ソシャゲヒロインに刺されるほど愛される主人公になってた……   作:ラブコメ

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第1話 おいおいおいおい、刺されちまう。おいおいおい

 オレは所謂、ゲーマーオタクってやつだった。人には気を遣ってしまうから、自分で完結する趣味が好きだったから、気づいたらハマってしまったんだろう。

 

 

 特に一番ハマったのは

 

 

【天空ロストプリンセス】

 

 

 

 と言う作品だろう。スマホがあればゲームができる、ソーシャルゲーム。所謂ソシャゲってやつだ。

 

 

 世界観が割とシビやで暗めの雰囲気もあった。キャラデザとかも良いのが多かったし、単純に面白かった。

 

 

 

 ──ただ、一番印象に残っている部分は

 

 

 

【主人公がヒロインに刺されて、最後に死んでしまう】

 

 

 

 と言う点だ。【天空ロストプリンセス】は10周年でサービスを終了したが、その時にストーリーの完結も同時に持ってきた。

 

 最後の最後はハッピーエンド、世界が救われたのだがヒロインに刺されて死亡をしてしまう。

 

 

 いやいやいやいやいや!? なんでそうなる!?

 

 

 

 いや、まぁ……そんな気配はあったけどね!? 

 

 

 ヒロインが使う力が【精神的】に大きな負荷がかかるみたいで依存みたいな雰囲気を出し始めるし。世界的にも人が死ぬイベントが多いから、それでさらにストレスとか、かかったりするし。

 

 ヒロインが徐々に病んで行ったり、好感度も上がって行ったりする。最終の話で【好感度100】を超えて、立派なヤンデレとなっていた。

 

 

 そんで持って刺される。

 

 

 ヒロインはとんでもないことに、複数人存在しており好感度が100になった瞬間に刺してくるヒロインもいる。

 

 ただ、本編ストーリーとは関係ない【個別キャライベント】みたいなのでそう言う風になるパターンもある。本編とは関係ないから死んでしまっても、ひょっこり主人公は何事もないようにストーリーを進めていく。

 

 

 

 主人公は正直、ネタにされていた。

 

 

 

【刺される主人公】

【こいつ何回刺されるんだよ笑】

【包丁の方がヒロイン】

【好感度を上げたら、死亡するラブコメ主人公】

 

 

 

 オレもよくネットでネタにしていた。そう、ネタにして笑っていた。それはプレイヤーだからだ。

 

 

 プレイヤーとして外から見ていたからだ。

 

 

 

 

 でも、

 

 

 

 

 

「まさか、【刺される主人公】になるなんて、どうじでだよぉぉぉぉ!?」

 

 

 

 

 オレは、気づいたら【天空ロストプリンセス】の主人公【ワレン】になっていた!!!!!??

 

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 オレは……確か、高校生で……。帰りの時に学校の階段で足を踏み外して倒れた。

 

 

 そこから、記憶がない。ただ、不思議と当たりは眩しかった。

 

 

 ──オレは眼が覚めると、浜辺に寝転んでいた。ハワイみたいに海が凄く綺麗に澄んでいる。

 

「どこだ? ここ……」

 

 

 幻想的だった。空には大きな島のような物が浮かんでいた。さっきも思ったが海は異常に澄んでいる、日本に居たわけだが……。いや、海外でもこんな場所はあり得ないだろ。

 

 空に島があるんだぞ?

 

 

 景色に異様な違和感を俺は抱いた。それだけではない。前より視線が低いような気がしたのだ。

 

 あれ? 高校生にしては体が小さいような、手足が短くないか?

 

 

 違和感に気づき、鏡のような水面に顔を近づけてた。そこには黒髪黒目のイケメンが……誰だよ、これ。

 

 

 あれ、見覚えがあるぞ!?

 

 

 これって……

 

 

 

 

「まさか、【刺される主人公】になるなんて、どうじでだよぉぉぉぉ!?」

 

 

 

 

 いやいや、落ち着けって。やばいけども落ち着け。まだオレが【天空ロストプリンセス】の主人公になったと決まったわけじゃない!!

 

 

 空には島が浮かんでたり、馴染みある格好であるけども決まったわけじゃない!!

 

 

 

 もう一回、水面で自分の姿を確認する

 

 

 うん、これは【主人公】の【ワレン】だな!!

 

 

 オレは、ヒロインに刺されて死ぬソシャゲ主人公になってしまっていた!!!

 

 

 

「――ソシャゲ主人公かよぉ!? しかも最後の最後に刺されて殺される奴じゃねぇか!?」

 

 

 

 まじか、外野の外だからソシャゲで楽しんでたけど、自分が主人公となると話が変わってくるぞ!?

 

 

 どうするどうする……まずは冷静になろう。この状況を冷静に客観的に分析して最善手を取るべきだ

 

 ──さて、これからどうするべきか。今の主人公、オレとも言えるが年齢的に10歳ほどだ。原作は13歳からスタートする。

 

 原作まで3年もある。これはいわゆる原作ブレイクとかをして自身の都合の良い天下にしていくべきかと考えた。だが……

 

 

「ヒロインにしかラスボスは倒せないんだよなぁ」

 

 

 この世界はいわゆる王道バトルファンタジー、主人公とヒロイン達は出会い共に成長をして、世界の害悪である魔王を倒す。しかし、魔王を倒すことが出来るのはヒロインだけなのだ。

 

 

「もし、下手に原作を変えすぎてヒロインの力が覚醒しなかったらヤバいな……」

 

 

 

 ヒロインが魔王を倒さないとこの世界は終わる。しかもヒロインが魔王を倒す力は長い旅の途中の仲間や主人公への恋心とか、奇跡の連続が大きな力になるとか設定に書いてあった。

 

 

「これは……原作通り、オレは動いた方が良いのか?」

 

 

 主人公の役割は大きい。何せ、ヒロインと恋仲になるのだから。絆の力!!!物凄い力なのだ。

 

 普通なら原作を壊さないように動くのが正解なのだろう。

 

 

「でも……ヒロインの好感度上げ過ぎたら。主人公死んじゃうんだよなぁ」

 

 

 ヒロインは最終的にヤンデレみたいになって主人公を刺してしまう。いやだ! 死にたくないよ!!!

 

 ヒロインは複数いて、全員ヤンデレ化してしまう。シナリオライターが【ヤンデレ好き】で知られる【ゴッドダン】と言う作者だからだ。

 

 各作品、全部ヤンデレで刺してきたりするからね。まぁ、ファンだったけど、それって外から見てるからなんだよなぁ

 

 当時、【天空ロストプリセス】が終了した時も

 

 

 

『この作者本当にヤンデレ好きだよね』

『この男が描く作品は大体刺してくるよ』

『おのれ、ゴッドダン!!!』

『刺されても、ヒロイン可愛いから、オッケーです』

 

 

 

 こんな感じの世間の反応だった。オレもネタにしてたなぁ。

 

 

 

 うーむ、原作通りにしないとヒロインは覚醒しないかもしれないからな。ちゃんと原作通りに行動をして……

 

 

 これでEND……いやいやいや冗談じゃない!!! 死ぬなんて御免だよ!!!

 

 オレ、一般高校生だったんだよ!! 陰キャだし!! 死ぬのなんて度胸ないし、怖いんだよ!

 

 

 オレの体は震えていた。このままでヒロインに滅多刺しされる運命が待っているかもしれないからだ。

 

 

 

 

 

「だが、原作通りにしないと世界が……しかし、ヒロインが力を覚醒させないと……でも、オレが死ぬ……」

 

 

 

 最終的にヒロインは最強クラスになるので逃れられない。原作通りにして世界を救った後に逃げることもできる。だが、その時にはヒロインは最強クラスだ……。主人公である俺でも逃げられるか……。

 

 一応は【最強】になるのは【主人公】だ。ただ、【ヒロインは複数】居るし、流石に全員が包丁持って襲ってきたらやばい。

 

 そもそもオレを刺すかもしれない存在が世界にいるのが怖い。

 

 

 

「……世界を犠牲にして自分を守るか。それとも自分を犠牲にして世界を守るか」

 

 

 オレは悩んだ。

 

 

「いや、自分が大事だ」

 

 

 速攻でオレは結論を出した。世界よりも自分だ。

 

 

 

「でも、世界も滅んだら……それも嫌だな。世界が滅びてもオレは生きれるけど、美味い飯とかが消える。それって生きてる意味もないし」

 

 

 そうだ、世界もそれなりに大事である。一番目、何よりも優先するべきは自分。そして、二番目に世界。

 

 

「……これはあれだな。なるべく原作通りにしていきながらもヒロインからは嫌われる選択肢が良いのではないだろうか?」

 

 

「主人公の好感度が上がらないように……。好感度が世界を救う為のピースの一つだけど、そこはどうにか別のことで補って、テコ入れして……。なるべく原作通り……これで世界が壊れたら仕方ない……」

 

 

「そうだよ!! 一生懸命やって世界が壊れたら仕方ないよ。最悪、滅亡した世界でも主人公スペックでオレは生きていけるし……」

 

 

「オレが死なないようにする。というのを念頭においてやれるだけやってみよう。それでだめならしょうがないじゃないか!! しょうがないしょうがない!!」

 

 

 

 オレは自分自身でうんうんと頷いて納得をした。しかし、ヒロインから好感度を稼がずにある程度原作を順守させ、尚且つヒロインの力を覚醒させる。

 

 

 相当難しいが、今後の方針はこんな感じになるだろう。

 

 

「──さて、先ずはヒロインから好感度を上げない為にはどうしようか。ふーむ……あ、本来のキャラとは真逆の性格になるとか良いんじゃね?」

 

 

 

 ──ヒロインが言っていた。

 

 

『謙虚で正義感があって、誰にでも遠慮してしまう。それでいて泥臭くて、一生懸命。ボロボロになりながらも守ってくれる、そんなところが良いって』

 

 

 これヒロインの共通認識だったはずだ。ふむ、では傲慢で誰に対しても遠慮せず、更には努力一切せずに敵を残虐にボコボコにするスタイルでいこう。

 

 

「……こんな感じか? お前等、オレの足引っ張るんじゃねぇぞ? 余計なお世話なんだよ、オレ最強だし」

 

 

 

 ふむ、明らかに本来のキャラとは真逆の対応。好みから外れれば好かれる可能性は低くなるだろう。

 

 

 

「あと、努力は一切見せないスタイルでいこう」

 

 

 更に今後、主人公への好感度の代わりに色々テコ入れもしたい。具体的な案は検討しなくてはならないが、いざテコ入れをしようとした時に自由に動けないのは不味いな。

 

 

「十歳くらいだよな。今のオレ……今の内から鍛えておくか!!!」

 

 

 オレは決心をした。そして、ここから始まったのだ。

 

 

 主人公オレが好かれないという所以外、なるべく原作厳守をして、世界を救うために翻弄する俺の物語が!!

 

 

 

 

◆◆

 

 

 この世界に来てから三年が経った。最近になって気づいたが、これは転生なのかもしれない。

 

 

 高校の階段から落ちた時、俺は死んでしまった。そこからここに転生をしたのが正しいのかもしれないなぁ……なんて考えている。

 

 

 結局、夢ではなかったしね。夢かと思った時もあったけど、三年も過ごしたら流石に現実だと受け入れざるを得ない。

 

 

 

 ──三年がすぎて、原作開始はすぐ目の前に迫っている。毎日毎日、体を鍛えているオレ。日課の素振りをしようとすると、

 

 

 

【背負っている剣が俺に話しかけてくる】

 

 

 

 

『兄貴!! 今日も訓練ですか!?』

『そうだな。そろそろ、始まるからな』

『あ! 兄貴が前言ってた原作ストーリーって奴ですね!?』

 

 

 

 

 剣が話しかけてくるなんて前世ではありえないがこの世界では普通なのである。剣はオレの心に直接語り掛けてくる。

 

 

『そうだ。そろそろ世界の命運をかけて戦う序章がここから始まるんだ……上手く立ち回れるか緊張してきた』

『兄貴なら、負けませんよ!!』

『ふふふ、当たり前だ。オレは負けない。だが、世界を救えるかは別問題だ!!』

 

 

 

 

 主人公、であるから流石に高スペックだし優遇されている。周年ガチャでは必ず主人公が高スペックで排出されてたからな。

 

 

 この多大なる才能をオレは3年の修行で昇華させた。

 

 

 既にオレの実力は三周年限定ガチャで排出されるプレイアブルキャラクタークラスになっている。

 

 

 そして、この話してくる魔剣。主人公が生まれつき持っている剣だけど【ルシファー】と言われる悪魔が封印されている。これが超強いのだが、色々あってなんとか手懐けることに成功した。

 

 

 ゲームだと時折、主人公の体を乗っ取ってくる雰囲気を出してたんだけど……なんとか説得に成功した。

 

 

 具体的には精神世界で毎日殴り合いをして、気づいたらなんか懐いていた。ヤンキー世界かよ……。

 

 

 この剣の【ルシファー】の力を完全に解き放てれば10周年限定ガチャの【主人公】の強さになれる。もう最強だし、サ終の性能なんだけど、流石にそこまでの力はまだ至っていない。

 

 

 

 

始まりの島で三周年スペックでいきなり出てくる主人公……。まぁ、三周年から始めるプレイヤーとかリセマラすればよくあるシチュエーションとも言える。しかし、問題はそんな事ではない。

 

 この世界は現実。更にはオレの目的は強さだけでどうにかなるものではない。

 

 

 

 

『兄貴! 頑張ってくだせぇ!!』

『……うむ、やるか』

『覚悟を決めた男の顔をしている兄貴、かっけぇっす!』

 

 

 

 

 こいつ、主人公の体を乗っ取ろうとするタイプの悪魔だったんだけど……まぁ、味方が増えたと思えば良いか。

 

 

 そして、そのタイミングで剣がオレに声を発する!!!!!!

 

 

 

 

 

『兄貴!! 空から魔空挺がッ!!!』

『来たかぁ……ヒロイン。怖いよぉ』

 

 

 

 

 空から小さな独特の形をした細長い胴体が落ちて来た。鉄の羽が片方かけたような比翼。バランスを崩しながらも俺の近くの砂浜に緊急着陸をした。

 

 

『あ、兄貴!! どうしますか!?』

『……上から目線な感じで接するしかないな。何回やったか分からないチュートリアルを現実目線でやることになるとは……』

 

 

 オレはポケットに手を突っ込みながら魔空挺と呼ばれる空を飛ぶ機会の元に歩く。すると丁度、そこから頭の上にスライムを乗せた女の子が飛び出してきた。

 

 

 

 因みにだけど、今のオレは『金髪』、『グラサン』、『耳ピアス』をつけている。理由は【ヒロインが好きになった原作主人公】が『黒髪優しい男』みたいなキャラデザだったからだ。

 

 ──つまり、ヒロインの好きな主人公像の真逆の格好をしていくスタイルだ!!!!!

 

 

 

『あ、兄貴、なんて悪い格好なんすか! 悪魔的にはかっけぇっすけど、人間の女が見たら一発でびびっちまいますよ!!』

 

 

 

 はい、悪魔お墨付きの怖い格好です。これなら好感度は上がらんやろ。

 

 

 

 

「う、うぅ」

「大丈夫か!? レムリア!!」

「スラム兄さん、私は平気……」

 

 

 

 

 

レムリアと呼ばれた少女は銀色の髪にサファイアのような綺麗な青い眼をしていた。彼女こそ主人公と最初に出会うヒロイン、レムリア。ソシャゲ世界ヒロインなので当然のようにデザインは可愛い。

 

 グラマラスなスタイルをしている。凹凸しっかりしている。だが実は八歳という見た目と反する年齢である。そして、彼女と一緒に居るのがスライム。魔物と呼ばれる人に害をなす存在である。

 

 しかし、このスライムは普通の魔物とは違う。彼女の実の兄であるスラムと言う存在だ。本当の姿はスライムではないが訳アリであんな感じになっている。

 

 

 ポケットに手を突っ込んでその場所に向かうと、スライムのスラムが話しかけてくるんだろうな。

 

 

「そ、そこの御仁!! どうか、ここがどこか教えてくれないだろうか!?」

 

 

 彼女の頭の上から語りかけてくる。

 

 

『兄貴、これどうするんですか!?』

『取りあえず、このチュートリアルクリアしないと物語進まんし、旅団にも所属できないからやれやれ見たいな感じで助けるか』

 

 

 

本当なら善行な主人公が当然です、みたいな感じで優しく教えるのだが……

 

「……!!」

 

 ヒロインがじっとこちらを見ている。優しいのが好き。謙虚なのが好き。一生懸命なのが好き。出来る限り優男から真逆を行かなきゃ……!! アイツにいつか殺される!! 不機嫌な感じを出して教えてやろう。

 

 

 ヒロインとは目を合わせないよにしよう…‥ひぇ、ヒロイン怖い!!!!! 眼を逸らして……

 

 

「っち、面倒くせぇな。それくらい知っておけよ、ここは……ナナシ島だ」

「ナナシ島!? そうか、あの島か……レムリア! 傷は大丈夫か?」

「はい、治癒で癒しました!」

「そうか、なら良かった! だが、魔空挺が壊れてしまったな。これでは旅団に……ッ」

「兄さん! 魔物が!!!」

 

 

 

 レムリアが叫ぶ、チュートリアルだ。魔物が襲ってくるのでこれを一緒に倒すらしい。ふっ、優しい主人公なら一緒に倒すが俺は優しくない。

 

 それにスライム三体だし、レムリアだけでも倒せるだろ。

 

 

「私に任せてください!!」

「頼むぞ! レムリア! 御仁は……」

「オレは戦わねぇよ。スライムならお前らで十分だろ」

「そ、そうか!」

 

 

 

 そう言ってレムリアは走り出す。剣を抜いて切りまくる。スライム三体なのであっという間に討伐された。本来ならあのスライムが戦闘システムとか色々教えてくれるんだけど……。

 

 必要ないね。正直、ソシャゲの時のゲームシステムってターンバトル制だけど、現実世界じゃ意味ないし。

 

 

「さて、御仁。ここはナナシ島と言ったな……」

「あ? そうだけど」

「いや、町は何処にあるのか聞いても良いか?」

「それくらい知っておけよ。っち、あっちだ」

 

 

 

 一々、皮肉を入れて行かないと優しい人と思われるかもしれないからね。しょうがない。まぁ、本当ならこれくらいは……普通に答えてあげても良いのだが

 

 

『兄貴! めっちゃ悪い奴っぽくてカッコいい奴っすね!!』

『悪い奴だろ? オレ。これくらい笑顔で答えた方がいいのに一々皮肉を言うんだぜ? 悪魔的だろー?』

『流石兄貴ー! 俺悪魔なんで善人よりそっちの方が好きっスー!』

 

 

 

 本来は主人公は優しい勇者、天使。そう言う例えをされていたが今の俺は真逆。悪魔的な悪い奴だ。

 

 

これならレムリアも俺に好意は持たないだろう。

 

 

「そうか、レムリア。魔空挺を直す材料を――」

「――見つけたぞ。【光ノ末裔】」

 

 

 

 

 

スラムが何かを言おうとした時、空中から声がした。青空に浮かぶ黒い化け物。口から大きな牙を生やして、頭には角も生やしている。

 

 

「くっ、ここまで追って来たか! 【悪魔】!! レムリア、逃げるぞ!」

「いいえ、兄さん。私はここで戦います…‥ッ」

 

 そう言ったがレムリアは倒れた。MP切れてるから戦えないんだっけ? そうそう、ここで主人公が一人で立ち上がって、ボロボロになりながら倒すんだよね。

 

 

『兄貴! どうしますか?』

『本来なら、勇敢にボロボロになりながら私を守ってくれてカッコいい!! ってなる所だから、魔王みたいにアイツ一方的にボコボコにするという真逆のスタイルをする』

 

 

 

 死なれたら困るからね。レムリアには。世界を救うのは【光ノ末裔】って言われてるヒロインだし。ラスボスには光の力が特攻だしね。

 

 あと、この戦闘で実力を認められて【旅団】に入れるから。戦闘能力だけは評価してもらわないと。好感度はいらないけどね。

 

 

 

「盛り上がってるとこ、悪いけど。先にオレとデートしようぜ」

「……人間か。悪魔である我を見ても恐れぬか。まぁ、悪魔など見たこともないのだろうがな」

「まぁね。悪魔って昔話に出てくる化け物っしょ」

「ほう、ならばその恐ろしさは知っているはずだが」

「実際見たらそうでもないね」

 

 

 

 これは本当だ、正直そっちの銀髪美少女ヒロインの方が怖い。刺してくるかもしれないからね。

 

 

「いけない! そいつは本物の悪魔だ! 刺激するな!!」

 

 

 

 スラム……ヒロインの頭の上に乗っているスライムが言ってくるがスルーしておこう。

 

 そして、今まさに目の前の悪魔が剣を持ちオレの胸に突き刺そうとしている。

 

 

 

「危険です! 逃げてください!!!」

 

 

 

 レムリアがオレに言う。いや、怖い怖い怖い怖い!!! お前が一番怖いよ!!! 

 

 

 

「──後悔せよ。この悪魔に舐めた口を聞いたことをな」

 

 

 

 悪魔って血の気多いだな。昔のルシファーもそうだったけども。さて、悪魔はオレの胸に剣を刺しているけども……

 

 

 

「ククク、所詮は人間か……遥か太鼓の世代より人間とは惰弱。弱き存在は死ぬ、それが宿命。よく見たか【光ノ末裔】。これがお前らと関わる者達の末路なのだ」

「そ、そんな……くっ、すまない御仁」

「ご、ごめんなさい……」

「──盛り上がってるところ悪いけど、当たってないよ」

「「「っ!!」」」

 

 

 

おー、三者三様に良い反応するねぇ。

 

 

 

そう、悪魔の剣はオレの胸に刺さらず、ギリギリのところで止まっていた。

 

 

 

「な、なんだ!? これは……()()()()()……だとッ!?」

「正解。もっと正確に言うと1万以下は無効化なんだけど……まぁ、始まりの島のチュートリアルでそんな数値は無理だよな」

「何の話だ……!」

「こっちの話。まぁ、説明する気もねぇよ」

 

 

 

チュートリアルだからね。弱いよね。敵が。大体50+攻撃力だっけ? トータルダメージ65。でも残念なことに俺のHPは三周年クラスなので6500ある。

 

オレの【不可侵の壁】。合計ダメージが10000以上までダメージを無効化してくれる。

 

 

うーん、始まりの島でこのスペックはチート並みだな。

 

 

 

「ご、御仁……あれを受けて、生きているのか……」

 

まぁね。生きてます、常時HP回復もパッシブスキルもあるのでね。心配しなくいいのに。

 

 

「う、嘘……す、すごい」

 

 

ひえぇぇ!!! ヒロインが褒めた!! 怖い!! 好感度は上がらないで!!

 

 

 

 

 

「それで、まだ切り札はあるんだろ? 出し惜しみすんなよ。相手は最強のオレなんだから」

「……な、なんだ!? お前は」

「おいおい、自己紹介は趣味じゃねぇぞ。それより、手札ないんだな? なら、いいか」

 

 

 

 

手に剣を持って、オレはそいつを真っ二つにした。通常攻撃である。大体1万ダメージ。なので一撃で粉砕された。

 

 

 

 

「あ、あり得ん……悪魔である、わ、我が」

「やられる時の捨て台詞は完璧じゃん」

 

 

 

まぁ、チュートリアルだからこの程度の敵しかいないよな。暫く作業ゲーになりそうだけど。

 

 

 

「……そんで、お前等あんな雑魚にビビり過ぎだ。まぁ、いいか。それより女。お前のその服、旅団の服だな?」

「え? あ、はい」

「丁度いい、暇つぶしに旅団に入ろうと思ってた。オレを連れていけ」

「あ、でも、魔空挺が」

「オレの貸してやるよ、感謝しろ」

 

 

 ヒロインにやれやれ、みたいな感じで話しかけた。怖いので眼を逸らしながら。恐怖で小刻みに体が震えてしまっている。

 

 

『兄貴!! ちょっと痛々しかったけど、カッコよかったッス!』

『まぁ、これだけ強く言えば好感度は上がらんだろ。取りあえず旅団には入れて貰わないと困るからな。案内役ってことにしてやる』

『心の底から善行しない辺り、悪魔として尊敬っス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 私の名前はレムリア。今はナナシ島という場所を歩いている。綺麗に整備されている草原の道を歩く。前には金髪で無愛想な男の子が歩いている。サングラスに、ピアス、背中には剣を背負っている。

 

 小声で兄さんが頭の上から話しかけてくる。

 

 

「レムリア……あの子には気を付けた方がいい」

「え?」

「あの、悪魔への一撃を見ただろう。明らかに普通じゃない」

「う、うん。でも助けてくれたわけだし」

「あの力は異常だ。正直に言うと、あの御仁は俺達とは格が違う」

 

 

 確かに兄さんの言う通りだ。

 

 

 あの人が悪魔を倒した時……私も呆気に取られてしまった。見えなかった、私には戦士としての才能があって、強さもそれなりであったというのに。

 

 

『なんだ、あれは?』

 

 

 兄さんがそうつぶやいていた。兄さんが明確な言語化をできず、いや放棄したというべきかもしれない。

 

 

 ──力の質が違う

 

 

 そう表現できるかもしれない。こんな田舎のどこにでもあるような島に、あそこまでの実力者が居るだなんて。

 

 

「レムリア、お前と俺は【光ノ末裔】だ。戦士として、戦いに於いての才能は群を抜いている。その俺達が力の力量さえ測れない。あの悪魔を一瞬で倒した。これは驚くべきことだ」

「兄さん……でも、私はあの人、優しい人かなって」

「正気か? 散々皮肉とかも言ってたぞ」

「私もそれは思ったけど。結局助けてくれたわけだし」

「利用しようとしているのかもしれない」

「でも、助けてくれたのは事実だから」

「……はぁ、そうか。お前がそう言うなら取りあえずはそう言う事にしておこう」

 

 

 頭の上で兄さんが溜息を吐いた。

 

 

「だが、確かにそうだな。悪魔族からお前が守れてよかった。お前は最後の希望。本当に『怪我無くてよかった』」

「『毛が無いのは』兄さんの方じゃ」

「そうそう、今はスライムだからな! って違う! 傷を負わなくてよかったって事だ!」

「あ、そっち」

「そっちしかないだろう!」

 

 

 

 そう言えばあの人の名前を聞いていなかった。声をかけると彼は立ち止まって振り返る。眼は合わせないがちゃんと答えてくれた。

 

 

「あの、名前なんて言うんですか?」

「あ? っち、まぁ、教えてやるよ。ワレンだ」

「ワレンさん、私はレムリアです! こっちは兄のスラム兄さんです!」

「あっそ。興味ねぇよ。雑魚の名前は」

 

 

 

 そう言って再び前を向いて歩きだす。それを見て兄がまた眉を顰める。

 

「むっ、やはり感じの悪い奴だな!」

「そうかな……?」

「……なにか思う所があるのか?」

「えっと、なんだかんだ答えてくれるなって……。本当に鬱陶しいならそもそも無視とかすればいいのに」

「……うむ。そうか?」

「結果だけ見れば、私達はあの人に救われて、旅団に帰る魔空挺貸して貰えて、名前も答えてくれて……本当に悪い人ならどっかで見捨ててそう」

「……うむ。そうとも言えるのか?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「全然、そう思わないが」

「兄さんは大分擦れちゃったのかも」

「むむ! 確かに! レムリアはまだ8()()だもんな!」

「私、ピュアだから分かるのかも!!」

 

 

 私は『早熟』。力も身体的にも成長が他の人より早い。だから、よく兄さんにはピュアと言われている。私がワレンさんに対して思う所を告げていると兄さんはハッとしたように何かに気付いた。

 

 

「もしかして……」

「兄さん?」

「ははーん、もしかしたらあの御仁……」

「兄さん? 何か気付いたなら教えてよ」

「お前に一目ぼれしたのかもな」

「え? あ、ワレンさんが?」

「あぁ。お前と話すとき、目線をキョロキョロさせるだろ? 俺と話すときはそんな事は無かった」

「た、確かに」

 

 

 そういえば、ワレンさん。私と話す時は目線が泳いでたり、小刻みに震えていたような気がする……。

 

 

「ふ、レムリアは可愛いからな。無理はない。恥ずかしいのかもな。そう考えるとこの一連の流れも納得がいく」

「そう?」

「あの御仁、年は13歳、と言った所か。あれくらいの年の子には未だ好きな人にストレートに思いを告げられない子が多い」

「そ、そうなんだ」

 

 

 そ、そうなんだ。わ、私のことが好き……ど、どうしよう、そう言われると意識しちゃうような。

 

 

 

「あぁ、見たところこの島でずっと一人みたいだしな。色々こじらせているかもしれなんな」

「わ、私に一目ぼれ……でも、兄さん私一目ぼれされたことないよ」

「心配するな。お前は渡さない!」

「あはは、兄さん。偶にシスコンすぎ……」

 

 

 シスコンの兄さんに私がちょっと引いてしまった。ただ、ワレンさんが私に一目ぼれか……。でも、なんやかんやで親切だし。

 

 

「旅団に連れていけね……お前と一緒に居たいってか」

「に、兄さん、恥ずかしいからあんまり言わないで」

「取ってつけた理由にも思えるよな。まぁ……あの力の強さは注意した方がいいかもだが」

「そうだね」

「でも、私の中では一目ぼれ説が八割だ」

「に、兄さん、そんな事言われたら……()()()()()()()()()

 

 

 

 ワレンさん、13歳。子供っぽいようで顔カッコいいし、強いし、実は優しそうに思えてきたかも……。

 

 

 

 私は前を歩くワレンさんの背中を見た。こちらを振り返ることはないが、実は歩くペースを調節しているように見える。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 も、もしかして、本当にワレンさん!!! 本当に私のことが!?

 

 

 ちょっとだけ恥ずかしい気持ちになった。

 

 

 

 

◆◆

 

 

ワレン(主人公)『背中を向けてるけど、いきなり刺されないよな? ゲームだとまじでいきなり刺してくるからな』(チラチラ、レムリアを見る)

 

 

スラム(スライム兄)『やっぱりエミリアが気になっているのか。目線も直ぐ外すし』

 

 

レムリア(ヤンデレヒロイン)『うぅ、意識されるとこっちが恥ずかしいよぉ』

 

 




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