──────────影の城──────────
「フレイヤ殿はアンスバッハ殿に言っていた。”次は戦場で会いましょう、アンスバッハ殿。その時は、弓もいいですが、鎌をお持ちください”と」
「ハハ、褪せ人殿。フレイヤ殿はそうおっしゃられていましたか。あの豪傑はきっと恐れなど知らないのでしょうな」
ミケラの魅了が解け、かつての主への忠誠を思い出した、老兵アンスバッハ。彼は何者かの手によって、ミケラの元へ持ち出されたモーグの遺体。その遺体を、ミケラはどうするつもりか気になり。保管庫で手がかりを掴むため、石板を解読していた際に、褪せ人と出会い。褪せ人が見つけた、秘儀の巻物から。ラダーン将軍復活のため、自身の主の遺体が王の依り代として、使用されることを知った。ミケラの目的を知った、アンスバッハは石板の解読に難航していたフレイヤに手紙を送り、ミケラの真意を教えた。そして、褪せ人が言付った、フレイヤからの返答に、心動かされ。その胸中では迷いが生まれていた。
「アンスバッハ殿、貴方を排除する。私は恐れてしまいました、貴方のその迷いを。その迷いが、いつか、ミケラ様を害することを」
「……このような老人まで、粛清とは。レダ殿、貴方らしい、念の入り用です。ですが、私は迷っています。抵抗させてもらいましょう」
「褪せ人殿、貴方も酔狂な方だ。こんな、老人の迷いに付き合うなど。ですが、これで勝ちの目も見えます。貴方の助太刀に、感謝を」
その迷いを感じ取ったのであろう、レダはアンスバッハの粛清に訪れ。今度は、レダの敵対者として現れた、褪せ人との共闘によって、撃退された。元の世界に帰っていく、褪せ人。
(ようやく、決心が着きました。弓は彼に、託すとしましょう)
主の尊厳、己の純血騎士としての誇り。それらから神と相対する覚悟を決めたアンスバッハは、先ほどまでの、レダとの戦いで使用していた。長弓を褪せ人に託し、別れた。
「久しぶりですね、アンスバッハ殿」
城を去っていく、道中。橋の上で、懐かしい。かつて共に純血騎士として、モーグ様に仕えていた同僚であるマリカに似た風貌の角人と出会った。
────ーモーグウィン神王朝────────ー
「ここの広場など、我らがモーグウィン王朝に似ているでしょう。下には、白銀人、血鬼、真実の母を信仰している角人彼らが住んでいて。彼らの地で、沼を作っています。そして、この先の祭壇には、我らが主、モーグ様の祭具を模した大槍が置かれていて……」
「この地の紹介はありがたいのですが。そろそろ、本題について、話してはくれませんか。モーグ様を復活させる件について」
影の城で、角人を城の上層へ向かわせるため。レダと褪せ人の足止めをした俺は。城の橋で、戦いで受けた傷を癒していた。最初に出てきたのは、角人だった。城から出た、彼は私に礼をいい。鍛冶師として、俺に仕えることを伝え、”傷を癒すのに使え”とぬくもり石を設置し去っていった。
ぬくもり石で、体力を回復した俺はもう一人、会おうと思っていた人物であるアンスバッハ殿と再開するため。保管庫への橋を渡っていた。そこで、上から昇降機が下りてきて。アンスバッハ殿と再開した。今は、この数年間で、塔の街、ベルラートの地下に。影の地の新しい王朝として造り上げた、神王朝モーグウィンを紹介していたところだ。だが、アンスバッハ殿は道中で軽く触れた、モーグ様の復活についてが気になったようで、説明を求められたため。俺は祭壇の前に立ち、モーグ様を蘇らせる計画を語っていった
「勿論説明いたします。アンスバッハ殿、角人の秘儀については知っておられますか」
「知っています。影の城、保管庫で秘儀の巻物を見つけましたから」
「ならば、話しは早いですね。先ずは、このロープに繋がっている魂を見て頂ければ……」
「魂をですか。私は霊呼びの才能はあまり得意ではないのですが。しかし、何かこの魂には? 親しみを覚えるような……」
「っ。まさか、この魂は!?」
「はい。モーグ様の魂です。未だ、眠りについておられますが。必ずお目覚めになられましょう。私は、ミケラからモーグ様の肉体を取り返し。秘儀によって……」
「なるほど……。貴方の計画がわかりました。我が主、モーグが戻るというのなら、私も貴方の計画に協力しましょう」
ミケラによって、モーグ様、それに王朝の仲間たちを奪われ。影の地に辿り着いて、数年。かねてから計画していた、ミケラからモーグ様の体取り返し。秘儀による、蘇生の試み。その計画を、アンスバッハ殿に打ち明けた。反対されるかと少々警戒していたが。杞憂だったらしい。アンスバッハ殿は快く、計画を受け入れてくれた。
「ああ、よかった。アンスバッハ殿に賛成していただけてうれしく思います。次に、ミケラの同志たちについては……」
モーグ様についての話は終わり。続いて、ミケラの同志たちについて、話すことになった。
「彼らの相手は、私に任せていただけますかな。フレイヤ殿、彼女との約束がありましてな」
「それは……」
できない
話し合いの中で。アンスバッハ殿から、同志たちとの戦いは自分に任せてほしいと頼まれた。聖樹エブレフェールでミケラと針の騎士レダの手によって、君主を奪われたあの日から。その敵を取りたいと、願って続けていた俺にとって。その頼みは受け入れずらいものだった。
「主の敵を取りたい、貴方のその思いも理解しております。ですが、どうか、同志たちとの戦い、私に譲ってはいただけませんか」
「……」
「分かりました、アンスバッハ殿。同志たちの相手は貴方に頼みます。私と王朝の民の分も戦ってきください。私はその間、ミケラへの対策を講じておきます。時が来たらお呼びください」
だが、アンスバッハ殿の切実な願い。それを見て。俺は主への復讐、その一歩目となる。レダとその同志たちとの戦いを彼に託すことにした。
「勿論です、サングリア殿、貴方に感謝を。彼らとの戦いでは、再び鎌を持ち、純血騎士として望みたいと思っています。同志たちと矛を交える前に、昔の感覚を取り戻すため。リハビリとして、一戦付き合っていただけますかな?」
「もちろん。付き合わせてもらいましょう。私も昔の戦い方を思い出したいので。それに、成長した自分を見て頂きたいので」
「老人の錆取りですので、お手柔らかに頼みますよ」
「ハハ、ご冗談を。そんな柄ではないでしょうに!!」
モーグ様についての話は終わり。続いて、ミケラの同志たちについて、話は進み。同志たちはアンスバッハ殿が相手し、俺はミケラに対抗する策を講じることになった。議論が終わると、アンスバッハ殿のリハビリで、一戦交えることになった。戦っていくごとに、アンスバッハ殿の動きは良くなっていった。俺もかつて、純血騎士としての戦っていた感覚を取り戻していき。影の地で、鍛えた角人としての力と真実の母から受け取った血の力。二つの力を自分の中で昇華していくことができた。
「貴方に、感謝を。これならば、問題ないでしょう。では、私はあの塔に向かいます」
「アンスバッハ殿、ご武運を。私も後で合流します」
戦いが終わったころには、広場は血と折れた針の山にあふれていた。アンスバッハ殿の腕はすっかり、純血騎士として、狭間の地に、その狂名を轟かせていたもの、遜色ないほど磨き上げられていた。彼の武運を祈り、俺もミケラの対策に移った。
────石棺の大穴────────
「トリーナ様。どうか、どうか。声をお聞かせください。あのお方の言っていたことは、本当なのですか」
「……」
「お願いします。トリーナ様、声を。貴方の声をお聞かせください。そして、あの褪せ人の言葉が、嘘だと否定してください」
「……」
「……」
「…………」
青海岸を抜け、大穴の底でトリーナと再会したティエリエ。彼は褪せ人から伝えられた、トリーナの言葉を必死に否定しようとしていた。眠り続けるトリーナの真意を尋ね続けるが、その返事が返ってくることはない。
(トリーナ様ならば、自身が犠牲なっても、ミケラ様を止める)
やがて、ティエリエの胸中で。トリーナの姿が浮かんでいき、その幻が訴えかけてくる。”ミケラを止めて”と
(わかりました。トリーナ様。私はあの方の言葉を信じてみます。……私はミケラ様を殺します)
声は聞こえずとも、トリーナ様ならば。どうするか考え、褪せ人の言葉を信じ。ティエリエは大穴を登っていく、あの塔にいるであろう、ミケラを殺すため。
……去っていくティエリエの姿を。聖女は微笑みながら見送っていた。
────────影の地、各地────────
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影の地の地下から、伸びた死王子の根がミケラの十字に触れ。
刻まれた言葉が、心に浮かぶ
「我が最初の肉体を、ここに棄てる」
「我が肉体を削り、ここに棄てる」
根はその血肉を吸い、成長していく。
「我が左腕を、ここに棄てる」
「我が肉体を削り、ここに棄てる」
やがて、大樹となるために。
「我が心臓を、ここに棄てる」
「我が瞳を、ここに棄てる」
十字に影が差す。
「我が肉体を削り、ここに棄てる」
「我が右腕を、ここに棄てる」
影は十字を被い、光を隠していく。
「我が迷いを、ここに棄てる」
「我が肉体を削り、ここに棄てる」
光は消え、蝕まれる。
「我が最後の肉体を、ここに棄てる」
「我が愛を、ここに棄てる」
「全ての恐れを、ここに棄てる」
そして、光は消えた。
「トリーナ様、私はミケラを討ちに行きます」
死王子の根は進み、花となった聖女に絡みつき、取り込んでいく。
全ては、根の主が王となるために。
日蝕の時は近い。
モーグウィン神王朝
影の地で、新しく建造されたモーグウィン王朝。
塔の街、ベルラートの地下に建てられてえおり、そこには血鬼、白銀人、角人などの複数の種族が住んでいる。各々の種族が、自身の血で、その地を満たしており。
白銀の凝血で満ちた、白銀沼などがある。
その沼の血は、黄金樹から拒絶されており、聖杯瓶による回復を阻害する。