隣に居て欲しい。独りになりたくない。

 

アビドスのみんなに拾われてからそんなに時間は経っていないはずなのに、路地裏で生活していた頃がとても昔のように感じる。

 

独りぼっちだったあの時とは違う。今のボクには大切な人達がいる。その人達は、ボクだけの孤独な世界から外に連れ出してくれた。独りきりのままだったら知らなかったであろうものが沢山あった。

 

「喜び」「楽しさ」「幸せ」

 

知らなかった感情が次から次へと溢れ出てくる。穴の空いたパズルのピースのように、ボクの空っぽだった心の隙間にその感情が埋まっていく。幸せな感情で心が満たされて毎日が心地いい。

 

ボクは大好きなみんなと居られるなら何だってする。ボクに「幸せ」を分けてくれた分、みんなにも幸せになって欲しい。

 

ボクが傷付くとみんなが悲しむって分かったから危ない事は絶対にしない。ボクはもう既に、みんなの日常の一部になっているんだということを自覚しないと。

 

 

これから何がどうなるのかなんて誰にも分からない。

 

最近また新しいヘルメット団が学校に襲撃してくるようになった。

 

学校の借金もある。

 

だけど何だか、全てなんとかなるという謎の安心感だけは感じるんだ。

 

 

この予感が外れませんように

 

そう祈りながら今日もボクはバイトに勤しむ

 

 

 

「いらっしゃいませ!ようこそ柴関ラーメンへ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……私のミスでした。」

 

 

 

揺れる、揺れる…

 

ガタンゴトンと行き先の分からない列車は進み続ける。

変わりゆく車窓の景色に、何者も視線を向ける事は無い。

 

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」

 

 

列車の車両内には人の気配は無い。命があるのか、そこに存在しているのかどうかも曖昧な、夢まぼろしのような空間。

 

 

そこに居るのは血を流す少女。

車窓から差し込む日差しによる逆光。

 

何者かに語りかけるように言葉を紡いでいく。

 

 

「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて…」

 

 

 

「…今更図々しいですが、お願いします」

 

 

 

 

「───────先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次話からの構成を考えて書き溜めます。次回の更新日時は未定です。
更新が始まった時は暇つぶし程度の気持ちで見に来て頂けると嬉しいです。
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