影の地の純血騎士   作:王朝万歳

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過去編です。4~5話の間の話


(過去編)筆頭純血騎士との出会い

 ────────────王都ローデイル地下────────────

 

「入団試験ですか」

 

「ええ、私の騎士に協力者ができたことを伝えたところ、その協力者の実力を知りたいと言われましてね」

 

 忌み子モーグの牢屋前で、いつも通り牢番として、協力者となったモーグに接触していた時、モーグから話したいことがあると言われ、決闘の誘いを受けた。

 

 なんでも、モーグが騎士に俺が新たに協力者として加わることを話したところ、騎士は「協力者の実力を知りたい」と言ったらしい。愉快そうに笑うモーグから伝えられた。

 

 決闘の誘いは、少し面倒だった。だが、成り行きとはいえ、協力者になったのだ。これから共に戦うかもしれない者、実力を知っておきたいというのも納得できる。

 

「その決闘受けよう」

 

 協力者になって数日、まだ交流を始めたばかりだ。ここで無理に断って、波風を立てる必要はないだろう。そう考え、俺は決闘を受けることにした。

 

「おお、受けてくれますか」

 

 俺の返事に気をよくしたのか、牢屋の中にいるモーグの声のトーンが一つ高くなった。

 

「決闘の日程はいつにしましょうか。彼は今月ならいつでもいいと言っておりましたが。そちらの手が空いている日はありますか」

 

「そうですね。それならば、次の巡回の終わりに。場所についてだが、いい場所を知っている。当日、私が案内しよう」

 

「彼には私から伝えておきましょう」

 

 モーグと俺で、決闘の日付と場所を決定して、その日は別れた。

 

 モーグとの約束の日、看守の仕事を終え、地下の大通りで一人佇んでいた俺に、後ろから声がかかった。

 

「来たか、モーグ殿」

 

「おや、もう来ておられましたか。待たせたようですいませんね。サングリア殿」

 

「いや、それほど待っていない。後、私が早く来ていただけだ、気にするな」

 

 振り返れば、モーグとその付き添いに密使装備を着た若い男が立っていた。

 

「巡回の看守に会ったらまずい。早速だが、決闘の場所へ案内しよう」

 

「そのほうがよさそうですね。移動しますよ」

 

 モーグの移動の合図に、密使装備の男がうなずいたので、移動を開始した。

 

「その装備、存外似合っておりますね」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

「我が王朝の衣装にも黒色を取り入れてましょうか」

 

 地下の横道や縦穴を抜け、目的地へと二人を先導する。背中から、二人の会話が聞こえてきた。

 

「着いたぞ。ここだ」

 

「おお、ようやくですか。随分と深いところまで来ましたね」

 

「ああ。だが、ここなら、看守たちは来ない。決闘の邪魔はされないだろう」

 

 地下道を歩き、地下の聖堂に着いた。

 

「しかし、ここは……」

 

「はい。モーグ様。なんだが、ここにいると、心がざわつきます」

 

 聖堂に着いた。モーグとその騎士の二人は、口にする。

 

「当然だ。ここには、狂い火が封印されているからな」

 

「「……!」」

 

 二人の言葉に、俺はそう返す。

 

『お嬢ちゃん、なかなか筋がいいな。それぐらいできれば、たまにでいいが、ここの管理はもう任せられるな』

 

『ちっ。短い間だがお前には世話になったな。デボニア』

 

『礼はいらん。私も角人、それに彼らがいるだろう影の地について教えてもらったからな』

 

 俺は、とある坩堝の騎士から場所を知らされ、管理を任された。地下の忌み捨ての地下の教会へと二人を連れてきていた。

 

「なぜ、このような場所を決闘の地に選んだのですか」

 

「ここが、最も邪魔が入らないからだ。俺たち、忌み子は狂い火を恐れるからな」

 

「なるほど」

 

 狂い火は霊すら焼く。体感的にここが忌み子たちにとって近寄りがたい場所であることを理解したのだろう。モーグは納得したようだ。

 

「納得したようで、何よりだ。騎士殿も納得いただけたかな」

 

「はい。私も大丈夫です」

 

「それでは、騎士殿。始めようか」

 

「そうですね」

 

 俺と騎士は、教会の中心に歩いていき。中心につくと、お互い背を向けて、距離を取る。そして、ある程度の距離を確保して、振り返り相対する。

 

「忌み子殿。いざ、尋常に勝負」

 

「……!?」

 

 相対していた騎士が、身につけている黒のローブを脱ぐ。中からは、王都ローデイル騎士装備を着た。青年を少し過ぎたくらいの若い男が現れた。

 

 そして、兜を脱ぎ、一礼してきた彼の顔に驚かされた。

 

 ……アンスバッハに似ている。

 

 褪せ人が影の地でミケラ討伐する際に協力者として呼ばれる。純血騎士、アンスバッハの若い姿だったからだ。

 

「ああ、よろしくな」

 

「では、開始の合図は私がいたしましょう。お二人とも、準備はいいですか」

 

「ええ(はい)」

 

「それでは、決闘。始め!!」

 

 バチン

 

 モーグが指を鳴らし、決闘が開始した。

 

「先手必勝!!」

 

 決闘が開始すると、同時に、俺は力を込め、肩からは角が生やす。足に力を込めて、アンスバッハに向けてタックルを繰り出す。

 

「な、このような幼子が坩堝の力を!?」

 

 俺の強襲に驚いた。アンスバッハが咄嗟に騎士大剣でタックルを受け止める。

 

「く、なんという力」

 

「おらああ」

 

 大剣と大鉈が鍔迫り合い一時的に拮抗するが。角人特有の人外じみた力による、力押しで相手を吹き飛ばす。

 

 アンスバッハは、勢いよく壁へと吹き飛ばされていき、激突する。壁が崩壊し、アンスバッハがめり込む。

 

「……」

 

「すみません。協力者殿、あなたの実力を見誤っておりました」

 

 崩壊した壁からアンスバッハが出てきて、そういいながら、一礼してきた。

 

「気にするな。この成りだ。侮られるのには慣れている」

 

「はは。私も大衆と同じく愚か者だったというわけですか。先ほどまでの非礼を詫びます」

 

「モーグ様騎士として、全力でお相手いたしましょう」

 

 そう言って剣を構えたアンスバッハの雰囲気が、決闘開始時点のやや弛緩したものから張り詰めたようなものへと変わる。

 

「では、今度はこちらから行かせてもらいましょう」

 

「な、どこにいった」

 

「こちらです」

 

 アンスバッハが先ほどとは一線を画する切れのある動きでこちらの懐へ潜り込んできた。

 

「く」

 

 迎撃のため、剣を振るうが、アンスバッハはローリングしてそれを回避する。

 

「まずは、先ほどのお返しを」

 

 そして、すれ違い際に、忌み子へと大剣の横なぎをくらわせる。

 

 侮りが消えたアンスバッハは、冷静に忌み子の攻撃を的確に捌き、手傷を負わせていく。

 

 ……このままではジリ貧だ。

 

「角降ろし・神獣」

 

「つっ」

 

 初撃以降、こちらの攻撃は、一切通らないことに焦りを覚え、俺は神降ろしをする。体の半分が何かに委ねられた感覚と共に、突風が巻き起こり、力が沸き上がる。これなら、対抗できる。

 

「私が、押し切るか、貴方が捌ききれるか。耐久戦といこうか、アンスバッハ殿」

 

「く、はあ!」

 

「ぐうぅ。はは。効かんなー!」

 

 角降ろしによって、増した力を存分に生かして、攻撃を喰らいながらも、ただ、愚直にアンスバッハを責め立てる。

 

 こちらの攻撃に捌ききれなくなったのか、アンスバッハに攻撃が当たり始める。無傷だったアンスバッハの体にも、傷がつき、お互いボロボロになっていく。

 

「く。手が痺れて……」

 

「これで、終わりだ」

 

 そして、決着の時が訪れた。剣を受け止めたアンスバッハの手が痺れ、一瞬反応が遅れた。

 

 絶好の機会。とどめを指すべく、角降ろしの力を強めた。

 

「角人に期待するのは辞めたんだけど、これほどの絶望を内に宿すとは、流石に期待せざるを得ないね。いいね。君、素質あるよ!」

 

「GYaaaaaaaaaaあああああああああ!!」

 

 だが、それがよくなかった。呼ぶべきでないものまで呼び寄せてしまった。にやついた男の声が瞳の奥から響き、脳を震わせた。

 

「アンスバッハ、早く決着をつけなさい!」

 

「っ。了解しました。残念です、このような結果に終わるとは」

 

 急に顔に手を合わせ、発狂し始めた協力者の姿に。危機感を覚えたモーグがアンスバッハに決着をつけるように指示を飛ばす。

 

 その指示に、アンスバッハは、苦々しい顔を浮かべながらも剣を振るって気絶させた。

 

「帰りますか」

 

「はい。我が主よ」

 

 モーグが気絶したサングリアを抱えあげ、その隣をアンスバッハが歩く。

 

「どうでしたか。彼女の腕は」

 

「ええ。とても強かったです。忌み子の割には、背丈が短く、若者だと侮ってしまった。私が愚かでした」

 

「そう。卑下せずとも。彼女が戦っている姿を直に見なければ、侮ってしまうのも当然でしょうから」

 

 モーグから協力者について話を聞き、本人と実際に会ったとき。アンスバッハが抱いたのは義憤だった。

 

 まだ、成人にも満たない忌み子の若者を、新勢力として立志を心がけようとしているこちら側の陣営の協力者に引き入れる。

 

 もし、戦乱を生き残る実力が無ければ、協力者となった忌み子は早々に命を落とすだろう。もし、そうだと分かった上で、モーグが誘ったのだとしたら、彼は誅するつもりだった。

 

『私は、黄金律の日陰者たちが、疎まれ、蔑まれてることなく、自己を肯定して生きていける楽園を造ってみせる。それには、貴方のような優しい者が必要です。ついてきなさい』

 

 ゴッドフレイが褪せ人となり、狭間の地から追放され、彼の配下であった坩堝の騎士たちも去った後。王都では、角人の迫害が始まった。称えられていた彼らは、忌み子と呼ばれ、地下に捨てられた。

 

 黄金律の全てを受け止める優しさに憧れ、騎士として仕えることを志したアンスバッハにとって、ゴッドフレイ追放以降の黄金律の不寛容はその憧れを失墜させた。

 

 このまま王都の騎士を続けるのか。迷っていた彼に、モーグの理想は眩しいものだった。だからこそ、弱者救済を掲げながら、弱者を利用するというのは、許せることではなかった。

 

「彼女と共に騎士として貴方に仕えられれば幸いです」

 

「ええ。私もそうなってほしいと思っています」

 

 ────────────────────────────────

 

 後日

 

「そうか、俺は負けたのか。ならば、俺は協力者から外されるのか」

 

「ああ、その話ですが。確かに貴方は負けましたが。アンスバッハも貴方の実力を認めたようで」

 

「是非に協力してもらいたい。共に騎士として同じ主に仕えるのを楽しみだと言っていましたよ」

 

「騎士として仕えるのか、お前次第だがな。少なくとも今は協力者だ」

 

「ええ。分かっております。ところで、決闘の終わり際のあれについては覚えていますか」

 

「ああ、覚えている。狂い火が封印されている場所だというの、それを忘れて、力を込めすぎて狂い火に乗っ取られてしまった」

 

「あのままでは、完全に狂い火の病に侵されてしまっただろう。すまないな、本当に助かった」

 

 決闘の日から、数日、地下牢でモーグとサングリアはあの日の決闘の結果について話し合っていた。どうやら、先の決闘で力を示せたらしく、協力者として彼らとの連携は続けていけることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「君、素質あるよ」

地下で聞こえた謎の声。声の主はブドウみたいな名前をした皆さんご存知の人物。荒らし、嫌がらせ、混乱の元。
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