影の地の純血騎士   作:王朝万歳

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フロム新作、NIGHTREINどんな感じだろうか



信仰の始まり

 ────────ーボニ村──────────

 

「母も、愛する妻も、幼い我が子も。皆、焼き払われた。串刺し公、メスメルに」

 

 ミケラの魅了が解け。正気を取り戻した角人。彼はミケラの魅了が解け、影のアルターに訪れた褪せ人と針の騎士レダ。二人の同志たちが自身の粛清を計画しているのを察知し。彼ら、同志たちと別れ。ミケラの魅了が解けたことで、塔、故郷、愛する家族を焼き払った串刺し公メスメルへの憎悪と復讐心。一人を思い出し。それらを再認識するため、一人、故郷のボニ村に訪れていた。

 

「やはり、ここはいつ来ても酷いな。未だに、辺りから肉の焦げたような悪臭がする」

 

 村へ訪れた角人は、村の中を歩いていく。村一帯から、焦げた肉の香りがしており。建造物はすべて、炭化するほどまでに焼かれ。村人たちは槍で串刺しにされていた。それらを一通り見て回り、角人は入口に戻っていく。自身の内に眠る、復讐の炎に薪がくべられたのを確信し。

 

「俺の予想では、あの角の戦士を名乗る男。いや、女か。ここで待っていれば、あいつが来るだろう」

 

「おお! 鍛冶屋のおっちゃん。まだ、生き残ってたんだな」

 

「今の俺は鍛冶師ではない。復讐者だ。……おまえは壺師か。よく襲撃に生き残ったな」

 

「ああ、こいつらのおかげさ。メスメル軍の連中が残党狩りで、また襲ってきたんだが。こいつらが殿を担当してくれて、俺たちが逃げる時間を作ってくれたんだ」

 

「そうか。こいつのおかげか。信仰先は違えども感謝する。同族よ」

 

「礼には及ばない。角人殿。彼らは一度、蠅人になりかけた我々を村人として、再び受け入れてくれた。そんな、彼らを。メスメル軍の魔の手から守るのは当然だ」

 

 角人は村の入口に戻り、同志たちの一員、角人の戦士を待っていると。メスメルの戦火から生き残ったのか。村人の一団が戻ってきた。中には見知った顔の壺師もいる。壺師の男が一団の後ろで、警戒している男たちを指差す。指差しされた先、そこには肩から四対の蠅の羽の生え、赤い角を生やした角人達がいた。角人が彼らに礼を伝えると、礼には及ばないと断られた。

 

(これも、あいつの功績か)

 

 村人を守ってくれた。彼らをみながら、これから来るであろう。一人の純血騎士を角人は思い浮かべる。数年前、角人がメスメル軍に故郷を焼かれ。復讐のため、鍛冶師として復讐の刃を打ち上げていたころ。角人の老婆から、街へ呼び出され。ある騎士にこの地を案内せよと命じられ、角人は影の地を案内することになった。なんでも、騎士は角人の勇人になりたがっているらしく。修行のため、各地にいる角の戦士に稽古をつけてもらわなければならないらしい。

 

「なぜ、俺が。同じ角人とはいえ、黄金樹の民の案内など。誰か他の者に頼め」

 

「お主はいま、復讐に燃えておるな。それも身を焦がすほど」

 

「それの何が、悪い」

 

「悪くはないとも。婆も同じさ。ただ、あんたの復讐心は底抜けだ。復讐を完遂することはない。きっと、あの串刺し公を殺しても。あんたは止まれない」

 

「……」

 

「復讐は何処かで止まらなければならない。区切りのない復讐は、もはや災害と同じ。あの姦婦マリカの所業と同じじゃ。天は見ておる。族滅したならば、それは一族の呪いとなる」

 

「ならば。ならば、どうすればいいというのだ!! この憎悪と復讐心は!!」

 

「目的を持て。我ら角人にとって、救いのある目的を」

 

「我らを焼き払った、塔の逆賊たち、その首魁、メスメルを討ち滅ぼし。その復讐心を抑え、王たるものに託せ。一族の救済と共に。今から、あんたに紹介するのは角人の希望足りうると私が判断した奴だ。あんたが、もし少しでも王たるを託せると思ったなら、力を貸しておやり」

 

「いいだろう。納得はしていない。それに、今から紹介される奴が、王たる者とも思えないが。案内役の任は引き受けよう」

 

 角人は老婆からの命令に、他の者に頼めと断りを入れその場から去ろうとした。だが、角人の老婆から自身の復讐心を指摘され黙ってしまう。老婆は気づいていたのだろう。角人が同族の誰よりもメスメル含め、黄金樹勢力へ復讐心を抱いていることを。続いて老婆から、言われた。我々を裏切り、滅ぼしたマリカと同じ所業を成すのかという言葉に角人は衝撃を受けてしまった。角人がこの煮えたぎる復讐心をどうすればいいのだと老婆に尋ねれば。老婆から、王たるもの探し、託せと言われた。角人は納得はできなかったが、老婆の言葉にも感じるところはあったため。一度、案内役を受けることにした。

 

「どうも、貴殿が角人殿だな。私は純血騎士サングリア。今は修行中のため、角の戦士を名乗っている。よろしく頼む」

 

「ああ、俺が角人。この度、おまえの案内を頼まれたものだ。よろしく」

 

 老婆の命令で、塔の街ベルラートの入口で、角人が老婆から案内を頼まれた者を待っていると。老婆の紹介で訪れたのは、赤と黒の布地に金の刺繡が施された服を着た一人の女の角人だった。後から聞いた話だが、王朝の正式な服装らしい。

 

「早速だが。案内を進めていこうと思う」

 

「よろしく頼む」

 

 老婆から頼みを引き受けた角人だが。復讐心は消えたわけではない。早く、案内を終わらせ、復讐の刃を鍛えねばと考え、目の前の女の案内に取り掛かった。

 

「ここが、エンシスの城塞だ」

 

「酷い、あまりにも。奴らに慈悲はないのか」

 

「メスメル軍か。迂回するぞ」

 

「いや、待て。角人殿。あそこに市民がいる。助けよう」

 

「つっ。ちっ、分かった。助けるぞ」

 

「ありがとう。同族たちよ。おかげで子供たちも逃げ延び、無事じゃ」

 

「礼には及ばない。なあ、角人殿」

 

「見ておけ。角の戦士。これが蠅の病だ。絶対に罹患者に触るなよ」

 

「……蠅の病か」

 

 角人の案内で、影の地の各地を回っていった。メスメル軍の村人への襲撃、蠅の病の流行、助けた村人たちの移住先への案内。訪れた土地では、様々なことが起きた。

 

「少しついて来てくれ。最後の個人的によりたい場所がある。よし、着いたぞ。ここが、ボニ村。俺の故郷だ」

 

「ここが、ボニ村」

 

 角人、個人がよりたい場所があるというので。後ろを着いていくと、角人の故郷、ボニ村を紹介された。

 

「幼子、妻、母。すべて焼き払われた。女王マリカが仕向けた、あの逆賊、串刺し公、メスメルに」

 

「そうか、何とまあ。酷い話だ」

 

「ああ、そうだろう」

 

「だが、この村の風習の陰惨さをみれば。粛清されるのも少しは理解できる」

 

「なに、理解できるだと。おい、それはどういう意味だ」

 

「言葉通りだ。巫女を壺の材料にするなど。正気とは思えん。恨まれて当然だ」

 

「なに、壺作りは名誉ある仕事だ。恨まれるなど……」

 

「貴殿は鍛冶師をしていたのだろう。ならば。思考は一般よりだ。ほれ、仮面はとってやったぞ」

 

「つううう。やめろ。返せ」

 

「返さない。答えを聞くまでは」

 

 ボニ村の紹介をしていく角人。彼は同行者にメスメルの非道を訴え、同意を得ようとした。だが、同行者からは共感も得られたが、指摘を受けた。自分たちの習わしは陰惨であり、恨みを買ったのではと。その言葉に反論しようと、角人が彼女の方へ振り替えると、身につけていた毛虫の仮面を取られてしまった。これにより、仮面の効果である幻覚作用が奪われてしまい。角人が心の内に秘め、目を逸らしていた。自身の復讐心の正当性に直面することになった。

 

「……」

 

「……確かに。一族は恨みを買った。だが、罪なきものまで殺し。族滅するまで、殺すことが正当なのか。俺には納得できない」

 

「そうだな。私もそう思う。それに、マリカは私に同じ仕打ちをしている。角人のことは本来責められるものではない」

 

「どういうことだ。マリカが何か、お前にしたというのか」

 

「ああ、角人殿が。自分について話をしたんだ、こちらも話そう。俺は……」

 

 仮面を外され、錯乱していた角人だったが。やがて、落ち着いたのか。自身の心情を吐露していった。旅の間、聞けなかった。角人の本心が聞けたので。俺も自身の出自、それに目的を伝えた。

 

「はは、なんとも。まあ、酷い話だな。女王マリカもまた、復讐の螺旋に堕ち、自身の子や民を迫害し。あまつさえ、自分に降りかかった呪いさえも、お前に移したというのか」

 

「だろう。角人殿」

 

「それでも、お前は同志たちと愛ある世界を目指すのか」

 

「ああ、モーグウィン王朝に愛よ、あれ。だからな」

 

「一つ聞きたい。王朝は角人にも優しいか」

 

「もちろん。モーグウィン王朝は弱者を救済するための王朝だからな」

 

「はは、そうか」

 

 話を聞いた角人の表情は何処か。晴れやかだった。その日は夜も遅かったため、お互いに眠ることにした。

 

「角人殿、聞いてくれ。蠅の病。何とか出来るかもしれない」

 

 翌日、角人は朝早くから起こされ。谷底にいる蠅人の下へと案内させられた。谷底には蠅の病に罹り、蠅人になった者、背中から羽が生え蠅人になりかけていた者たちがいた。サングリアはそんな彼らに近づいていき、彼らを手刀で貫いた。

 

ドクン、ドクン

 

凶行に驚いた角人だったが。更に驚くことになった。

 

バン、バン、バン

 

目の前で、手刀を受けた蠅人から爆発が起きたのだ。角人は幻視した。同族の角人の魂を貪る蠅たちが、赤い血炎によって燃やされていく様を。

 

「儂は一体?」

 

爆発が収まると、羽の生えた一人の角人がいた。

 

「何をした?」

 

「蠅の病は魂に根ずく病。ゆえに霊体を燃やす血炎の力が聞くかと考えたんだ。まず私が…」

 

角人の質問に。同行者はなぜ治療できたのかを説明していく。どうやら、同行者が信仰している神の祝福によって、蠅の病は治療を可能にしているらしい。

 

「どうです。素晴らしいでしょう。真実の母、モーグウィン王朝は」

 

(王たるものに託せ、そして、角人に救いを)

 

(こいつになら。任せられる)

 

角人の頭に、老婆の言葉がよぎった。そして、目の前で病から救われた角人たちに囲まれながら、彼らに対して布教活動を行う同行者に願った。

 

「どうか、一族に救いを」

 

こうして、辺境の地。ボニ村を始めに。真実の母を信仰すれば蠅の病に罹らなくなると。末端の新しい信仰として、角人の間で真実の母への信仰が始まった。

 

 




ボニ村

大壺師たちが神事として、巫女と罪人を混ぜ合わせ、罪人を清めようとする
悪習をもった村。その悪習故に、村はメスメルの火によって焼きつくされた
今は少しの村人と蠅の病から救われた角人が住んでいる。彼らは今日も信仰する。
メスメルの火、蠅の病。それらから自分たちを守ってくれる真実の母を。
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