影の地の純血騎士   作:王朝万歳

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シャー!!新章開始!


影の地編 後半
黄金と月の因縁


 神の塔。神の門。ラダーン討伐の祝勝会を終え。勝利の熱狂が収まった褪せ人たちは今後の進展を話していた。

 

「アンスバッハとサングリアは、モーグの敵討ちでミケラに挑んだだったな。この後はどうするんだ?」

 

「モーグ様の敵を取る。あの影の城で、私が決意した目的は果たし。もう、やり残すこともなく、後は余生を過ごすのみ」

 

「そう考えておりましたが。彼女と、この地で再会して、やりたいこと。いえ、やり残したことが生まれました。私はもう少し、この地に残り。活動したいと思っています」

 

「そういうわけで、褪せ人殿。私もここに残る」

 

 褪せ人の質問に。アンスバッハとサングリアは、しばらくここに残ると答える。

 

「やりたいこと? 以前、共に調べた地下墓の調査か?」

 

「いいや、それとは別件だ。だが、そうだな。話しそびれてしまっていたな。丁度いい、話させてもらおう」

 

「褪せ人殿は、狭間の中心地。鎮めの塔を知っているか」

 

「ああ、知っている」

 

「実は、私は以前、私用で向かった際に。かの死王子とあったのだ」

 

「……! 根ではなく、本体にか」

 

「ああ、本体にだ。そこで、私は呪いをかけられ。彼の動向が気になり、探っていた」

 

「そして、あの地下墓で調査した結果。死王子はこの地で活動している痕跡を発見した。奴はこの地で、これから何か起こすつもりだろう。警戒しておいたほうがいい」

 

「そうか。警戒しておこう」

 

 やりたいこと。その答えに、褪せ人は以前、調べた地下墓を想起し。彼女に尋ねたが、別件だった。ただ、話題にあがったことで、その事を思い出した。彼女から聞かされた話には驚かされた。なんと、かの死王子。黄金のゴットウィンがこの地で動いていたのだ。

 

「死王子はいつ動くと思う」

 

「塔で会った時。確かあいつは……」

 

「そうだな。彼はミケラの動向を気にしていた。ミケラが去った今、すぐにでも動くかもしれない」

 

 死王子がいつ動くか聞けば。すぐにでも、動き出す可能性を示唆された。

 

 軽い世間話のつもりだったが。強い衝撃を受けた褪せ人だったが。気を取り直して。褪せ人がティエリエに今後どうするつもりなのか聞く。

 

「ティエリエは?」

 

「私は、トリーナ様のために。この戦いに参加者しました。ミケラ様が倒れた今。きっと彼女はもう」

 

「ですから、私は青海岸に彼女を看取りに」

 

「そうか」

 

「褪せ人殿も来てください。きっと、お喜びになりますから」

 

「寄らせてもらおう」

 

 ティエリエは、彼が信奉していたトリーナの死を看取りに青海岸へと向かうそうだ。

 

「それじゃあ、世話になったな」

 

「ええ、また」

 

 ティエリエの話も聞き終わり。褪せ人は、アンスバッハたちに別れを告げ、去ろうとした。その時。

 

「褪せ人殿! 伏せろ!」

 

 塔の外観に映る影樹が、白光を輝かせて爆ぜた。影樹の爆発によって生じた破片は各地に降り落ち。破片が塔にも飛来した。

 

「大丈夫か。褪せ人殿」

 

「ああ、大丈夫だ。怪我はない」

 

「褪せ人殿も無事で何よりだ」

 

 突如、起きた影樹の爆発よって、飛来してくる影樹の破片の雨が止み。俺は爆発に居合わせた最後の一人である褪せ人たちの無事を確認する。近くにいた。アンスバッハとティエリエの二人とは合流している。

 

「影樹が爆発したように見えたが。どうなっ」

 

「我々も先ほど、起きたばかりで。状況がつか」

 

 何が起こったのか。確認するため、周囲を見渡し。俺たちは息をのんだ。

 

「影樹が輝いている」

 

 影樹が輝いていたのだ。爆発でできた影樹の隙間から、光が漏れ出ている。

 

 それはあり得ないことだった。マリカの暗い思いから生まれた影樹。それは決してこの地の住民を祝福することなく、輝きを見せない。その影樹が輝いているのだから。

 

「この輝きは黄金樹と」

 

 それに漏れでた光は、黄金樹の輝きと同じもので。

 

「周りに燃えているのは霊炎か。それに空に浮かんでいるあの月は」

 

 樹には青い炎が燃え移り。空には、黒い満月が浮かでいた。

 

「あの樹について、どうする」

 

「とりあえず、何が起きているのか。確認せねばなりますまい」

 

「そうだな。ならば、各自で一度この地を巡って、異変の手がかりを掴むか」

 

 褪せ人たちとあきらかに異変が起きている影樹について。一度別れ、各々で調査を進めようと結論付けた時。

 

「その必要はないぞ。我が王とその仲間たち」

 

「はい。この影の地で起きている異変。恐らく私たちで説明できます」

 

 紫紺の霧を含んだ、冷たい風が吹いた。

 

「久しぶりだな。ラニ」

 

「思ったより、早い再会になったな。我が王よ」

 

「トリーナ様。生きておられて!」

 

「久しぶり、ティエリエ。ミケラを解放してくれてありがとう」

 

 暗月の女王、ラニと聖女トリーナの霊体が出現した。

 

「「しかし、なんだ(なんですか)この纏わりついている蔓は?」」

 

 二人の体には、木の根が纏わりついていた。

 

「ああ、この忌まわしい根についてか。これは今からする説明に関わっている」

 

「説明を始めていいか」

 

 俺たち一同は、それに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ラニからの説明が始まった。

 

「結論か言おう。今、影の地で起きている異変は、我が義理の長兄、黄金のゴッドウィンによって引き起こされたものだ」

 

「かの御仁は陰謀の夜に死者となったはずですが」

 

「だが、生きていた。指たちの手引きによって、私は奴と結婚するよう決められていた」

 

「決められた運命など、いらない。私は奴を陰謀の夜にマリカと協力することで謀殺し。そして、指との決着をつけた。ここまでは我が王も知っているだろう」

 

「そうだな」

 

 ラニからの問いかけに、褪せ人が頷く。

 

「だが、精神の死だけで殺したのが失敗だった。奴を導く指が残ってしまった。もう片側の運命はいまも生きている」

 

「奴は、歪に肉体を成長させ。黄金樹と指を自身に接ぎ木することで。再び運命を動かした」

 

「燃え死んだ黄金樹は、死を生きる王子と重なり、半死で蘇った。黄金律が蘇ったことで、月の律は揺らいでしまった」

 

「今は私を取り込まんしている奴の黄金律と律を消し去らんとする私の押し合いだ。もし、奴が勝って。私が律に取り込まれれば。私の夜の律は狭間の地のみを巡るようになる」

 

「黄金律が破綻し。その活動を終わらせたとき。あの炎で死者だけとなった狭間の地を焼きつくし。もう一度、黄金樹を再誕させる」

 

「すべての生命は、身近な月を思い。黄金樹と霊炎によって、形を変えることなく永遠とその生を繰り返すだろう」

 

 その顔を歪ませて、ラニはそう言った。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 影の地、影樹の麓

 

 霊炎に焼かれる影樹。いや、黄金樹と繋がったことで。暗い灰色に染まった灰樹。その麓には、王都ローデイルに酷似した建物が生れていた。

 

 闘技場の中、醜い顔と体つきをした金髪の男が。蒼い火に焼かれる友である古龍に触れる。火は男に燃え移り、その体を焼いていき。醜くかった顔は美形へ、歪だった体はすらっとした引き締まった体へと変化させる。

 

「あと少しだ。あと少しで。あの日、友と両親に立てた誓いが叶う」

 

 あの日の誓い。それは、偉大なる両親と黄金樹によって、人々がその幸福を噛みしめた。黄金律の絶頂期に少年が、尽きぬ寿命をもつ友と出会い、生れたもの。

 

「ゴットウィン。お前に何か望みはあるか」

 

 青年期、両親に連れられ。訪れたアルター高原で父に将来の望みを聞かれ。

 

「母様、父様。私は……」

 

「ほう。それは楽しみだ」

 

「……私も応援しよう」

 

 答えた時と変わることはない望み。

 

「黄金律を不滅にする」

 

 青い霊炎によって、かつての肉体を取り戻し。黄金のゴットウィンはそう言葉にした。

 

 

 

 

 

 




*とある指読みの老婆との会話

「うう、ぅぅぅ…。…ゴットウィン様。」

「坊ちゃまは、ただ死しているわけではなかったのですね」

「黄金の貴公子は、死に生きてなどいなかった。死と共に強くおられていたのですね」

「そして、王となるため。再びこの地へと還ってきた」
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