ソシャゲヒロインに刺されるほど愛される主人公になってた…… 作:ラブコメ
辺りは夕暮れでオレンジの色に染まっていた。旅団【閃光の調べ】拠点内では毎日のように宴会が行われている。そんな中、団長であるユカリは外に出て二階のベランダから風に吹かれていた。彼女は仲間が嫌いというわけではない。いつもは一緒になって酒を飲んで騒ぐ。
だが、騒がしい場所から時には距離を置きたくなるもの。
書類整理などを終えた彼女は肩の力を抜きながらパイプに火をつけて、煙を吸う。
「もう、パイプたばこばっかり吸わないでください」
「レムリアか、体に悪いとは知っているが、これをしないと生きてはいけないのさ」
「そうですか。ほどほどにしてくださいね。あと、これどうぞ、お腹空いていると思って」
「わざわざすまない」
隣に来たレムリアから皿の上に乗っているパンを貰ってそれを彼女は頬張る。
「スラムはあの新入りの彼をどう思っているんだい?」
「……得体の知れない奴だ。強さが底知れない」
「そんなにか……」
パンを全て食べ終え、ユカリは今度はレムリアの頭の上に乗って言うスラムに、ワレンについて問を投げかけた。
「君たちからの提出書類を見たが……悪魔を倒したとか。これは本当か? 悪魔は個体数が少ない、そもそも伝承に語れるくらいだ。それがピンポイントで君達を襲ってきて……それを彼が一撃……にわかには信じられないが」
「そ、それは……」
(私達が【光ノ末裔】と言うのは……秘密……)
レムリアは迷った。自分たちと頭の上に乗っているスライムの兄【光ノ末裔】であることを語るかどうか。
兄と自分だけの秘密。それをそう簡単に言ってはいけないと二人で決めていた。余計な争いが増えてしまうからだ。
「本当だ。ワレンが、あの御仁が悪魔を一撃で倒した」
「一撃か……。スラム、お前から見て私と彼が戦ったらどっちが強いと思う?」
「百回やって、一回勝てれば良い方だな。ただ、あくまで俺達が見た範囲での判断だ。他にも隠し玉がある可能性がある」
「……それはそれは本当に有望だ。だが、流石に不用意に登録を認めないが方が良かったか? 何か良からぬたくらみがあった場合は……」
「それについては心配いらない。あの御仁の目的は把握している」
「ほう? スラム、君は彼がこの弱小ギルドに入ったわけが分かると?」
「あぁ」
本来ならレムリアをボロボロになりながらも主人公は彼女を助ける。冒険者になって見たいと子供のように無邪気な主人公に心惹かれ、それを信じたレムリアからの推薦もあり、その流れで入団する。
特段、怪しまれたりはしなかったのだがワレンの言動が本来とは真逆すぎてあらぬ誤解が生まれかけた。
「アイツは、レムリアに一目ぼれをしたんだ」
「えぇぇ!? に、兄さん、その話は!」
「ほう……確かにレムリアは可愛いが……確かに。組むならレムリアと言っていたな……」
レムリアは顔が真っ赤になって、ユカリはほうと言いながら手を顎にあてる。ユカリはやっぱりそうだったかと納得した表情だ。
「──特に入る理由がないと言いながらも俺の妹であるレムリアが理由なのだろう。ここに来るまでも何度も熱い視線を当てられていた。そうだな? レムリア」
「え、えっと」
「ふむ、スラムの言う通りなら合点も行くか……レムリア、これは団長として聞いておきたい重要な事だ。聞かせてもらえるか? レムリア」
「ふ、二人して……そ、その、確かに凄い見られている気はしてましたし……」
そこまで話していると彼女達の居る二階のベランダの下から声が聞こえて来た。
「アイツ、レムリアが連れてきた奴はどうなんだ?」
「ふん、どうでもいい。俺はエミリアの方が気に食わない……アイツ、入ってきてすぐに名を挙げた。しかも
「早熟、だったか。戦闘による
「っち、あれで八歳か……気味が悪いな」
「まぁまぁ、あの子がこの旅団のエースになりそうなのは事実だから」
「本当にいけ好かない。頭の上にはスライムも居る。魔物だぞ! 兄とか言っているが目立ちたがりだ。俺たち以外も言ってる奴がいるぜ、気に食わない」
【権能】と言うのはパッシブスキルのようなモノだ。特別な一族が持つ能力が、遺伝する中でさらに大きな力となった存在を指すのが【権能】。
それ故に彼女は疎まれていた。原作ストーリーでも記載がないだけで言われ続けていた。
特別な力には疎まれたりするリスクがある。
「彼等にはあとで、私が注意しておこう」
「アイツら……レムリアを笑うとは」
「いえ、いいんです。これくらい……疎まれたりするの慣れてますし。それより悪口って誰でも言うから……。それでスッキリするなら」
「「レムリア……」」
気にしていない素振りをしながらも実は目尻に涙が浮かんでいた。彼女はまだ八歳、見た目が大人びていても子供なのだ。
「やはり、私から注意を――」
「――おい、お前等」
ユカリが二階のベランダから注意をしようとした瞬間、鋭い男の声が聞こえて来た。
三人が気になって覗き込むと、先ほどまでエミリアの事を話していた二人が金髪、サングラスをかけている13歳の少年に胸倉を掴まれていた。
「な、なんだよ、新入りか!?」
「力強ッ」
「お前等、次にレムリアの悪口言ったらタダじゃおかない……」
「い、いや、俺達以外も言ってるし」
「じゃあ、全員消えるか? 消してやってもいいぞ……」
グシャ、と身が潰されてしまう程の一瞬で大気が重くなる雰囲気があった。呼吸すらも重くなって、空気が無くなったと思いかける。
「いいか、お前ら以外のレムリアのこと悪く言ってる奴に言っておけ……。文字通り消されたくなかったら二度というなって」
「わ、わかった、分かったから!」
「離してくれ! 二度と言わないから! お、俺達、新入りのお前がレムリアの彼氏って知らなかったんだ!!」
「――ば、馬鹿やろうがッ! 彼氏じゃねぇよ!!!」
投げ捨てるように二人を手から離した【ワレン】は慌てたように舌打ちをして、その場から去っていた。
──それを上から見ていた【団長】ユカリはふっと、笑った
「どうやら、レムリアの事を好いているのは本当のようだな、スラム」
「だろ? 力は底知れないが、レムリアの事が好きだという証明だ」
「というか、分かりやすく激怒していたな。ほぼ初対面なのだろう? 余程、レムリアに入れ込んだと見える」
「まぁ! レムリアは世界一可愛いからな!!!!」
ユカリとスラムが話していると。顔を真っ赤にしてレムリアは俯いてしまった。
「あぅあぅ、は、恥ずかしいです……」
「まぁ、あそこまで分かりやすいのは中々居ないからね……レムリアがこうなるのも無理はない」
「全く! レムリアがいくら可愛いのは分かっているが! 俺はアイツにレムリアをやるつもりはない!!」
「しかも、彼氏って言われて相当焦ってたな……どうだい? レムリア。彼はそれなりに顔はカッコイイが」
「あぅあぅ」
「それどころじゃない程、君も照れてるのか」
レムリアは暫く俯いたままだった。だが、暫くしてワレンにお礼を言わないといけないと彼の元に向かった。
夜になり、辺りは暗い。涼しい風に吹かれているのにレムリアの胸の中は熱かった。
「あ? なんだ?」
「あ、その……」
【ワレン】を見つけて、彼の前に立ったが……言うべきお礼の言葉を忘れてしまった。思わず、彼女は
「あ、その……なんでもないです」
何も言わずに走るように走って逃げてしまった。
(うぅぅ、恥ずかしいよぉ……)
ずっと彼女の顔も胸も熱かった。
◆◆
旅団拠点本部はやたらと騒がしい。オレは本来なら主人公が参加して親睦を深める宴には参加しないぜ!!
真逆を言ってコミュ力に問題がある感出しておこう。仲間大事、そんなことはしない。
外を歩いているとレムリアの悪口を言っているギルドメンバーを見つけた。こんなのゲームにはいたか? 俺が知らなかっただけで実は裏設定で言われていたのかもな。
レムリアは早熟と言う権能を持っているから疎まれるんだろうなぁ。
──だが、この二人調子に乗るなよ。
レムリアに生意気したり、悪く行ったりしていいのはオレだけだ。ヘイトが分散するより、オレに集中した方が良いに決まっている。
好感度が上がり過ぎるとオレは最後に死ぬ、それだけはどうしても避けると決めている。なるべく原作に沿った動きをして、ヒロインの力を隠せさせて世界を救う。
しかし、ここだけは譲れない。
どうしても、この二人には今後、悪口を言わせないようにしないと。やっぱり悪口とか生意気なことを言うのが一人の方が目立つしね。大雑把な一人とかなると悪い奴の印象が薄れる!!
「な、なんだよ、新入りか!?」
「力強ッ」
「お前等、次にレムリアの悪口言ったらタダじゃおかない……」
「い、いや、俺達以外も言ってるし」
「じゃあ、全員消えるか? 消してやってもいいぞ……」
胸倉掴んで、MPを漏れ出しておく、威圧をする。三周年ガチャ限定キャラの怖さ思いしれ。
「いいか、お前ら以外のレムリアのこと悪く言ってる奴に言っておけ……。文字通り消されたくなかったら二度というなって」
「わ、わかった、分かったから!」
「離してくれ! 二度と言わないから! お、俺達、新入りのお前がレムリアの彼氏って知らなかったんだ!!」
「――ば、馬鹿やろうがッ! 彼氏じゃねぇよ!!!」
彼氏なわけないだろ!! 刺されて死ぬわ!!!
取りあえず、これでいいか。と思って夜歩いていると前からレムリアが飛び出してきた。
『兄貴! 前からレムリアが!!』
『なんだ? ま、まさか、いきなり告白か!?』
「ワレンさん!!」
「あ? なんだ?」
「あ、その……」
夜が暗いから表情がよく見えないが……
「あ、その……なんでもないです」
彼女はそのままどこかに行ってしまった。
『レムリア。兄貴に前から来たのに気まずそうにして帰って行きましたね!! もしかして、話すのも嫌になったのでは無いっすか!? 兄貴の思惑通りですね!!』
『偶々前から来て、挨拶しようと思ったけど、めんどくなって帰ったのか……?』
『そうっスよ!! 流石兄貴! 全部掌の上っスね!!』
『ふっ、まぁね! 本来の主人公ならこの時に、恋仲とかでは全くないけど、仲良く話していたというのに、会話拒否か!!』
『これからも嫌われていきましょう!! 悪魔的には光って気に食わないので応援します!!』
どうやら、俺は思惑通りに世界を進められているらしい。これからも頑張って行くか!!
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