ソシャゲヒロインに刺されるほど愛される主人公になってた…… 作:ラブコメ
レムリア、スラム、ワレンは魔空挺に乗り、旅団本部があるデュアル島を飛び出して、グスアート島に到着した。
始まりの場所でのチュートリアル、そして旅団入団がプロローグ。第0章とも言われていた。
そして、それらを終えてこのグスアート島では物語の第一章が始まる。
「ワレンさん、先輩の私について来てくださいね!」
「……っち」
レムリアが前を歩いて、その後ろをワレンが不機嫌そうに歩く。レムリアはワレンを除けば最も若い旅団メンバーであったので先輩に成れたのが少し嬉しくてウキウキ顔である。
「初任務でも私がいますからね! 因みに今回の任務は大量発生した魔物の討伐です!」
「知ってるよ」
ポケットに手を突っ込みワレンはレムリアに応える。二人は到着した島にある一つの小さな村に足を踏み入れた。
「──来たわね!」
そこには尖った耳、エルフ族の赤い髪の美女が二人を待っていた。レムリアは誰だと首を傾げ、ワレンは嫌な物を見るように目を背けた。
◆◆
レムリア達とオレが村に辿り着くと、赤髪のエルフが村で先に待っていた。好戦的な顔つきでツンデレ感のある女性。
彼女は主人公を最後の最後で刺してくるヒロインの一人、【ネロ】である。
【天空ロストプリンセス】は物語のラストにヒロインが刺してくるのだが、
──その刺してくるヒロインが【イベント】によってランダムなのも特徴の一つだ。
一度クリアしたステージに何度も挑戦できるように、一度閲覧したイベントは何度もスマホで見ることができる。面白いのが、イベントの再生するとランダムでヒロインが刺してくる点だ。
今いる【ネロ】であったり、【レムリア】であったり、その他のヒロインであったり。戦い続ける中で主人公に全員が歪んだ愛情を抱くのは同じなのに、刺してくる相手が違うのである。
いやぁ、この世界どうなってんだよ。シナリオライターも何考えてんだよ。自分の性癖を出しすぎてるんだよ!!
『来たな』
『兄貴、知ってるんですか? あのエルフ』
『あぁ、オレを刺してくる可能性のある一人だ』
『マジですか』
『あぁ、ツンデレで世話好き、自信家、そこがチャームポイントだった……終盤まではな』
ツンデレだけど世話好きで可愛い感じのヒロインだったが、最終的には刺して殺して剥製にすると言う意味不明なことをするエルフ、ネロ。実際に彼女に会って思った事がある。
それはやっぱり、怖いという事だ。
ゲーム世界が実物になると、どうにも怖い。だって。オレは主人公なのだから。【ネロ】みたいなネームドキャラが出るたびにこの世界はやはり、ゲーム世界と再認識してしまう。
自分が持っている知識と世界の情勢が完璧に合っていると。刺される未来も合致してしまうような気がしてしまう。
「さて、よく来たわね! レムリア! スラム、そしてそっちは新入りのワレンね」
「は、はい……えっと、私がレムリアです……あの貴方は?」
「ふふ、アタシの名前はネロよ、聞いたことくらいあるでしょ?」
「……あ、すいません。ありません……」
「そ、そう……アタシのこと聞いてないのかしら?」
ネロは『閃光の調べ』の古株と言う設定なのである。空に浮かぶ飛行島、それを調べているらしい。だが、今は偶々帰ってきており、丁度新人が任務に出たという事でサポートとして先回りしてこの村に来たのだ。
という説明をレムリアにしているネロ。スラムとも少し話すと今度はオレの方を彼女は向いた。
「聞いてるわよ、ワレン。アンタかなり有望なんだって?」
「さぁな」
「ふーん、先輩であるアタシにそんな態度とは頂けないわね」
「どうでもいいだけだ、お前の評価もな」
「あら、そう……でも、そんな強い言葉を言う割には目を合わせないのね」
「……」
怖くて合わせられません……。刺してきて剥製にしてくるかもしれないし。
「言葉とは裏腹にビビり? それとも……あ、分かった。可愛いアタシを直視できないんでしょ?」
「あ? んなわけねぇだろ」
「そう? さっきから目が合わないからさ。そうじゃないなら目を合わせて見なさいよ」
ニヤニヤしながら彼女は眼を合わせようとしてくる。オレからすると本当に怖いだけなのだが。ネロの事は嫌いではない、一目見て人形のような可愛さであると分かった。だが、怖いのだ。
言葉では強がっていても、目が合わせられない。
そっぽを向いていると
「あ、あの! 早く任務をした方がいいのではないでしょうか!!」
レムリアがそう言った。結構な大きな声で。
「そうね、ごめんなさい。ついからかいたくなってしまったの」
「いえ! それより早く行きましょう!」
「おっけー、もうこの村の村長とは話を付けてあるの、任務は目的地に行きながら話すわ」
「はい!」
ふぅ、助かった。さて、本来ならここで全員自己紹介。真逆のキャラで主人公は優しくヒロインであるネロと会話をする。ここでは好感度とかは上がらない。
しかし、その後に重大なイベントが2つあるのだ。
レムリアが主人公を意識するイベント。これは正直、スルーしよう。するしかない。包丁がオレに向かってくるからな。
そして、もう一つはネロとレムリアの共闘イベントである。これは一番大事なのである。
最後の最後、厄災を打破する鍵はヒロインの覚醒。それを集約させる必要がある。その一番最初、協力をして二人で必殺技を出す。
【強化オーガ】と言う魔物に対して、二人は連携技を放つ。
これが大事なのだ。二人で
──まぁ、二人の実力なら連携の必要がないんだけど。一緒に戦ったことで絆が深まったから、連携技を使うらしい。
よくあるよね。オーバーキルする戦いはさ。
さて、原作通り進めるように頑張ろう。
◆◆
ワレンが色々考えている、その真後ろでレムリアがちょっと膨れていた。
「ワレンの奴、レムリアにも色目使っておいて……ネロにも……気が多い奴なのか? まぁ、別にワレンに好かれなくてもいいよな。な? レムリア?」
「……はい」
「どうした? レムリア」
「……いえ、別に」
「どうした? ぽんぽん痛くなったか??」
「そういうのじゃないもん……。思わせぶりな態度するのが気に入らないだけだもん」
「レムリア……くっ、ワレンの奴!! レムリアの心をひっかきまわしやがって!」
人は他者からの噂を信じる生き物だ。テレビで芸能人がお勧めの商品を宣伝すれば、あの商品この人が言うなら買おう。学校であの人カッコいいよね、面白いよねと言う噂にも凄い力がある。
ワレンはレムリアの事が好きなのでは、ギルドの中では噂になっていた。ワレンの一連の行動を面白がったものも一部居るが、レムリアはそれでからかわれる機会も多少あった。
ワレンが不良っぽい感じを出すから、余計に色恋沙汰を面白がる連中がいたのは確かであるがレムリアは何度も聞いたのだ。
『ワレンって、レムリアの事好きなんでしょ?』
『ワレンがレムリアの悪口に怒ったんでしょ?』
『レムリアはワレンのことどう思っているの?』
噂、噂、只管にそれを聞かされて、彼女自身も意識せざるを得ないし、普通に悪口を怒ってくれたのは嬉しかった。だから、ちょっと惹かれても居た。それなのに、ワレンは他の女にもデレデレし始めた。
ネロに対して、眼を合わせない。恥ずかしいのか分からないが、自身と同じ反応、押されて押されていたのに急に引かれたようでもどかしかった。人間は自身から離れていくのを追いたくなる習性もある。
レムリアはワレンに対して、想いを強めていた。
◆◆
この島には現在、魔物が大量発生している。それを討伐するのが今回レムリア達に課せられた任務であった。
「というわけで、ここから先の農地にオーガが大量に居るらしいのよ」
「なるほど、それを私達が」
レムリアとネロが話している横から、ワレンが一人で別方向に歩き出す。
「ちょっと、どこ行くのよ」
「オレはオレのやりたいように駆除するだけだ」
ネロの静止の言葉も聞かずにワレンはどこかへ歩いて行った。ネロがため息を溢すが、仕方ないと農地に向かった。そこには大量の魔物【オーガ】が居たのだ。
「討伐よ、レムリア、スラム」
「はい……」
「まかせろ!」
スラムは攻撃力が1しかないので役に立たないが、レムリアとネロが剣と魔法でそれぞれ、オーガを討伐していく。
この世界は本来ターン制のRPGソシャゲ。自身の攻撃をした後に相手の攻撃が来る。プレイヤーは五体までキャラを設定することが出来る。
バトルでは様々な要素が交差している。
何も消費しない通常攻撃
常時発動のパッシブスキル
そして、
プレイヤーはターンごとに、キャラの行動を決める。
しかし、それはゲームでの話。それが現実の世界ではターン制など存在しない。敵からの行動を喰らうことはなく、二人は徐々に数を減らしていく。
(流石は『早熟』のレムリア……話には聞いてたけど、凄まじい剣捌きね)
ネロの魔法と、レムリアの剣でオーガは消え去った。しかし、最後の群れの長である強化形態のオーガが現れる。
「あれを倒して、終わりにしましょう」
「……あ、はい」
レムリアはネロに対して、原作ストーリーほどの好感度は持っていなかった。ワレンが会話に入り込むことでワンクッション入っていた。あとはワレンの性格のずれ、それによって関係性も変わってしまっている。
ワレンが気になる、気になる人が気になっているネロ。少しだけ、心良く思えないというのもあった。
だから、だろうか。特に山場もなく物語は進む。
二人は【連携技】をせず、オーガの強化形態を倒した。
面白かったらモチベになるので、感想、高評価、お願いします!!!」