史上最強の弟子ケンイチ 〜僕は二周目をこう生きる〜   作:眠眠バカ

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イジメはダメ、絶対。

オリジナルの設定、そして突然飛ぶ時間

上手く文章が書けないから辛い。
もっと勉強しなくては。


第3話

朝宮龍斗は自身の身体に大きなコンプレックスを感じていた。

同年齢の少女大半にも劣る身長に、軽度ではあるが持病の喘息。二つが相俟って、見た目通りの弱々しい身体である。

 

休み時間も外で遊ぶことはなく、クラスメイトの誘いも断って、いつも本を読んで過ごしていた龍斗がイジメを受けることとなったのは、ある意味で仕方なかったのかもしれない。

 

今日も、自分より体格の良い3人を相手に、気の弱い龍斗は反撃することもできず、他のクラスメイトも見て見ぬふりで誰も助けてくれない。

心身ともに弱っていた、そんな時だった。

 

「やめろー!」

 

声と共に3人の前に割り込んできたのは一人の少年。龍斗は助けがきたことに一瞬喜んだものの、その姿を見て落胆した。

現れたのは、龍斗より僅かに背が高いだけの小柄な少年だったからだ。

 

そして龍斗の懸念通り、少年は3人から滅多打ちにされた。龍斗の身代わりとして。

 

「げほっ…いってぇ」

 

「ねぇ、なんでぼくをたすけたの?きみにかちめなんてなかったのに…」

 

助けに来てくれた恩人に対し酷い言い様であるが、それでも龍斗は聞かずにはいられなかった。

今回の場合、見なかったことにして無視をするのが普通だ。小柄な少年なら尚更のこと。

もし自分が逆の立場だったら無視することを選択していたと龍斗は語った。

 

「なんでって、ヒーローになるのがぼくのゆめだから。かちめがなくてもたちむかうのがヒーローでしょ?」

 

「ヒーロー…」

 

勝ち目がなくても立ち向かう。龍斗は少年の言葉に衝撃を受け、そして憧れた。

口だけでなく実際に立ち向かってみせた少年の心の強さに魅かれたのだ。

 

「ぼくは、しらはまけんいち。ともだちになろうよ」

 

「え、えっと…あさみやりゅうとです。」

 

桜散る5月の始め、逆行により兼一の人格が変わる一か月前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が逆行を経験してから3年が経った。

 

6歳になった僕は今、小学1年生として緩涼小学校に通っている。

これまでの3年間、梁山泊の修行法を自分の記憶を基にアレンジし、毎日欠かさずやってきたので、内功と外功を相応に上手く鍛えられたと思う。

 

そして何より制空圏、これを習得できたのは大きい。

初めて制空圏を発動できた日は、開展から緊奏へ至ることができたという喜びで、夜は中々眠ることができなかった。

 

とはいえ、長老の秘技である「流水制空圏」を習得するにはまだ修行と経験が到底、いや、全然足りない。

 

逆行前に一度習得したという事もあり、今でも「それっぽい」ものは出来るのだが、それは同格以上にはとても使えない実用性に欠けたもの。

更に経験を積み、その上で長老との0.0002%組手をしない限り習得は無理であろう。

だけど、長老がそう簡単に秘技を教えるとは思えない。何せ秘技だし…。

 

「兼一、またボーっとしてる。何考えてるのさ」

 

「何でもないよ龍斗。今日のヒーローごっこはどうしようかと考えてただけ」

 

今後の修行計画を考えていると、隣を歩く少年に声をかけられた。

朝宮龍斗、拳聖との出会いによって殺人拳という闇に取り憑かれてしまった人であり、僕の大事な友達である。

 

「そっか。でもヒーロー役は僕がやるんだぞ!」

 

「おいおい、…まぁいいけど。駄菓子屋に着いたし休憩して行こっか」

 

「いいね。僕は駄菓子とガチャガチャもしていこうっと」

 

因みに、今の龍斗のマイブームの一つはヒーローごっこ。最近は毎日のようにそれで遊んでいて、僕はいつも悪役をやっている。

別に配役に異論はないのだが、僕の精神年齢が18歳なだけに少々退屈な遊びである。

 

そしてもう一つが、「あばら屋」という駄菓子屋にあるガチャガチャ。

 

龍斗はそのなかでも特に、ラインナップに統一性が全くないカオスなガチャガチャを気に入っている。

簡潔に言うと、ネコバッジと太陰太極図のバッジが入っているアレだ。

 

龍斗は今日まで既に5回ほどガチャガチャをしているが、未だにお目当ての太極バッジは手に入っていない。

それもそのはず、龍斗が太極バッジを手に入れるのは「初めての決闘」のあと、ガチャガチャの中身を全部回してやっとなのだ。今当たるわけがない。

 

それに対して、早く梁山泊との繋がりが欲しいと思っているこちらは、この二週間、龍斗にとってはハズレであるネコバッジが当たるのを今か今かと待ち続けていた。

 

さて、今日は何が出ることやら。

 

「いくよー!えいっ!」

 

「(ネコバッジこい、ネコバッジこい、ネコバッジこい、ネコバッジこい、ネコバッジこい……)」

 

お金を入れてレバーを回すと、一つのカプセルが転がり落ちる。

龍斗は緊張した面持ちでそれを手にし、中身を確認する。

そして「はあ」と龍斗が溜息をついた。

知ってはいたが、またハズレだったようだ。

 

「龍斗、今日は何が出たの?」

 

「ネコバッジだよ。かっこわるいし、いらないからあげる」

 

祈りが通じたのか、龍斗がネコバッジを当てた。

よくやった龍斗!僕は心のなかで称賛の言葉を述べ、龍斗がいらないと言ったネコバッジを有り難く貰うことにした。

 

「本当?じゃあ貰おっかなー」

 

「えっ…、兼一ってそんな趣味だったの~?」

 

受け取ったら受け取ったで何故か揶われる僕。

流石に恥ずかしかったので「もしかしたら、妹が欲しがるかもしれないから」と言って龍斗を無理やり納得させた。

その後、妹のほのか(2歳)のことで龍斗から質問攻めにされていた時、遂に待ち望んでいた彼女がやってきた。

 

 

「あのう…」

 

「ん、どうしたの?」

 

「これのやり方、教えてくださいですの!」

 

振り向くと、硬貨を握りしめた美羽さんが立っていて、その手はガチャガチャの方向を指さしていた。

やっと巡ってきたチャンス、逃してなるものかと龍斗が口を開く前に僕が応対する。

 

「えっとね、ここにお金を入れてレバーを矢印の方向に回すんだ。そしたらカプセルが出てくるよ」

 

「ありがとうですの!早速やってみるですわ!」

 

僕の言われた通りに美羽さんがガチャガチャを回す。その結果は…

 

「太極バッジいやぁぁ!!ネコバッジがほしいですわぁぁ!!」

 

やはり惨敗…淡い期待を打ち砕かれていた。

思いのほか煩い泣き声に少し吃驚したが、僕は予定通り行動に移す。

 

「あのさ、このネコバッジあげるよ。バッジも欲しい人に貰われた方が幸せだろうし」

 

「で、でもおじいさまからは「知らぬ人から物を貰うな」と言われていますから、怒られてしまいますですわ…」

 

僕がネコバッジを差し出すと美羽さんは一瞬嬉しそうな表情を見せたが、長老の教えに背くことはできないと涙ながらに断ってきた。

しかし、断ってくることはこちらも織り込み積み。

お互いのバッジを交換するのはどうかと提案すると、美羽さんは一転して、明るい表情を見せた。

 

「うわー、本当にいいんですの?ありがとうですの!」

 

愛くるしい笑顔を浮かべ去っていく美羽さんに僕も龍斗も思わず見惚れていたが、駄菓子屋から突如として起きた騒音と罵声によって現実へと引き戻される。

当時の記憶から、地上げ屋が駄菓子屋の店内を荒らし始めたことを察した僕は、お婆さんを助けるべく龍斗とともに急いで店へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「どうせ老い先長くないんだ、さっさと立ち退いたらどうなんだ婆あ!!」

 

そんな罵声が響いてきたのは、ガチャガチャのやり方を教え、その上欲しかったネコバッジを交換してくれた、優しい男の子とそのお友達の方にお礼を言って、おじい様の元へ戻ろうとしていた時でした。

近くの木の影から様子を窺うと、如何にも悪そうな男三人組がお婆さんに掴みかかっています。

これは見過ごすわけにはいきません。

 

「ど、どうしよう…?」

 

「…龍斗は近くの大人に助けを呼んで来て」

 

「え…ま、待って…」

 

時を同じくして、先程の男の子たちもまた入り口付近から店内の様子を窺っていました。

 

おかっぱ頭の男の子は怯えていましたが、それに対して彼の様子は全く違いました。

何とあの男たちに挑もうと立ち上がったのです。

拙いと思った私は、慌てて駆け寄り、説得のために彼の腕を掴み振り向かせます。

 

「…」

 

「えっ?!」

 

その時でした、私は彼の目に不思議な光を宿しているのを見たのです。

 

その目に、彼の強い意思を感じた私は掴んでいた手を離してしまいます。

 

腕に触れ初めて気づきましたが、彼は相当トレーニングを積んでいるようで、身体は筋肉で引き締まっていました。

それがスポーツで培われたものなのか、武術によるものなのかは、私にはまだ正確に察することはできません。

しかし、その腕力を以て不意をつけば一人くらいは倒せるだろうと判断して私は引き留めるのをやめました。

 

私は彼に目配せします。彼も分かっていると頷き、一呼吸した後、私たちは同時に店内へと駆け出しました。

 

「何だてめ「前蹴りッ!正拳突きッ!」うぐぉぉ…」

 

急な襲撃に不意をつかれた一人が、股間と脇腹に蹴りと突きを受け倒れました。

手加減はされているものの容赦ない攻撃です。

 

男が倒れたことで漸く事態が分かった残りの二人でしたが、私が隙を逃す訳がありません。

鳩尾と顎に一撃ずつ与え、それぞれ戦闘不能にしました。

 

「お婆さん、大丈夫ですかですわ」

 

「あい、おかげさんで」

 

「あの方たちはいつもここへ?」

 

「あい、おかげさんで」

 

「そうなると、やはりおじい様を呼んだ方が…」

 

お婆さんの証言を聞いていたところ、すぐ後ろでカランと金属音がしました。何事かと振り向くと、床には落ちたナイフ、そして彼によって組伏せられている、私が倒したはずの男の姿がありました。

 

「(か、完全に油断してました…。危ないところだったですわ)」

 

彼がいなかったら、そのナイフは私に突き刺さっていたかもしれない。

全員倒した気になって油断していた自分を反省し、助けてくれた彼にお礼を言うと、「貴女が無事でよかった」と思わぬ返事を貰いました。

おじい様と梁山泊の方々以外に人と交流することが殆ど無かった私には、他人から心配されることなどありませんでしたから、これには返答に詰まってしまいました。

 

「ち、近くにいた大人…連れてきた…よ…?」

 

「ほっほっ、少年の案内で連れて来られたわ。それで…、悪は何処かのぉ」

 

困っているときに、彼のお友達の男の子がおじい様の肩に担がれてやって来ました。

 

これは連れて来たと言えるのでしょうか。

危うく言いかけたツッコミを慌てて心にしまいます。

 

そしておじい様、気当たりを放つのをやめてくださいまし!私まで動けませんわ!

 

「おじい様、ここですわ!」

 

「美羽、無事でなによりじゃ。そして、そこの少年。見事じゃったぞ」

 

「いえ、僕なんて大したことないですよ。美羽さんですか、そちらの方が多く倒してましたから」

 

「そ、それは違いますわ!最後にとどめを刺したのは」

 

「まあまあ、ここは引き分けということでよいじゃろう。ところで少年、このあと時間宜しいかの?」

 

私と同じくらい幼い子供でありながら、称賛に対し謙遜する様子に、どうやらおじい様も興味を持ったようで彼をお茶に誘いました。

それはつまり、梁山泊へ案内するということです。

 

初対面の人からの突然なお誘いに、彼もとても驚いた様子でしたが、気のせいでしょうか。

私には彼がどこか喜んでいるようにも見えたのでした。




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