モーグウィン王朝
王朝設立のため、ミケラを攫いに聖樹へと向かう血の君主モーグ。そんな彼を一人の純血騎士が止めようとしていた。
「モーグ様。ミケラを攫う計画。おやめになってくれませんか」
「その話はすでに済んだはず」
「どうしたというのです。貴方らしくもない」
「私は彼が恐ろしいのです。あれはすべてを魅了する怪物です」
「ええ。わかっていますよ。ですが、彼は聖樹にて眠りについています。大丈夫でしょう」
「それが罠の可能性があるのです!!」
「罠だとしても。王朝設立のため、ミケラの確保は避けられません。確保するなら今しかないでしょう」
計画に実行前にぐずりだした純血騎士。そんな彼女をモーグは理性的な意見でもって説得していった。その顔は理性的な意見とは反対に熱を帯びていた。
駄目だ、説得できない。モーグ様がミケラに魅了され、彼の計画に利用される。そのことを知っていた俺はミケラがモーグに接触を図ってきた時から、計画を止めようと活動していた。
最初は上手く妨害することができた。だが、ミケラは俺がモーグ様との接触を妨害していることに気づいたのか。彼の騎士団を利用し、俺の妨害策の悉くを潰した。その結果、モーグ様と接触されてしまった。そこからは本編通り。モーグ様はミケラの思想に感銘を受け道を同じく出来ると。彼を自分の伴侶にしようと画策しだした。
もう、モーグ様がミケラの聖樹へ向かうのを止めることはあきらめるしかないのだろう。ここからは事前に決めていた最終策を打つしかなかった。この策が失敗すれば、もう王朝の崩壊を防ぐことは叶わない。俺はそう決意を決め、彼にあるアイテムを渡すことにした。
「モーグ様。もう出立することは止めません。ですが、最後に。これを受け取ってはいただけませんか」
「これは……」
「必ずお使いになってください」
幸い、アイテムを渡すことができた。モーグ様は渡されたアイテムを確認すると、そのアイテム渡した意図を理解したのか。俺の頼みに了承してくださった。王朝を出立し聖樹へ向かうモーグ様。俺はその後ろ姿を最後まで見ていた。アイテムが機能することで願いながら。
────-聖樹エブレフェール最下層──────-
モーグは聖樹を警備する騎士たちをかわしていき、遂に聖樹に最下層に辿りついた。最下層の花畑から聖樹とその聖樹に張り付いた繭が見えた。モーグは聖樹から繭を剝がし、中にいるであろうミケラを取りだすために繭を切開していった。
やがて、完全に繭も剝がし終え。繭の中のミケラと対面した。ミケラは目を瞑っており、意識を失っているだろうことが推測できた。安全を確認できたモーグはミケラをその手に抱え王朝に帰還するため、来た道を引き返し始めた。
「モーグ。貴方には私の目指す優しき律、その律を打ち立てる計画に協力してもらいます」
モーグの手に抱えられたミケラ。彼は意識を持っていた。彼は素早くモーグの手から抜け出すと、手をモーグの顔に手を添え、魅了した。
エルデンリング本編。本来の歴史では、モーグはここでミケラの手によって成すすべもなく魅了される。そういう運命だった。だが、その運命は一人の純血騎士によって、変えられることとなる。
「……なっ。この光は」
突如モーグの体が光を発しミケラは吹き飛ばされた。謎の衝撃によって空中を彷徨うミケラは体勢を整え地面に着地し、モーグを確認すると。
「お初にお目にかかります。ミケラ様」
「私はモーグ様に仕える騎士の一員。純血騎士サングリアと申す者です」
「我が主のため。貴方の計画。阻止させていただきましょう」
モーグの傍には一人の純血騎士の霊体が立っていた。
俺は純血騎士になってから、モーグ様をミケラの魅了から防ぐためその手段を探してきた。
そして、それは一度訪れた影の地で見つかった。それは影の地に住む土着の民族角人が作るアイテム角飾りである。角飾りには霊性が宿っており、その霊の願いによって装着者に何かの耐性を与えていた。俺はそこからヒントを得た。
影の地で角飾りの製法を学び、ミケラの魅了に対抗する手段として角飾りを作った。自身の角を素材にして魅了に対抗することを願いながら。
出来た角飾りには俺の魂が宿っており、一回だけ魅了を代わりに受けてくれるという効果を持っていた。
最終手段として、俺はその角飾りに血の指でサインしたものを王朝を出るモーグ様に渡していたのだ。
「モーグ様。お気は確かですか」
「ええ。まだ、魅了は抜けきっておりませんが」
どうやら、ミケラの魅了を完全に防ぐことはできなかったが減衰することには成功したらしい。顔には大量の冷や汗を浮かばせていたが、受け答えからは正気が感じられた。
「私が前衛を努めます。モーグ様には援護を頼みます」
「わかりました。魅了には警戒してください」
そこからは、魅了に警戒しながらモーグ様と二人がかりでミケラと戦った。彼は光輪などの祈祷で応戦してきたが、流石に二人を相手にするのにはきつかったのか追い詰められていった。そして、遂に二人の戦技と祈禱をまともにくらい地に付した。
「では、ミケラ。今度こそ、貴方を気絶させ。王朝に連れ帰らせてもらいましょう」
地に付したミケラに止めの一撃を食らわせようとモーグがその手に持つ大槍を振りかぶった瞬間。
「血の君主、モーグ。ミケラ様に近づくな!!」
針の騎士レダによる攻撃が。獲物を仕留められると油断していたモーグの背中に突き刺さった。攻撃を受けたモーグには一瞬の隙ができたしまった。その隙を、ミケラが見逃すはずもなく。
「血の君主、モーグ。私と共に行きましょう」
──────HEART STOLEN──────────
ミケラによってモーグは魅了されてしまった。
針の騎士のたった一手。それが圧倒的に優勢だったモーグ陣営を劣勢に変えた。
「モーグ様ー!! 魅了に等負けてはなりません。自分を取り戻してください」
そこからは勝負にならなかった。魅了されたモーグがミケラ陣営に加わり純血騎士は追い詰められていった。
「……くっ。必ずやお助けします」
やがて、騎士の霊体はモーグの槍に貫かれ。最後にそう言い残すと霊体は消えた。
しばらくの間、ミケラは消えた霊体がいた場所を眺めていた。彼は再起動するとレダもとへ歩みを進め。
「先ほどはありがとうございました。レダ」
「私は計画実現のため、王朝へ向かいます。この計画は誰にも露見してはなりません。ですから、貴方の先ほどの記憶は消させてもらいます」
先ほど礼を伝え、彼女の記憶を消した。
──-モーグイン王朝──ー
そこには、一人の純血騎士が息を切らした騎士が他の純血騎士たちに囲まれていた。彼女を取り囲む騎士たちは皆一様に緊張した面持ちだった。
「モーグ様を救う。突然そうおしゃられ。モーグ様の下へ向かわられましたが。何か不足の事態があったのでしょうか」
このまま。彼女を見ていても仕方ないと。一団を代表して、アンスバッハは彼女に問いかけた。
「モーグ様がミケラに魅了されてしまった。私の力不足のせいだ……」
「一体何があったというのです。詳しく説明していただけますかな」
「もちろんです。私は……」
彼女の返答に尋常ならざる事態が起きたことを把握したアンスバッハ。彼は王朝の全純血騎士たちを集めさせ、彼女に説明を求めた。
彼女はミケラの聖樹で起こったこと。その全てを彼らに伝えていった。
「王朝にミケラとその騎士団が攻めてきた」
「何故かは知らないが、ミケラの横にモーグ様もおられる」
彼女の説明を聞き、純血騎士たちがその胸に様々な思いを抱いた。そのとき、王朝の警備をしていたものが帰ってきた。
警備の話を聞いた一同。彼らはどうするのか話し合い。やがて、王朝を守ることとモーグの尊厳を取り戻すことが満場一致で決まった。
そして、武器を構え戦いに打って出ていった。
「貴方は先ほどの戦いで満身創痍でしょう。暫くはここで、安静に」
「もし、私たちが負けたならば貴方だけでも逃げてください」
俺も参戦しようとしたが、もう戦う体力が残っていないことを見抜かれてしまい待機を命じられてしまった。
戦いにでる彼らを見送ると、体力の限界が訪れたのか。激しい頭痛に襲われ、俺は気絶した。
「久しぶりですね。角人よ。私は真実の母。貴方に話があってきました」
「事態は急を要します。貴方の主君を救うため、私の話を最後まで黙って聞いていただけますか」
「わかりました」
「では、結論から言います。貴方には神を目指してもらいます」
「……はい?」
真実の母から伝えられた内容は衝撃的なものだった。
どうやら、俺が血綬の儀を受けた時から俺の素性を疑っていたらしく。彼女は俺に与えた祝福を通して俺の体を調べ上げていたそうだ。その結果、俺が角人たちの呪いに女王マリカの分け身が混ざった存在であることが判明した。
女王マリカの神格が混ざった俺はデミゴットといえ、神人候補である。俺が望むのならば神になることも可能だそうだ。
「ここからが本題です。モーグを魅了したあの幼子が向かうであろう影の地。その地に存在する螺旋を描く塔の頂上。神の門で角人の儀式を行い、神になりモーグを王として取り返してください」
「もちろんです。私が彼を必ずや連れ戻してみせます」
「では。私が影の地に行けるように祝福をします。敵は貴方の傍に迫ってきています。目覚めたらすぐにかの地へと向かってください」
俺はその言葉聞き、夢の世界から現実へと戻った。
目覚めると、俺は王朝の祭壇の上にいた。景色を確認すると、昇降機付近の道を進軍するミケラ一行が見えた。防衛線は突破されたのだろう。アンスバッハを含む純血騎士たちが無事ならいいのだが。彼らへ思いをはせ、影の地に向かう決意を固めた。
そして、視線をミケラ一行の横を歩くモーグ様へと移し彼に向って高らかに宣言した。ミケラへの皮肉を込めながら。
「我が王よ、必ずや貴方を取り返す。その時こそ、真の王と神に」
その宣言は遠くのモーグ様には聞こえていないはずだった。それなのに、モーグ様は笑っていた。
そして、笑っていた口が動いていくのが見えた。
「お待ちしております」
そう言っているようだった。
俺は影の地への移動を開始した。
景色を見れば、目の前の草原と遥か彼方に在る影樹が映った。
俺は影の地へ再び訪れた。
魅了の角飾り(消費)
かつて、純血騎士サングリアが血の君主へ贈った品。
一度だけ、魅了を防ぐことができる。