アンケートの結果、アンスバッハとの出会いについて書くことにしました。少々お待ちを。
────ー影樹の聖杯────────────
「ここが、ラニが言っていた場所か」
「そのようですね」
影の麓、影樹の聖杯。そこに、褪せ人とティエリエはいた。アンスバッハとサングリアは外せない用事があるらしく、それを終わらせたら合流するとのことで、一時的に塔で別れた。
「協力者が待っていると聞きましたが。いったい、どこにいるのでしょうか」
「わからん。だが、ラニはもういるといっていた。ならば、この地の何処かにはいるだろう」
この二人がなぜ、ここにいるのか。それは月の女王と聖女トリーナ、各々が掲げる主に頼まれたからであった。
「このまま、奴に囚われたまま。この身を焼かれてしまえば、私は永遠に奴の望む黄金律の奴隷になってしまうだろう」
「あの影の樹の中心に私はいる。助けてくれ、我が王よ」
「任せろ」
「ゴードウィン兄さまの夢。黄金律に死を取り入れ。生と死を繰り返すこと。それはミケラの夢と本質的には変わりません。違いといえば、停滞の中に動きがあるかないかだけ。それでは、きっと。母や信徒たちの願いは果たされない」
「だから、ティエリエ。私からもお願いします。褪せ人様に協力してあげてください」
「了解しました」
遠方の影樹を視界におさめながら、褪せ人たちは周辺を探索する。そんな二人に上空からしわがれた老人のような声がかかった。
「お前たちが、あの魔女が言っていた協力者たちか」
空の雲の裂け間から、巨大な古龍が飛来する。翼が羽ばたき、風が褪せ人たちの髪を外套を揺らす。大古龍は徐々に降下していき、ゆっくりと地面へ降り立ち。褪せたちに名乗りをあげる。
「我は大古龍グランサクス。魔女ラニとの契約により、そなたたちをあの影樹まで、送り届けに来た」
大古龍グランサクス。それは黄金樹の民たちと古龍たちが争いあった古龍戦役で、古龍陣営の一番槍として、それまで不落だった王都城壁を落とし、王都内に攻め入り。黄金樹側へ多大な損害を与えた。古龍側の大英雄。
彼は、黄金樹の復活を阻止するために、魔女ラニの協力者として生き返った。
「それでは、あの樹へと向かうが。準備はいいか」
「ああ。できた」
地に座った彼が褪せ人に問いかける。その問いに褪せ人は返事を返し、ティエリエと共に彼の背に飛び乗った。
「では、行くぞ」
褪せ人が背に乗ったを確認し、大古龍は新たな黄金樹の王が待つ、影の樹へと向いに、空へと飛び立っていった。
「見てください。樹の麓に何か建造物が建っています」
古龍の背に乗って、空を旅すること数時間。褪せ人たちの後ろに座るティエリエが声を発した。
褪せ人はティエリエが見ているであろう方向へと顔を向けた。
「あれは、まさか王都か」
影樹の麓には、かつて大ルーンを二つ確保した褪せ人が王になるため訪れ、死のルーンを解放したことで灰となった王都ローデイルが建造されていた。
「ほう。あの城壁は我が破壊したもの。なるほど、これは黄金の若造が復元したものか」
強固な城壁にかけなど一つもなく、王都の街並みは整っていた。古龍戦役や王都ローデイル攻城戦が起こる前、鉄壁の城塞としてゴットウィンが追憶を下に復元していた。
城壁には無数のバリスタが設置され、兵士が配属されていた。王都ローデイル軍兵士と死の騎士たちが彼らを取りまとめていた。
「……!」
「なるほど。ラニが言っていたのはこのことか」
突如、死の騎士たちの体から炎が舞い上がった。炎は彼らの体を焼きつくし、生前の肉体へと戻す。
蘇った騎士の一人が空へと顔を向けた。その視線が上空から騎士たちを見下ろしていた褪せ人の視線と交錯した。
「グランサクス、ティエリエ。城壁の騎士たちに気づかれた!」
「そのようだな。ならば、正面突破だ。突っ込む、しっかり掴まっていろ!」
侵略者の存在に気づいた城壁の騎士たちが一斉に雷の槍を精製し、投擲する。グランサクスはこちらへ迫りくる無数の雷の槍を見据え、自身も雷から巨大な槍を造る。
そして、褪せ人たちにしっかりと掴まっているように指示し、槍を構えて再び王都を落とさんと突っ込んでいった。
「くっ」
無数の槍が飛来し、グランサクスに直撃する。けれども、その勢いは止まらない。槍が古龍の背に身を隠した褪せ人たちの傍をかすめていく。
褪せ人の近場に当たった槍から電流が流れ、褪せ人の手を痺れさせるが。古龍の背をより強く握ることで、褪せ人は振り落とされないように抵抗した。
「いくぞ! 衝撃に備えろ」
その一声が聞こえた後、先ほどまでの衝撃をはるかに超える衝撃が褪せ人たちを襲った。あまりの揺れに手が離れ、やや上空から投げ出された。
「うああああ。痛い」
地面に着地した後、褪せ人の近くにティエリエも落下してきた。
「礼をいう。グランサクス、お前のおかげで王都に入れた」
「グランサクス殿、ありがとうございます」
褪せ人とティエリエは、傍に倒れているグランサクスに王都まで運んでくれた礼を伝える。
「礼はいい。ただ、もう我は動けそうにない」
「そうか」
騎士たちが待ち構える中、王都に進行するために強行突破したことで、グランサクスの体は深く傷ついていた。身体には無数抉られた跡ができ、そこから大量の血が流れている。息は荒く、もう瀕死の状態だった。
「褪せ人殿はこの地を旅したそうだな」
「ああ」
グランサクスは神妙な顔つきになったといったらいいのだろうか。龍の顔が分からない褪せ人には見分けがつかないが、彼に仕えることになった従者ならばそう評す表情に変わった。
「ならば、ギザ山に向かったのだろう。そこで、巫女フローサクスともであったはずだ」
「会ったな。そして、彼女の王になった」
「……そうか」
神妙な声色から少し褪せ人は身構えたが。聞かれた内容は巫女フローサクスに会ったかだった。褪せ人は彼女と会ったと彼女の王になったことを伝えた。すると、彼は少し驚いたのか。押し黙り、再度口を開く。
「彼女から聞いているだろう。我らが王の心理を。飽くなき飢えによる渇望、それこそが我らに永遠の者にない人間の魅力だと」
褪せ人はそれに頷く。
「黄金律の信仰はそれらを奪いさり、人を零落させる。だから、我は黄金律に矛を向けた。此度の魔女ラニへの協力も同じ理由だ」
「褪せ人よ。奴の掲げる黄金律を否定してくれ。人は永遠など必要としていないと」
「任せろ」
グランサクスは褪せ人に自身の胸の内を打ち明ける。人間の短いながらも、永遠を生きる古龍にはない情熱的な生を損なってほしくないと。その願いに、褪せ人は応えることを約束する。その返事に満足し、大古龍は安らかに息を引き取っていった。
「褪せ人殿、避けてください」
「……!」
感傷に浸っていた褪せ人の横を弓矢が通り過ぎた。
(警備兵が追いついてきたか)
民家の脇から、嵐の騎士、火の司祭、獣人たちが現れる。
「っ、強い」
褪せ人は嵐を起こし、こちらへと突っ込んでくる失地騎士の攻撃を受け取め、鍔迫り合いをする。失地騎士の力量は、ファルムアズラにいた騎士たちに匹敵あるいは凌駕するほどだった。
失地騎士以外の兵士も彼らと同量に凄まじい技量を誇っていた。彼らは黄金律の循環が止まった狭間の地で、大戦初期に活躍した精鋭だった。
彼らはゴッドウィンの力によって、復活し。再び、黄金樹が全盛期だった時代を取り戻すために剣を取っていた。
「ふん」
鍔迫り合いをしていた褪せ人は、バックステップで距離を取る。そして、盾を取り出して、追撃に来た失地騎士の攻撃を弾き、致命の一撃を入れて倒す。同様の手段で、ティエリエの毒で弱った敵も倒していく。
「目的地はあの樹だったか。あそこにいる騎士たちを倒して、最短ルートで行くぞ」
「はい」
襲撃者たちを葬り去って、落ち着いた褪せ人たちは影樹を見据え。道中に立ちふさがる騎士たちを倒しながら、褪せ人達は王都の大通りを進んでいった。
「おおーい。そこの御仁たち。すまない。樹が体に絡まってしまって外れないんだ。こっちに来て、助けてくれないか!」
王都ローデイルでいえば、王城に樹が絡んでいた場所、樹の根本部分から、快活で剛毅な声が聞こえてきた。少し間抜けな内容に、声の主が誰か予想がついて、褪せ人から笑顔が漏れる。
「すまない。城側に寄り道させてくれ」
「いいですが。どうしたんですか」
「友人に会いに行く」
ファルムアズラで、褪せ人と一騎打ちし、その末に戦士として最期を迎えた彼がなぜここにいるのかはわからない。だが、友人ともう一度会えるというならば幸いだ。
褪せ人はティエリエを連れて、声がする方向へと向かっていった。
「おお、来てくれたか! 早速だが。む、この気配、褪せ人殿か! また、会えて嬉しいぞ!」
「俺もまた、会えて嬉しいぞ。アレキサンダー」
樹の根本部分には、壺人がいた。壺人は影樹の根に絡まっていて、身動きがとれないのか。褪せ人の挨拶に背を向けた状態で、会話する。
壺人、鉄拳アレキサンダーは体を揺らして、褪せ人との再会した喜びを表していた。
「ところで、会えたのは嬉しいが。なぜ、ここにいるんだ。それに体から霊体がでているが大丈夫なのか」
「それが俺にも詳しくは分からんのだ。ファルムアズラで貴公との一騎打ちで敗れ、俺の壺生も終わったと思われたのが。気づけば、ここにいた」
「そうだ。今、周囲の探索にでている連れが二人いてな。彼女たちなら何か知っているかもしれん。体については大丈夫だ。ただ、まあ、力が入らないようで難儀している」
鉄拳アレキサンダーがなぜ、ここにいるのか。そのなぞは本人にもわからないらしい。この地で連れができたらしく、彼女たちなら何か知っているらしい。
────ー地下から生えた根が黄金樹と一体化しているわ
────ーそうか。ラニが言っていた通り。この地で、奴は
「おお、噂をすればなんとやらだ、紹介しよう。彼女たちがこの地で新しくできた連れの二人。ブライブ殿とメリナ殿だ。もっともブライブ殿とは面識が薄っすらとだがあったようだがな」
「久しぶりね。まさか、また、あなたに会えるとは思わなかったわ」
「久しぶりだな、褪せ人」
アレキサンダーの連れとは、褪せ人にとっても馴染み深いブライブとメリナだった。狭間の地で亡くなったはずの彼女たちとの再会が褪せ人の心を震わせた。
ブライブ、メリナ、アレキサンダーの三人に再会した褪せ人は、彼女たちがなぜ、生き返ったのかを聞く。
「俺はラニによって、この地で蘇り、お前の協力に来た」
「私とアレキサンダーは、霊炎に焼かれて、それぞれの形で蘇った」
合流した二人の話だと。ブライブはラニの手で蘇り、二人はゴッドウィンの霊炎に巻き込まれる形で蘇った。霊だけ燃えたアレキサンダーは影の地の壺に憑依し、霊と肉体二つが燃えたメリナは受肉した。
「なるほど。俺が生き返ったのは、そういう理由だったか。褪せ人殿、助かった」
二人の話を聞き終え、アレキサンダーは絡まった根を引きちぎりながら立ち上がり、褪せ人に礼を告げる。褪せ人にアレキサンダーの中身を入れてもらったことで完全に憑依を済んだことで、彼は力を出せるようになっていた。鉄拳アレキサンダーは影の地の壺人として復活を遂げた。
「おお、これは巫女の力と記憶か。ならば、こうすれば」
壺の素材になった巫女の記憶読み取ったアレキサンダーが手に力を込め祈ると、その手から聖職者たちが使う回復祈祷、彼方からの回復が発動し、全員を癒した。
「驚いた。壺人が巫女の力を使えるなんて」
「わっはは! 俺も驚きだ。これからは鉄拳アレキサンダーを改め、聖拳アレキサンダーと名乗るとしよう」
アレキサンダーが、巫女の力を使えるようになったことに、メリナも感心する。そして、笑顔を浮かべる。これで回復の手間も減った。
「ちょうどよかった。傷も癒せたし、闘技場にいるであろうゴッドウィンの下に向かいましょう」
褪せ人たちは、王都闘技場へと、坂を駆け抜けていった。
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時は少し遡り、褪せ人たちと後で合流する約束をした俺は、神の門でラダーンの肉体に触れていた。
ーーモーグ様の肉体を取り戻せればいいのだが。
「どうですかな」
「っ。モーグ様の呪血が枯れてしまってます。この体はもはやラダーンのものになってしまっています」
俺は悲嘆にくれながら、アンスバッハからの質問にそう応える。
ラダーンを倒し、依り代にされたモーグ様の体を取り戻し、復活させる。
当初考えていた計画はラダーンが肉体だけなく精神まで復活し、ラダーンが肉体を生前の姿に作り直したことで崩れ去ってしまった。
「モーグ様を復活させられない」
「そう、ですか」
ここまでやってきたのに。魂を確保して、後は依り代を取り返せれば、モーグ様を蘇らせれるのに。
君主を救うまであと一歩というところで、こけてしまった。悔しさのあまり、確認のためにラダーンの鎧を掴んでいた俺の手はどんどん力がこもる。
そして、あまりの力に鎧が歪み、手の甲を裂いた。手の甲を流れた血が、ラダーンの体にかかった。
「この気配は、モーグ様の気配。まさか!アンスバッハ殿!こちらへ」
「どうしました、サングリア殿」
奇跡が起きた。ラダーンの体に血が触れた時、胸の内に持っているモーグ様の魂が反応した。俺から流れ出た血は、地面に広がった後、モーグ様の手を創った。
「この腕はモーグ様の。ミケラ様が不要と断じて、お捨てになられたものでしょうか」
「違います。アンスバッハ殿、この腕は今、この場で生まれました」
「では、モーグ様はまだ」
「ええ、まだ復活の芽はあったようです」
アンスバッハ殿の疑問に答える。俺の血から、できたものだと。俺がモーグ様と同じ忌み子だからか、それとも血授の儀を受けたからか、はたまたその両方の理由からか。
「アンスバッハ殿、私は王朝に戻り、血を集めます」
「アンスバッハ殿は先に、褪せ人の下へ向かってください。あと、褪せ人殿にこれを」
何が理由かはわからない。ただ、俺の体が依り代に使えるのは確かだった。アンスバッハ殿に自身の指を渡し、先行してもらうことにした。アンスバッハ殿が、走っていくのを見送り、俺は王朝に戻った。
影樹での再会イベント
大古龍グランサクスによって、影樹の聖樹から運ばれて、影の都ローデイルの影樹の根本で
アレキサンダー、メリナ、ブライブと再会できる。
聖拳アレキサンダー
影の地の巫女壺に憑依する形で蘇ったアレキサンダー。巫女由来の回復祈祷や補助祈祷を使
いこなしながら、戦う。筋バサビルド