──鎮めの塔────
「目的地に着いたぞ。我が半身。狭間の地、そこで全ての死んだ魂が集まる場所。鎮めの塔に」
「ここに。モーグ様の魂が」
「ああ、そうだ。モーグ様はこの場所の何処かにいる」
王朝で褪せ人が影の地へ向かうのを見届けた俺は。王朝で拾ったヴァレーを引き連れ、新王朝に帰還した。かねてより考えていたある計画をヴァレーに伝え、協力を取り付けた。俺は指揮権をヴァレーに移し、計画実行のため。一人、鎮めの塔に訪れた。
「先ほど、ヴァレーから連絡が入った。褪せ人はもう塔の街に訪れている。時間はない。あの計画を始めるぞ。私がここで死んでモーグ様の魂を探す。基本的に出られないと思うが、何かあれば呼んでくれ。ミケラ一行との接触は任せた」
「了解だ。武運を祈る。モーグ様を必ず、取り返そう」
塔の頂上で、もう一人の自分と最後の挨拶をすませ。懐から刀を取り出し、腹に突き刺した。腹から勢いよく血が流れていき、命の灯が消えていく。
ドスン
自身の血で出来た血の沼に倒れ伏した。やがて、魂は俺の体からこの塔に吸われていった。
「モーグ様。どこにいらっしゃりますか。純血騎士サングリア。再びの貴方の下にはせさんじましたー!!」
さあ、捜索開始だ。
「いつまで、続くんだ。この道は」
魂になって、鎮めの塔に入り込んで数日。俺は未だ、塔の内部を歩いていた。どうやら、塔の内部構造は大きく違っていたらしく。肉眼で視界に捉えていた塔より、遥かに巨大だったようで。複数の階層に別れ、その階層を螺旋階段が繋ぐ構造だった。そして、その階層は地下世界にまで広がっていた。
「なんだ。これは……」
螺旋階段を下り。塔の最下層まで辿り着いた俺の視界には巨大な樹が映った。樹は何処か、異質だった。色は黄金樹の金色でもなく、ここ。影の地に生える影樹の黒でもない。影と光。二つを混ぜ合わせたような灰色で、薄暗く発光し辺り一帯を照らしていた。
あまりにも、異質だ。それに、何故か。樹から死の香りがする。
「少し、調べるか」
地下世界に生えていた謎の灰色の樹。その樹から発せられる死の香り。それが気になった俺は、樹の外周を回り樹の全体の大きさを測り。その内部を外周から内側へと調査していった。
「待っていたぞ。弟の騎士よ」
「……な。貴方は。それに、モーグ様まで」
樹の中心部。そこには。黄金の王子、ゴットウィンと樹の中心に吊るされたモーグ様がいた。
「先ずは自己紹介をしよう。俺の名前はゴットウィン。初代エルデの王、ゴットフレイと黄金律の女王マリカの子だ。お前と話しがしたく、ここで待っていた。俺の頼みを聞いてくれれば、そこにいるモーグの魂を渡そう」
「話は聞きましょう。ただし、その前に。モーグ様を解放していただけますか」
「いいだろう。だが、渡すのは後、俺の頼みを聞いてもらってからだ」
ゴットウィンは脇にモーグ様を抱えながら、俺にそう返答してきた。
「頼みとは?」
「そう、頼みだ。とはいえ、簡単なものだがな。お前の計画。それを少し変更してくれ」
「……! 何故。私の計画を」
「俺は影の地、狭間の地。その両方に死の根を張り巡らさせている。死の根は両方の樹から、死者となった者たちの記憶を吸いあげる。そうして、習得した記憶の中にお前たちの計画に関するものがあったのだ」
「なるほど、理解した。計画を変更内容は」
「お前の計画では、ミケラが神に成る前に襲撃。そして、モーグの遺体を取り返す。そうだったな」
「……」
「だが、それを取りやめて。ミケラを一度、神にしてほしいのだ」
「……わかった。約束しよう。モーグ様を返してくれ」
「もちろん。返そう。だが、その前に」
「……つぅ。これは……」
「死の根だ。保険のようなものだ。約束を守ってくれれば、消滅するようにした。また、会おう」
ゴットウィンから、モーグ様を受け取り。伸ばした手を引っ込めようとしたとき、手を握られ。死の根を生やされた。ゴットウィンはそれに満足したのか。別れの言葉をいい、霧状になって去っていった。
「約束を破れば、死ぬ。なんとまあ、重い制約を受けたものだ」
面倒な縛りを受けてしまったものだ。これで、神となったミケラを倒さなければならなくなってしまった。仲間たちとあって、計画を見直さなくては。
「だが……」
だが、モーグ様の魂は回収できた。希望が見えてきた。早く、体に戻ろう。
「おーい。もう一人の俺。モーグ様の魂は回収した。呼び戻してくれ」
「……計画は上手くいったようだな。了解だ。今、角降ろしをする」
「そうでもない。少しアクシデントがあってな。計画は一部変更だ」
「なに。まあいい。取り敢えず引き上げる。戻ってから説明してくれ」
「ああ、もちろんだ」
俺は相棒に合図を送り、影の地へ。舞い戻った。
────影のアルター──────
「やあ。君か。同志たちには、出会ったのか? ……きっと、驚いたろう。彼らは、出自も何もバラバラで」
「……お前か。よい時機に現れるものだ」
帰還した俺は影のアルターで針の騎士レダと角人の傍にいた。どうやら、計画は上手くいったようだ。褪せ人は二人と会話している。
「……そこの騎士は?」
「ああ、あの男か。彼はミケラ様が魅了され、新しく一行に加わった同志だ。アンスバッハ殿と角人殿の知り合いらしい」
会話の中。褪せ人が疑問に思ったのか。俺について、レダに質問していた。レダの返答に満足したのか、褪せ人は頷きを返し。近づいてきた。
「……やあ。褪せ人殿。新しく同志となった。角の戦士サングリアだ。共にミケラ様のため、頑張っていこう。私は戦技、祈祷を少し使えてな。教えて欲しい時は、声をかけてくれ」
「ぜひ、教えてほしい。先ずは戦技から頼む」
「了解だ。戦技からだな」
褪せ人は戦技や祈祷を習得できると目を輝かせて、早速教えを請いて来た。指導しているうちに、だいぶ打ち解けることができた。
ミケラの同志たち。彼らとも仲良くしていこう。ミケラの大ルーンが壊れ、魅了が解かれる。その時まで。