影の地の純血騎士   作:王朝万歳

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竜騎士

 ◇◇◇

 

 闘技場前

 

「はあ。はあ。これで、全員か」

 

「そうね。これで終わりみたいね」

 

 褪せ人の振るう大剣の一撃が相対する火の司祭長を沈める。火の司祭長に止めを刺した褪せ人が、仲間たちの様子を伺う。褪せ人の言葉に、その手に持つ短剣で、対峙する坩堝の騎士へ致命の一撃を入れながら、メリナが返事する。

 

 ……加勢は不要そうだな

 

 アレキサンダー、ティエリエ、ブライブも、各々が得意とする得物で、敵を倒していた。

 

「奴に、辿り着くまでも、一苦労だな」

 

「ええ。でも、これで終わりみたいよ」

 

 闘技場へ向かう褪せ人一行に、立ちふさがった彼の賛同者たち。それらを退けながら、坂を上り、闘技場へ到達した褪せ人たちは、闘技場の前で、陣取っていた最後の敵と戦っていた。

 

「ワハハハハハハハ! 、褪せ人殿とメリナ嬢の方が、早かったか。我々もまだまだだな」

 

「すいません。手間取りました」

 

「私たちも、今、倒し終えた。あなたたちと対して変わらないわ」

 

「そうか。それなら、よかった。ならば、先に進もう」

 

「そうね」

 

 再現された王都闘技場の入口を通り、その中へと入る一行。

 

「何とか、間に合ったようですな」

 

「アンスバッハ、来てくれたのか。サングリアは、どうしたんだ」

 

「すみません。彼女は、まだ、手が外せそうにありません。しかし、彼女は霊体として、協力します」

 

「そうか。助かる」

 

 闘技場のロビーで、アンスバッハが来るであろう褪せ人たちを待っていた。褪せ人が、サングリアについて聞けば、彼女は霊体として、協力するとのこと。アンスバッハが、懐から赤黒い指を取り出し、地面にサインを書く。その後、サインが光だし、サングリアが召喚された。

 

「褪せ人殿たちか。アンスバッハ殿は、間に合ったのだな。扉の奥から感じるこの気配は、なるほど、この先に奴がいるのだな」

 

「サングリア、また会ったな。その通りだ、ゴッドウィンは、この扉の向こうにいる」

 

 これで、ゴッドウィンに挑むメンバーは揃った。

 

「いよいよね。この戦いが、狭間の運命を決める。この戦いに負ければ、狭間の地に生きる者たちは、彼の主導の下、永遠にその生を繰り返すことになる」

 

「この戦いには、絶対に負けられない。準備はいい」

 

「ああ、出来た。勝つぞー!!」

 

「おお──ー!!」

 

 メリナの問いかけに、褪せ人たちが声をあげる。褪せ人が、闘技場の入場扉にその両手をつけ、押し広げていく。そして、扉が開いたと同時、褪せ人一行は、内部へと突入していった。

 

 ◇◇◇

 

 闘技場内部

 

 ……オオオオオオ──ー!! 

 

 ……オオオオオオ──ー!! 

 

「む。これは」

 

「なぜ、観客席に霊体たちが」

 

「この床は、ファルムアズラの竜王がいた場所と同じものか」

 

「彼らには、この戦いを見届けて貰うために来てもらった。暗月の王とその一行、それに血の律の者たち」

 

 竜王の住処に似せた。原始的な遺跡の闘技場内部に入り込んだ褪せ人一行を待っていたのは、無数の霊体たちによる歓声だった。歓声に面食らく褪せ人たちに、どこかから、声が聞こえ、闘技場を囲むように嵐が吹いた。

 

「なるほど。退路を塞がれたか」

 

 嵐は、広い闘技場の外周部分を埋め、闘技場を台風の目にし、褪せ人たちの退路を断っていた。

 

 ……どうやら、ここから、誰一人として逃がすつもりはないらしい

 

「私は、黄金樹を永遠にする。その為に、それを邪魔する貴様らにはここで倒れてもらう」

 

 その声と共に、嵐が裂け、一体の古龍とその背に乗ったデミゴッドが現れ。褪せ人たちへと突進してきた。

 

 褪せ人たちは、その突進を回避しする。褪せ人たちの前に、古龍がゆっくりと降りていき、その足を地につける。

 

「古龍フォルサクス」

 

 地面に降りった古龍は、褪せ人がかつて狭間の地の深き根の底で、戦った古龍フォルサクスだった。目の前の古龍とその背に乗ったデミゴッドに、褪せ人たちは各々の武器を手に対峙する。

 

「狭間の地を統べるのは、どちらか。ここで、決着をつけようじゃないか」

 

 ゴッドウィンの宣言と共に、戦いの火蓋が落とされた。

 

 ◇◇◇

 

 ゴッドウィンが跳躍し、古龍の背から頭の上に飛び移る。古龍フォルサクスがそれを確認し、羽を羽ばたかせ、空へ高く飛び上がる。二人の姿が闘技場外周を覆う嵐に隠れる。

 

「奴め、何処にいる」

 

 隣にいる褪せ人が、そうつぶやく。王都闘技場で、褪せ人たちと合流した俺は、黄金のゴッドウィンと戦いに参加している。

 

「背を向けあって、警戒するぞ」

 

 ……嵐に身を隠していて、居所が分からず、厄介だ

 

 嵐に隠れたゴッドウィンと古龍フォルサクスを警戒し、お互いに背を預けて、ゴッドウィン達を警戒する。

 

「私の方から来た。あなたたち、避けて」

 

 ゴッドウィンたちは、メリナの方から、現れ、突進してくる。

 

「おおっと、間一髪だな」

 

 俺たちは、それを回避する。アレキサンダーも、その巨大な壺の体ながら、ギリギリのところで避けた。

 

「お返しだ」

 

 褪せ人達と足が止まった古龍の下へと向かう。古龍が振り返り、嚙みついてくる。ゴッドウィンも噛みつきに合わせて、何処かから取り出したであろう、斧を振るってくる。

 

「ぐ。流石、黄金の英雄、一撃が重いな。だが、このアレキサンダ―も戦士だ」

 

「トリーナ様を、返してもらいます」

 

 それを、アレキサンダーが受け止め、持ち前の強靭を生かして、下がった古龍の頭に、拳を突き上げ、アッパーを決めて、古龍を怯ませる。その隙に、ティエリエは毒の調香瓶を振りまき、敵を毒状態にする。

 

「ゴッドウィン、貴方には死んでもらう」

 

 やや、離れた位置から。メリナが、青白く変色した使命の刃を振るう。その刃から、青い炎が放たれ、古龍の体力を削る。

 

「喰らえ」

 

「貴様らは、ラニの敵だ。故に排除させてもらう」

 

「貴様の作る世界は、不要だ」

 

 俺たちは、古龍の足元で、各々の武器を振るい、古龍の体を傷つけていく。ブライブと褪せ人の振るう武器で冷気が、俺とアンスバッハ振るう血盟武器による一撃たちが出血を蓄積させていき。

 

「ぐあああああああああ!」

 

 蓄積が溜まり切ったことで。古龍フォルサクスの体が、凍結と出血を発症する。出血と凍傷によって、さらに古龍フォルサクスの体力が削れた。

 

「風が、後ろへ流される」

 

 出血と凍傷にやられていた古龍フォルサクスが、立ち上がり、羽を羽ばたかせながら、少し後退する。羽を羽ばたきで、生まれた風が、俺たちを後ろへと押し流し、古龍の正面に移動させる。

 

「不味い」

 

「ああ、そうだな。褪せ人殿、このままでは」

 

「あなたたち、攻撃が来るわ。構えて」

 

 ……一塊に固められた俺たちと、そんな俺たちの前に佇む古龍フォルサクスとゴッドウィン。とても嫌な予感がする。

 

「があああああ!」

 

 予感が的中した。目の前へと、集めた俺たちに向けて、古龍は咆哮を上げた。咆哮に、俺たちは怯み、その場に縫い付けられる。俺たちが足を止められることを狙っていたのだろう。

 

 フォルサクスの頭上のゴッドウィンが、手を頭の額に持っていき、十分に貯めた後、手を空に掲げ、祈禱を発動させる。周囲に、複数の赤雷が発生し、俺たちを襲った。

 

「褪せ人殿たち、大丈夫か」

 

「ああ、なんとかな」

 

「こちらも、大丈夫だ」

 

 ゴッドウィンの赤雷が鳴りやんだ。大剣を構えていた両手は、今だ少し痺れている。何とか、あの赤雷を凌いだ俺は、同じく赤雷に打たれた褪せ人達の無事を確認する。

 

 褪せ人達も、何とか、凌いだようであった。だが、全員が少なくないダメージを負っていた。

 

「あなたたち、少しそこにいて、回復するわ」

 

「褪せ人殿たち、少しその場で、待ってくれ」

 

 復帰したアレキサンダーとメリナが、祈祷を唱えると。二人の手の平が、黄金の輝きを放ち、祈祷が発動する。地面から生えた小黄金樹と放たれた彼方からの回復が、褪せ人達の体を癒した。

 

「二人とも助かる」

 

「ありがとうございます。アレキサンダー様、メリナ様」

 

「お二方、助かります」

 

「何、助け合いだ。礼には及ばん」

 

「私も礼には及ばないわ」

 

 二人の回復祈禱のおかげで、だいぶ受けた傷を治すことができた。治してくれた二人に礼を言う。

 

「しかし、あの一龍と一人の連携は、凄まじいな」

 

「ええ。彼らは、古龍戦役で友になった後、数多の戦場で活躍なさったようです。その活躍は、まだ若輩者で、王都の騎士の一員に過ぎなかった。私にまで、聞き及んでいました」

 

「そうか。なら、二人を連携させないようにしないとな」

 

「それが。得策かと」

 

「了解だ。奴らを、同時に攻撃を仕掛けるぞ!」

 

「「「了解した(しました)」」」

 

 古龍戦役から現在まで、長い時を経ても続いた。彼らの深い友情から、繰り出されるコンビネーション攻撃は凄まじく。それを崩すベく、褪せ人たちは、二人を同時に攻める作戦を立てる。

 

「ゴッドウィンへの攻撃は、俺、ブライブ、サングリアでするぞ。メリナ、アレキサンダーがする。他は古龍の相手を頼んだ」

 

 褪せ人の差配で、俺、褪せ人、アレキサンダーが、ゴッドウィンを攻撃する事に決まった。

 

「とっておきの技がある。褪せ人殿、援護を頼めないか」

 

「奇遇だな。俺もだ」

 

「わかった。援護しよう」

 

 褪せ人にとっておきの技があるから、援護してくれと頼むと。ブライブもとっておきの技があったらしく。二人で、褪せ人に援護を頼む形になった。褪せ人は、その提案に了承してくれ、援護のために左手に杖を取り出す。

 

「行け! 二人とも」

 

「ああ!」

 

 後ろに立つ、褪せ人が魔術を発動させる。褪せ人の杖から、ゴッドウィンに向けて、無数の流星群が放たれる。

 

 流星群は前方を走っていた俺とブライブを、追い越していき、ゴッドウィンへと直撃し続ける。褪せ人の援護を頼み、俺たちは突っこんだ。

 

「とっておきの新技だ。ゴッドウィン、お前にくれてやろう」

 

 十分に当たる距離まで近づいた俺は、流星群を受け、身動きの取れない。ゴッドウィンへ、とっておきの技を披露する。

 

「オオオ!」

 

 気合の掛け声と共に、体からは二対の赤黒い坩堝交じりの翼が生え、剣からは血で出来た角、翼や針が生える。これは、モーグ様とより近づいたことで、完成した力。

 

「存分に味わうといい」

 

 返信を終えたのを、確認し。回転して、翼から無数の血の結晶を飛ばしながら、ゴッドウィンへと攻撃する。

 

「俺からもだ」

 

 ブライブも、それに合わせるように、構えをとると。獅子斬りの構えをとっった後、剣を振るう。剣は空中で、巨大化し、一回斬りつけた後、更に、二回点目は、空刃を放ちながら、斬りつける。

 

 二人の大規模な攻撃によって、ゴッドウィンと古龍フォルサクスの両名に、出血と凍傷が入った。

 

 更に、下で戦っていた仲間たちによって、体感を削られていたのか。古龍フォルサクスがその体制を崩した。

 

「ここで、決める」

 

 崩れて、下がった。フォルサクスの頭に、メリナが近づき、短剣による致命の一撃が入った。

 

「グアアアア──ー!!」

 

 それが、とどめの一撃になった。古龍フォルサクスは、絶叫を上げながら、地面に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




*暗月の襲撃

ラニの従者、ブライブが振るう戦技。前方へ高く飛び上がり、冷気を纏わせた剣で敵を斬る。暗月の女王となったラニの祝福を受けた、その刃はより、冷気を帯びている。

*祈祷:血綬の翼

純血騎士サングリアが振るう。坩堝の力と血盟の力を混ぜ合わせた祈祷。使用には、神秘と高い体力を要求する。血と坩堝、生命に近い、それらを扱うには、高い体力も要求されるのだ。
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