ソシャゲヒロインに刺されるほど愛される主人公になってた…… 作:ラブコメ
大空にオレ達は居た。比喩でも詩的表現でもない。魔空挺と呼ばれる鉄の鳥。内装はヘリコプター操縦スペースのような雰囲気に似ている。外装は鳥のような鉄で出来た飛行船。
それが空を飛んでいる。雲とか、鳥型のモンスターとか、島とかも飛んでいる。
中にはオレ、喋る剣、銀髪年齢詐欺ヒロイン、スライムの四人だ。魔空挺は免許がないと操縦できないのでオレは後ろの席に座って不機嫌そうな顔をしている。
前ではヒロインが操縦をしている。流石ソシャゲヒロイン。操縦が上手い。見た目は二十歳くらいの若い色気がある感じなのに、実は八歳、幼女なのだから属性もてんこ盛りだ。
彼女の頭の上には実の兄であるスライムのスラムが乗っている。そして、万が一操縦しながら包丁を向けてこないように、なんとなく彼女から目線を外さないようにしているとオレが持っている【悪魔が封印されている剣】が話しかけてくる。
『兄貴! 兄貴! 魔空挺ってこんな感じなんスね! ただ、兄貴が羽生やして飛んだ方が速くないっスか?』
『まぁね。羽生やして飛べるけど、本来ならこの時の主人公、【闇】の力目覚めてないし、知らないし、そもそもお前とも話せてないし』
『え!? そうだったんすか!? 元々の兄貴って……』
『元って言うか、主人公ね。好感ある優しい奴だよ。【黒ノ末裔】って言うだけで』
『ええぇぇぇぇ!? 【黒ノ末裔】!? えぇ!? ってことは兄貴も【光ノ末裔】と一緒で太古の血筋を受け継ぐ者だったんすね!!』
『まぁね』
今オレがいるのはソーシャルゲーム『天空ロストプリンセス』である。この世界の過去では【災厄】と言われる存在と【光人】と言われる存在の戦いがあった。
【厄災】の末裔が【闇ノ末裔】と言われる存在。そっから色々あって派生したのが主人公の【黒ノ末裔】。
【光人】の末裔がヒロイン達である【光ノ末裔】。レムリアやスラムは【厄災】の復活に備えて、他の【光ノ末裔】を探しているのだ。
「あの、ワレンさん。そろそろデュアル島に到着しますよ!」
「おう、足ご苦労さん」
「いえいえ!」
結構嫌味を言ったつもりなのだが……流石はヒロイン。全然気にしてない。
まぁ、本来よりは好感度下がってるだろうし、良いけどさ。この主人公への好感度も物語では重要だが……。
それを上げ過ぎるとオレが死ぬ。かといって何か代わりの何かを用意しないとラスボスである【厄災】を唯一倒せるヒロインの力が解放しないかもしれない。難しい所である。
意外となにもしなくてもヒロインの力覚醒したりしないかな?
とか考えていると、彼女が所属する【旅団】が存在するデュアル島に到着した。さてさて、取りあえず【旅団】には登録はしておきたい。
──この世界では【冒険者】と言われる職業がある。
依頼を受けて、依頼内容を達成する。魔物を倒したり、護衛をしたり、貴重な道具を採取したりするのが仕事だ。
その【冒険者】が徒党を組んで独自の利益を追求する集団を【旅団】と言う。まぁ、フリーランスで集まって利益を大きくして分配しようぜってやつだ。
【冒険者】は荒くれ者が多かったり、不安定な職業だから集まるのは合理的な集団である。
ヒロインであるレムリア、スラムも【光ノ末裔】を探すため、情報が多い方がいいと感じ【旅団】に入ったのだ。
【旅団】はたくさんあり、レムリア達が入っており、オレが入るのが【閃光の調べ】と言う名前で活動をしている旅団である!!
『なるほど、兄貴はその【閃光の調べ】に入るんすね』
『全力ではやらないけどね。適当にオレが死なないように、原作通り進めつつテコ入れしてヒロインには好かれないように立ち回るだけだ。目的も果たせるし、給料もそこそこもらえるかな』
『全力で働かないのに給料だけはもらおうとするその姿勢! 悪魔として感服します!!』
原作ストーリーでも、先ずは旅団に加入してるからな。
ヒロイン達に好かれる以外は原作通りに進んで欲しい所……。ヒロインであるレムリアがオレの前を歩いてギルドに向かう。
魔空挺が離陸して、そこからオレと剣が彼女達二人の後ろを歩く。
レムリアの後ろ姿を見ながらオレはあることを思い出す。そう言えばレムリアが主人公を好きな理由として顔がイケメンだからと言うのもあった。
優しそうな顔だしな、主人公は。だが、残念今のオレはメイクをしてちょっと怖い顔にしている!!! サングラスもしてるしね!!
残念だったねぇ。好感度は上がらない!!
そんなことを考えながら、ジッと、彼女の後姿を見ていると
「あ、あの、私の背中に何かついているでしょうか?」
「あ?」
「いや、凄い視線を感じてまして……」
「……なんでもねぇよ。それよりさっさと歩け」
「は、はい」
ふむ、やはり刺してくるヒロインなのは知ってるから警戒をしてしまう、無意識のうちにも眼で追ってしまうなぁ。
まぁ、ジロジロ見られて嫌われるかもしれないし。一石二鳥だな
『あ、兄貴!? ジロジロ見て嫌われようとするなんて!? なんて悪魔的な発想!?』
『しかも、見てたとしても見てたことに気づいたお前の方が見てただろ!? って逆ギレして好感度を下げようとする二段構えだ!!』
『こ、これは……!! 天才!?』
悪魔が封印されている剣。【魔剣】はずっと念話でオレと話している。【魔剣】は結構ノリがいいのが特徴だ。
「ほら、やっぱりレムリアに熱い視線を注いでいるな」
「えぇ!? で、でもまだ私の事好きなのか分からないよ!?」
「いや、お前の事が好きなんだろうな」
「……ま、まぁ、ワレンさんカッコいいけど……」
前でスライムのスラムと彼女がひそひそ話をしているな。本来の原作なら【旅団】に行くまで主人公とレムリアとスラムが一緒に話す。それをしないで俺の方を時折見ながらひそひそ何か言っていることはオレを怪しんでいるのだろう。
良い傾向だ!!!
好感度だけはいらない。刺されて死ぬ、これは本当に嫌だ!!
結局、彼女達とは何も話さないまま(良い傾向)、旅団の拠点に到着した。
「あの、着きましたよ? ワレンさん」
「……そうかよ」
「えっと、【団長】に一緒に挨拶にいきますよね?」
「あぁ」
デュアル島にあるマナバ町と言う整備が行き届いているような町。子供とか、手なずけられたモンスターが走り回って遊んでいる。噴水とか橋とか水路とか色々ある。見慣れたような景色である。
本当にゲームのまんまであると何というか見慣れているが逆に驚く。やっぱり、刺されるのもゲームのまんまだったら……。
いや、諦めるわけに行くかよ。【旅団】にまずは入ることだ。
【旅団】に入るかどうかは【団長】と言われる一番旅団で偉い人の許可が必要だ。だがいきなり知らない奴が来ても入れてもらえない。だからこそ、彼女レムリアとスラムに口添えを求めたのだ。
【旅団】、【閃光の調べ】。その拠点はとんでもなく大きい船だ。正確には【魔空挺】と呼ばれる船だ。さっきオレ達がこの島に来るのに乗ってきたのと分類は同じ。
しかし、大きさが桁違いだ。前長70メートルくらいはあるな。今は陸に停まっているが空を飛んだら迫力が凄そうだ。
扉がついており、レムリア達は扉を開ける。
「ただいま戻りましたー!」
「戻ったぞ!」
二人がそう言うと……
「おかえりー! れむりあー!」
「スライムも良く帰ったな!」
「依頼、ご苦労様!」
中に入るとガチャで出る最底辺キャラたちが出迎えてくれる。あ、こいつら全員嫌いだわ。
すぐダブるんだもん。いらないいらない。
『俺の力が必要みたいだな?』
とか上から目線で毎回ガチャで行ってくるし。普通に嫌いなんだよね。どんだけ被るんだよって思っていた。年末まで必死に溜めた石が全部こいつ等だもんな。ユーザーたち全員から嫌われたキャラたちだ。
「おいレムリア、後ろの子は?」
「ワレンさん、です。どうやら私達のギルド『閃光の調べ』に入りたいみたいで、これから団長さんに挨拶を」
「ほぉぉ! よろしくな新入り」
「有望そうじゃな」
「もしかしたら、俺より強いかもなぁ?」
当たり前だよ。お前等、初期Rキャラと一緒にするな! オレはSSRだよ!! しかも三周年スペックだ!!
「はっ、仲良しごっこをしに来たわけじゃねぇ。おいレムリア、さっさと案内しろ」
「あ、はい……」
ポケットに手を突っ込みながらオレは団長が居る場所に向かって行った。レムリアもあんなに不遜な態度を取れば好感度も下がっただろう。
「ここが団長さんが居る部屋です。もしもし、団長ぉーさん入りますよー」
「あぁ、入りたまえ」
中から鋭い女性の声が聞こえて来た。入った部屋は書斎に山積みの書類。何百と収納されている本。そして、床にも本が散らばっている。
「ありゃありゃ、またこんなに」
「すまない、レムリア。どうにも私は汚くするのが得意のようだ」
「いえいえ、また綺麗にすればよいだけですから」
「そうかい。また頼む。さて、聞きたいのだが君の隣にいるのは?」
「あ、こちらはワレンさんです。実は先程、命を救われまして。凄く強いんです! それで旅団にも入りたいって! だから連れてきました!」
「そうかい……では自己紹介をした方が良いかな? 旅団ランキング273位『閃光の調べ』団長のユカリだ」
ご飯にかけるゆかりみたいな紫色の長い髪をポニーテールに縛り、紅い眼が綺麗な女性。タキシードみたいなスーツみたいなきっちりとした黒服を着ている。
身長は160㎝ある俺よりもちょっと小さいくらいだ。
彼女こそ団長、ユカリ。初期リセマラなら彼女をガチャから出せれば終了ラインと言われるほどは強い。インフレに巻き込まれていくが、偶に新ガチャがまぁまぁ出るキャラだ。
レムリアとは全然扱いに差があるが、彼女はヒロインではないし、オレを刺したりするイベントは無いので彼女よりは全然怖くない。
「オレはワレン。暇つぶしだが入ることにした」
「ほぉ、随分自信家のようだ。だが、レムリアが連れてきたのだからそれなりなのだろうな」
「はい! 凄く強いんです! あと魔空挺も貸してくれて! ここまで帰ってこれたのも彼のおかげです!」
「そうかい。まぁ、私としても構わないよ。入団するのに試験を課す旅団もあるけど、私達の旅団は最下層で人員も常に足りていない。実力もあると言うなら断らない。人柄とかも知りたいが、レムリアが推薦なら問題ないだろう」
「そりゃどうも」
「ふっ、君のようなタイプは今まで居なかったからね、賑やかになりそうだ」
その後、登録審査とかでユカリから書類を色々渡された。オレは書類とか色々サインをして、気づけば夕方になっていた。
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主人公『オレはレムリアと組むぜ(一応一緒にいないと原作が正しく進むかわからないし、あいつ死んだら世界滅亡だから)
団長『あ、ふーん(こいつ分かりやすくて笑う。レムリア絶対好きじゃん)』
レムリア『ええ!? わ、私、ワレンさんと!?』
団長『本人のご指名だ良かったな』
スラム『やはり俺の妹を狙っていたか!!』
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