不幸な小狐は幸せを探す   作:うしさん

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外の世界 ヘルメット団編
アビドス、時々小狐


 

 

 

アビドス地区。

 

 

そこは現在、砂の都となっている。

 

 

アビドス高等学校。かつてキヴォトスの中で最も長い歴史を持ち、全盛期ではキヴォトス最大規模の学園として名を馳せていた。

 

 

また、郊外に存在するアビドス砂漠のオアシスでは、「アビドス砂祭り」と呼ばれる大規模な催しが開催されており、他の自治区からも大勢の人が訪れるアビドスの一大名物であった。

 

 

 

それ等全て、もはや過去の栄光。今となっては何の意味もなさない名誉である。

 

 

その歴史を語ったところで生徒は戻ってこない。祭りを開催しようにも肝心のオアシスが枯れ果てている。

 

住人が戻らないのも必然のことだ。

どうしてわざわざ住みづらい場所に居続けるだろうか。環境に適応できなければ不便が付き纏うだけであるというのに。

 

 

 

もちろんこの全盛期のアビドス地区がただ寂れていった、なんてことはあり得ない。

 

それは、栄華を極めた王が一夜にして地に落ちるに等しい出来事だ。

 

 

このような状況になってしまったのにも訳がある。

 

数十年前のある時期を境にして頻繁に発生し始めた大規模な砂嵐が、『アビドス』という名の権威を失墜させた。

 

その影響でアビドスのシンボルであったオアシスは枯れ果て、学区の環境は全く変わってしまった。

 

急激に進む砂漠化に対処するために奔走していた学園は、多額の資金をつぎ込むも、事態は悪化の一途をたどり借金が膨らみ続けるという悪循環に陥ってしまう。

 

結果として残ったのは、好転しない状況に絶望した数多の生徒たちの退学届けと、人のいなくなった住宅街、そして気が遠くなるほどの借金であった。

 

 

 

 

 

 

そんなアビドス高等学校周辺の砂漠でここしばらく小競り合いが起こり続けていた。

 

自分たちの学園を守りたいアビドス生徒五人と、学校を占拠したい軽く二十人を超えるヘルメット団である。

 

 

晴れの日も雨の日もめげずに何度も立ち向かってくるヘルメット団を、五人は軽くあしらうように毎回蹴散らし追い返していた。

 

日に日に消耗する物資に加え、時折喰らってしまうダメージにそろそろうんざりしてきた頃である。

 

 

 

 

この日もまた、いつものように戦闘が行われていた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「シロコちゃん、そっちおねが~い」

 

「ん、わかった。」

 

そう返事を返し、シロコと呼ばれる生徒はドローンを操縦しながら敵の動きを搔き乱している。

 

彼女が操作するドローンから飛び出す弾頭はヘルメット団の後方を吹き飛ばした。それに動揺したヘルメット団の前衛を片っ端から銃を片手に肉弾戦で倒していく。

 

足を払うと同時に襟をつかみ地面に叩き落とす。次の敵に移る前にしっかりと銃を構え直し、とどめを刺す。

 

それと同じようなことを何回も繰り返すうちに、シロコの方の敵はほぼ倒れたみたいだ。

 

先程シロコに声をかけた生徒であり、アビドス高校の最年長であるホシノは、我が後輩ながらなかなか強くなったものだと戦闘中にもかかわらず感心してしまう。

 

 

(おじさんも頑張らないとな~)

 

 

後輩の活躍を目にした手前、自分も戦果をあげようと気合を入れ直して目の前の敵を視界に収めた。

 

彼女にとって大切な盾を構え敵の前衛に飛び込む。時には盾で薙ぎ払い、時には一瞬で距離を詰め腹部にショットガンを直接撃ち込む。

 

敵ひとりひとりは大したことないため、これだけで自身は特にダメージを負う事無く殲滅できる。

 

 

「ノノミちゃーん、残りはまかせたよぉ~」

 

 

残りわずかとなった歩兵を一網打尽にするためにホシノは声を上げ、もう一人の後輩にお願いをした。

 

 

「は~い♧ノノミ、いっきま~す!!」

 

 

その戦場にまるで似つかわしくない、ふわふわとした明るい声が砂まみれの戦地に木霊する。

ノノミと呼ばれた生徒はホシノの言葉に応えるように、自身が持つミニガンを掃射する。

慢性的な物資不足のために弾薬は節約しないといけない。その為、使用する弾薬は控えめになっているが、何故かとても楽しそうだ。

 

歩兵を殲滅し終えこれで残りは後ろに停車している装甲車だけ、と思い一瞬気が緩んだ瞬間、ホシノの視界には掃射で舞った土煙の向こう側でキラリと光る何かが映った。

 

 

何か嫌な予感がする...

 

今までの戦闘経験から感じ取った一際不気味な気配。無意識のうちに背筋がピンと張るような、視界が一点に絞られるような、そんな感覚。

ホシノは土煙が少しずつ晴れていくところを、全ての意識を集中させて観察する。なにが来るか今か今かと待ち構える。

 

次の瞬間ふと感じるぞわぞわとした寒気

 

 

 

(───────まずいッ...!!)

 

 

「セリカちゃん!!!避けて!!!」

 

「えっ!?ホシノせんぱッ…っ」

 

 

突然叫ぶホシノ。それに驚く暇もなく、戦闘後の余韻に浸っていたセリカは後ろに大きくのけぞって倒れていく。

 

(やられたっ!!よくも...!)

 

ホシノは怒りのままに急いでスナイパーのもとに向かおうとしたが、すでに装甲車で撤退をしており、追いつくことはできなかった。

 

残ったヘルメット団も、アビドス生徒たちがセリカの容体に釘づけだったため、気づいた時にはその場に誰もいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「セリカちゃん!!!」

 

「っ!セリカ!!」

 

「大丈夫ですか?!セリカちゃん!?」

 

 

戦闘が完全に終了し、四人が心配して倒れたセリカのもとへ駆け寄る。それぞれ心配そうな表情を浮かべ、焦燥を胸の内に抱えて走っていた。

 

 

「くぅぅ...!!痛ったいわねぇ!!またあいつにやられたわっ!!」

 

 

全員がセリカの元に集まった瞬間、倒れていたセリカは勢いよく上体を起こし、ぷんすかと怒りながら怨嗟の言葉を叫ぶ。

その様子を見た四人は、毒気を抜かれたような面持ちでホッと息を吐いた。

派手な倒れ方をした分かなり心配が募っていたが、想像以上に大事が無さそうだった為、大きな安堵が胸を満たす。

 

 

「セリカちゃん!じっとしていてください!今治療しますので!」

 

「あ、ありがとう。アヤネちゃん...」

 

 

アヤネが慣れた手つきでセリカの処置を始める。先程自身が失態を晒したことが余程恥ずかしかったのか、セリカは頬を染めながら控えめにお礼を言った。

 

 

「・・・ん。今回もまたやられた。悔しい。」

 

「そうですねー。あのスナイパーさんは一体何者なんでしょうか?」

 

 

するとセリカが治療されている様子を見ながら、シロコがふくれっ面を浮かべて思いの丈を口にする。それに対してノノミが同調するように疑問を呈した。

 

たしかに、ノノミの言うスナイパーは彼女たちがいつも一杯食わされる相手だ。どんな距離からでも狙撃してきて、その精度も半端ではない。今回は装甲車の中から狙っていたみたいだ。

 

同じような疑問を持っていたホシノは、いつもの冗談混じりにスナイパーの正体について言及する。

 

 

「あのスナイパーさえいなければ楽なんだけどねぇ。だれか姿を見たことあるよーってコはいる?おじさんは年でもう目が悪くってさぁ~」

 

 

ホシノは少しだけ嘘をついた。嘘とは言っても最後の冗談の事では無い。

本当はある程度姿を把握できてはいるが、本当にその人物がスナイパーなのか自分の目を疑っているからだ。もしあの小さな体躯であれ程の威力のスナイパーライフルを扱えるのなら、その人物は相当な実力者ということになる。

 

他に姿が分かるコがいたら認識をすり合わせることができるんだけど...

という意図からの質問だ。

 

 

「ん、わたし。さっき撤退する瞬間にすこしだけ見えた」

 

「おぉぉーさすがシロコちゃん!やるねぇ~」

 

 

すると真っ先にシロコが声を上げた。相変わらず表情は薄い。

ホシノはそれを聞いて、猫を可愛がるように大袈裟に声のトーンを上げて褒めてやる。

 

 

「ん!当然。おじさんのホシノ先輩と違って私はまだピチピチで若々しい⋯!」

 

「ちょ、ちょっとシロコ先輩...!何言ってんのよ!?」

 

 

表情が薄いというのは嘘だ。シロコは実際、表情豊かである。ただそれが周りから見たら判別しづらいというだけで。

辛い事があれば当然人並みに落ち込むし、嬉しい事があれば人並みに喜ぶ。

先輩に褒められたら、犬のように尻尾を振るかの如く喜ぶ。そして調子にも乗る。

 

 

「うへ…」

 

 

ホシノは胸の内に込み上げる感情をグッと堪えた。いつものシロコの迷言だと分かっていても少しだけくらうものがある。

 

 

「さ、早速どんな子だったか教えて欲しいな?」

 

 

上手く笑えているだろうか...?

そのような考えを胸に秘め、表情を必死に制御しながら話を進める為にシロコに問い返す。

 

 

「シロコ先輩!ホシノ先輩絶対怒ってるよ!!顔すごく引き攣ってるし!」

 

「セリカちゃん...!しーっ!絶対聞こえてますって...!!」

 

 

そんなホシノの内心などつゆ知らず、セリカは小声でシロコに詰め寄る。当然丸聞こえだ。それに釣られてアヤネも小声で口を挟んでしまった。

 

全てが聴こえてしまっているホシノは口角をヒクつかせながら笑顔を浮かべ続ける。

 

 

「ホシノ先輩なんか怒ってる?ん...なんかごめんなさい...」

 

「シロコせんぱーいっ!!それただ怒らせてるだけだって!!煽ってるだけだってぇー!!」

 

 

小声にする事で聞こえなくなるとでも思っているのか、セリカは変わらず小声で突っ込む。もしかしたらおバカなのかもしれない。

 

先程から全てのやり取りが聞こえていたホシノは、もうピキリと来たことなんてどうでもよくなってしまったのか、小さくため息をひとつ。そして話を本筋に戻した。

因みにみんなの一連の様子を、ノノミはにこにこと微笑みを浮かべながら眺めていた。

 

 

「いやいやぁ、全然怒ってないよー

それで、どんな子だったか覚えてる??」

 

「ん…ちっちゃかった」

 

 

ここまでは私と同じだ、とホシノは思う。ただこれだけではまだ足りない。少なくとも三つ、いや四つは欲しいところ。さらなる確証を得る為に、もう少し聞いてみる事にした。

 

 

「それでそれで〜?他にはある?」

 

「スナイパーライフルを持ってた。あ、それと髪の毛は白くて尻尾みたいなものもついてた。ヘルメットで顔は見えなかったけど」

 

 

それを聞いて疑問は確信に変わった。ホシノが見た小さな体躯のスナイパーは見間違いなんかでは無かったのだ。確かな実力を持った強者。手加減をしたらこちらの損害が大きくなるような相手にホシノの気は引き締まる。

 

 

「いやーありがとねぇ〜。おかげでスナイパーの正体が分かったよ」

 

「ん!どういたしまして」

 

 

ホシノはシロコにお礼を言うと、シロコは胸を張って役に立てたことを嬉しく思っている様子だ。

 

 

「実はおじさんも少し見えてたんだ。さっきみんなに聞いたのはおじさんの認識と同じかどうか確認したかったんだよねぇ」

 

 

しかしホシノが先程した質問の意図を語った瞬間、シロコの表情は途端に真剣なものに変化する。

 

 

「・・・ホシノ先輩....」

 

 

辺りは五人以外誰も居ない砂漠。微風で時折砂が舞う。

そんな状況の中、シロコは静かにぽつりと呼び掛ける。

 

 

「ん?どしたの〜?」

 

 

一瞬にして変わった雰囲気を疑問に思いながら返事を返す。

次に発される言葉はまるで誰にも予想できないものだった。

 

 

「ん。負け惜しみはよくな...」

 

「ちょぉーーっとシロコ先輩!!!?もう静かにしてなさいよ?!!!」

 

 

『負け惜しみはよくない』

あろうことかシロコが口にしたのは正に最上級の煽り文句だった。ホシノの意図を一切無視し、それを負け惜しみだと捉えてしまったのだ。

 

昔よく二人でやっていた勝負の延長戦とでも思っているのか、勝ち誇ったかのような物言いにホシノの感情は再燃する。

 

 

「・・・セリカの方がうるさい...」

 

 

しかし全てを言い切る前にセリカが大声で遮ったことにより、シロコは耳を前にぺたんと倒し、顔を顰めて苦言を呈した。

そしてホシノも気が削がれたのか、だらんと両腕を垂らしふらふらと校舎の方角へと歩き始めた。

 

(・・・しばらくシロコちゃんとの訓練は厳しくしよう)

 

そう心に強く誓いながら。

 

 

「さっ、厄介なスナイパーの正体もわかったことだし、みんな学校に帰ろっか」

 

場の流れを変えるために両の手をぱんぱんと叩き、みんなの意識を自身に向けさせ、帰路につきながら今後についての相談をしてみる。

 

「学校に戻ったら次の襲撃に備えて作戦会議でもやる?」

 

「賛成ですー♪」

 

「そうね!今度こそあいつを前線まで引きずり出してやるんだから!!」

 

「ん…ボコボコにする。」

 

「シ、シロコ先輩....あんまりやり過ぎちゃダメですよ?」

 

 

これが今の彼女たちの日常。

大変だけどなんとか楽しくやっている現状。

 

ホシノは思う。

これを壊されないように、襲い来る敵には容赦はしない。

みんなの事を傷付けかねないあのスナイパーは危険だ。

 

セリカちゃんとシロコちゃんが言うように、自分たちの前に引きずり出すことが出来たらキツめのお灸を据える必要がある、と。

 

 

ホシノは密かに恨みを募らせながら眼を鋭く光らせ、心の中でひとり呟いた。

 

 

 

───────覚悟しといてね

 

 

 

 

 

***

 

 

 

一方その頃

 

 

場所は変わり、アビドス地区に位置するとある公園。そこには公園を見下ろすほどに巨大な木が生えている。

 

その木の下には一匹、いや一人の小狐がぼろぼろの格好で倒れていた。

 

身体に合わない大きなシャツを着ていて、膝上辺りまで裾で隠れている。

 

シャツは砂や泥、あとは血液だろうか、と思われる赤黒いシミで染まっており、元のシャツの色が分からなくなっている。

 

シャツの裾から覗く脚は小枝のように細く、明らかに健康状態にない人間の脚だと分かる程の異常さである。

 

 

さらに足には布を巻いていたと思われる形跡が見られるが、足の裏は布が擦り切れ一切残っていない。

 

足の裏を守るものが無くなったことで、小狐の足裏は酷く傷つき肉まで抉れてしまっているようだ。

 

 

そのような感じで傍から一目見たら、死んでるのではないかと思えるくらいにはぼろぼろだった。

 

 

 

何の因果かそのような場所に二人組がやって来てしまった。

 

彼女たちはヘルメット団の一員である。アビドスを主な拠点としており、アビドス高校を占領しようと最近は活発に活動している。

 

 

「いやー今日も暑いな〜」

 

「それなぁ。砂漠化し過ぎて気温も上がってんじゃない?知らんけど」

 

「んで、結局どこ行くよ?今日は。団の他のメンバーは今頃アビドス高校と派手にやってるとこだろうから、あっち方面以外で。」

 

 

どうやらこの二人は、本日は非番のようだ。ヘルメットを外しており、制服姿で歩いている。

 

ようやく公園の入口を通過し、陽の光を避けるため木陰へと歩を進める。そこで二人の目には衝撃の光景が目に入る。

 

 

「んん〜あっち方面以外となると⋯ってアレ...ん??おいっ!あれ見ろ!!」

 

「なになに急にどしたんおまえ?...えっ?なんだ!?あれボスか?!死んでるのか?!!」

 

 

やはり二人の目にも死体に見えてしまったようだ。勝手に死んだことにされかけてる二人のボスにも憐憫の情が沸くが。

 

二人は急に現れたボスに似た死体モドキに軽くパニックを起こしている。

 

とりあえずソレに駆け寄り、様子を確認する。

 

 

「おい!ボスじゃねーぞ!!どーするよこの狐っコ!」

 

「どうするもなにもまず生きてるか確認しよう!」

 

「呼吸は薄くだけどしてるっぽい!脈も多分あるかも!」

 

「全部曖昧じゃねーか!!そんなんじゃ生きてるか死んでるか分かんねーよ!!シュレディンガーの狐だよ!!」

 

「プフッ...お前面白いこと言うな........ぐへっ」

 

「笑ってる場合か!このバカ!」

 

 

傍から見ると全く緊迫した状況に見えない。

 

ヒト一人が死にかけているというのに。

 

そんなやり取りをしているうちに小狐の身体は、自分の周囲の喧騒に反応し始める。

 

 

「…んん....うぅん...」

 

「あ!!今動いたぞ!」

 

 

笑顔でもう一人に向かって話しかける。

 

 

「その言い方だと腹に子供がいて喜んでるやつみたいだからヤメロ。」

 

 

ここにきて冴えわたるツッコミのキレである。

 

ヒト一人が死にかけているというのに。(二回目)

 

 

「とりあえず起こすぞ!」

 

「わかった」

 

 

ここでようやく意識を覚ましにかかる。ここまで長かった。

 

 

「おい!大丈夫か?!起きろ!このままじゃ死ぬぞ!!」

 

 

肩を叩きながら大声で呼びかける。だが、反応はない。

 

諦めずに再度呼びかける。

 

 

「死にたくなければ目を覚ませ!!さもなくば起こすぞ!!」

 

「お前、自分で何言っているか分かってるか?」

 

 

脳みそを経由しない呼びかけのおかげか、再び少し反応を見せる。

 

しかし、相変わらず起きる気配は見えない。

 

 

「はぁ...起きないな...」

 

「そうだな。それにしてもコイツ、本当にボロボロだな」

 

「起こす場所がよくないんじゃないか?一回うちらのアジトに連れ帰ってボスに相談してみるか?」

 

「あー確かにそれはアリかもな。バカのくせにいいこと言うじゃん。」

 

「バカ?バカって誰の事言ってんだ?もしかしてわたしのこと?」

 

「もしかしなくてもお前だよ!!はぁ...なんかすごく疲れた......ねぇそいつ、背負ってもらっていい?」

 

「まかせたまえ」

 

 

どうやら彼女らは自分たちのアジトに小狐を連れて帰ることにしたようだ。

 

若干頭の弱い方が小狐を背負い、アジトへと歩き出す。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

歩くこと数十分。ようやくアジトに到着した。

 

到着したころには、アビドス高校に戦闘に行っていたはずのメンバーは全員戻っていたようだ。

 

今回も敗走したらしく、みな同じようにぼろぼろだった。しかし、最後の最後に彼女らのボスが相手のうちの一人に一発入れることができたらしい。

 

 

またいつもと同じような感じか、と非番だった二人はすぐに状況を飲み込む。

 

 

 

だが、逆に二人を除くすべてのメンバーが状況をうまく飲み込めていなかった。

 

 

非番の二人のうち、一人の背で眠っている人物に視線が集まる。

 

メンバーの一人が我慢できずに説明を求めた。

 

 

「なぁ、二人とも今日は非番だったよな?何がどうなって後ろにいるやつを拾ってくることになったんだ?」

 

 

先ほどあったことを一から伝える。

 

 

「デカい木のある公園で倒れてたんだ。最初は見た目がボスっぽかったから焦ったけど全然顔とか違った」

 

「起こそうとしたけど全然起きないし、ボロボロで死にそうだったから拾ってきたんだ。」

 

「ボスに似てる?ちょっと見せてみ」

 

 

それほど興味を示していなかったメンバーも、それに喰いついて近寄ってくる。

 

背から小さい身体を降ろし、みんなに見えるように横たわらせる。小狐は力なく、ぐったりとしている。

 

 

「ほれ。身体の特徴とか似てるだろ?ちびっこくて、白い長髪に白い尻尾」

 

 

「・・・だれがちびっこいって?」

 

 

「だれって、そりゃぁ...」

 

 

 

その言葉が放たれた瞬間、場の空気は一気に凍っていく。ヘルメット団員の顔が一斉に引き攣る。

 

 

「ひぇぇぇ!!ボス!!!いたんですか!!???」

 

「あ?小っちゃくて見えませんでした...ってか??」

 

「いやいやいや!そんなわけないじゃないですか!!ただボスがさっきまでどこにいたか分からなかっただけですって!」

 

「・・・ずっとお前の目の前にいたが...?」

 

 

「・・・・・・・・すみませんでした。」

 

 

「・・・で?こいつが私に似てるって話だけど...たしかに似てるかもな。顔とか耳とかは違うみたいだけど。」

 

「そうなんですよ...!ボスは猫耳だけど、こいつはでっかい狐耳!お顔もボスの方が眉とか目がキリッとしてるけど、こいつは若干垂れ気味!つまりボスの方がカッコいいっス!!」

 

 

「そんな話は聞いてないっ」

 

「あぅっ」

 

 

少し照れながら団員の額に向かって、ジャンピングデコピンが炸裂する。

 

この技は、密かにボスの得意技だったり。

 

 

それはさておき、何か思いついたのかボスの顔にだんだんと悪い表情が浮かび上がる。

 

 

「ククッ...もしかしたらこいつは使えるかもな・・・」

 

「ん?なにを思いついたんですかボス??」

 

「後で全員に教えてやるから楽しみにしとけな。話はこいつが目覚めてからだ・・・」

 

 

そう言葉を残し、武器や装備の整備に取り掛かる。それを見た団員も各々整備に移っていく。

 

 

 

小狐はその場に残され、小狐の目が覚めるまで誰も近寄らなかった。

 

 

 

 

 

 

そして話は、目が覚めた後へと移り変わる

 

 

 

 





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