───────エニルイリム、清めの間────────
「レダ殿、ダン殿。その同志たち。一時とはいえ、貴公たちには世話になったな」
「せめて、安らかに眠るといい」
エニルイリム、清めの間。褪せ人たち、レダたちが激戦を繰り広げた戦場跡。そこに力尽きている、ミケラの同志たちに。一人の純血騎士が供養の言葉を告げ、彼女が王朝で自ら育てた血のアマリリスを献花していっていた。
「よし、これで全員分。終わったぞ。忌み子の俺」
「ありがとな。角人の俺」
最後の同志、レダの献花も終え。騎士の独り言に。その独り言に騎士が答える。騎士は顔を男と女の半分ずつに分け、それぞれが順繰りに会話していた。
「同志たちの供養は同意できるが。針の騎士、レダ。彼女の供養までする必要があったのだろうか。彼女はミケラと共に、モーグ様を……」
「分かっている。レダの働きはミケラによるモーグ様洗脳の一助になった」
「そうだ。彼女のせいで……」
「ミケラの魅了にかかり、彼女たちと共に影の地を旅をした。そして、彼女たちの掲げる理想や信念を知った。いや、知ってしまった」
「だからだろう。レダの行いに対する怒りも胸の内に燃えていようとも。せめて、自身の信じる理想と信念のために戦った。彼女たちの死を弔ってやりたかった」
「はぁー。……確かにな」
角人としての人格がレダを供養したことに対し。苦言を呈する。それに対して、忌み子の人格が自分の思いを吐露する。忌み子の人格の言葉に、角人の彼女は深いため息の後に同意した。
同じ体を共有しているゆえに、同志たちを弔ってやりたいという角人の願いを。彼女も角人の彼に比べ、薄いながらも持っていたから。
「アンスバッハ殿と合流するとしよう」
騎士は最後にそう言葉を残し、その場を後にした。
──────エニルイルム、神の門前────
「褪せ人殿、もう少し待っていただけますかな」
「ミケラへの対策を講じ、彼女が、こちらに来ると思いますので」
「彼女? まあ、分かった。なら、もう少し待つとしよう。だが、あまり時間はないぞ」
「ええ、承知しております」
……いったい、誰が来るというのだろうか。同志たちとは肩をつけたはずだが。いや、アンスバッハ殿は純血騎士であったな。であれば、その時の旧友だろうか
まあ、何にしても。罠などではないだろうし。今更、怖気づいたために、時間を稼いでいるわけではないだろう
「褪せ人殿。貴公に勝利を。我が血に懸けて」
神の門前に辿り着いた時。モーグの死について、黙っていたことを耐えかねた。褪せ人がモーグは自分が討ちとったことを伝え、交わしたアンスバッハとの会話を思い浮かべ。一瞬、頭の中によぎった考えを首を振り否定した。
「褪せ人殿、彼女が来ました」
アンスバッハから、待っていた人物が来たことを知らされ。褪せ人はアンスバッハの方へ振りむく。
「遅くなってしまい、申し訳ありませんな。彼女が、私が待っていた人物です」
「久しぶりですね。褪せ人殿」
振り向いた先では、アンスバッハに連れられ、赤い衣装を纏った見覚えのない騎士が立っていた。
「久しぶり? お前とは初対面のはずだが」
「な、ああ、そうか、装備を変えたから。気づいておられないのだな。ならばこれで分かりますかな」
面識のないはずの騎士から、再会の挨拶に。褪せ人は疑問を呈したが。騎士はどうやら、その反応に驚いたが。その後、合点がいったのか。目の前の騎士は兜を脱ぎ棄て、懐から仮面を取り出し、それを脇に抱えた。
「その仮面。まさか、お前は」
「おお、気づいてくださりましたか」
褪せ人の脳裏に一人の人物が浮かび上がった。
そう、レダの粛清で、敵対することになり。その命を落としたと思っていた人物。角の戦士が。
「お前は角の戦士なのか」
「はい。忘れられたかと心配しましたが。そのようなことはなかったようで。魅了が解けた今は純血騎士サングリア。そう呼んでいただければ幸いです」
「レダの粛清で死んだかと思っていたが。生きていたのか」
目の前の角の戦士、改め純血騎士サングリア。彼女が生き延びていたことに、褪せ人は驚きの声を上げた。
「まあ、何とか。命からがらですがね。深手の傷を負ったため、今まで休んでいた次第です」
「それは……すまなかったな」
「いえいえ。まあ、私もあそこで待ち構えていました。正当な決闘と呼べなくもないでしょう。私は気にしておりません」
「それに、当事者である角人殿も。復讐を手助けしてくれた礼として。褪せ人殿が粛清を共謀し、自身を暗殺しようとしていたことには目をつむると言っておりました。私がそのことで貴方を責めることはないでしょう」
「そうだったのか」
……だから、彼女が生きていたのに。角人は親切だったのか
「よく来たな。褪せ人、俺はここで鍛治師として働くことにした。もう、俺が戦うことはないだろう」
「偽りの主であろうと、かつては同じ主を掲げる同志だった縁だ。受け取れ。ついでだ、武器も鍛えていくといい」
一度、角人に会いに塔の街へ訪れた際。角人からそう告げられ、彼の装備と古龍岩の鍛石×5を受け取った記憶が思い出される。
「しかし、角の戦士殿が女だったとはな。声からして男だとばかり」
「あー。まあ、そう思うのも仕方ないかもしれませんね」
褪せ人は騎士の顔見ながら、自分の勘違いしていたことを伝えた。始めに顔を見せられた時には、ピンとこなかった。目の前に映る女騎士と同志、角の戦士とが合致せず。
確かに、両者には角が生えているという共通点があるが。それ以外は声も体格も違っているように感じられたゆえに。まあ、体格に関しては前の鎧が大きめであったとも考えられるが。顔はイメージとは違ったが何処か見覚えがあった。
褪せ人の言葉に、一瞬。角の戦士が微妙な顔をして。そう言葉を返した。
……女なのに男だと思われていたと知れば、そんな顔もするか
「ごほん。二人ともお話の最中に悪いのですが。サングリア殿、例のミケラに対抗するための策、考えだせましたかな」
「はい。アンスバッハ殿、角人の老婆の協力のおかげもあって、無事に編み出せました」
「!!」
「それは重畳。角人の老婆へも感謝を伝えなければ。丁度、褪せ人殿もいらっしゃることです。私はティエリエ殿を呼んできます。揃ったら、貴方の策を教えてください」
「了解です」
会話の最中であったが。ミケラへの対策案を聞きにアンスバッハがこちらに来た。そして、彼女の対抗策を編み出せたという返事に喜び。ティエリエを呼んで、会議することになった。
「お久しぶりです。角の戦士殿。いや、純血騎士サングリア殿。本当にミケラ様、あのお方への対抗策があるのですか」
「ああ、ある」
「全員揃いましたな。では、サングリア殿。かの神人ミケラへの対抗策、お教えください」
「はい。アンスバッハ殿。ミケラへの対抗策だが……」
ティエリエが到着し、神と王との戦いに望む有志たちが揃った。アンスバッハから解説が促され、彼女が口を開き。彼女が発案したミケラの対抗策がこの場にいる全員に共有された。
「……ということです。理解していただけましたか。お三方」
「ええ」
「何となくだがな」
「私もなんとか」
どうも、打倒ミケラを志す俺だ。今は同じ目的の同志たちに、俺の考えたミケラへの対抗策を伝えたところだ。アンスバッハ殿は理解しているようだが、他二人に関しては不安だ。
……まあ、何となく理解しているのなら大丈夫だが。実際、理解しづらい話はしているからな。取り敢えず、このことだけは伝えておかねば
「兎に角、霊体となっているであろうミケラをラダーンの体から引きはがすので。それまでの時間稼ぎをお願いします」
「「「了解した(しました)(です)」」
やることが明快になったのか。今度は三人共、返事が良かった。
「では、策も決まったことです。褪せ人殿、合図を」
「ああ、三人とも準備はいいか!!」
「ええ、いつでも!!」
「今でも恐ろしいですが。私も覚悟はできました!!」
「もちろん!!」
褪せ人の掛け声に。アンスバッハは鎌を、ティエリエは調香瓶を掲げる。俺もそれに倣い、手に持った大剣を掲げた。
「いくぞ!!」
そして、俺たちは霧をくぐる褪せ人に追従していった。
*純血騎士サングリアのイベント
神の門前で、アンスバッハと会話して一度祝福で休むと発生する。
レダのイベントによって、角の戦士と敵対していたとしても起こる。
会話を進めると同志であった角の戦士が兜を脱ぎ棄て、素顔を露わにする。
そして、アンスバッハと同じ純血騎士であることを明かされる。その顔はとある女王に似ている。