史上最強の弟子ケンイチ 〜僕は二周目をこう生きる〜   作:眠眠バカ

1 / 4
試しに書いてみました、よろしくお願いします。
死に方が酷いかもしれないので注意です。


第1話

「梁山泊」

それは無敵超人、風林寺隼人を長とする武術を極めた6人(現在は諸事情で5人だが)の達人が集い、生活する場所である。

 

そんな武術の聖地とも呼べるこの地で、修行に励む一人の男子高校生がいた。

 

名前を白浜兼一。現在、闇の育成機関YOMIと死闘を繰り広げている人物である。

 

彼に武術の才能はなかった。しかし、彼は自分の信念を貫くため必死に努力を続け、その結果、先のD of DにおいてYOMIのリーダーである叶翔を打ち破るという偉業を成し遂げたのだ。

 

そして今日も、次の戦いに向け兼一は鍛練を積んでいた。

 

「あぱー。兼一、アパチャイと組手やるよ」

 

「ひぃぃっ!」

 

アパチャイ・ホパチャイ、裏ムエタイ界の死神と呼ばれるこの男は梁山泊で一番手加減を苦手としている。

その手加減のなさを何度も身をもって体験している兼一にとってはアパチャイとの組手は恐怖でしかなかったが、今も敵は強くなり続けていると思うと逃げることは出来ない。

 

「(流石に、昔よりは手加減出来てきてると信じたい・・・)」

 

そう願いつつ兼一はアパチャイに対峙し拳を構えた。

 

「兼一さん、頑張ってですわ!」

 

「あっ、美羽さん!」

 

その二人にお茶を淹れ兼一に声援を送るのは美羽という少女。

彼女は無敵超人の孫娘である。

彼女こそが、兼一が梁山泊の門を叩くこととなった切っ掛けであり、兼一の想い人でもある。

彼女の存在は修行においても兼一に非常に大きな影響を与えていた。

 

美羽の声援に拳を構えたまま顔だけを美羽に向け返事をする兼一。

 

 

 

 

 

それが全ての失敗、不幸だった。

 

 

 

 

 

「あぱ!ケンイチ避けるよ!」

 

「えっ?」

 

拳を構えたことで、臨戦態勢であると判断(勘違い)したアパチャイが手加減に失敗した蹴りを放ったのだ。

 

「うぐぁぁぁ…っ!!」

 

「け、兼一さん?!」

 

硬直する美羽とアパチャイ。

アパチャイの蹴りを防御もできずまともに受けてしまった兼一はサッカーボールの如く吹っ飛ばされていく。

 

しかし、不幸はそれだけではなかった。

哲学する柔術家、岬越寺秋雨とあらゆる中国拳法の達人の馬剣星はそれぞれが経営する診察所へ、長老は世直しの旅に、喧嘩百段の異名をもつ逆鬼至緒は警視庁の依頼でこの場にいなかった。

更には、いつもアパチャイの近くで組手を見物し吹き飛ばされる兼一を鎖鎌の鎖で受け止めていた、剣と兵器の申し子、香坂しぐれも刀狩りで外出中だった為に、吹き飛ばされる兼一を受け止める人がいなかったのだ。

 

「(こ…れ、いつもの蹴りより、強…)」

 

そんなことを考えながら、兼一は外壁をぶち抜く衝撃によって完全に意識を手放した。

 

 

 

 

 

「…あれ、ここはどこだ?」

 

意識を取り戻した兼一は見たこともない部屋にいた。

一面が真っ白で何もない空間、梁山泊にこのような部屋はなかった。

兼一は混乱した。僕は先程まで確かに稽古をしていたはず、と。

 

「ここは無の空間ですよ、白浜兼一君」

 

「誰っ?!」

 

突如、空間に聞き慣れない声が響く。その直後、背中に翼をもつ男が姿を現した。

 

さっきから何が起きているのか全く理解できないが、この場所が普通ではないことは納得することにした。

翼の生えた人間など地上では見たことがない。

 

だが、何故自分がこんな場所にいるのか分からない、正確には、分かりたくないだけでその可能性を信じたくはなかった。何故なら…

 

「私は一般的に神と呼ばれる存在だ。そして、君がこの場に呼ばれた理由は…死んだからだよ。」

 

「そ、そんな…嘘だ…」

 

自身の死亡、信じたくもなかった可能性を突き付けられ、兼一は絶望に顔を歪ませた。

もう、美羽と会うことが出来ないのだ。

近くでその笑顔を見ることも、叶翔と交わした約束を果たすことさえも…。

 

「(それに、僕の不注意が招いた事態なのにアパチャイさんが責任を感じてしまう。みんながどうなってしまうのか…)」

 

「私が嘘を言ってどうする。ちなみに、君が死んだのはアパチャイだったか、あの男の蹴りではなく、外壁を突き破った先の道路で頭をトラックに潰されたのが原因だ。安心したまえ」

 

神を名乗る男は兼一の心を読んだのか、自身の直接の死因がアパチャイの蹴りによるものではないと説明した。しかし、問題はそんなことではない。

 

「神様、お願いします!僕をどうか生き返らせてくれませんか。僕には約束があるんです!」

 

「残念ながら、それは出来ない。神である私でも輪廻を弄るなどしてはならぬ、禁忌なのだ。心苦しいが、諦めなさい」

 

「そんな…。あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

一縷の望みも絶たれ、今度こそ成す術がなくなった兼一は大声をあげて泣いた。

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたかい、ってそんなはずはないか。兼一君、君には現時点で二つの選択肢がある。一つは天界に行くこと。そして二つが輪廻転生を受けることだ。ただし、どの世界にどの生物として生まれるかは君の希望が通る域ではない。どうする?」

 

「…僕は…」

 

転生する世界がランダムで、僕が生きていた地球に生まれ直す可能性がどれ程あるのか分からない以上、天界で美羽さんが亡くなるまで待つのも悪くない、か。

 

そう判断し、天界で美羽さんを待つ、と呟こうとした時だった。

兼一の視界がぐにゃりと曲がった。

 

「何が起こっている?!一体どこの神が…。に、人間だと?!人間の分際で輪廻をねじ曲げるというのかッ!」

 

この現象の原因を逆探知していた神が声を荒らげた。

神も動揺することがあるのか、と驚きながらも兼一は再び意識を手放すのだった。

 

 

 

 

 

 

「なにっ、兼一君が?!」

 

アパチャイからの涙を流しながらの一報を受け、診療を中断し現場に向かった岬越寺秋雨はその光景に絶句した。

 

「これは…」

 

道路一面に飛び散った血、急ブレーキの跡、その先に停車している2tトラック。そして、頭を潰され脳をぶちまけた、悲惨な兼一の姿がそこにあった。

 

「…あぱ…」

 

「!? …秋雨どん!」

 

「…」

 

アパチャイとともに到着した剣星の呼び掛けに、秋雨は静かに首を横へと振る。

 

兼一が事故にあったと聞いたとき、どんなに酷い怪我でも絶対に治すつもりだったし、我々が鍛えあげた弟子は、簡単に死ぬほど柔な特訓はしていない、秋雨はそう思っていた。

 

しかし、これは最悪だ。頭を轢かれ脳がぐちゃぐちゃに潰れている。どうみても即死だ。

これだけは、秋雨をもってしても蘇生させることは不可能だった。

 

「兼一さぁぁぁん!!!」

 

兼一の遺体の傍で泣きじゃくる美羽、トラックの運転手と思わしき人物も、膝をついて涙を流し茫然としていた。

 

「(蘇生は不可能…。輪廻をねじ曲げてでも救う意気込みだった私が何も出来ないとは…情けなさ過ぎる)」

 

秋雨は己の無力さを嘆いた。

 

「(…いや待て、「輪廻をねじ曲げる」だと…?これだ!!)」

 

「秋雨…さん…?」

 

しかし、秋雨は決して考えることを諦めなかった。

秋雨は直ぐさま右手を飛び散った兼一の血で染め、道路に奇妙な紋様を描きだした。そして、数分後それは完成する。

数学の式(と思われるもの)のみで作られた紋様、一見すると魔方陣のようにも見えるそれが何を表しているのか、本人以外全く分からないものの、美羽たちには秋雨の使う数式に思い当たる節があった。

 

カオス統計術、それは秋雨が哲学をしていくなかで極めたものであり、その精度は未来予知をも可能にするほどに完成されている。それを秋雨は道路に書いているのだと。

 

兼一の亡骸を秋雨が紋様の中心へと運ぶ。

その顔には秋雨の決意が伺えた。

 

「(蘇生が無理だとしても、これで兼一くんを救ってみせる!)」

 

紋様の中央に立った瞬間、秋雨と兼一が光が包まれる。

その様子を目の当たりにし、その場にいる者全員が声を挙げていたのだが、こちらにはそれを聞く余裕など残されていなかった。

 

「(…ぐっ。苦しいのは計算から分かっていたがこれ程とは…。しかし、例え私の寿命が縮もうとも兼一くんは救ってみせる、達人にしてみせる…!)」

 

長い発光現象が終わると同時に、秋雨はその場に倒れこんだ。

起き上がろうにも力が入らない。

 

「秋雨さん!?」

 

「頼んだぞ…過去の私…よ」

 

意識を失う秋雨の最後の呟きは、この場の誰にも届くことはなかった。




感想や誤字脱字などありましたら、ご指摘お願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。